小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第23話〜一騎討ち、迷走する心〜
















昴「・・・」

思「・・・」

今は俺は思春と睨みあっている。昨日決まってしまった一騎討ちをするためだ。

思「必ず貴様を・・」

昴「・・・はぁ」

何か気が乗らないな。というか1番気がかりなのが・・。

明「昴様〜、頑張ってください〜」

祭「うむ、いい酒の肴になりそうじゃ」

穏「楽しみです〜」

冥「まったく雪蓮は・・」

蓮「・・何故2人が?」

何故か観客が? 蓮華は状況が飲み込めてないみたいだが。

昴「何で皆いるの?」

雪「私が呼んだからよ♪」

昴「・・はぁ」

孫家の武官文官勢揃いだな。

思「御剣昴。貴様に蓮華様は渡さん」

話がでかくなってる。何で?

チラッと雪蓮を見ると・・。

雪「(ニヤニヤ)」

雪蓮が何か吹き込んだんだな。・・・そういえば、思春が勝ったら俺を好きにできるということは・・。

昴「雪蓮、勝ったら好きにできるって話、俺も同様の条件でいいんだよな?」

雪「ん〜、思春、どうする?」

思「構いません。勝つのは私です」

雪「ということよ。」

おっしゃ! 俄然やる気出てきた!

雪「勝負はどちらかが戦闘不能になるまで、いいわね?」

思「了解しました」

昴「分かった」

楓「思春〜、ちったぁ楽しませろよ〜!」

思「黙って見ていろ楓!」

へぇー、あんな冗談言える仲になったんだな。少し感動だ。

雪「それでは2人とも、準備はいいわね」

思春が鈴音を抜き。俺は朝陽と夕暮を抜いた。

雪蓮が右手を上げ・・。

雪「・・・始め!」

思「はっ!」

先に仕掛けたのは思春だ。

昴「ふっ!」

ガキン!!!

とっさに朝陽で防ぐ。思春はすぐさま距離をとった。
なるほど、自身の速さを利用しての戦法か。あいにくその戦法は以前に見た。なのであまり苦労はしない・・・と踏んでいたんだが・・・。

昴「!?」

ガキン! ガキン! ガキン!

心なしか、以前の楓との一騎討ちの時より速さも力強さも上だ。

思「これで終わりではないぞ?」

昴「ちっ!」

ギン!!!

思春を弾き飛ばし一度距離をとる。

昴「ふぅ」

やっぱり気のせいじゃないな。明らかに以前見たときよりも違う。前は手を抜いていた・・・という訳でもないんだろう。要するに気持ちの問題だ。楓は自分が殺めた武人の娘。本気のつもりでも実質7〜8割程しか出せていなかったのだろう。今は相手が俺だから何の遠慮もないと。楓よりやりにくいな、積極的に向かって来ない相手は。戦闘不能ってことは気絶させるか武器を手放させる、あるいは破壊して喉元に剣を突きつける・・・こんな具合か。思春を気絶させるのは気が引けるし、武器破壊等は完全勝利とは言い難いな。どうするか・・・・・・あっ、1つある。完全勝利の選択肢が。1番難しい選択肢だが、1番平和で分かりやすい勝利だ。

思「来ないのか? ではこちらから行くぞ!」

ダッ! ガキン!!!

昴「おっと!」

思春の一撃を防ぐ。
やることは決まったがこの選択肢は仕込みにかなりかかる。しばらくは思春に主導権を渡すか。

昴「行くぜ?」

思「・・来い」

俺は思春に向かって行った。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


観客side

10合、20合と昴と思春が斬り合いをしていく。

明「思春殿が押していますね。昴様は防戦一方です」

楓「うーん・・」

明「どうしました?」

楓「旦那があまりにも手を出さなすぎる気がすんだよな」

明「それは思春殿がそうさせないだけなのでは?」

楓「旦那の実力も思春の実力もよく知っている。旦那がこの程度なわけがねぇ」

祭「そのとおりじゃ」

明「祭様?」

祭「昴の顔よく見ろ。顔に焦りが一切ない。それどころか汗1つかいてない」

明「ですが、思春殿は隙を見逃さず、絶えず攻めていますが・・」

祭「思春は確かに隙を見逃さず攻めておる。じゃが昴はあまりに露骨に隙を見せすぎだとは思わんか?」

明「・・どういうことでしょう?」

祭「思春程の腕なら隙を見つけ、そこを狙うのは容易い。じゃが逆に言えばたった一ヶ所の隙に必ず攻撃が来るわけじゃ。もしわざと隙を見せておるのなら、思春はそこに攻撃を誘導されておるわけじゃ」

明「!?」

楓「!?」

やがてもう一度昴と思春が交錯すると双方に距離が生まれた。

祭「どうやら決着がつきそうだ。見ておれひよっこ共、滅多にお目にかかれん次元の高い戦いじゃ」

今一騎討ちが終わろうとしている。


















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※※※※


昴side

思春の攻撃を防ぎ、距離を取る。

思「どうした? 守ってばかりでは私には勝てないぞ?」

おっしゃるとおりだ。仕込みも十分だし、そろそろいいか・・。

昴「思春」

思「何だ?」

昴「次の一撃で終わらせる。覚悟はいいか?」

思「!? ・・笑えない冗談だな。先程まで防戦一方だったお前が」

昴「やれば分かるよ」

思「言ってろ。ならばその自信を打ち砕いてくれよう」

俺は再度構えを取る。両者の間に緊張が走る。

ダッ!

俺と思春が同時に飛び出す。

昴「はぁぁぁ!」

思「ふっ!」

ガキン!!!

両者が剣をぶつけ合い、そして止まる。
俺は朝陽と夕暮を鞘に戻す。

思「何故剣をしまう。私はこのとおり何ともないぞ?」

昴「勝負はついた。もうこれ以上は意味がない」

思「・・貴様は私のみならず、一騎討ちまで汚すか! もう許さん! その首、即刻落としてくれる!」

思春が怒り心頭で飛び掛かる。

昴「待て! そんなに激しく動いたら・・」

ビリビリビリ・・。

昴「さっきの斬り合いで服の継ぎ目に切れ目を入れまくったから・・」

ビリビリビリビリ・・・。

昴「服が破ける・・」

思春の服が褌を残して破れた。

思「!? ・・キャアァァァ!!」

思春が胸を両腕で隠し、その場でうずくまった。

昴「あ〜、すまん。加減を間違えた。胸のサラシまで斬るつもりはなかったんだが・・」

思「(キッ!)貴様、よくも!」

思春は半裸のまま俺に襲いかかってきた。俺は思春の剣が当たる直前に縮地で思春の背後に回った。

思「何!?」

俺は思春に身につけている外套を肩に掛けた。

思「何の真似だ!」

昴「もう終わりだ。そのカッコじゃ戦えないだろ?」

思「!? ・・//」

思春は状況を思いだし、外套で体を隠す。

雪「思春、あなたの負けよ」

雪蓮からも審判が下った。

昴「そういうことだ。とにかく俺の勝ちな。あ、一騎討ちの際の取り決めも忘れんなよ?」

俺はそれだけ告げてその場を後にした。

















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


思春side

思「くっ!」

このような屈辱を味わうとは。

雪「お疲れ思春。どう、昴は?」

思「強いです。ですが・・」

それは分かっていたことだ。

祭「随分派手にやられたのう思春。・・・しかし、お主綺麗な体をしておるの?」

思「っ!?」

咄嗟に体を隠す。

雪「あら祭、そんな趣味があったの?」

祭「そうではありませぬ。思春の体に傷1つ付けず。服の継ぎ目だけに切れ目を入れる、このようなことよほどの腕がないかぎり出来はすまい?」

思「!?」

雪「確かにね。ただの賊や雑兵ならともかく、思春を相手にやるなんてねぇ?」

・・・格が違いすぎる。最初から勝負にすらならなかった。

祭「まあ昴は思春に一切の傷を負わすことなく決着をつけるためにこのような手段を用いたのじゃろう」

そのような気遣い、いっそ叩きのめしてくれれば!

祭「何にせよこれで昴の言うことを1つ聞かねばならぬがのう?」

思「!? ・・くっ!」

雪「大丈夫よ。昴は無茶なお願いはしないわよきっと」

祭「楽しみに待っておれ」

雪蓮様に祭殿も他人事のように!御剣昴、これ以上の屈辱を強いるなら貴様を・・!

思春は新たな憎悪を抱いた。


















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※※※※


昴side

一騎討ちから翌日。

カキカキカキカキカキカキカキカキカキ。

今大量の書簡と格闘中。理由は一騎討ちの勝利の約束のためだ。どうせやるならお互いが休みの時がいいと思い、休みの調整のために書簡を片付けている。確認してみると、思春の休みが明後日で、おれが4日後だ。なので間2日の書簡を片付けるため、大急ぎで片付けている。

カキカキカキカキカキカキカキカキカキ。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


そして前日の夜。

昴「よーし! 終わったー! イヤッホーイ!」

睡眠時間もほとんどとらずに書簡を片付けていたため、現在異常にハイテンション中。
さってと、早いとこ冥琳に書簡の束を渡しますかね♪ 書簡を渡し時に冥琳が一言・・。

冥「化け物か貴様は・・」

と、半分驚愕、半分呆れていた。思春に日時と場所はもう知らせてあるから・・よし寝よう。

昴「おやす・・Zzz・・」

布団に潜ると同時に夢の世界へ旅立った。

















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


その翌日、城門の前に来てみると、既に思春は来ていた。

昴「よう、待たせたか?」

思「・・・」

無愛想だな。

昴「それじゃ行くか?」

思「何処へ行くつもりだ?」

昴「まぁ、ついてきてくれ」

俺はとりあえず当初の目的の場所へ向かった。

















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


思春side

私は御剣昴に連れられ街を歩いている。こいつは何も話さない。

思「いい加減に何処へ行くか話したらどうだ?」

昴「すぐに着くから慌てんな・・あ、ちょっと待っててくれ」

何だ?

御剣昴は1人のご老人に駆け寄り、持っていた荷物を持ち始めた。どうやら重そうに荷物を持っていたご老人を気遣ったのだろう。目的の場所まで荷物を運び、ご老人に礼を言われるとこちらへ戻ってきた。

昴「悪い悪い。それじゃ改めて、行こう」














・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


「御遣い様、今日はお休みなんですか?」

昴「ああ、久々に休みだ」

「御遣いさん、こないだは助かったぜ!」

昴「何、困った時はお互い様だ」

「御遣い様、こないだはほんに助かりました。おかげで体が楽になりました」

昴「それは何よりだ。だけどあまり無理はしないでくれよ?」

「御遣い様〜、遊んで〜」

昴「また今度な!」

街を歩くと御剣昴は随分話し掛けられる。どうやら慕われているようだな。御剣昴を眺めていると。

昴「ん? どうした?」

思「何でもない」

こちらの気配に目敏い奴だ。

しばらく歩くと・・。

昴「着いたぞ」

思「ここは・・」

服や装飾品等を売っている店だ。このようなところで何を・・・。

昴「さ、入ろう」

御剣昴に言われるがまま店に入った。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴side

思「・・何だこれは」

昴「何って、服だ」

今思春が着てる服は赤のワンピースに赤の円形に広がる鍔にリボンをあしらった帽子かぶっている。ちなみに思春は髪を下ろしている。これは俺が華琳のところにいた時、沙和が愛読していた阿蘇阿蘇に載っていた衣装だ。っていうか阿蘇阿蘇って(笑)
そんなツッコミはさておき、今思春はその衣装を着ている。

思「そんなことは分かっている。何故私がこのような服を着ねばならない!」

昴「まぁ、何故かって言われると・・俺の趣味だ」

思「・・斬る」

昴「冗談だって! これから行く場所は普段の服だとちょっとな」

思「冗談ではない! このような姿、武人を辱しめるにも程がある!」
 
昴「一騎討ちで負けたんだから文句は聞かないぞ」

思「くっ!」

昴「とりあえず、次行くぞ?」

街を歩くと、思春は注目の的である。もちろん皆思春に見とれている。

思「見ろ! 人々が私を嘲笑っている・・//」

昴「違うって、皆思春に見とれているんだ」

思「// ・・馬鹿にして・・」

昴「そんな気はないって・・」

どっちかと言うと俺に嫉妬と羨望の視線、更には殺気まで向けられている。

俺達は目的の場所に向かった。後ろからは思春が殺気をチリチリ当てている。かつてない殺気だ。だけど、気にしな〜い♪ 気にしな〜い♪

















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


俺達は街の大通りを外れ、人通りの少ない脇道を歩いている。

思「どこまで行くつもりだ! 貴様は何も話そうとしない。それが私にどれだけ、『着いたぞ。』何? ここは・・」

着いたのは少々広い空き地にぽつんと一軒の建物が建っていた。

昴「皆、出てこいよ〜!」

すると建物から子供達20人ほど出てきた。

「あ〜、お兄ちゃんだ〜!」

「御遣いしゃま〜!」

瞬く間に子供達に囲まれる。

「遊んで遊んで〜!」

昴「分かった分かった」

思「この子供達は?」

昴「この子達は両親が共に働きに出たりして1人きりの子供達だ。そういう子らがここに集まって遊んでいるんだ」

思「なるほど、それで私をここに連れてきてどうしろと?」

昴「今日はこの子達の面倒を一緒に見てほしいんだ」

思「私がか?」

ジロッと思春が子供達に目をやる。子供達は俺の後ろに隠れてしまった。まったく・・。俺は思春の後ろに回り、頬っぺたをグニ〜と引っ張った。

思「ひはま〜はひをふふ〜!(貴様〜何をする〜!)」

昴「そんな無愛想な顔じゃ子供達が怯えるだろ? ほ〜ら笑って笑って♪」

グニグニ〜と頬っぺたを引っ張る。

昴「こっちの人は甘寧お姉さんだ。今日はこのお姉さんと一緒に遊んであげるからな〜!」

「あはは〜甘寧お姉ちゃん面白い顔〜!」

「お姉ちゃん遊ぼ遊ぼ〜!」

思「えぇーい、離さんか!」

昴「とにかく、今日1日よろしくな?」

思「負けたのは私だ。従おう」

思春はしぶしぶながら従ってくれた。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


それからしばらく子供達と一緒に遊んだ。追いかけっこをしたり、ケンケンパをしたり、縄を束ねて縄跳びをしたりして遊んだ。遊んでいる最中・・。

ステン!

歩き始めて間もないであろう子供が派手に転び、そして・・。

「ビエェェェン!!」

泣き出してしまった。

思「こ、こら泣き止むんだ」

思春が慌ててなぐさめるが・・。

「ビエェェェン!!」

幼子は泣き止む様子はない。思春がおろおろしている。

昴「思春、そんな高いとこから見下ろすようにしてたらそのくらいの歳の子は不安がるって。目線をその子と同じか低くなるぐらいまで下げて」

思「こ、こうか?」

昴「それで優しく抱きしめて背中を撫でながら優しく声をかけてあげて」

思「む? ほら、もう痛くない。男の子だろ?いつまでも泣くな」

「ふぇ?」

思「ほら、もう大丈夫だ」

思春はその子の母親の如く慈愛に満ちた顔でその子を抱きしめている。

「えへへ、ありがとう、甘寧お姉ちゃん!」

思「ふふ」

へぇー・・。

そういう顔も出来るんだな。子供達もなついているみたいだし。しばらく遊んでいると子供達の親が次々尋ね、1人、また1人と母親の元に帰って行く。やがて最後の1人も母親に連れられ、帰って行った。

「バイバイ、御遣い様、甘寧お姉ちゃん!」

俺と思春は軽くを手を振り、子供を見送った。

昴「さてと、子供も今ので最後だ。思春、ありがとな」

思「構わん。・・・それにしても随分手慣れているのだな?」

昴「昔から子供にはよくなつかれるほうでな、よく面倒を見ていたんだ。まぁ、何より子供達の退屈な顔見るより楽しく笑っている顔の方が好きだしな」

思「なるほど」

昴「悪い気はしなかっだろ?」

思「・・・」

言葉には出さないけど。満更ではなさそうだな。

昴「疲れてるところ悪いが次が最後だ。付き合ってくれないか? 何、時間が時間だから食事に行くだけだ」

思「・・いいだろう」

俺達は大通りの俺がよく行く飲食店に向かった。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


思春side

昴「ゴクゴクゴクゴク・・・ぷはぁー!」

思「・・・」

今私は御剣昴のよく行くという飲食店で食事をしている。奴は酒を飲んでいる。私は遠慮した。

昴「改めて、今日は悪かったな」

思「構わんと言ったはずだ。・・悪い気分ではなかった」

少し手がかかったがな。

思「御剣昴」

昴「ん?」

思「貴様の認識は少し改める。しかし、やはり貴様は蓮華様の関わるな。蓮華様の気持ちをお前に理解出来るとは思えん」

昴「・・そうだな。蓮華の心の内、王の気持ちなんて分からない方がいい。民の期待。兵の期待。将の期待。そして自身の責務・・分かりたくはないさ・・」

思「御剣昴?」

貴様は何故そんな顔する。そのような辛く悲しい顔を。

昴「王と将兵に関わらず、人と人なんて結局完全にわかりあうなんて無理だ。だけどな、だからそれが何だ? 分からないから何もしないのか? 関係ないさ。俺は力になりたいから出来ることをするだけだ。思春もそうだろ?」

思「・・・」

昴「俺が正しいと言うつもりはないが、俺は蓮華を導きたいだけだ。そのくらいは・・勘弁してくれ」

言うと御剣昴は酒を一杯煽った。するとそこへ・・。

祭「なんじゃ、昴、ここにおったのか?」

昴「祭さん、どうかしましたか?」

祭「冥琳が探しておってな。渡された書簡について何か思うところがあるらしいが」

昴「あ〜、なるほど、分かった、すぐに行く。悪いな思春。そういうことだから城に戻るな?」

思「分かった」

昴「勘定はここに置いていく、またな」

御剣昴はお金を置き、店を出ていった。

思「ふぅ」

ようやくいなくなったか。

祭「思春よ、横、良いかのう?」

いつまにか手には酒と器が握られていた。

思「構いません」

祭殿は横に座ると、無言で酒を飲み始めた。しばらくすると・・。

祭「思春よ、いい加減認めたらどうじゃ?」

思「? ・・おっしゃる意味が分かりかねますが・・」

祭「そう言うか、ならはっきり言うが、お主が昴にあれほどに感情をあらわにするのは昴の性格や蓮華様に近づくのが気に入らぬのが原因ではあるまい?」

思「では何だと?」

祭「お主はただ単に昴が他の女に近づくのが我慢ならぬだけであろう?」

思「・・・・・なっ!? なっ、何を根拠に//」

祭「思春よ、お主は気が付いているかどうかは知らぬが、お主は昴が近くに来ると無意識に目で追っておったぞ? それに他の女が近づくと途端に機嫌が悪くなる」

思「・・・//」

くっ、私がそのようなことを//

祭「今日1日昴と過ごしてどうじゃった? お主が口にするような男ではなかったであろう?」

思「・・・。」

祭「策殿も蓮華様も小蓮殿もも奴に惹かれておる。明命もあの楓さえも同じじゃ。無論、儂もな。あのお堅い冥琳もおそらくはな」

思「・・・」

祭「お主も少しは素直になれ。たまにはこの老骨の助言に耳を傾けてみろ。案外、道が開けるかもしれんぞ?」

祭殿は言うと酒を一杯煽った。

祭「まあ、どうするかはお主次第じゃ。1人でゆっくり考えるがよい」

祭殿はそれだけ言い残し、店を後にした。

思「・・・私は」

分からない。確かに御剣昴が蓮華様に近づくと無性に腹が立った。それと同じくらい空虚な気持ちになった。

思「くそ!」

そのあと思春は酒を大量に煽った。次の日二日酔い苦しめられたのは言うまでもない。思春は自身に生まれた気持ちに戸惑うばかりであった。










続く

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