小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第28話〜荊州掃討最終戦、黄巾の乱〜















俺は今城の庭にいる。周りには雪蓮と冥琳を除く、穏、祭、蓮華、小蓮、思春、楓、明命、亜莎、が揃っている。しばらく待っていると雪蓮と冥琳がやってきた。

雪「皆集まってるわね」

祭「うむ、それで策殿、此度の軍議は荊州の賊についてかのう」

雪「ええ、たった今袁術から要請があったわ」

やはりか。

思「我らの兵力は現在1万2千。空き城を占領した賊は程遠志が率いていた賊の残党とさらに他国から流れ着いた賊が合わさり、今では2万3千に及びます」

穏「これが賊が占領している城の地図になります〜」

冥「ふむ、厄介な城だな・・」

穏「攻めづらく、守りやすい、まさに教科書のようなお城ですね〜」

蓮「全軍を展開出来るのは全面のみ。左右は狭く、大軍で攻めるには無理がある、か」

思「後ろには絶壁がそびえていて、回り込むことは不可能でしょう」

雪「めんどくさいから、真っ正面から突入しちゃおうよ〜」

祭「うむ、策殿に賛成だ」

楓「それ、面白そうだな!」

蓮「何を馬鹿なことを言っているのです。タチの悪い冗談を言っている場合じゃありません」

雪「結構本気なんだけど・・」

蓮「なおタチがわるいです」

雪蓮はしょんぼりしている。本気だったんだな。

冥「・・昴」

昴「ん?」

冥「お前の意見を聞かせてくれ」

昴「そうだな・・」

俺は地図に目を落とす。この真ん中辺りあるのが本丸だな。これは・・倉か。こっちは宿舎か。地図を見る限り、本丸の横に宿舎があってその横に倉が並んでいる。

昴「・・この倉の辺り、死角になってるな」

穏「あ、そう言われれば、そうですね〜」

昴「黄巾賊の残党がこの城を本拠地にしてるなら、兵糧は倉に保管しているはず、なら倉を狙うのが良策だな」

明「でも、一体どうやって?」

昴「夜の闇に紛れて城内に侵入して火を放つ。出来るだろ?」

冥「出来るな。祭殿、古城に到着し、夜になりましたら部隊を正門に集結させてください」

祭「ふむ、それは良いが、夜襲を掛けるのか?」

冥「掛けるフリだけで結構。奴らの目を正門に惹き付けるのが狙いです」

祭「なるほど。囮になる訳か」

冥「ええ。その後、興覇と幼平の部隊が城内に侵入。放火活動を行います。その状況に合わせて、祭殿は雪蓮と合流し、混乱する城内に突入する。これでどうかしら?」

雪「良いんじゃない? ワクワクしちゃうわ」

蓮「しかし、確実に成功するという保証が無い以上、お姉様が前に出るのは危険です!」

雪「蓮華、戦に絶対は無い。それぐらい分かってるでしょ?」

蓮「しかし、母様が死んだ時と、状況が良く似ていて・・」

雪「城攻めの時に私が死ぬかもって? 無い無い。私が指揮するのは突入部隊だけ。城攻めの指揮は祭と楓に任せるもの」

祭「うむ、承った」

楓「腕が鳴るぜ!」

雪「ね? だから安心して私の背中を見ておきなさい。孫呉の王の戦いぶりをね」

蓮「・・(コクッ)」

昴「心配するな。夜襲部隊には俺も同行するから」

明「はうあ! 昴様自らですか!?」

思「我らだけでも十分だ」

昴「2人を信用していないわけじゃないさ。俺が行ったほうが時間も短縮できるし、正確性も上がる。それに、そういうのも得意だしな。だから心配は無用だ」

蓮「分かった。任せるぞ」

雪「聞き分けの良い子は好きよ。じゃあ蓮華は後方を任せるわ」

蓮「はい」

雪「思春、明命。2人はすぐに精鋭部隊を編成し、作戦を検討しておいて」

思・明「御意」

雪「私と祭と楓は部隊を編成するとして、冥琳達はどうするの?」

冥「穏は蓮華様の補佐を」

穏「了解でありまーす♪」

冥「私と亜莎は、雪蓮達が突入したあとの総仕上げを行う」

雪「亜莎、大丈夫?」

亜「はい! 一生懸命頑張ります!」

小「ねえ、シャオは?」

雪「シャオはお留守番よ」

小「ぶー、シャオだって孫家の一員なのよ!」

雪「駄目よ。シャオの出番が必ずくるから今回は聞き分けなさい」

小「・・はぁい」

納得言ってないな。万が一に備えてってところだろう。

祭「後は、黄巾党の残党と我らの兵力差は1万以上。しかも此度は以前と違い敵は城内じゃ。ある程度は策で補うにしてもこの差は大きいぞ?」

雪「その辺は大丈夫よ?」

冥「少々、嬉しい誤算があってな?」

祭「? どういうことじゃ?」

冥「袁術が討伐の際に兵5千と物資を提供してくれることになってな」

祭「あの袁術がか?」

へぇー、気前いいな。

雪「ええ。賊の討伐に昴が同行するって話したら提供してくれたわ」

祭「ハッハッハ! ありがたい限りじゃ!」

ん〜、どういうことだ? ま、提供してくれるならいいか。

雪「これである程度兵力差は埋まるわ。それではすぐに準備を始めなさい。明日には出発するわよ!」

「「「「「御意!」」」」」

各々が準備に取り掛かった。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翌日に城を出発し、2日かけて移動し、古城の後方に本拠地を築き、夜を待った。そしてその夜・・。

冥「作戦を開始する。昴、興覇、幼平。行け!」

思・明「はっ!」

昴「任せろ」

さてと、一仕事しますかね。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・


昴「始まったな」

兵達の怒声が木霊した。

昴「急ごう、倉はこの先だ」

明「はい」

思「ああ」

最善の注意を払いながら進んで行くと・・。

明「見えました。倉です」

思「見張りは・・3人か・・」

騒がれたら計画が水の泡だ。時間もないし、早々に片付けるか。

昴「待っていろ」

俺は屋根に飛び移り、見張りの背後に回り、見張りの1人の口を塞ぎ、脇腹を殴打。

「ふぐっ!」

間を開けず縮地でもう1人の見張りの首筋に手刀。

「うっ!」

残りの1人を片付けようとしたその時・・。

ザシュ!!!

「ガハッ!」

思春が手持ちの得物で一突きにした。

昴「悪いな」

思「構わん、昴、幼平、始めるぞ」

明「はい」

昴「おう」

準備は滞りなく進んでいく。後は2人に任せれば大丈夫だろう。

昴「後は2人に任せる」

明「どちらへ?」

昴「放火のついでに城門をこじ開ける」

明「!? お1人でですか!?」

昴「明命、声デカイ」

明「ふぐっ、申し訳ありません」

明命があわてて口を塞ぐ。

思「正気か貴様?」

昴「正気だよ。城門開ければ突入部隊が楽になる。もともとそのつもりでこっちに来たからな」

明「でしたらお供致します」

昴「待て待て。思春1人じゃ時間掛かるだろ? それに1人の方が動きやすい。それじゃ、ここは頼んだ」

明「昴様!?」

俺は城門へと向かった。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


城門近くにまで来たがやはり賊の数は多い。迂濶に飛び出せば瞬く間に城壁と門前の賊の格好の的になる。チャンスは一瞬。思春と明命が倉を燃やし、賊達に動揺が走るほんの一瞬だ。

「火事だ!」

「く、倉が燃えてるぞ!」

「食料が・・」

賊達に混乱が走る。

行くならここだ! 俺は縮地で一気に城門に近づく。

「何だテメエは!」

「侵入者だ!」

昴「邪魔だ!」

「グフッ!」

「ガハッ!」

俺は村雨で一閃する。真っ直ぐ城門に突撃し、邪魔者は斬り捨てる。やがて城門前にたどり着き・・。

昴「はぁ!」

大きく跳躍し、村雨に氣を大量に込める。

昴「飛龍衝撃!」

氣を飛ばさず、村雨を直接城門の閂に叩きつけた。

ドォン!!!

城門の閂は破壊され、扉は開かれる。

昴「さて、やることは終わったし、雪蓮達と合流・・・げっ!」

ヒュヒュヒュヒュン!

祭さん部隊の威嚇射撃の矢が飛んできた。

昴「うお!」

ギン! ギン! ギン! ギン! ギン!

村雨を手元で回転させ、矢を全て弾く。

昴「まずい、城門から離れないと!」

俺は2射目が放たれる前に祭さん部隊に合流する。

祭「むっ、やはり昴か」

やはりって・・。

祭「しかし、お主城門から出てきたがまさか城門を破壊したのか?」

昴「ええ。思春達が倉を燃やして賊達が動揺してる隙を付いて」

祭「・・相変わらず、無茶をするのう」

昴「まあこのぐらいはね。・・とにかく策は成りました。今こそ好機です」

祭「では行くかのう。昴よ、本陣に戻り、冥琳と合流せよ」

昴「了解。祭さん、御武運を」

祭「言われるまでもない。黄蓋隊、城へ突入するぞ! ついてまいれ!」

「「「了解!」」」

祭さんと部隊は城へ突入を始めた。

昴「本陣に戻るか」

俺は本陣へと向かった。


















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※※※※


昴「戻ったぜ」

冥「ご苦労様。相変わらず我らの予想の斜め上のことをやってくれる」

昴「あまり褒めるな」

冥「褒めていないぞ。・・まあ、とにかく好機だ。一気に殲滅するぞ。・・昴、号令を頼んでもいいか?」

昴「俺がか?」

冥「天の遣いであるお前が号令と同時に鼓舞すれば士気も大きく上がるだろう?」

昴「わかった。それじゃ・・」

大きく深呼吸をし・・。

昴「策は成った! これよりこの地に蔓延る賊どもを駆逐するぞ! 呂蒙隊は左翼前線に進め!」

亜「り、了解です!」

昴「周瑜隊は右翼前線へ! 賊を殲滅せよ!」

冥「了解した!」

昴「天命、天運は我らにあり! 皆、進めー!」

「「「「おおぉぉぉぉーー!!」」」」

兵達の雄叫びが天に轟いた。


















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※※※※


本格的に進攻が始まり幾ばくか経った。城門が破壊され、倉を燃やされた賊達の士気は低く、もはやこちらの勢いは止められなかった。

明「敵の大将旗が倒れました!」

雪「よし! 今こそ決戦の時! 皆の者、雄叫びと共に猛進せよ!」

「「「「おおぉぉぉぉーーー!!」」」」

雪蓮の号令により、各所で兵達の雄叫びが上がる。

黄蓋隊、甘寧隊、周泰隊が追撃を始める。勝ち目無しと見て、城から逃げ出した賊は次々と討伐されていく。やがて、賊は残らず討伐された。荊州に集まった黄巾党の残党は殲滅され、本格的に黄巾の乱は終結した。









続く

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