第31話〜新たな仲間、そして合流〜
桃香side
桃「私は参戦したい。長安や都に住む人が苦しめられているのを見て見ぬ振りはできないよ」
愛「私も同意見です。力無き民にかわり、暴悪な為政者に正義の鉄槌を喰らわさなければ」
鈴「悪い奴は鈴々がぶっ飛ばしてやるのだ!」
今私達は袁紹さんから都で暴政を強いる董卓さんを討伐しようという手紙が届き、どうするかを皆で集まって軍議をしている。
桃「朱里ちゃん、雛里ちゃん、星ちゃんの意見は?」
朱里ちゃんと雛里ちゃん。2人は水鏡女学院から来た子で、ご主人様が軍師として私達のために推挙してくれた2人で、とっても頭が良くて、私達が黄巾の乱で活躍出来たのも2人のおかげです。星ちゃんは白蓮ちゃんのところへ行った際に白蓮ちゃんの元で客将をしていた人で、実力は愛紗ちゃんや鈴々ちゃんと同じくらい強い人だった。私達が白蓮ちゃんの元を独立と同時に白蓮ちゃんの所から旅に出て、私達が平原の相に任命されてから幾ばくかした時に改めて力を貸してくれることになった。
星「ふむ。桃香様や愛紗達が言うことも尤もだと思うのですが」
愛「なんだ。星は反対とでも言うのか?」
星「そうは言わん。ただ・・」
朱「この手紙の内容が気になっているんですね?」
星「軍師殿も同じか?」
朱「はい。敵対勢力について書かれているとはいえ、あまりにも一方的過ぎるかと・・」
鈴「一方的〜? どういうことなのだ?」
雛「董卓さんは悪い奴。だからみんなで倒そう・・、分かりやすいことばかり書かれていますけど、この手紙はそんな単純なものでは無いと思うんです」
朱「これは諸候の権力争い。抜け駆けして朝廷を手中に収めた董卓さんへの諸候の嫉妬が、このような形で現れたて見るべきです」
愛「しかし、力無き民が苦しめられているなら、我らは連合に参加すべきだ」
朱「董卓の圧政に皆が苦しんでいる。それが本当ならば愛紗さんの言うことも尤もなんですけど」
桃「嘘の可能性があるってこと?」
雛「嘘とまで言えるかどうかは分かりませんが、逆にどこまでが本当のことなのか。その辺りを見極めなければならないかと」
鈴「う〜、何だかややこしいのだぁ〜」
星「それが政治というものだ。鈴々よ」
朱「我々はすでに流浪の義勇軍ではなく、一つの地域を支配する候ですからね」
雛「それに、すでに漢王朝に崩壊の兆しが見えている以上、先のことを見据えて動かなければ、私達のような弱小勢力は、巨大な濁流に呑み込まれるのは必至だと思います」
愛「自分達の理想を実現するためにも、その理想を客観的に見つつ、実現するために現実的な考え方をしろ・・そういうことか」
星「理想というものは大切だ。だが自分で自分の理想の目映さに目が眩んでいては、いつかは転んでしまうだろう? 太陽は蒼天に、確かにあるのだから。その光を浴びながら地に足をつけて歩くことこそが重要だと、私は思うのだよ」
桃「星ちゃんの言いたいことは分かるけど、でも、じゃあ私達は参戦しない方が良いってこと? そんなの嫌だよ」
愛「例え圧政の確たる証拠がないにしても、苦しむ庶人がいる可能性があるのならば、私はその人達を助けに行きたい」
星「私とて本心ではそうなのだがな。・・・さて。桃香様、如何しましょうか?」
桃「・・・」
私は参戦したい。都の人達が苦しんでいるなら。でももし朱里ちゃん達の危惧していることが本当だったら・・。
鈴「あ〜あ、こんな時お兄ちゃんがいれば、決められるのにな〜」
ご主人様。天の御遣いであるご主人様がいてくれたら・・。私達がどうするか考えていたその時・・。
「し、失礼致します!」
愛「何だ、今軍議の途中だぞ!」
星「まあ待て愛紗よ・・。それでどうした?」
「はい! それがこの城に所属不明の隊が近づいております! 数はおよそ300ほどです!」
愛「所属不明の隊? それは官軍か諸候の軍か?」
「いえ、そのような旗印はどこにも・・」
愛「ならば賊か? ならばすぐに討伐を・・」
星「愛紗よ、如何に賊でも、その程度の数で邑ではなく城を狙うほど馬鹿ではなかろう」
雛「おっしゃる通りかと」
朱「他に何か特徴はありませんでしたか?」
「はあ、おそらく、その隊を率いている者だと思われるのですが、先頭に黒い外套で体を覆い、5尺程の長剣を携えた男がおりました」
桃「黒い外套、5尺の長剣ってまさか・・」
「「「ご主人様(お兄ちゃん)!!」」」
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※※※※
昴side
昴「桃香達、元気かな・・」
今俺はとある1団を率いて桃香達のいる城へ向かっている。
?「大丈夫でしょうか? いきなり矢を放たれるなんてことは・・」
昴「大丈夫だろ。所属不明とは言っても劉備はいきなり攻撃するような奴じゃないし、向こうには優秀な軍師が2人もいる」
?「それならば良いのですが・・」
朱里と雛里が安易な決断はしないだろ。おっ、城から出てきたなあれは・・。
桃「ご主人様!」
桃香が俺を見つけ、そして俺に飛び込んだ。
昴「桃香、元気そうで何よりだ」
桃「ご主人様も元気そうで良かった。・・・会いたかったよ」
昴「桃香・・」
桃香が俺の胸に顔をうずめた。
愛「ご主人様!」
鈴「お兄ちゃん!」
昴「愛紗、鈴々、2人も元気そうで何よりだ」
愛「ご主人様のご活躍は私達も聞き及んでおります」
昴「俺にも皆の活躍は聞いてるよ」
鈴「お兄ちゃん、鈴々達頑張ったんだよ?」
昴「うん、良く頑張ったな、鈴々」
鈴々の頭をナデナデする。
鈴「うん! えへへ〜」
朱・雛「ご主人様〜!」
昴「朱里、雛里も、俺のかわりに桃香を良く支えてくれた。ありがとな」
2人をナデナデする。
朱「はわわ〜//」
雛「あわわ〜//」
2人とも嬉しそうだった。
?「お久しぶりです、昴殿」
ん? この声は・・。
昴「星か! 久しぶりだな」
星「昴殿も、覚えていていただいて何よりです」
昴「忘れるわけがない。何せこの外史・・、この国に来て初めて背中を合わせて共に戦ったんだからな。そっちも忘れずにいてくれて何よりだよ」
星「忘れるものですか昴殿。いや主、と呼ぶべきか? 主に命を救われ、共に戦い、勝利をしたことを」
昴「星・・」
星「そしてその後の熱い口づけも・・」
昴「そうだな、熱い口づけを・・・えっ?」
桃・愛・朱・雛「ご主人様?」
昴「いやいや! 口づけなんて・・・星! 誤解を招くのようなこと言うなって!」
星「そんな恥ずかしがらなくとも・・」
星は顔を赤らめさせ、頬に両手を当てて体をくねらせる。
桃「へぇー、星ちゃんとご主人様が知り合いなのは知ってたけど・・」
愛「星と口づけを交わしていたとは・・」
鈴「にゃはは〜、お兄ちゃん大胆なのだ」
朱「はわわ〜//」
雛「あわわ〜//」
昴「星、もうその辺にしてくれ・・」
星「ははは、申し訳ありませぬ。皆心配するな、口付けはしておらん。あくまでも私が頬に口づけをしただけだ」
桃「へぇー・・」
皆がジトーとした目で俺を見る。また余計な爆弾を・・。
桃「(ジ〜)・・チュッ」
桃香が俺の頬に口づけをした。
昴「!?」
愛「桃香様!?」
桃「星ちゃんだけずるい!」
昴「ずるいって・・」
愛・鈴・朱・雛「ジ〜・・」
もう収拾つかないな。
昴「もうやめようこの話しは!」
この空気嫌!
星「ところで主よ、後ろの集団は一体なんなのですか?」
昴「それも含めて城で話さないか?」
桃「そうだね。皆、城に戻ろう?」
愛「御意」
俺達は城へと向かった。
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※※※※
昴「桃香、立派になったな」
初めて会った時はただの旅の武芸者だったのに今は一国の中の候だからな。
桃「えへへ〜、皆のおかげでここまでこれたんだよ」
愛「ゴホン、ところでご主人様、先ほど率いていた部隊は一体・・」
昴「そうだったな、あの隊はもともと彼女が率いていた隊なんだ。雫、自己紹介を」
俺は横にいる女性が前に出る。
周「私は周倉、字は烈陽ですわ」
昴「彼女も俺と一緒に桃香達の仲間に加わる」
星「周倉? 周倉・・、お主、不敗の周倉隊の周倉か?」
愛「知っているのか?」
星「うむ。黄巾党の隊で官軍を相手に不敗誇った部隊があると聞いたことがある。その名が確か周倉という名だ」
愛「賊ですか? 賊風情が我らの仲間になど、不要なのでは?」
愛紗がそう言うと、雫がピクッと反応し・・。
周「義勇軍から官軍に成り下がった貴女に言われる筋合いはありませんわ」
愛「何だと! 貴様、我らを侮辱する気か!」
愛紗が手持ちの青龍刀を雫に構えた。
周「先に侮辱したのは貴女でしょう? 自分の器でしか物事を図れない方は嫌ですわ」
愛「貴様ー!」
青龍刀で攻撃をしようとする愛紗を俺と桃香が2人の間に割って入る。
昴「愛紗やめろ。雫も挑発をするな」
桃「愛紗ちゃん、駄目だよ。今のは愛紗ちゃんが悪いもん」
愛「くっ・・、しかし、賊が臣下など桃香様の名に傷が」
星「まあ待て愛紗よ。噂通りなら周倉隊が狙うのは圧政を働く諸候や官軍と自身を狙ってくる隊だけだ。邑や街は一切襲撃していないという話だ」
愛「そんなもの、他が奪った糧食を使用していたなら同じだ!」
周「馬鹿にしないでいただけます? 糧食や物資も悪徳の官軍から奪った物しか使用してませんわ」
愛「ふん! 口先だけなら何とでも・・」
周「はあ。昴様、話を進めて下さいな。相手するのも億劫ですわ」
愛「ぐっ、貴様!」
昴「だからやめろって! 雫、挑発もするなって言っただろ?」
愛「・・・申し訳ごさいません」
周「申し訳ありませんわ」
2人が頭を下げる。
星「それで主よ。彼女とは何処で?」
昴「あぁ、彼女と知り合った経緯は・・」
時は少し遡る。
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※※※※
洛陽から3日3晩縮地で走り抜け、休憩の為に1度邑に立ち寄った時のこと、邑人から1つの噂を聞いた。この近くの邑が賊に占拠されたという噂だ。1度そこを納める太守が軍を差し向けたが返り討ちにされたらしい。いち早く桃香と合流したかったが、ほっとけなかったし、何より進行方向にある邑で別段遠回りでもなかったので寄ることにした。そしていざ寄ってみると・・。
昴「別におかしな様子はないな」
邑は普通に人が暮らしていた。何処にでも見られる邑の風景だ。
昴「まぁ噂が立つ位だから何かあるだろ」
一通り見て聞いて回って、何もなかったら桃香と合流しよう。邑に入り、何人かの邑人に聞いてみたが特に何も聞けなかった。やっぱりガセか? そう思って最後の1人の男に聞き込みをしたところ・・。
「実は大きな声では言えないんですが・・」
ようやく新しい情報が聞けたようだ。
「ここではあれなので、こちらへ・・」
俺は邑人の後をついていった。
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※※※※
男は邑の人気のない所へどんどん進んで行く。そして左右家が建ち並ぶ長屋のような所に案内された。
昴「なあ、何でこんなところに・・」
連れて来たんだ? と続けようとした所、後方から・・。
?「あなたですわね、この邑で私達のことを嗅ぎ回っているのは」
振り返ると、棍を携えた1人の女性が立っていた。
昴「!?」
家々や家の屋根から次々と武器を携えた人が現れ、瞬く間に囲まれた。
昴「なるほど、君達がこの邑を占拠したと言われてる賊、というわけか」
?「あなた、私達のことを聞いて回ってるみたいですけど、あなた官軍の間者ですの?」
昴「官軍でも間者でもないけどな」
?「どちらにしろコソコソ動き回られても迷惑ですの、出ていっていただけませんか?」
昴「嫌だと言ったら?」
?「少々痛い目を見ていただくことになりますわね」
周りの男達が剣や槍、弓を構えた。
一斉にかかられると面倒だな。さてどうするか・・。
どう動くか考えていると・・。
?「安心なさいな? 周りには手出しはさせません。戦うのはあくまでも・・」
棍を構え・・。
?「私ですわ!」
俺に飛び込んでくる。
昴「ちぃ!」
ガキン!!!
俺は村雨で受け止める。
?「はぁ!」
続けて棍を突き、払い、時に蹴りを繰り出す。
昴「・・・」
ガキン! ガキン! ドン!
俺は無言で迎撃をする。
昴「ふっ!」
俺は1度距離を取った。
?「あなた、先ほどから何故手を出しませんの?」
昴「・・少しな。ところで、ここらで君の名前を聞かせてくれないか?」
?「聞いてどうしますの?」
昴「少し気になってな」
周「・・・・周倉ですわ」
昴「周倉ね・・」
周倉、はて? 何処かで聞いたような・・・もしかして・・。
昴「不敗の周倉隊・・、その周倉とは君の事か?」
周「よくご存知ですわね」
不敗の周倉隊。黄巾党の賊の1部隊で官軍相手に唯一不敗を誇った部隊と言われている。桃香の義勇軍や華琳や雪蓮と言った猛将、知将が揃った軍と戦わなかっただけだといっても不敗はすごいことだ。
周「それで、私達を賊と知ってどうしますの?」
昴「いくつか聞きたいことがある」
周「何でしょう?」
昴「俺は賊が邑を占拠したという情報を聞いた。これは本当か?」
周「正確ではありませんわね。私達は邑には休む為に寄らせていただいただけですわ。略奪等の荒事は一切行っていませんわ」
昴「みたいだな。別段邑人に怯えてる様子はないからな。・・それともう1つ、ここの太守の軍を撃破したというのは本当か?」
周「・・・あぁ、あれですか。何やらここの太守の使いが莫大な額の税収を取り立てに来たので少々手荒く追い返しましたが、そのような話になっていましたのね」
なるほどね。
昴「それで、君はこれからどうするんだ?」
周「どうする、とは?」
昴「今度はもっと大軍が押し寄せてくるだろう。どうする気だ?」
周「攻めてくるなら迎撃するだけですわ。」
昴「この邑の人を巻き込んで、か?」
周「!?」
昴「この国の太守や県令が君らと共にこの邑人をどうするか。分かるだろ?」
税収の徴収の使いを追い返し、何の音沙汰もなければこの国の太守は反乱と見なすかも知れない。そうなったら周倉達と共に討伐の対象になる。
周「私は官軍を許しません。官軍だけは絶対に!」
昴「官軍を憎む者は多い。けど君はその中でも一際根が深い。君がそこまで官軍を恨む理由はなんだ?」
周「・・・それは、・・・それは、官軍が・・・私のお父様とお母様の仇だからですわ!」
昴「・・仇か・・」
周「お父様は官に遣える将でしたわ。とても優秀で真面目な将でしたわ。しかしある日、お父様は収賄の容疑で処刑を言い渡されました。それは他の官吏の濡れ衣でした。お父様のことを気に入らなかった者が都合よく処分するために仕組まれたことでしたわ。結果お父様は処刑され、残されたお母様と私は国を追い出されました。お母様も移り住んだ先の街の暴政によって身体を壊し、亡くなりましたわ。だから私は官軍が憎い。漢王朝が憎い!」
昴「・・・そうか」
周「だから私は戦います。復讐を果たす為に1人でも多くの官軍の者を殺しますわ!」
昴「ふぅー、結論から言わせてもらうと周倉、君がやっていることはただの無駄だ」
周「なんですって!?」
昴「君が憎しみのまま官軍を殺し続けても世界は何も変わらない。枝葉を払っても新たに枝葉が生えるだけだ。そんなこと、君の父も母も望んでいるとは思えない」
周「あなたに何が分かりますの!? 何も知らないあなたに!」
周倉が棍を振り上げ、俺に襲いかかる。
昴「はあ!」
キィン!!!
俺は1度鞘に戻した村雨を再び引き抜き、抜刀術で棍を真っ二つにし、周倉に村雨の切っ先を向ける。
周「っ!? そん・な・・」
切れた棍を見つめ、膝を付く。
昴「なぁ周倉、俺と・・いや俺達と一緒にこの国を変えないか?」
周「どういうことですの?」
昴「言葉通りの意味だ。今漢王朝は根底が腐ってる。もはや致命的にな。そんな国を俺達で変えて皆が笑って暮らせる世を目指して戦わないか?」
周「そんなこと・・出来ますの?」
昴「出来る出来ないじゃない。やるんだ。俺はそのためにここにいる」
周「そのためにって・・!? 思い出しましたわ、黒い外套、5尺の長刀にそのお美しい出で立ち。あなた、天の御遣いですの!?」
昴「そう呼ばれている。・・・周倉!」
周「は、はい!」
昴「俺に力を貸せ! この国を変えるための力をだ!」
周「・・あなたを信じれば、この国は変わりますの?」
昴「変えてやる! この国を絶対に! 皆が笑って暮らせる世を創ることで君の復讐を終わらせる! そして君自身も幸せにする」
周「っ//!?」
復讐に生きるなんて不幸だ。だから俺は復讐を断ち切り、周倉を幸せにしてあげたい。
周「(幸せにするって、この国を変えた後私を、その・・、妻にするということかしら? そんな、天の御遣いはなんて大胆・・でもこの方のなら・・)」
昴「周倉、やはり俺を信じられないか?」
周「わ、分かりましたわ! あなたを信じようではありませんか!」
昴「ありがとう、周倉」
初対面の俺を信じてくれたことが嬉しく、笑顔で礼を言った。
雫「っ// 私は姓は周、名は倉、字は烈陽、真名は雫ですわ。これからは雫と呼んで下さいな」
昴「分かった。雫、君の真名を預かろう」
雫「そ、それと・・」
昴「ん?」
雫「私を、その、幸せにするというのはその、嘘でも冗談ではありませんよね?」
昴「ああ。嘘でも冗談でもないよ。必ず幸せにするよ」
復讐なんて悲しくて不幸だからな。
雫「ふふっ、そうですか。それでは私が公私共に私があなたを支えてあげますわ」
昴「公私? まあいいや、頼りするぞ、雫」
雫「はい! フフッ、フフフッ・・」
その後雫は周倉隊の解散を部下に命じたが全員雫についてきた。雫は慕われているようだ。邑も雫が立ち去った後すぐに太守に書状を出したので大丈夫だろう。そしてそのまま桃香の居城目指して・・。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※
昴「というわけだ」
星「なるほど。ですが主」
チラッと星が桃香を見る。
昴「なんだ?」
桃「今の話を聞く限りだけど・・」
桃香が朱里と雛里を見る。
朱「そうだよね」
雛「うん」
桃・星・朱・雛「(きっと周倉(さん)は、ご主人様(主)に求婚されたと勘違いしたのでは?)」
昴「どうした?」
桃「ううん、何でもないよ?」
昴「ん? そうか」
何か知らんがまあいいか。
雫「劉備さん?」
桃「は、はい!」
雫「私の主はあくまでも昴様。私はあなたの命に従う気はありませんので、それはあらかじめ伝えておきますわ」
雫がそう言い放つと桃香は雫の手を取り。
桃「うん、分かった! ご主人様と一緒に頑張ろうね!」
雫「・・・なるほど、昴様の言った通りの方ですわね・・」
桃「? ・・?」
雫が桃香の手を空いている手で握り。
雫「命には従いません。ですが協力は致します。共に頑張りましょう。劉備さん」
桃「はい、よろしくね。周倉さん。私のことは桃香でいいよ!」
雫「では私も雫と呼んでくださいね」
桃「うん、雫さん!」
鈴「桃香お姉ちゃんが預けたなら鈴々も預けるのだ。鈴々、字は翼徳。真名は鈴々なのだ!」
雫「鈴々さん、よろしく。私も雫でよろしいですわ」
朱・雛「私達も預けます」
朱「私は諸葛亮、字は孔明。真名は朱里でしゅ・・あう」
雛「私は鳳統。字は士元。真名は雛里でしゅ・・・あう」
カミカミだった。
雫「私のことは雫と呼んで下さいね。可愛い軍師さん?」
最後は愛紗だが・・。
愛「私はお前を信用出来ん。悪いが真名を預ける気も預かる気もない」
雫「貴女には聞いてませんわ」
愛「相変わらず癪に障る・・」
桃「まあまあ愛紗ちゃん」
桃香が愛紗をなだめる。
昴「ところで、皆は軍議の途中だったみたいだな」
大きな卓を見ると、卓の上には飲みかけの器が並んでいる。
桃「うん、そうだよ」
昴「内容は袁紹からの檄文か?」
星「いかにも。我らがどう動くか話し合っていたところです」
昴「その事についても話がある。単刀直入に言うと、袁紹の檄文の内容は全部嘘っぱちだ」
桃「!? ご主人様、それは本当なの!?」
昴「ああ、間違いない」
俺は洛陽で見たこと聞いたことを全て話した。
桃「そんな・・」
愛「なんてひどい・・」
皆俺の言葉を聞いて驚愕している。
桃「やめさせよう。(ボソッ)」
愛「えっ?」
桃「やめさせよう! こんなの間違ってるよ! 董卓さんは何も悪くないのに! 今から袁紹さんや他の諸候に書状を書いてこの連合を・・」
昴「それは無駄だ」
桃「っ!? どうして!?」
昴「俺の言った事に嘘はないが、それを証明するものは何もない。ましてや俺達は弱小勢力。誰も信用しないだろう」
桃「無駄かどうかはやってみなくちゃ分からないよ! もしかしたら誰か協力して・・」
昴「なら言い方を変える、無理だ。諸候の中にはこの檄文が嘘だと気付いている者もいるだろう」
少なくとも華琳や雪蓮の所は気付いているだろうな。
昴「実際問題、参加する諸候のほとんどがこの檄文の有無はどうでも言いと思っているだろうな。この戦いで参加し活躍をすれば名をあげることができる。勝ちさえすれば檄文の内容が嘘でも悪名は全て袁紹が被ってくれるしな。これが参加する諸候の本音だ」
桃「そんな・・・、なら、董卓さんに協力をして連合の皆を・・」
昴「それも駄目だ」
桃「どうして・・」
昴「連合の大軍相手に俺達が加わったところで対して変わらない・・・いや、本音を言えば愛紗、鈴々、星という猛将に朱里、雛里といった知将。それに俺と雫が加われば連合を退けることは可能だろう。だけどそれは先のことを考えればやらないほうがいいだろう」
愛「先の事?」
昴「董卓は圧政を強いている。この噂がここまで広まった以上、もう董卓には洛陽以外に味方はいない。連合を退けてもそこから先はずっと戦い続けなきゃならない。俺は董卓という人物に少し触れたが、董卓は戦い続けるには優しすぎる。覚悟を決めた桃香とは違い、戦で人が死んで行くことに耐えられないだろうな」
桃「・・・」
皆が沈黙している。
星「では主殿、我々はこの連合には不参加、ということですかな?」
昴「いや、連合には参加する」
桃「っ!? どうして!?」
昴「表向きは他の諸候と同じ、名をあげるためだ」
星「表向き。では本当の目的は?」
昴「・・・・俺は董卓を保護したいと考えている」
星「!?」
愛「そのような事、もし他の諸候に気付かれれば我らが討伐の対象になりますよ!?」
昴「だろうな。だから上手くやる必要があるだろうな」
星「主よ、董卓を保護する利は我らにはありませんぞ?」
昴「利なんてないさ。でもな星。俺達は利の為だけに戦っているわけでも戦ってきたわけでもないだろ?」
星「・・・」
昴「俺達はこの国でいわれのない暴力、暴政から民を守り、皆が笑って暮らせる世にするために立ち上がった。ならその中に董卓は入れないのか? 董卓はこんな状況でも恨み言1つ言わないでただ自分を責めている。自分のせいでたくさんの命が散ってしまうと。俺はそんな子をみすみす死なせたくはない。皆これはただの我が儘だ。今まで皆に任せっきりで何もしなかった俺が言うのもおこがましいが皆力を貸してほしい。頼む」
俺は頭を下げた。自分でも無茶なことを言っているのは分かる。それでも俺は・・。
桃「私はご主人様の意見に賛成だよ」
昴「!? 桃香・・」
桃「私達は皆を守る為に立ち上がったんだもん。そこに董卓さんが入らないのはおかしいよ。皆はどう?」
愛「私も賛成です。弱き者や苦しんでいる者を守るのが我らの使命。否はありませぬ」
鈴「鈴々も賛成なのだ!」
星「我ながら利で動こうとするとはなんと浅ましきことだ。これでは私服を肥やす官吏と変わりませぬな。私も賛成です」
朱「私も否はありません」
雛「それこそが私達が戦う理由だから」
雫「私は昴様に付き従うのみですわ」
昴「皆、ありがとう。では俺達は連合に参加という形をとる。いいね?」
桃「うん!」
皆も同意の構えをしている。
昴「よし! そうと決まれば早速準備を始めよう」
「「「「「了解!」」」」」
皆の掛け声を合図に各々が準備に取りかかった。
かくして、劉備勢力は連合への参加を表面したのだった。
続く