小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第35話〜破壊者の実力、理解する差〜















昴「・・・」

外史の破壊者、刃と対峙する。

昴「・・・」

別段強い殺気を放っているわけではない。だが・・・・動けない。俺の中の全ての感覚、器官が警報を鳴らしている。刃、こいつは怖いとか恐ろしいとかではなく、不気味だ。率直に言えばかなり隙だらけだ。だが、動くことができない。

刃「くくくくくっ」

昴「っ!? 何がおかしい?」

刃「いやなに、過去俺に立ち向かった守り手は皆、俺が外史の破壊者だと知るとたちどころに飛びかかってきたけど、君は冷静だね?」

昴「ちっ、初見でしかも実力を図れない相手に飛びかかるほど馬鹿ではない」

刃「なるほど、わざわざ俺に差し向けるだけあって、なかなか・・・でもね・・」

昴「っ!?」

数メートル先にいたはずの刃が目の前にいた。

刃「こっちから行かないとは限らないよ?」

昴「くっ!」

即座にバックステップをして距離をとった。

刃「ほらほら、ぼーっとしてると死んじゃうよ? あははは!」

ちっ! 余裕かましてやがるな。超スピードか、何かタネがあるのか・・・考えても無駄か。

昴「ふ〜・・」

悔しいが刃は強い。確実に俺より・・、なら様子見は不要だ。

チャキ!

俺は村雨に手を当て、抜刀術の構えを取る。

刃「いいねいいねぇ〜。その殺気。・・なら少し遊んであげるよ」

刃は腰の刀を抜き、肩にかける。

その余裕、すぐに崩してやるよ。・・一撃だ。俺の最速の技をもって一撃で決める。

おれは体勢をやや下に傾ける。

昴「北辰流抜刀術・・」

両足に氣を集中させる。

昴「疾・風!」

ドン!!!

俺の全力のスピードで刃に突進し、村雨の射程内に刃が入ると一気に抜刀、一閃した。

ザン!!!

刃の体が2つに裂かれる。

昴「とらえ・・っ!?」

手応えが妙だ。刃は何処だ!?

刃「お見事。なかなかの速さだったよ」

昴「何!?」

ザシュ!

昴「がはっ!」

俺の背後から刃の声がかかり、慌てて振り返ったその刹那俺の胸を刃の刀が貫いた。

刃「今のは写し身、君が俺だと思い込んで斬ったのはただの身代わりだよ」

昴「っ!?」

先ほど刃がいた場所を見ると真っ二つになった人ほどサイズの丸太が転がっていた。

刃「ただの手品だよ。しかしねぇ、抜刀術は一撃必殺にうってつけだけど、外すとこれ以上にないくらい隙だらけになるんだよねぇ」

昴「くっ・・そ・・」

俺は刀を素手で引き抜き、刃から距離をとる。

昴「うぐっ!」

貫かれた胸からは血が溢れる。

刃「へぇー、仕留めるつもりだったけど、咄嗟に急所外すとは、中々やるねぇ。・・・でも」

刃が俺に歩みより・・。

刃「その様じゃもうまともに戦えないよねぇ〜?」

昴「・・まだだ!」

俺は激痛を堪え、村雨を構える。

刃「頑張るねぇ。くくくくくっ、まだ戦るなら俺を楽しませてよ?」

調子に・・のりやがって!

昴「・・・刃。」

刃「何かな?」

昴「あまり、俺を舐めるなよ」

刃「何を・・っ!?」

刃の肩口から血が走った。

刃「あらら、避けたと思ったけど、僅かに掠ってたみたいだね。自分の血を見るなんてどのくらい振りだろ? やるねぇ。・・・けど、それが今の君の限界だねぇ」

昴「くっ!」

どうする? こいつは予想以上に強い。挙げ句こっちは致命傷こそ避けたがこの様だ。

刃「来ないの? それとも来れない?」

アレを使うか? けどこの体じゃ数秒と持たない。・・それに仮に使ってもこいつには・・。

刃「ふぅ。ならもういいや。・・・死んで?」

刃が刀を振り上げる。くそ! 俺は死ぬのか? 俺はこんなところで死ぬわけには!

刃が振り上げた刀を振り下ろそうとしたその時・・。

?「よいしょ!」

?「ふん!」

刃「っ!?」

突如刃の後方から2つの影が飛び出した。刃は横っ飛びをしてその影を回避する。

刃「随分と手荒い挨拶だな。・・・貂蝉、卑弥呼」

貂「久しぶりねん。刃」

卑「ぬぅ、避けられたか・・」

昴「貂蝉!? 卑弥呼!?」

管理者であるこいつらが何故!?

貂「ごめんなさいね。ここで昴ちゃんを殺らせるわけにはいかないの」

卑「我らが相手になろう」

貂蝉と卑弥呼が構えをとる。

刃「くくくっ、管理者の中でも指折りの手練れである2人が直々に相手とは恐れ入る。・・・けどな、お前達2人がかりでも俺に勝てるとでも思ってるのか?」

卑「・・・」

貂「・・・無理、でしょうね」

だろうな。刃の強さは異常だ。

昴「3人が相手なら・・・?」

俺も加勢しようと立ち上がろうとすると貂蝉が手で俺を制した。

貂「・・けどね、私達2人の命と引き換えにすれば、あなたを封印することくらいはできるわ」

昴「っ!?」

貂蝉!? お前、何を!?

刃「本当にそう思ってるのか?」

卑「ならば試してくれようぞ」

刃「・・・」

貂「・・・」

卑「・・・」

3者がにらみあう。しばらく睨みあっていると・・。

刃「くくくっ、そう怖い顔するなよ。今日はどのみちそのつもりはない」

卑「ならば何故ここへ来た?」

刃「新しい守り手と、ここに集まる外史の英傑の見学に来ただけだよ。・・用は済んだし、今日は退くよ」

刃が俺達に背を向けて歩き出す。

昴「ま、待て!」

俺が刃を追いかけようとすると・・。

刃「守り手君。君はまだ泳がせれば味が熟成されそうだから、その命は君に預けとくよ。だからもっと強くなって俺を楽しませてね? じゃあねぇ♪」

昴「くっ!」

突如刃の足下の枯れ葉が刃を覆い、枯れ葉がはれるとそこには誰もいなかった。周辺にも気配の欠片も見つからなかった。

昴「くそ! 逃げられ・・・いや、見逃されたか・・」

外史の破壊者がここまでとは・・。

昴「ぐっ!」

刃に貫かれた胸に再び激痛が走る。

貂「昴ちゃん、大丈夫?」

昴「・・急所は外した。血さえ止まれば問題ない」

貂「今治してあげるわん。さ、目を閉じて。あたしと熱い口付けを・・」

卑「ちょ、貂蝉! ずるいぞ! ここは我が・・」

昴「・・そんなんされるぐらいなら死ぬ」

貂・卑「ひ、ひどいわ!」

冗談じゃねぇ。

貂「冗談よん。今治すから傷を見せて」

昴「ああ」

俺は外套と内側の服の留め具を外した。

貂「あらん、良い体だわん。思わず頬擦りしたく・・」

ザクッ!

昴「早くしろ!」

貂「んもう、イケず。待っててね。」

貂蝉が何やら小瓶を取り出した。・・って。

昴「てめえ、今それ何処から出した!」

貂「漢女にはいろいろ秘密があるのよん♪ 始めるわ。・・少し我慢してね。死ぬほど痛いわよ」

貂蝉が小瓶の液体を傷にふりかけた。

ジュー!!!

昴「ぐおぉぉぉ!」

結構きつい! まるで強力な酸でもかけられてるみたいだ!

貂「終わったわ」

昴「すごいな。完全に傷が塞がっちまったな」

先ほどの激痛が嘘のように楽になった。

昴「それより、お前達は何故ここにいたんだ?」

貂「刃がこの外史に侵入したから昴ちゃんに伝えに来たのだけれど・・」

卑「一足遅かったようだな」

昴「まあ何にせよ、助かった」

貂「気にしなくていいわ。・・・それより、刃と接触してみて、どうだったかしら」

昴「・・・強いの一言さ」

疾風をあっさり返された。突進力と速さなら俺の手持ちの技の中でも1番だったんだが。

貂「ちなみに言うと。刃がその気だったら、今頃私達はあの世行きだったけどねん」

昴「・・お前達でも無理か?」

卑「むぅぅ、命と引き換えに封印を施しても奴には効かなかったであろう」

貂「第一、直接的な強さでは昴ちゃんに劣る私達じゃ、まともには対抗できないわ」

昴「・・・」

貂「私達はこの外史に長くはとどまれないの。そろそろ行かなくてはならないわ。・・どうする? 辞めてもいいのよ?」

昴「・・冗談じゃない。今の俺じゃ奴に及ばない。でも必ず奴は俺が倒す」

刃は必ず俺が・・。

貂「そう。なら任せるわ」

卑「主なら刃を倒せると信じているぞ」

貂「私達は行くわ。ああ、それと、刃のことだけど、しばらくは気にしなくて大丈夫よ」

昴「どういうことだ?」

貂「刃は破壊や殺戮を激しく好むけど、彼はいつでも守り手や外史をすぐに滅ぼそうとはしなかったわ」

昴「何故なんだ?」

貂「彼は結果より過程を楽しむのよ。より多くの希望を与えて、そしてそれを全て絶望に変える。彼はそれを楽しむの。だからしばらくは目立った行動は起こさないわ」

昴「ありがたいのかどうかわからないが、分かった」

貂「それじゃ、頑張ってね」

卑「また会おう!」

2人は光の柱に包まれ、そしてその姿を消した。

昴「・・・」

俺は自分が最強だなんて思ったことはないが、それなりに自信はあった。しかし刃はそんな俺の遥か上にいた。

昴「強く、ならないとな」

奴を倒すためにももっと力を付けなくちゃな。・・・けど今は・・。

昴「反董卓連合。今はこっちをどうにかしないとな」

もう水関は完全に連合が制圧しただろう。とりあえず桃香達のところへ戻るか。

俺は水関へと向かった。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


戻ってみると水関は完全に連合が制圧作業をしており、董卓軍は投降するか虎牢関に逃げていった。

桃「ご主人様!」

桃香や皆が俺に集まってきた。

昴「今戻ったよ」

桃「もう遅いから心配したんだよ?」

愛「何かあったのですか?」

昴「悪い悪い。連合に見つからないように気をつけてたら時間がかかったんだ。・・・それで、状況は?」

朱「はい。将である華雄さんが討たれたことにより華雄隊は統制を失い、たちどころに制圧されました」

雛「水関は私達が華雄隊を相手取っている間に孫策さん隊が制圧しました」

昴「なるほど」

雪蓮は名より実を取ったか。

鈴「にゃー、結局、孫策って奴が水関を落として1番目立つ手柄を立てちゃったのだ」

昴「何、俺達が華雄を関から引きずり出して討ち取ったから孫策も水関を落とせたんだ。皆俺達のことを認めてくれるさ」

鈴「そうなのかな? それならいいのだ」

昴「制圧作業が落ち着いたら、虎牢関突破の為の軍議も始まるだろう。今のうちにやることやっちまおうぜ」

星「そうですな」

昴「それじゃ、愛紗と鈴々はこのまま作業を続けてくれ。星は隊の編成を。朱里と雛里は虎牢関に斥候を放って。戻り次第、その情報をもとに作戦を練ってくれ。桃香は・・」

桃「うぅ〜、待機だね」

昴「悪いな。俺は・・星を手伝うな」

星「分かりました。よろしくお願い致します」

朱「すぐにでも斥候を放ちますね」

雛「私はその間兵糧の点検をしておきます」

昴「頼む。それじゃ、引き続き辛い戦いが予想されるが、皆頑張ろう」

「「「「了解」」」」

皆が持ち場へと向かった。

思いがけないトラブルが発生したが、水関の戦いは連合の勝利に終わり。次に待つ虎牢関での戦いに向けての準備が始まったのだった。










続く

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