小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第30話〜都の実情、潜入捜査〜















雪蓮達のもとから旅立ち、2週間程が経った。俺は洛陽を目指している。都洛陽で何か起こる・・。そう予感して洛陽を目指している。その道中、気になる情報を耳にした。それは移動中の行商人に道を訪ねた時のことだ。


















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昴「道を訪ねたいのだが。洛陽へ向かうにはこの道を行けばいいのか?」

「へい、洛陽はこの道をずっと行けば着きますが・・」

昴「?」

何だ、歯切れが悪いな。

「悪いことは言わないが今洛陽には行かない方がいいですぜ?」

昴「どういうことだ?」

「それはですね・・」

行商人が俺の耳に近づき。

「あまり大きな声では言えませんが、今各地で檄文が飛び回っておりまして、洛陽では董卓が宮中を牛耳り、暴政を敷いておりまして、特に今長安なんかは重税を課せられて民は貧困に喘いでいるんだとか・・」

昴「ふーん。あなたはそれを見たのか?」

「いえ、洛陽へ向かう途中、その情報を耳にしたのでこうして引き返した次第でして・・」

昴「なるほど・・」

なら、話の有無は分からないわけだな。

昴「忠告どうも。ではな」

「危険ですぜ!」

昴「危なそうだったら逃げるなりなんなりするさ」

「そうですか。ではくれぐれもお気をつけて!」

昴「ああ。ありがとう」


















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そのような話を聞き、警戒しながら洛陽へと向かった。長い道程の末たどり着いてみると・・。

昴「ふーん、暴政の都、ねぇ・・」

そこは今まで見たどの街より栄えており、暴政の欠片もなかった。街を見渡してみても民からは笑顔が溢れていた。

昴「店主、これを1つ貰うよ」

「毎度あり!」

昴「景気よさそうだね」

「そりゃもう! 董卓様が入らしてからこのとおりですよ」

ふむ・・。

昴「へぇー。董卓様ってのはどんな人なんだ?」

「董卓様はそれはもうお優しく、民の事を誰よりも想ってくださる御方ですよ! 宮中でやれ官僚やら十常侍やらが私服を肥やし、私達に高額の税を徴収するばかりだったのですが、董卓様がそれらを一掃していただいたおかげで今ではこのとおり」

昴「なるほど。これ、どうもね」

「毎度あり!」

暴政のぼの字も出なかったな。

他にもいろいろな人に聞いてみたが皆答えは一緒だった。

暴政は行われていない。

むしろ董卓が来てから暮らしは良くなった。

こんな感じだ。もちろん言わされているのではない。これらを聞いて考えられるのはただ1つ。

昴「董卓の暴政は嘘八百だな」

大方、董卓が都を牛耳るのに嫉妬したってところか。檄文の発起人である袁紹。会ったことがないから聞いた噂程度の知識しかないが、噂通りの人物なら嫉妬程度のために簡単に動くだろう。

昴「さてどうするか・・」

この後のことだ。あまりぼやぼやとしていると桃香と合流できなくなるし、かといってこのまま帰るのも芸がない。

「・・・うん! やっぱり董卓という人物。一目見ておきたいな」

都でこれだけの評価を受ける名君。興味がある。

昴「そうと決まれば会いに行くか」

忍び込むならやっぱり夜だな。とりあえずそれまで下調べをして、後はゆっくり待とう。俺は早速行動に移した。














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そしてその夜、辺りはもう暗く、人通りもほとんどなくなった。

昴「それでは行動開始!」

下調べをした結果、忍び込むにはやはり正面から忍び込むしかなかった。都の居城だけあって忍びにくい構造で、しかも警備も厳重だ。

昴「だが俺には秘策がある!」

とある人が言った。潜入に必要なのは段ボールだと。しかしこの時代には段ボールはないので、代用品として人が1人入れる竹籠を用意した。これで準備はオールオッケーだ!

昴「それでは潜入開始!」

ズルズルズルズルズルズル・・。

竹籠を被り、城門の脇を抜ける。

ズルズルズルズルズルズル・・、ドン!

昴「ん?」

何かにぶつかった。おかしいな、進行方向には何もなかったはずなのに。

ガバッ!

兵「・・・」

昴「・・・」

城門の門番が竹籠を持ってこちらを見ていた。

兵「・・・」

昴「・・・曲者!」

兵「こちらの台詞だ!」

うおっ! いい突っ込み! じゃないバレた! 何で!? とにかく誤魔化さないと・・。

昴「すみません、私は不治の病に侵されていまして、竹籠を被って城に入らなければ死んでしまうのです」

兵「ならば仕方ない、通るがよい」

昴「では失礼して・・」

兵「なるか!」

やっぱり!

昴「南無三!」

ゴツ!!!

兵「ぐっ! 貴様! 覚えて・・・ぐぅ」

ドサッ!

昴「スマン・・」

見張りの門番は片付けたが、見張りが1人とは少ないな。ちょうど交代の時間だったのか? とにかくこれで潜入できるけど、この門番このままにしてたら大騒ぎになるな。とりあえず・・・おっ! あった。握り拳大の石を門番の頭の横に置く。これで・・・(*^m^*)

鞄からマジックペンを取りだしカキカキカキ〜っと、これでよし!

昴「ギャハハハ! 笑えるぜ!」

あ〜面白い。ひとしきり笑ったし、行くか。

昴「それでは潜入開始♪」

城へと潜入した。














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昴「広い城だな」

潜入したはいいけど広すぎて何処が何処やら・・・これは苦労しそうだな。

昴「う〜ん・・・はぁ。しょうがない。聞くか・・兵士発見」

昴「すみません〜、董卓どこですか?」

「董卓様? そんなもの大広間で軍議に決まっているだろ。それより貴様見かけない顔(ガスッ!)キュウ〜」

大広間ね。そこを目指そう。















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さまようこと約20分。道中侍女に場所を訪ねて(気絶はさせてないよ。)ようやくたどり着いた。しかし正面から入るわけにはいかないので、天井裏から覗き見ることにした。大広間にいるのは5人。

昴「あれは恋にねねだな。それに張遼。あいつら董卓の将だったのか。残りは知らんが」

さて、しばらく見学しますかね。


















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董卓軍side

?「今大陸各地で根も葉もない檄文が飛び交っているわ」

張遼「ホンマふざけとるわ! 何で月がこんなふうに言われなあかんねん!」

?「迂濶だったわ。十常侍の1人が捕まる直前に嘘の都の実状を書いた手紙を袁紹に送っていたなんて」

ね「袁紹はただ月様に都を支配されたことに嫉妬してるだけなのです!」

?「おのれ袁紹め! 董卓様を悪者扱いしおって! 絶対に許さん!」

張遼「落ち着き、華雄」

華雄「これが落ち着いていられるか!」

恋「・・華雄、落ち着く」

華雄「むぅぅ」

張遼「それで賈駆っち、これからどないするん?」

賈「連合が組まれ、ここに押し寄せて来るのは確実だわ。迎撃の準備を始めるわ」

張遼「しゃーないか・・」

華雄「ところで董卓様は?」

賈「最近は根をつめていたからもう休ませたわ」

華雄「そうか・・」

張遼「・・1番辛いんわ他でもない、月やからな」

賈「どれもこれもあのくそ十常侍と袁紹のせいよ! おかけで月は・・」

ね「月様・・」

賈「皆、力を貸して。月のために」

張遼「おう! 言われるまでもないで!」

華雄「うむ! 当然だ!」

ね「袁紹をコテンパンにしてやるのです!」

恋「・・・頑張る」

賈「今日はここまでにしましょう。細かいことは明日伝えるわ」

恋「・・・」

張遼「恋? どないしてん?」

恋は先ほどから上、天井を見つめている。

恋「・・ふっ!」

恋がおもろに傍に置いてある方天画戟を天井に投げつけた。

ザクッ!!!

ね「れ、恋殿!?」

賈「恋!? どうしたの!?」

恋「・・誰かいる」

華雄「何!? 間諜か!?」

恋「・・ん、逃げられた」

張遼「逃がすかいな。追うで!」

華雄「応!」

恋「ん」

張遼を先頭に華雄、恋と続き、大広間を飛び出した。



















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昴side

賈「今日はここまでにしましょう。細かいことは明日伝えるわ」

どうやら完全に檄文は嘘っぱちだったようだ。さてと、後は董卓を・・・・ん?

恋「・・・」

恋、こっちを見てる?恋が傍らの戟を握り、天井に・・・・投げた。

昴「うげっ!」

ザクッ!!!

先ほど俺がいた場所に戟が刺さる。

昴「とりあえず、逃げる!」

俺はその場から離れた。



















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とにかく逃げ続けた。時に空き部屋に隠れ、時に天井に張り付き、時に天井裏に隠れたりしながら追手を撒いている。不幸にも城の門番と城内で気絶させた兵士の存在が明るみになってしまい、警戒レベルはかなり高まってしまった。

昴「まいったな〜」

気が付けば城のかなり奥に来てしまった。

昴「やみくもに逃げ回ったから何処が何処やら・・・ん?」

目の前の部屋。人の気配がする。扉がかすかに空いていたので隙間から覗き見をしてみた。そこには1人の女の子がいた。

あの娘の佇まい、着ている服。それに気品のようなものを感じる。もしかして・・。

あの娘が董卓かな? この辺は城の最奥部にあたる。ただの将兵がこの部屋を宛がわれるとは思えないな。しばらく彼女を眺めていると・・。

?「どうして・・」

彼女が呟いた。
















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董卓side

私は董卓。この都、洛陽の太守をさせていただいております。もともとは涼州で部隊を率いていたのですが、都の十常侍の要請により都入りをしました。都へと来た私は愕然としました。都には活気も何もありませんでした。民も暗く、街も何処か薄暗かった。調べてみると、十常侍を筆頭に民から膨大な税を搾りとり、私服を肥やしていました。払えなければ刑罰をも下していた。

ひどい・・。

私はそれを見ていられませんでした。なので私は十常侍の粛正を決意しました。本当はそんなことしたくない。でも力の無い民が苦しむのはもっと嫌だから。結果十常侍は粛正し、詠ちゃんや皆のおかげで再び都に活気が戻りました。しかし、十常侍の残党の1人が捕縛される直前に袁紹さんに都の嘘の実状と一緒に助けを求める手紙を送っていました。それにより、今国中に檄文が回っている。逆賊である私を倒せと。近いうちにこの都に諸候の連合が攻めてくる。攻めてくるなら戦うしかありません。戦うしか・・・。

董「どうして・・」

ぐっと胸で拳を握った。

董「どうして、こんなことに・・」

詠ちゃんも、恋ちゃんも、ねねちゃんも、そして霞さんも華雄さんも戦場も行ってしまう。私のせいで。

董「私のせいで・・・、私のせいで皆が傷ついてしまう」

戦争になればいっぱい人が死んでしまう。私を守るために皆が・・。涙が止まらない。次から次へと頬を伝って流れていく。

董「戦ってほしくないのに・・、生きていてほしいのに・・、皆戦場に行ってしまう。そんなの嫌なのに・・」

皆自らが望んで戦場に立つと言ってくれた。例え来るなと言われても私のために、と。そう言ってくれて嬉しかった。けどそれ以上に辛かった。

董「お願いします。皆を、皆を守ってください。私はどうなっても構わないから・・」

私は夜空の月へと祈りを捧げた。祈ることに意味はないかもしれない。でも私に出来るのはこれだけだから・・・。私は祈り続けた。しばらく祈りを捧げていると・・。

?「守ってやるよ」

董「!? 誰ですか!?」

後方から声がし、振り返ってもそこには誰もいませんでした。部屋の外にも。

董「気のせいかな?」

疲れていたせいで幻聴が聞こえたのかもしれない。私は再び祈りを捧げた。




















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昴side

董「お願いします。皆を、皆を守ってください。私はどうなっても構わないから・・」

董卓が夜空の月へと祈りを捧げている。

昴「・・・」

これが董卓か。暴君の欠片もない。董卓は悪く無いのに恨み言1つ言わない。ただ他者を気遣っている。乱世は非情だ。優しいだけの王なんて生き残れない。例え彼女が殺されてもそれは乱世の常だ。だけど・・・、だけど・・・。

こんな娘を死なせたくない。

甘い? 優しい? だから何だ。これだけ他者を思いやれる人間が何故死ななきゃならない!

昴「守ってやるよ」

思わずそう口走っていた。

董「!? 誰ですか!?」

しまった、気付かれた。俺は縮地でその場から離れた。
















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急いで城から脱出し、街の大通りを歩いている。

昴「とりあえず、もうここには用はないか」

情報は集まった。今度こそ桃香と合流しよう。少し距離があるが、不眠不休で縮地で駆ければそう時間もかからないだろう。やることは決まり、ここを離れようとしたその時・・。

兵「見つけたぞー!#」

昴「ん?」

振り返ると、まるでロボットのように、口の端から顎にかけて線が引かれ、おでこには『肉』と書かれた一風変わった変人が襲いかかってきた。

兵「貴様が書いたんだろうが!# 取れないぞこの墨!(ToT)」

昴「油性だからな」

水性ペンにしてやれば良かったな。

兵「死ね!」

兵士は大きく剣を振りかぶる。

昴「生きる!」

ゲシッ!!!

兵「ガフッ!」

俺は兵士の顔面に前蹴りを入れる。兵士はズルズルズルっと、倒れていった。

昴「スマン・・」

俺は油性ペンでちょんちょんちょんと猫髭と鼻毛を追加してその場を立ち去った。


















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街を脱出し、今度こそ桃香達のもとへ向かう。俺はただただ駆け出した。
















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おまけ

兵「うう〜、落ちねえよ〜(ToT)」

兵士の顔の落書きは2日落ちなかった。

兵「死なす! 絶対死なす!#」

この兵士は昴への憎しみを糧に将軍にまで登り詰めたとか何とか。ちなみに『落書きの人』という二つ名がついた。











続く

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