小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第32話〜連合集結、担うは最前線〜
















連合への参加を決め、数日間は準備に費やし、やがて準備が整うと、俺達は平原を出発した。参加した将は、俺と桃香、それと愛紗、鈴々、星に、朱里と雛里だ。さすがに本城を留守にするわけにはいかないので、雫が留守番をすることになった。理由は武も知も優れていることと、将として、訓練をしている時間がなかったため、兵との連携が出来ないからだ。まあその時愛紗は反対して、またひと悶着あったけどな。それと出陣の際、とある問題点が出てきた。それは平原に赴任して日が浅く、税収を得るための組織を構築出来なかったため、兵糧と軍資金が不足しているということだ。これに関してはどうしようもないので、他の諸候にお世話になろうということで落ち着いた。格好は悪いがこの際格好は気にしても仕方ないので、それでひとまず納得した。

そして出陣してから1週間、俺達は反董卓連合との合流地点に到着した。

桃「ほわー、たくさん兵隊さんが居るねぇ」

昴「確かにな」

あの中央のが袁紹か。その横が袁術だな。おっ、あれは華琳だな。当然来るよな。その奥が雪蓮か、これも当然か。他にも西涼の馬騰に、官軍所属の諸候がちらほら、か。

桃「あ! あそこ、白蓮ちゃんの旗だー!」

・・・・ああ、公孫賛か。確か、桃香知り合いなんだっけ。

昴「とりあえず、連合の総大将のところへ行こうか」

桃「うん!」

中央の大きな天幕を目指して歩いていると・・。

「長の行軍、お疲れ様でございました! 貴殿のお名前と兵数をお聞かせ下さいますでしょうか!」

金ぴかな軍装に身を包んだ兵士が、筆記用具を持ちながら声を掛けてきた。派手だねぇ。

桃「平原の相、劉備です。兵を率いてただいま参陣しました。連合の大将さんへ取り次ぎをお願いできますか?」

「はっ! しかし恐れながら現在、連合軍の総大将は決まっておらぬのです」

愛「何? 総大将がまだ決まってないだと?」

星「ということは、この場所に駐屯し、いったい何をしているのだ?」

もっともな質問だな。

?「総大将を決める軍議をしているのさ」

兵士からの返事を待っていると、背後から質問の答えが返ってきた。

桃「白蓮ちゃん!」

公「よ、桃香。久しぶりだな」

桃「お久しぶりだねー♪ 元気だった?」

何やら桃香達と何やら話し始めた。ふーん、あれが公孫賛か。人は良さそうだし、なかなか優秀そうだが・・・なーんか特徴がないな。普通? 悪く言えば地味だ。そんなことを考えていると、公孫賛がこちらを向き、何やら近づいてきた。

公「お前が噂の天の御遣いか?」

昴「一応そう呼ばれてるな」

公「へぇー・・」

頭のてっぺんからつま先までじっくり眺める。

昴「ん? どうした?」

公「あぁ悪い悪い。何、噂とは当てにならないなと思ってな」

昴「噂なんて得てしてそんなものだろ?」

公「噂以上だよ。お前は」

昴「お褒めに預かり光栄だよ。・・こちらも桃香達が世話になったようだな。感謝するよ」

公「昔馴染みの間柄だからな。それにこちらも世話になった」

昴「ふむ、やはりあなたはいい人なんだな」

公「よせやい//」

昴「はははっ」

やはり公孫賛は人がいいな。

愛「ところで白珪殿。総大将がまだ決まっていないというのは本当のことなのですか?」

公「ああ。残念ながら事実だ」

朱「どういうことなんでしょう? やはり諸候の主導権争いが泥沼化しているのでしょうか?」

公「それがなぁ。・・実はその逆なんだよ」

どういうことだ?

公「一部を除いて、総大将なんて面倒な仕事はごめんだ・・という人間が殆んどでな。軍議が進まん」

鈴「面倒なのはやだーって言うなら、やりたい奴にやらせれば良いのだ。違うのか?」

公「いや、実際そうなんだが、やりたそうにしている人間が自分から言い出さなくてなぁ」

雛「つまり、やりたそうにしている人間に押しつけるつもりなのに、やりたそうにしている人間が立候補せず、また他の諸候も発言に対して責任を負いたくないから薦めない・・ということですか?」

公「ぴったりその通り。・・腹の探り合いで疲れるよ、ホント・・」

全く、一応は都の窮地っていう体なのに随分悠長だな。それで結果自分の首を絞めてんだからわけないな。

昴「それじゃ、決めに行くか」

桃「えっ?」

昴「こんなところで時間掛けてたら連合の勝機がなくなるからな」

星「しかし主よ、我々は弱小勢力、諸候の将らがまとも取り合うとは思えませぬが・・」

昴「そこは、何とかなるさ。桃香、行こう」

桃「は、はい!」

俺は諸候の代表らが集まる天幕へと向かう。桃香もそれに続く。

桃「ご主人様、本当に大丈夫なの?」

昴「連合の総大将を決めるだけならわけないよ。ただ・・・少し面倒事抱えるハメになるかもしれないけどな」

桃「面倒事?」

昴「まあ、発言の責任は取らなきゃならないだろうがな」

桃「えーと・・・大丈夫かなぁ」

昴「何、それに見合うだけの物は戴くけどね」

桃「えっ? どういうこと?」

昴「とにかく俺に任せろ。桃香は他の諸候に舐められないようにドシッと構えてろ」

桃「うん、分かったよ!」

昴「さてと・・」

軍議に突入する前に少し仕込みをしておくか。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


諸候が集まる天幕に近づくと何やら甲高〜い笑い声が聞こえてくる。

昴「行くか」

桃「はい!」

さて、突入だ。やっぱり第一印象は大事にしないとな。

バサッ!

天幕の入り口が傍に立つ兵士に捲られ、俺と桃香は天幕の中へ入場した。

?「―――において完璧な我ら連合軍。しかしてただ1つ足りないもの。さてそれは・・、あら? どなたですの?」

天幕に入ると華琳の比じゃないドリルを持った女性が何やら(無駄そうな)演説をしていた。諸候の視線が全て俺に集まる。
大陸中の諸候が揃い踏みだな。華琳に冥琳、雪蓮は面倒くさがってここには来なかったのか、袁術もいるな。あのドリルはもしかしなくても袁紹だな・・・さてと、きっちり挨拶をしますかね。

桃「平原の相、劉備です」

先に桃香が挨拶をする。俺も続こう。俺は手を胸に当て・・。

昴「お初にお目にかかります。平原より参りました御剣昴です。以後お見知り置きを」

きっちり礼節を守り、挨拶を決めた。場に暫し沈黙に支配されると・・。

華「似合わないわね」

冥「似合わないな」

袁術「似合わぬな」

袁紹「似合いませんわね」

一部諸候に超不評だった。っていうか袁紹、お前は初対面だろ。

昴「行軍中にそこそこ悩んで考えた挨拶なんだがな・・」

華「あなたそんな礼儀を守る柄じゃないでしょう?」

冥「確かにな」

ひでぇな、おい!

顔見知りの諸候とはこんな感じだった。残りの諸候は各地に広まっている噂を聞いていたんだろう、何やらざわついている。

袁紹「ゴホン! 今は田舎者のことなんてどうでもいいではありませんか! 今はこの連合を誰が率いるか、ですわ! それはもちろん、気高く、誇り高く、そして能力を・・『ああ、その件なんだが』、何ですの#」

昴「連合の総大将の件だが、ここに集まる諸候の本音として総大将みたいな面倒事はやりたくない、かといって何か発言をしてその責任も取りたくない、そうだろ?」

俺は回りを見渡す。誰も肯定も否定もしない。

昴「しかしこのままいたずらに時間を長引かせても董卓軍が有利なるだけで、こちらが不利なる。それも分かるだろ?」

皆が無言で頷く。

昴「そこでだ・・」

俺は懐から紙の束を取りだし、卓に並ぶ諸候に配る。

昴「これにそれぞれ、連合の総大将に相応しい人物を書き、投票してもらう。それで多くの諸候に選ばれた者が総大将だ。これでどうだ?」

俺は諸候の将に提案した。諸候の皆はそれぞれこの提案を飲むか思案している。

華「私はそれで構わないわ」

華琳がそう言ったのを皮切りに・・。

冥「私も構わない」

袁術「妾も構わぬぞ」

冥琳と袁術もそれに続き、残りの諸候もそれに応じた。

袁紹「お待ちなさい! そのようないい加減なやり方で決めるなんて私は認めませんわ!」

華「この御剣昴の言う通り、このまま軍議に時間を掛けるのは無意味だわ。それとも貴女は総大将に選ばれる自信がないのかしら?」

袁紹「ぐぐぐっ! 分かりましたわ、それではそのやり方で決めますわ!」

華琳のフォローにより、投票による方法が決まった。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


各々が書き終わり、4つ折りにし、用意しておいた布に紙を置いていく。全て集まると、風呂敷でつつむように布の四隅を縛り、軽くシャッフルして再び布を広げる。

昴「それじゃ、開票するぞ」

俺は中の1枚を取り、開く。書かれていたのは『袁本初』。次々に開票されていき、描いてあるのは全て袁紹だった。そして全て開票する前に袁紹に決まった。

昴「これも袁紹・・だな。何だ、全て開票する前に決まったな。投票により連合の総大将は袁紹殿ってことで皆構わないな?」

諸候は皆この結果に同意した。

昴「それじゃ、袁紹殿、よろしく頼む」

袁紹「おーっほっほっほっ! 当然ですわね」

袁紹はこの結果に大満足みたいだ。
袁紹よ選ばれたって言うよりはあんた完全押し付けられたんだぜ?

華「総大将が決まったなら後の事はそこの総大将に任せるわ。私は陣に戻る。決定事項は後程伝えてくれれば良いわ」

と一言残し、天幕から出ていった。

冥「私も自陣に戻らせてもらう。曹操殿と同様、作戦は後程通達してくれればそれで良い」

冥琳も同様に席を立つ。俺の横を通り過ぎる瞬間・・。

冥「ではな」

ボソッと一言呟き、天幕を出ていった。

袁術「何じゃあの2人は。身勝手にもほどがある」

公「あーあ、どうするんだ。本初」

袁紹「ふんっ、私に任せると言った以上、私の指示に従っていただきますわ」

袁紹やや不満気に呟いた。

昴「では俺達もこれで・・」

袁紹「お待ちなさいな」

だよなぁ〜。

袁紹「さて、御剣昴さんとやら、あなたの発言のお陰で、私が連合軍の総大将という責任の重い仕事をすることになってしまったのですけれど・・」

はぁ、やっぱり来たか。

昴「何だ、嫌だったのか? なら俺が変わりに総大将になってやるよ」

袁紹「なっ!? 誰がそのような事を言いましたか!?」

昴「だってやりたくないんだろ?」

袁紹「そのような事! この連合の総大将に相応しいのは三公袁家の末裔たるこの私しかありえませんわ! 諸候を指揮する誉れ、あなたなんかに・・」

昴「誉れっていうことは選ばれて光栄だってことだよな? ならそのきっかけを作った俺に感謝こそあれ、責任取る必要はないよな?」

袁紹「ぐっ! ・・・でしたら、総大将として命じますわ!」

総大将命令ときたか。

昴「内容は?」

袁紹「簡単なことですわ。連合軍の先頭で勇敢に戦っていただければ良いのです。あ、もちろん、その後ろには私達袁家の軍勢控えていますから、何も危険なことはありませんわ」

要するに俺達を捨て駒にするつもりか。

袁紹「先陣は武人にとって栄誉ある持ち場。なら喜んで受けるのは当然のことでしょう?」

言ってくれるね。

昴「おっしゃる通りだ。分かった、引き受けよう・・・そのかわりいくつか条件を付けさせてもらうぞ」

袁紹「条件?」

昴「兵1万の貸与と兵糧二月分で引き受けよう」

袁紹「なっ!?」

昴「先陣は武人にとっての誉れ。それは袁紹殿の言う通りだ。しかし1番危険で1番被害が出る配置場所だ。それを自身の権限をもって命令するんだ。そのくらいの対価を払うのは当然だろ?」

袁紹「ぐっ! しかし・・」

それはさすがに無理か。

昴「分かった、なら兵糧は一月半で兵は7千・・いや6千でいい。それ以上は妥協しない。無理なら他の諸候に頼んでくれ。聞くところによれば曹操とは旧知の仲らしいな? そのよしみで頼んだらどうだ?」

袁紹「くっ、言ってくれますわね。だからと言ってそれだけの兵と兵糧なんて・・」

揺れているな。あと一息ってところか。

昴「袁紹殿、これはあなたにとっても悪い話ではない。君が俺の提示しただけの兵と兵糧を提供すればここに集まる諸候及び天下の誰もがあなたの器量を認めるだろう。さすがは三公袁家の末裔たる袁紹だと。それに俺達の兵の中に袁紹殿の兵が加入される以上、俺達の活躍は回り回ってあなたの評価にも繋がる。どうだ?悪い話ではないだろ?」

袁紹「・・・そうですわね。良いでしょう。兵6千と兵糧、ただちに手配しましょう」

よし! のってきた!

昴「さすがは名門袁家の人間。あなたの尊大なる器量に感謝するよ」

袁紹「当然ですわ。おーっほっほっほ♪」

大きな高笑いをする袁紹。

くくくっ、俺のにらんだ通り、扱いやすくて助かった。

桃「(すごいご主人様。あの袁紹さんをいとも簡単に扱ってる)」

昴「それじゃあ袁紹殿。先陣は承った。それで、これから董卓軍と戦うにあたってどのような作戦をとるんだ?」

袁紹「作戦? そのようなものありませんわ」

・・・ん? このドリルさん、何をほざいているのでしょう?

桃「作戦、考えてないんですかーっ!?」

袁紹「な、何ですの? 何でそんなに驚くんですの?」

桃「だ、だって、普通、軍を動かす場合作戦に沿って動かすじゃないですか? 作戦が無いんじゃ、どうやって進軍すれば良いのか・・」

袁紹「ああ。それならば決まっていますわ」

桃「ですよねー・・」

まぁ、あまり期待は出来ないが。

昴「それで、作戦は?」

袁紹「雄々しく、勇ましく、華麗に進軍、ですわ♪」

桃「・・・」

期待を裏切らないな。だけどこの場合・・。

桃「袁紹さん、いくらなんでもそんないい加減な・・」

俺は袁紹に物言う桃香を手で制し・・。

昴「単純にして豪快な作戦、恐れ入る。話しは決まったなら俺達は陣に戻らせてもらうよ」

袁紹「分かりましたわ。精々励みなさいな」

俺は天幕を後にする。

桃「ちょっ、ご主人様!?」

桃香は俺と袁紹を交互に見て俺に続いた。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


桃「ご主人様!」

昴「どうした、桃香?」

桃「どうして袁紹さんに何も言わなかったんですか!? あんなの作戦でも何でもないよ!」

昴「だろうな。あれを作戦なんて言ったら、それは作戦に対する冒涜だな」

桃「だったらどうして・・」

昴「雄々しく、勇ましく、華麗に進軍。アホくさい作戦だが、裏を返せばそれさえ守ればこちらはどう動いて構わない、ってことだろ?」

桃「!? それはそうだけど・・」

昴「第一、あの袁紹じゃどのみちまともな作戦は期待できない。あれに頭捻らせて作戦練らせて変に行動を制限されるより、ああ言ってくれたほうが寧ろ助かる」

桃「な、なるほど。・・・ご主人様ってすごい。いっぱいいろんな事考えてるんだねぇ」

昴「そのくらい考えないと生き残れないさ」

桃香と話がら歩いていると・・。

?「久しぶりね。昴」

昴「・・久しぶりだな。華琳」

華琳が俺達の陣近くに立っていた。

昴「自陣に戻ったんじゃなかったのか?」

華「あなたに用があってね。・・琉流」

すると、傍に控えていた女の子が前に出た。あれ、この子は確か・・。

昴「君は確か・・典韋だっけ?」

典「はい! 覚えていただいて光栄です!」

華「琉流があなたに礼を言いたかったらしいから連れてきたのよ」

昴「そうなのか」

俺なんかしたっけか?

華「私は席を外すわ。・・・劉備だっけ?」

桃「は、はい!」

華「あなたと個人的に話がしたいわ。付き合ってくれないかしら?」

桃「分かりました」

桃香と華琳がその場を離れた。何を話すんだろ?

典「あ、あの」

昴「ああ悪い悪い。礼、だっけ? 何か俺したか?」

典「はい。御剣昴様のおかげで季衣と会うことができましたのでそのお礼をしたかったんです」

昴「そんな改まらなくてもいいのに」

典「いえ、そういうわけにはいきません。是非お礼を言わせてください」

律儀な子だな。

昴「分かった。それなら礼を受けとるよ」

典「はい。あの、ありがとうございました」

と、典韋が頭を下げた。

昴「どういたしまして」

典「それと、これを召し上がってくれませんか?」

典韋が包みを取り出した。開けて中を見てみると・・。

昴「これは・・クッキーか?」

典「はい。季衣や茉里ちゃんに話を聞いて作ってみたんですけど・・」

すごいな。話を聞いただけでここまで再現したのか。

昴「分かった。では1つ・・」

1つ取りだし、食べてみる。

昴「これは、美味しいな」

典「本当ですか!?」

昴「焼き具合も固さも甘さもちょうどいいし、すごく美味しいよ」

典「ありがとうございます。初めて作るお菓子だったから不安で・・」

昴「味は保証するよ。以前に食べた料理も美味しかったし、やっぱり典韋はすごいな」

典「そ、そんな//」

典韋は恥ずかしそうに顔を赤くした。

典「あと、もう1つお願いがあるんですけど・・」

昴「何かな?」

典「その・・・兄様と呼んでもいいですか?」

昴「兄様? ・・・それはまた何で?」

典「それはその・・季衣も兄と呼んでるみたいですし・・・わ、私も呼びたいなって、その・・・駄目ですか?」

典韋が不安そうに上目遣いでおずおずと尋ねる。兄様か・・。

昴「ああ。構わないよ。季衣は妹とみたいなものだったし、その親友なら君も妹みたいなものだ」

琉「あ、ありがとうございます! それでは私の事は琉流とお呼びください」

昴「真名までいいのか?」

琉「はい! 是非!」

昴「では琉流。よろしくな」

琉「はい! 兄様!」

元気でいい子だな。それにしても・・。

昴「桃香と華琳は何を話してるんだろ」

少し気になるな。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


華琳side

桃「それで話と言うのは・・」

華「ふふっ、あなたにいくつか訪ねてみたいことがあるのよ。興味もあるしね」

桃「私に・・ですか?」

華「ええ、昴が選んだあなたに・・」

私の誘いを断ってまで選んだあなたに。

華「あなたは元は義勇軍らしいけど、何のために義勇軍を旗揚げしたのかしら?」

桃「それは、力の無い民が傷ついたり、苦しんでだりしているのが見ていられなかったからです」

華「なるほど。それで、あなたが目指すものは何かしら?」

桃「私は、この世の中を、皆が笑って暮らせる世にしたいと思っています」

・・ふふっ、昴の言っていた通りね。少し意地悪してみようかしら。

華「あら不思議ね。笑って暮らせる世を目指しながら、あなたは武器を持って戦うのね」

桃「はい。戦わなければ何も成すことはできませんから」

華「あなたが戦い、死んでいった者、殺していった者の中にも平和を望み、笑って暮らせる世を生きたかった者もいたでしょう。あなたはその者の未来を奪った。あなたは自分で自分の理想を否定しているのではなくて?」

桃「・・曹操さん言うことはもっともだと思います。でも今のは世は皆仲良くしようって声を上げても平和になりません。個人でいくら悪者をと戦っても平和になりません。だから私は今の世の中で義勇軍を結成して戦う決意をしました。私の言ってることは矛盾してることはわかっています。でも私の理想を叶えるには戦い続けなければなりません。いっぱい人も死んでいくと思います。だけど私は戦います。例え私が最後の1人になっても。それが私の理想の為に死んでいった人に対する責任だと思うから。私は、私の理想の為に死んでいき、そして殺した人の願いと命を背負って最後まで戦って、私の理想を叶えます」

華「・・・」

これが劉備か。噂を聞く限りただの理想家かと思ったけれど。・・・なるほど、覚悟もあるということね。例え昴がいなくともこの劉備が入ればきっとその勢力は強大になるわね。

華「なるほど、あなたのこと、よく理解できたわ。今は味方同士、お互い頑張りましょう」

桃「はい!」

私は劉備と握手をした。

今は、ね。いずれは・・。

桃「私、曹操さんのこと尊敬してるんです」

華「私を?」

桃「私は頭も良くないし、武もからっきしだし。何でも出来る曹操さんが羨ましくて」

・・・そんなこと。

華「そう思うなら書をたくさん読んで勉強するなり誰かに武を習い鍛練するなりして自らを高めなさい。自分に出来ないことを肯定しているだけでは永遠に進歩しないわよ」

桃「は、はい! 頑張ります!」

華「ふん」

私ったらいずれ我が覇道の障害になるかも・・・いえ、障害になる相手に何故助言なんか・・。

華「そろそろ向こうも話が終わっているでしょうし、戻りましょうか?」

桃「そうですね」

私は昴の元へ戻った。















・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


華「琉流、話は済んだわね」

琉「はい、華琳様!」

嬉しそうね琉流。

昴「そっちは何を話してたんだ?」

華「ふふっ、他愛のない世間話よ」

昴「そうか・・」

華「ところで、麗羽、袁紹のことだから無茶を言ってきたでしょう?」

昴「よく分かるな? おっしゃる通り先陣をきることになった」

華「やはりね。今のあなた達で厳しいでしょう。良ければ私達が力を貸しましょうか?」

桃「本当ですか!?」

劉備は喜んでいる。

昴「嬉しい提案だ。・・・それで、その礼にこちらは何を支払うことになるんだ?」

昴が笑みを浮かべて尋ねる。

ふふっ、良く分かっているわね。

華「大したことではないわ。御剣昴、あなたが私のものになるだけでいいわ」

桃「なっ!? そんなの駄目です!」

劉備が慌てて反対する。

華「どうかしら?」

再度昴に問いかける。

昴「ふふっ、せっかくの提案だが、遠慮させてもらうよ」

華「あら、残念ね。でも実際どうするつもりなのかしら?総大将があの袁紹じゃまとも作戦は期待出来ないわよ?」

昴「袁紹を総大将にしたときから予想は出来たけどな」

華「袁紹が総大将で災難ね」

昴「いや、むしろ好都合だけどな」

華「どういうことかしら?」

昴「俺達は連合参加にあたって糧食不足だったからどうしても何処かから融通してもらう必要があったんだ。そういう意味では袁紹がうってつけだ。華琳は見返りを要求されるだろうし、孫策は袁術の客将だから援助は期待できない。袁術は本人はともかく、あの張勲は抜け目なさそうだ。華琳と同じ何か見返りを要求してくるだろうしな。その点袁紹は扱いやすそうだから1番適任だ」

華「なるほど。けれど万が一袁紹が総大将にならなかったらどうするつもりだったの?」

昴「そうはならないさ」

ポンと何かを私に手渡した。

昴「俺達はこの辺で失礼するよ。先陣を任せられた以上、いろいろやることは山積みだからな」

華「分かったわ。なら最後に1つだけ尋ねるわ」

昴「何だ?」

華「あなたは何故この連合に参加したの?」

あなた程の人間がこの連合の意味と真相が理解できないわけがない。

昴「尋ねるまでもないだろ? これから先の群雄割拠の時代のためにこの連合で名を上げる。それ以外に何かあるか?」

華「・・・」

昴「・・・」

華「・・ふっ、そういうことにしておくわ。呼び止めて悪かったわね」

昴「気にするな。では、またな。琉流もまたな」

琉「はい。兄様!」

昴が劉備と共に自陣に戻っていった。

華「ふふっ、昴は何を企んでいるのかしらね」

まあ、昴とあの劉備の性格を考えたら大体予想はつくけれど。そういえば昴は私に何を渡して・・!? これは!?

華「くくくっ、アハハハハハハ!」

琉「か、華琳様?」

華「さすが昴ね! やはりあなたは面白いわ! 全てはあなたの思惑通りとでも言うのかしら?」

昴が手渡した物は先程総大将を決める際に使用した紙の残り。その紙には全て『袁紹』と書かれていた。

華「やはりあなたは最高だわ。いつか必ずあなたを手に入れるわ」

覚悟しておきなさい、昴。

私は改めて御剣昴を手に入れる決意をした。

かくして御剣昴の思惑通り、兵と糧食を手に入れた昴、桃香の軍だが、その代償として危険な先陣に任命されたのだった。











続く

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