小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第34話〜水関の戦い終結、そして・・〜















昴side

昴「始まったな」

兵士達の咆哮、雄叫び、剣と剣がぶつかり合う音が戦場に響く。

桃「愛紗ちゃん・・、星ちゃん。皆・・」

桃香が胸で拳を握り、先陣で戦う2人と皆の無事を祈る。

昴「心配するな。皆必ず戻るさ」

桃「・・・うん。そうだね」

とは言うものの不安は拭えないみたいだ。

昴「いざとなったら俺が出る。だから心配は無用だ」

桃香にウインクしながら言葉をかけた。

桃「ふふっ、ありがとう。私は皆を信じる。皆の無事を・・」

桃香の不安が若干和らいだ。

頼むぞ愛紗、星。

















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


愛紗side

愛「うぉぉぉぉ!」

ザクッ! グシュ!

星「はい! はい! はぃぃー!」

ザシュ! ザクッ!

敵と交戦状態となり、幾ばくか経った。私と星は次々と敵を葬っていく。

愛「皆、離れるな! 三人一組になって敵の兵に当たるんだ!」

星「友を守れ! 守れば友がお前を守ってくれる! そう信じて突き進め!」

兵達に激を飛ばし自身も武器を振るい、尚も敵を葬っていく。

星「ん? 敵が後退する? ・・いや、違うな。距離をとって突貫するのか」

愛「ならば頃合いは良し!敵の突貫の直前で退くぞ、星!」

星「承知した。・・皆の者、秩序を守りつつ、作戦通りに後退する。我が旗に続け!」

「応っ!」

















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴side

桃「ご主人様! 前線の部隊が動き出したよ!」

・・・よし、潰走してるわけじゃなさそうだ。

昴「作戦通りだな」

桃「大丈夫だよね?」

昴「大丈夫だ。兵達に焦りの顔はない」

桃「良かった」

ホッとする桃香。すると・・。

朱「ご主人様、桃香様ー!」

雛「作戦は成功ですー!」

朱里と雛里がやってきた。

昴「ああ。ここから確認できたよ」

朱「華雄将軍は鋒矢の陣を敷き、私達を突破して袁紹さんの居る本陣に迫ろうとしているようです!」

雛「このまま突っ込んできますよぉ。早く兵を纏めて道を空けないとぉ!」

昴「落ち着け落ち着け。まずは愛紗と星と合流しないと、だろ?」

雛「あ、あわわ、そうでした」

昴「合流がすんだら手筈通りに動く。鈴々、2人の撤退の援護、頼むぞ?」

鈴「任せろなのだ!」

昴「桃香は朱里と雛里と一緒に、愛紗達と合流したあとの兵の指揮、頼むな」

桃「まっかせーなさーい♪」

朱「御意です。でも、あの、ご主人様は?」

昴「俺も鈴々と一緒に愛紗達の撤退の援護をする」

朱「分かりました」

雛「気をつけてくださいね?」

昴「ああ」

桃「任せるね。じゃあご主人様。またあとで」

昴「ああ、あとでな」

兵と共に後方に下がった桃香達を見送った。

鈴「にゃはは〜。お兄ちゃんと一緒なのだ」

昴「頑張ろうな」

鈴「応! なのだ!」

さてと、この戦も佳境に入る。ここが正念場、だな。















・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・


暫し待機していると、

鈴「来た! お兄ちゃん、砂塵が見える! 愛紗達が帰ってきたのだ!」

昴「確認できてるよ。合流の準備を始めよう。・・桃香に伝令を」

「はっ!」

鈴「お兄ちゃん! 愛紗達の後ろに軍勢が張り付いてるのだ!」

昴「・・流石は猛将と言ったところか」

鈴「どうするの? 鈴々が行こうか?」

昴「そうだな。頼んだ。」

鈴「合点なのだ! 皆! 鈴々についてくるのだ! これから愛紗達を助けにいくよー!」

「応っ!」

鈴「弓兵の皆はひたすら矢を放つのだ! 歩兵の皆は鈴々と一緒に突撃なのだ!」

「応っ!」

鈴「退却してくる愛紗達をやりすごしたあと、全力で華雄の軍とぶつかるのだ! そのあと、すぐに後ろに向かって前進なのだ! 分かったかー?」

「応っ!」

鈴「なら行くよー! 突撃、粉砕、勝利なのだ!」

「応ー!」

鈴々の掛け声に兵達が答える。

・・・・・・・・・・・・・見えた! 愛紗達が肉眼で良く見える位置にまで後退してきている。

昴「鈴々!」

鈴「分かってるのだ! 弓兵のみんなー、射撃準備なのだ!」

「はっ!」

鈴「愛紗達の後方にたくさん矢を放つのだ! それで愛紗達が来たら合流して後退するのだ。分かったかー?」

「応っ!」

鈴「なら鈴々の命令で矢を放つのだ。いくよー! いーち、にー、さーん、ダーッ!」

ヒュッヒュッヒュッヒュン!

矢が一斉に放たれる。

早! ・・いやドンピシャか? 鈴々の奴、何てタイミングで矢を放ちやがる! 愛紗なんて面食らってるぞ。・・・天性の戦上手って奴か。

愛紗達が援護射撃の隙をつき、一気に俺達のところへ合流した。

鈴「愛紗ー!」

愛「鈴々! 良い援護だったぞ。助かった」

鈴「当然なのだ!」

愛「ふっ、そうだな」

昴「2人供良くやった。ここまでは作戦通りだ」

星「しかし主。作戦はここからが正念場です」

昴「もちろんだ。桃香が朱里と雛里と一緒に後ろに控えている。すぐに合流するぞ」

星「了解です。主」

昴「最後の山場だ。・・俺と鈴々で殿をつとめる。星と愛紗は先行して桃香と合流してくれ」

愛「!? ご主人様自らが殿ですか!? なりません! そのような危険な役は私や鈴々で・・」

昴「戦場にいる以上、どこにいたって危険なことには変わらない。俺は皆と合流して日が浅いから指揮を取るのは星や愛紗達のほうがいいだろ?」

星「しかし、だからといって主自らが危険に晒さなくとも・・」

昴「言いたいことは分かる。けど俺は後ろにいるのは性に合わない。何より・・・皆の主である俺が命を賭けなくて、どうして皆に戦えと言えるよ? 心配はいらないから俺の指示通り頼む」

星「・・・了解した。主よ。御武運を・・・愛紗、行くぞ」

愛「・・・分かった。ご主人様。桃香様達とお待ちしています」

昴「了解」

愛紗と星達が後方へ下がって行く。

昴「さてと・・」

前方に振り返り・・。

昴「鈴々、派手に行くぜ! 背中は任せた!」

鈴「合点、なのだ!」















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


作戦はこちらの思惑通りに進み、袁紹軍を巻き込むことに成功した。戦場は大混乱に陥った。

昴「順調、だな」

桃「順調だけど、このまま連合軍壊滅〜なんてことにならないよね?」

朱「大丈夫です。ほら」

愛「ん? あれは・・」

雛「曹操さんの軍ですね。華雄軍に横槍を入れてくれるみたいです」

華琳、実ではなく、名を選んだか。

星「となると・・更に戦場は混乱するな」

鈴「ならそのときを狙って一騎打ちをするのだ!」

昴「それが良さそうだな。このまま戦が終わったら俺達はただ敗走して連合軍を混乱させた印象しか残らない。華雄を討ち取れば面目は立つし、今までの事も策で言い訳できるだろ」

星「なるほど。良い手ですな。」

愛「華雄ほどの良将ならば、正々堂々と勝負をしたかったが、致しかたありませんね」

昴「決まりだな。・・それじゃ、鈴々は部隊を率いて華雄隊の右翼を頼む。左翼は星だ」

鈴「合点なのだ!」

星「うむ、承知した」

昴「2人が左右から当たり、僅かな間だろうが華雄隊の本陣までの道ができる。そこを俺がこじ開け、露払いをする。そこを・・」

愛「私が突撃し、華雄を討ち取るわけですね」

昴「そういうことだ。愛紗は華雄に事実上宣戦布告をしてるわけだからここらでケリをつけちまおう」

愛「了解致しました。必ずや華雄を討ち取ってご覧に入れます!」

桃「愛紗ちゃん、気をつけて。絶対帰って来てね」

愛「無論です。ご心配なさらず吉報をお待ちください」

話しは決まったな。

昴「よし! 皆行くぞ! 最後の山場だ!」

「「「「御意!」」」」















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


華雄隊が袁紹軍に突撃したことにより、混乱に陥った戦場。更に曹操軍が袁紹軍の救援に向かったことにより、戦場は激化していった。

鈴「皆、突撃なのだ!」

星「皆我に続け!」

鈴々隊が華雄隊の右翼にぶつかり、そこに間髪入れず、星の部隊が左翼からぶつかった。

昴「よし、今だ! 皆正面よりぶつかるぞ! 俺と関羽に続け!」

「応ー!」

俺が先頭を切り、華雄隊にぶつかる。

昴「はぁぁぁ!」

バキッ! ゴッ! ドカッ!

「ぐふっ!」

「がはっ!」

俺は進行先の敵兵を無手で排除する。村雨や朝陽夕暮は使わない。理由はこの戦、こちらに大義がないため、敵とはいえ、殺めるのは気が引けたからだ。極力致命傷は避けて応戦している。これはあくまで自身に化しているだけで他の者には命じてない。まぁ、偽善と言われればそれまでだが・・・。

昴「仕上げだ!」

村雨を引き抜き、跳躍する。

昴「飛龍衝撃!」

ドゴーン!!!

俺はそのまま氣を飛ばさず、そのまま地面に村雨を叩きつけ、爆風で敵兵を吹き飛ばす。

昴「行け、愛紗!」

愛「御意!」

愛紗が俺の脇を抜け、華雄の元へと向かう。

昴「さてと・・」

俺は村雨を鞘に戻し・・。

昴「ここからは誰も通さん。抜けたければ俺を倒してみせろ」

俺は華雄隊の兵の前に立ちはだかる。

愛紗、任せるぞ。
















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


愛紗side

ご主人様が開けていただいた道を一気に駆け抜ける。華雄は・・・見つけた!

愛「見つけたぞ、華雄!」

華雄「!? 貴様は、関羽か!」

愛「素っ首、貰い受ける!」

華雄「ほざけ! 私を愚弄した罪、あがなわせてやる! 行くぞ!」

愛「うぉぉぉぉ!」

ガキン! ギギギギッ・・!

私の青竜刀と華雄の戦斧が激突し鍔迫り合いになる。

愛「ふっ!」

一度距離を取り、再度華雄へ攻撃を繰り出す。

ガキン! ガキン! ガキン!

攻撃を当て、時に防ぎ、数合に渡り、攻防を繰り返す。

愛「どうした! その程度私に挑もうなど片腹痛い」

華雄「ほざけー!」

華雄が怒りに任せて戦斧を振るう。

愛「ふっ!」

私はそれを難なく避ける。

愛「これしきの挑発に乗るなど、愚かな。」

私は青竜刀を構え直し。

愛「貴様の武は所詮独りよがりの武。その程度の武で私にかなうと思うな! 行くぞ!」

ガキン!!!

華雄「ぐっ!」

私は華雄に渾身の一撃を浴びせる。

愛「まだまだー!」

ガキン! ガキン! ガキン!

次々と華雄に攻撃を浴びせる。

華雄「く・・そ・」

華雄が防戦一方になる。

愛「これで最後だ! 我が渾身の一撃、受けてみろ! うぉぉぉぉ!」

私は最大の一撃を華雄へと繰り出した!

バキン! グシュ!

華雄「がはっ! ・・ば・馬鹿な・・。」

華雄の戦斧は私の一撃に耐えきれず、そのまま私の青竜刀が華雄の胸を切り裂いた。

華雄「く・・・そ・・」

華雄はそのまま地へと倒れ伏した。

愛「・・華雄よ。あなたは良き将であり、良き士であった・・」

私は倒れた華雄を一瞥し、一度深呼吸をして、

愛「敵将華雄! 劉備軍が一の家臣、関雲長が討ち取ったー!」

「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」

戦場に怒号と歓声が鳴り響いた。
















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴side

ある程度の敵兵を撃退し愛紗の様子を見に行ってみると、

愛「敵将華雄! 劉備軍が一の家臣、関雲長が討ち取ったー!」

「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」

愛紗が華雄を討ち取り、勝ち名乗りを上げていた。その瞬間、戦場に怒号と歓声が鳴り響いた。

昴「よくやった、愛紗。さすが、幽州の青竜刀の名は伊達ではないな」

愛「ご主人様! ご主人様が道を切り開いていただいたおかげです」

昴「頑張ったのは愛紗だよ。俺は愛紗のような仲間を得て幸せだ」

愛「ご主人様・・勿体なきお言葉です//」

愛紗は頬を赤らめる。

昴「さてと・・」

俺は動かない華雄を見つめ、

昴「愛紗、後のことは任せていいか?」

愛「はい。構いませんが、ご主人様は何処へ?」

昴「俺は、華雄を何処かへ弔ってくる。如何に敵将とはいえ、これほどの武人を晒し首にするのは気が引けるからな」

愛「・・そうですね。それでしたら私が弔って参ります」

昴「そうか。なら俺は前線でもう一暴れしてくるよ」

愛「!? なりません! ご主人様は我らの玉なのですよ? そう何度も危険には・・」

昴「なら愛紗が後始末を任せるよ。俺は華雄を弔うから」

愛「・・分かりました、くれぐれも用心なさってください」

昴「了解」

愛紗は後方の兵の所へ向かった。

昴「ふう」

俺は華雄に歩み寄り・・。

昴「・・急ぐか」

俺は華雄を抱き上げ、縮地で崖を駆け上がった。
















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


しばらく縮地で移動し・・。

昴「この辺でいいか」

木々で覆われた森の一角で華雄を仰向けに寝かせた。

昴「・・まずいな、完全に心臓が止まってるな」

俺は拳を握り、氣を込めて華雄の胸を軽く叩く。

トン・・。

昴「もう一度」

トン・・・トクン・・。

華雄「かはっ!」

よし。心臓が動いた。俺はすかさず華雄の傷を内功で塞ぐ。

華雄「う・・ぐ・・」

傷はみるみる塞がっていく。

華雄「うっ・・・ここは・・」

昴「目が覚めたか?」

意識を取戻したがまだ完全に覚醒してはいないようだ。

華雄「何だ? ・・川を渡ろうと一歩踏み出そうとしたら何かに引っ張られた・・」

・・・ギリギリだったみたいだな。

華雄「うっ・・お前は?」

ようやく俺の存在に気付いたようだな。

昴「俺は劉備軍の御剣昴だ。」

華雄「御剣・・昴・・劉備軍・・!? 貴様連合の将か!」

慌てて体を起こそうとする。

昴「まだ完全に傷は塞がってないんだ。寝てろ」

華雄を再び寝かす。

華雄「何のつもりだ!」

昴「君を死なせるには惜しい。そう思ったまでだ」

華雄「ふざけるな! 敵の情けなど受けん! 殺せ!」

昴「・・・」

華雄「連合の捕虜になどなる気は毛頭ない! そのような生き恥をさらすなどごめんだ!」

昴「・・・」

華雄「何を黙っている! 貴様は私に武人として、将としての矜持を穢がすつもりか!」

昴「黙れ」

華雄「っ!?」

昴「さっきから黙って聞いてれば、将として? 武人の矜持? はっ! お前ごときが偉そうに語るな」

華雄「何だと!」

昴「華雄。お前は此度の戦、何で戦った?」

華雄「貴様らが攻めてきたからだろ!」

昴「質問が悪かったな。お前は何のために戦った?」

華雄「何のため? そんなもの・・」

昴「董卓のためではなかったのか?」

華雄「!? そうに決まって・・」

昴「お前は軍師から水関に籠り、可能な限り時間を稼げと指示を受けなかったか?」

多少頭が回れば当然の策だ。勝たなきゃいけない連合と違い、董卓軍は負けなければいい。防衛側の利を生かすのは必然にして当然。

昴「だがお前が行ったことは、自身の矜持を満たすため、そして安い挑発にのって関を飛び出し、挙げ句、敗北した」

華雄「あ・・」

昴「今頃水関はいずれかの諸候に落とされているだろう。もしお前が指示通りにしていればいまだ水関は健在だっただろう。仮に抜かれても連合側は糧食、兵、疲労面でかなりの痛手を被っただろう。まず間違いなく虎牢関は抜けなかった。だが、お前の暴走で早々に水関は抜かれ、大した被害もなく連合軍は虎牢関に対峙できる。士気が最高潮に高い連合軍とは対象に董卓軍は早々に水関を抜かれたこととお前とお前の部隊がやられたことにより士気は最低だ」

華雄「あぁ・・・あぁ・・!」

昴「もう董卓軍に勝ち目はない。いくら時間を稼ごうと援軍は来ないのだからな」

華雄「・・・」

昴「お前にとって董卓は何だ? 己の武人としての欲求を満たすための道具か?」

華雄「違う・・・董卓様は・・」

昴「お前は自分の武人としての矜持と董卓の命を秤にかけ、お前は自分の矜持を取った。お前は董卓を命を自分の矜持の為に失わせたんだ」

華雄「・・私・・は・・」

昴「己の矜持のために主をみすみす死なす真似をしたお前に将を語る資格はない」

華雄「・・あ・・あぁ・・・あぁ・・!」

華雄は頭を抱え、茫然自失となる。

華雄「くっ!」

華雄はおもむろに腰の小剣を引き抜き、喉元を突き刺そうとした。

昴「っ!?」

パシッ!

俺は小剣の刃を掴み、止める。

昴「何をするつもりだ?」

華雄「・・死なせてくれ。もはや私に生きる資格など・・・董卓様に会わす顔などない! ・・一思いに死なせてくれ・・」

パシン!!!

華雄「う!?」

俺は華雄の頬を張った。

昴「お前の主、董卓は失敗を死で償わせて喜ぶ人間なのか?」

華雄「それは・・」

昴「お前が死んで何とも思わないような人間なのか?」

華雄「・・違う。董卓様は・・。」

昴「そうだろ? だからお前は臣下として仕えていたんだろ?」

華雄「・・だが・・私は・・」

昴「お前は選択を誤った。けどな、だからといって死んでどうする? 死ぬなんていうのはただの責任逃れすぎないんだよ」

華雄「・・だったら・・・だったら・・私はどうすれば良いのだ!? 董卓様のために・・・一体どうしろと言うのだ!?」

昴「生きろ、華雄!」

華雄「っ!?」

昴「恥でも何でもいい、生きろ! 生きて生きて、その汚名を返上し、それを帳消しにする程の功を立てるその日まで生き続けろ! それがお前に出来ることだ」

華雄「私に?」

昴「ああ。少なくとも自害なんて責任逃れなんてするより、よっぽど忠を尽くした生き方だ」

華雄「・・・」

昴「なぁ。董卓のためにこの場で命を捨てる程の忠義があるなら、もう一度胸を張って董卓に会える日まで生きてみろよ」

華雄は俺の言葉を受け、その瞳に再び闘志が蘇る。

華雄「・・・ふっ、そうだな。私は再び不忠を働いてしまうところであった。この汚名を返上するまで、生き続けなければ・・・くっ!」

華雄は立ち上がり、虎牢関へと足を運ぼうとする。

昴「無茶だ。傷自体は塞がってるが、血液はかなり不足している。体にろくに力なんて入らない。今のお前じゃ、将はおろか、兵とすらまともに戦えない」

華雄「それでも・・・行かねば・・この体、動くなら、虎牢関に・・」

華雄はゆっくり体をよろけさせながら虎牢関へと向かおうとする。

昴「・・・華雄。董卓のことは俺に任せてくれないか?」

華雄「・・どういうことだ?」

昴「俺は董卓が暴君でないことを知っている。俺は・・いや、俺達劉備軍は董卓を保護するためにこの連合に参加したんだ」

華雄「何!? では何故我らではなく連合に力を貸す!」

昴「それしか董卓を救う方法がないからだ。考えてみろ。檄文のせいでもはや董卓には洛陽にしか味方がいない。仮に連合を退けても董卓は戦い続けなければならない。・・その苦行、董卓に耐えられるか?」

華雄「・・・無理だ。董卓様はお優しすぎる」

昴「董卓を助けるには連合に与し、董卓を諸候に気付かれないように保護するしかないんだ」

華雄「・・・」

昴「華雄。今は信じてくれ。必ず俺達が董卓を救う。この天の御遣いの名にかけて」

華雄「・・・・分かった。どちらにしろ今の私にはそれしかできないからな」

昴「ありがとう、華雄」

華雄「だがもし、董卓様を死なせたらその時は・・」

昴「いつでも俺の首を取りに来い」

華雄「約束だ」

昴「よし、それじゃ・・」

俺は木の影から馬を一頭連れてきた。

昴「これに乗って一旦ここを離れろ」

華雄「良いのか? こんな馬を貰って」

昴「構わないよ」

どうせ袁紹軍からかっぱらった馬だ。

俺は華雄を馬に乗せる。

昴「このまま真っ直ぐ進めばその内に邑が見える。その邑には医者がいるからしばらく療養しろ」

華雄「分かった。・・それでは董卓様を頼んだぞ」

昴「任せろ」

華雄「ではな・・はっ!」

華雄は森の奥へと消えていった。

ふぅ、これで・・。

パチパチパチパチパチパチ!

昴「っ!?」

俺は拍手の鳴る方向を警戒する。

?「いやいや、いいもの見せてもらったよ。喜劇? いや茶番劇かな?」

全身白の意匠で身を固めた俺と同じくらいの年齢と背格好をした男が立っていた。

何だこいつ。何故こんなところに・・・いやそれ以前に俺がこの距離まで気配を探知できなかった?

?「しっかり警戒しないと、気が付いたらあの世行きだよ? 守り手君?」

昴「っ!?」

こいつ! ・・・この違和感、まさか、こいつ・・・。
















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


貂「やってほしいことが2つあるの。1つはこれからその外史で起こる乱世を鎮めること。もう1つはあなたに倒してもらいたい相手がいるのよ」

昴「倒してもらいたい相手?」

貂「ええ。・・外史の破壊者ってご存知かしら?」

外史の破壊者・・・。

昴「かつてあらゆる外史で虐殺を繰り返し、混沌に陥れたっていうあの破壊者か?」

聞いたことがある。

昴「だが、そいつは既に封じられたはずじゃなかったのか?」

貂「そうよ。多くの守り手と管理者の命、そして1つの外史を犠牲にして、ねん。だけどその封印は解かれてしまったのよ」

解かれた?

昴「解けたでも破られたでもなく、解かれたのか?」

貂「そのとおりよ」

昴「つまり封印解いた奴がいるっていうことか。誰だそんなことをしたのは・・」

貂「あなたのよく知っている人よ」

昴「俺の?」

貂「あなたと最も関わりがあり、あなたに最も恨みをもつ人物よ」

俺に関わりがあって恨みをもつ奴・・・まさか。

昴「左慈と于吉か・・」

貂「ええ。当たりよん」

左慈と于吉。管理者側の人間で、度々俺のいる外史に介入し、俺の邪魔や俺の命を狙ってきたあの2人組か。

昴「また面倒なことを・・。つまり、次の外史では外史の破壊者とあの2人が介入してくるってことか?」

貂「いいえ、あなたが相手にするのは外史の破壊者だけ、左慈ちゃんと于吉ちゃんは来ないわ」

昴「どういうことだ? さすがに管理者が動いたのか?」

貂「違うわ。左慈ちゃんと于吉ちゃんは封印を解いた時に外史の破壊者に殺されたわ」

昴「・・まぬけな話だな。あいつらだってそいつが危険だってのは知っていたんだろ?」

貂「利用できる・・とでも思ったのでしょうね」

昴「話は分かった。それじゃあそいつの顔を教えてくれ」

貂「あいにく写真は1枚もなくてねん。でもそんなの知らなくても会えば、一目で分かるわ」

昴「そうか、なら名前だけでも教えてくれ。外史の破壊者ってのは二つ名だろ?」

貂「そうよ。外史の破壊者の名前は―――」
















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴「そうか、お前が外史の破壊者―――」

















昴「―――刃だな」

刃と呼ばれた男はただ不気味な笑みを浮かべた。











続く

-36-
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