小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第33話〜水関の戦い、勝利への布石〜















昴side

軍議? を終え。自陣に戻った俺と桃香。皆に事情を説明していると・・。

昴「お?」

兵糧と兵士の提供が行われた。

愛「我らの気が変わる前に、既成事実を作っておこうと、そういうことでしょうね、これは」

桃「多分そうだろうねぇ〜。与しやすそうだったけど、案外抜け目無いなぁ、袁紹さん」

昴「ま、あれでも大領主だからな」

星「兵6千と兵糧一月と半。よくこれだけ出させましたな」

昴「まあ、そういう交渉事は得意だからな」

いただく物は限界ギリギリまでつり上げていただいたほうがいいからな。

朱「足りないものは揃いましたけど・・・それでもこの人数で連合の先陣を切るとなると、かなり厳しいですね」

星「伝え聞くところによると董卓の軍勢は約20万。我ら連合で約15万。我らが20万の敵軍を全て受け止めるという訳では無いが、はてさて・・」

雛「兵法の基本は敵よりも多くの兵を集めること。そして敵よりも多くの兵で対峙すること。この2点を、連合は守っていませんから」

鈴「雛里は連合軍が負けると思ってるのかー?」

雛「負けるとは思いませんけど・・でも、朱里ちゃんの言う通り、苦戦するだろうなぁ、って」

桃「絶対苦戦するだろうね。だからこそ、私達の軍が生き残るために全力を尽くさないと」

昴「桃香の言う通りだな。・・とりあえず朱里、予想される戦場の状況の説明を頼む」

朱「はい。まず洛陽はご存知の通り、河南省西部に位置し、東に虎牢関、西に函谷関を備えた漢王朝の王都です。ここは黄河の中流に位置し、渡河点ともなっています。また支流である洛河との分岐点にも当たるため、非常に水上交通の良いところです」

昴「ようするに衢地だな」

朱「そうです。今回、私達が進軍するに際し、道は2つあります。東から虎牢関を抜けて洛陽に向かうか、西から函谷関を抜けるか、です」

桃「私達の居る場所からだと、東から進軍した方が手っ取り早いかもしれないね」

雛「その場合は虎牢関を抜けることになります」

朱「難攻不落絶対無敵七転八倒虎牢関を抜くとなると、かなり厳しい戦いになりそうで」

昴「仰々しい名前が付いたものだな・・。ただ、総大将決めるのに時間掛けすぎたからもはや虎牢関を抜けるしかないだろ」

朱「そのとおりです。これ以上時間を浪費するのは得策ではありませんから・・」

星「時間を許せば、今以上に防備を固めるだろうな。全く、厄介なことだ」

昴「虎牢関って確か、両脇に崖がある上に一本道で防衛にえらく向いた場所だったよな? 関もいくつかあったし」

朱「お詳しいですね」

昴「洛陽に行った時にちょっとな・・」

本当は迷いまくっただけだけどな。

昴「でも実質障害になるのは虎牢関と水関ぐらいなものじゃないか?」

桃「そうなの? 関っていっぱいあるんじゃ・・」

雛「大小合わせて二桁ありますが、殆んどが連合軍の進軍を阻むほどでは無いと思います。注意すべきは先程ご主人様が言った虎牢関と水関だけです」

桃「うーん、それでも2つも難敵があるんだね」

桃香は説明を聞いているうちにどんどん鬱になっていってる。

愛「敵軍の配備状況などは分かるのか?」

朱「放った斥候の報告によると、水関に籠る董卓軍の兵数は約5万です。将の中で強敵なのは華雄将軍ですね」

5万か・・。

昴「華雄将軍ってのはどんな人物なんだ?」

朱「董卓軍の中でも猛将で知られ、兵士達の人気も高い方です。かなり強敵だと言って良いと思います」

なるほど、ね。

星「して、我々はどのように動きましょうか?」

雛「攻城戦は基本的に作戦や策らしきものは必要ありません」

桃「そうなの?」

雛「はい。攻城戦はどう頑張ってもみても、圧倒的に籠城側が有利ですから。なので野戦とは違い、策というものは調略方面でしか活躍できないんです」

朱「それに今回は董卓さん1人を相手に、複数の諸候が連合を組んでの戦いですから、挟撃される心配も少ないでしょう」

愛「つまり・・作戦無しで戦えということか・・」

雛「戦況を見て、その都度即応する・・ということしか言えませんです・・ごめんなさい」

星「雛里が謝ることではないさ。・・主よ、いかが致しますか?」

昴「敵は水関という固い甲羅に首を引っ込め、籠る亀だ。現状、今の俺達で固い甲羅を叩き割るのは不可能だ」

桃「そんな〜」

鈴「じゃあどうするのだー?」

昴「甲羅を叩き割るのが不可能なら、相手に首を出してもらうしかないだろ」

愛「? ・・どういうことでしょうか?」

昴「敵将華雄を挑発して関から引っ張り出す」

愛「なるほど、華雄程の猛将ならば自らの武を穢されることを嫌うはず。彼奴を罵って関より引き出す。有効かもしれませんね」

星「しかし、一軍の将となっている者が、見え透いた挑発に乗るだろうか?」

愛「乗るさ。・・なぁ鈴々」

鈴「にゃ? なんで2人して鈴々を見るのだ?」

星「ふっ、なるほど。案外、図に当たるかもしれないな」

うーん、鈴々には悪いけど俺も言いたいこと少し分かるな・・。

朱「ご主人様の策は有効かもしれませんが・・」

桃「? どうしたの?」

雛「作戦が成功して華雄将軍が関を出たとしても、それを受け止めるのは私達の役目ですから・・」

朱「全軍火の玉になって攻め立ててくる華雄将軍を、どういなすか、それが問題かと・・」

昴「それは我らが総大将にどうにかしてもらおう」

愛「どういうことです?」

昴「俺達の後ろには袁紹の大部隊が控えてるんだ。俺達が押し込まれたフリをしてそのまま袁紹になすりつけてしまえばいい」

星「ふふっ、大いにありだな」

桃「ありだねぇ〜」

鈴「ありなのだ!」

朱「私も同じことを考えてました」

雛「私もです」

皆同意見だな。

昴「なら基本方針はこれで行こう」

雛「了解です。それでは華雄さんが突出した際、私達はその攻撃を一度だけ正面で受け止め、押し返します。その後、再度押し出してくる華雄さんの攻撃を受け止めるフリをして・・」

昴「後退、だな。」

雛「はい。でもただの後退では華雄さんも乗ってこないと思います。華雄さんを釣るためにも、本気で戦線を崩さないと」

愛「ふーむ。戦線が崩れれば、そのまま一気に瓦解する可能性もある。危険な賭になるな」

雛「ううん。そうでもありません。だって連合軍ですから」

星「つまり他の諸候が助け船を出すと?」

雛「はい。皆さん、こんなところに負けてられない人達ばかりですし」

昴「自分達の目的達成するために、助け船を出さざるを得ないだろうな」

桃「えーっと、つまり、袁紹さんだけを巻き込むんじゃなくて、みんなを巻き込んじゃえってこと?」

雛「有り体に言えばそんな感じですね」

昴「決まりだな。皆何か異存は無いか?」

愛「ええ。今の状況では、この作戦しか、我らに勝利の道は無いように思えます」

桃「そうだね。今はとにかく生き残ることを考えないと・・」

星「弱小の我らが生き残るためには他者を利用するのは必然です」

鈴「じゃあ決定なのだ!」

昴「よし。それじゃあ早速準備をしよう。愛紗と星は袁紹が提供してくれた兵士の確認と采配を頼む」

愛「御意」

星「うむ」

昴「朱里と雛里は袁紹からもらった兵糧を確認しつつ新たに斥候を放って策を確実にするために今の作戦を煮詰めてくれ」

雛「御意、です」

朱「はい!」

鈴「お兄ちゃん、鈴々はどうするのだー?」

昴「鈴々は桃香の傍にいてくれ。桃香は待機ね」

桃「うう。待機してれば良いんだね・・」

昴「悪いな。俺は愛紗と星を手伝って、その後は朱里と雛里と一緒に作戦の穴埋めをするよ」

鈴「分かったのだ!」

昴「任せた。・・・それじゃあ皆、それぞれ準備に取りかかってくれ。・・皆、この戦、勝つぞ!」

「「「「了解(です)(なのだ)!」」」」

俺達はこれから始まる激戦に勝利すべく、各自が持ち場へと向かった。

















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※※※※


準備が終わり、俺達を先頭に連合軍は行軍を始めた。俺達の先陣は愛紗と星に任せることにした。まあ鈴々は『鈴々も先陣が良い!』って駄々を捏ねたけど、そこはうまく言いくるめた。・・ごめんな、鈴々。それぞれが心を決め、持ち場につくなか、連合軍の本陣より諸候の陣に伝令が走る。

昴「始まるか」

この緊張感はこの外史にきて1番だな。

桃「この瞬間って、いつまでたっても慣れないな」

昴「そんなものだ。・・手、握ってようか?」

桃「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。大丈夫・・、だから・・」

桃香は胸に拳を当て、目を瞑る。

強くなったな、桃香。

鈴「鈴々はこういうドキドキは好きなのだ」

昴「頼もしいな。頼りにしてるぜ」

鈴々の頭をナデナデする。

鈴「にゃはは〜//」

鈴々は嬉しそうだ。

ボーン! ボーン!

連合軍の本陣から激しい銅鑼の音が響く。

桃「ご主人様。合図だよ」

昴「ああ。・・・全軍前進! 作戦通り事を進める。皆、気合い入れろ!」

「応っ!」

桃「皆! 無理せず頑張ろうね! ・・じゃあ出発進行!」

桃香の号令により、兵がゆっくり前進を始めた。

















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董卓軍side

「華雄将軍。連合の先陣が進軍を開始しました」

華雄「ああ。しかし小勢のようだな。・・将は誰だ?」

「斥候の報告では、平原の相、劉備と名乗るものだそうです」

華雄「劉備・・聞いたこと無い名だ」

「最近売り出し中の人間のようですが、百戦錬磨たる我らの敵では無いかと」

華雄「そうか。ならば鎧袖一触、敵の先陣を殲滅し、連合の総大将に目にもの見せてやろうではないか」

「了解です!」

華雄「全軍、出撃準備! 先陣の劉備なるものを粉砕し、敵軍中央にそびえる袁家の牙門旗を堕とすぞ!」

「はっ!」

張遼「ちょ・・待ちぃや華雄! 賈駆っちの命令はシ水関の死守やで!? 出撃してどないすんねん!」

華雄「ふん。亀のように甲羅に縮こまるのは性に合わん」

張遼「だからって、総大将の命令を無視して突っ走ってええんか? そりゃ料簡が違いすぎるやろ」

華雄「違わん。現場の判断だ。それに敵を殲滅すれば軍規など何ほどのものでもない。・・何よりな、張遼」

張遼「なんや?」

華雄「戦に逸る兵の気持ちを抑えることなどできん。その戦意こそ、我が軍の力となっているのだからな」

張遼「例えそうやとしても出撃させるわけにはいかん。これは月のためでもあるからな」

華雄「・・・くっ!」

張遼「とにかく今はシ水関の死守や、勝手に出撃なんて・・『申し上げます!』なんや!」

「先陣の軍から将らしき者が前に出てきます」

関から下を覗くと、先陣の劉備軍から1人が水関が歩み寄っている。

張遼「・・ほんまや、何をするきや?」


















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愛紗side

水関近くまで進軍した。後は華雄をここから引きずり出すのみ。

愛「スー・・、ハー・・」

私は大きく深呼吸し・・。

愛「敵将華雄よ! 猛将と呼ばれながらそのような関に籠るなど、猛将が聞いて呆れる。戦うのが怖ければ寝台にでも縮こまっていればよかろう」

次々と華雄への罵倒の言葉をぶつける。

愛「ここまで言われてなお関にて縮こまるか! はっ! 猛将華雄とはただの臆病者だったと天下の笑い者にでもなるがよい!」

遠目からでよく様子が見えないが、確実に華雄は憤っている。後一息だ。とどめはご主人様により授かった最大の挑発を贈ろう。私は持っていた弓を構え、そして・・。

ヒュッ!

華雄目掛けて放った。
















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董卓軍side

華雄「ぐぐぐぐっ! 先ほどから黙っていればいい気になりおって! もう許さん!」

張遼「華雄落ち着き! あんなを見え透いた挑発やろ!? これでのこのこ出ていったらただの阿呆やで!?」

張遼は華雄を羽交い締めにして止める。

華雄「黙れ! 奴等を八つ裂きに・・!」

「あ、あれを!」

華雄「?」

張遼「なんや?」

先ほどから挑発を繰り返していた将がおもむろに弓矢を構え、そしてこちらへ放った。

ヒュッ!

矢は華雄の僅か横を抜けていった。

張遼「なんや、外したんか?」

改めて敵将を見ると。

愛「外れたか。おかしいな、私の弓は百発百中・・・ああ、さしもの矢もお前のような臆病者の血など吸いたくないということか。矢にすら笑い者にされた華雄よ、せいぜいそこで怯えているが良い」

そういい放ち、自陣に戻った。

華雄「もう我慢ならん! 全軍出撃するぞ! 奴等を皆殺しにする!」

張遼「華雄! ええ加減に・・」

華雄「放せ!」

華雄が張遼を振り払う。

華雄「貴様は後生大事に命令を守り、功名の場を逃せば良い」

張遼「・・・分かった。ならウチは虎牢関に退く。それでもええな?」

華雄「勝手にしろ」

華雄は関の門へと向かった。

張遼「・・猪、ここに極まれるやな。戦は戦意だけでやるもんやない。現実を見んあんたには、多分明日はこーへんやろ。さらば華雄。先にあの世で待っとき。ウチもいつかそっちにいくから」

張遼及び張遼隊は虎狼関へと退いていった。


















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愛紗side

矢を放ち、ご主人様に授かった挑発を浴びせ自陣に戻った。

星「ご苦労だ愛紗よ。早速水関で動きがあったようだぞ?」

後ろを振り返るとシ水関の開門され、華の牙門旗が上がった。

愛「ここまでは作戦通りだ。・・・本番はこれからだ。子龍殿。私の背中、お主に預ける」

星「我が背中も同様だ、雲長殿・・では参ろうか」

愛「ああ」

私は青竜刀を構え・・。

愛「聞け! 勇敢なる兵士達よ!」

星「いよいよ戦いの鐘が鳴る! 義は我らにあり!」

愛「恐れるな! 勇気を示せ! 皆の心にある思い、皆が持つ力、その全てを振り絞り、勝利の栄光を勝ち取るために!」

星「我らに勝利を!」

「「「勝利を!」」」

愛「我らに栄光を!」

「「「栄光を!」」」

愛「全軍、抜刀せよ!」

星「位置につけ!」

愛・星「皆の命、私が預かる!」

敵将華雄が陣を構成しこちらへ迫ってくる。

星「来た! 愛紗!」

愛「ああっ! 全軍魚鱗の陣に移行! 敵の突撃を真っ正面からぶち当たり、その勢いをもって敵を後退させる! その後はすぐに後退する! 時機を見失うな! 合図を聞き漏らすな! 一瞬の油断が命取りになることを忘れるな!」

星「我らの旗に付き従えば勝利は間違いなし! 勇を奮え! 名を惜しめ! 勝利の栄光を掴むために!」

愛「全軍、突撃ぃぃぃぃぃーーーーーっ!」

「うぉぉぉぉーーーっ!」

我らの戦が始まった。











続く

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