第44話〜とある雨の日、過去・・・〜
昴side
昴「それじゃ、これを朱里と雛里に持っていってくれ」
「かしこまりました。確かにお届け致します」
昴「頼む」
侍女は俺の書簡を受け取ると部屋を後にした。
昴「ん〜・・」
俺は大きく伸びをした。
昴「仕事終わった〜」
今日の分の仕事は全て終わった。しかも今はまだ昼過ぎ。徐州に来てからこんなにも暇になったのは初めてのことだ。
昴「何するかな〜・・」
街にでも行くか・・それともねねをいじmもとい遊びに行くか・・とりあえず外に行こう。
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昴「お〜、高いな」
とりあえず城壁の上に来てみた。
昴「風も気持ちいいな」
空は青く。所々に雲が広がっている。とりあえず城壁の上に寝転び、雲をボーッと見つめた。様々な形の雲をただボーッと見送った。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
ボーッ・・・
昴「ふわぁ・・」
眠くなってきたな。ここのところ忙しくてゆっくり休んでる時間なかったからな。
俺は流れる雲をただただ見送り、やがて・・。
眠りに落ちた。
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桃香side
桃「うーん・・」
街の人からの陳情だけど・・。
桃「どうしよう・・」
う〜、私じゃ判断出来ないよ〜。
桃「・・・そうだ!」
ご主人様に相談しよう! もうお仕事終わったみたいだけど、相談するぐらいいいよね♪
桃「うん! ご主人様探しに行こう!」
私は執務室を出て、ご主人様探しに向かった。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
星「主ですか? 今日は見かけていませんが・・」
白「昴か? いや、見てないな〜」
ご主人様、何処に行ったんだろう? 城の外には出てないみたいだけど・・。
桃「うーん、何処だろう・・・あれ?」
ふと見上げると、さっきまで晴れていた空は雨雲に覆われていた。
桃「雨、降るかな?」
空を覆った雨雲を眺めつつ私はご主人様を探しに向かった。
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雨が降っていた。とても冷たい雨が・・。
ここに天命を迎えようとしている1人の王が横たわっている。
?「すまぬな・・我は・・ここまでのようだ。後のことは任せる。頼む・・・ぞ。戦をなくし・・皆が・・笑って暮らせる国を・・お前の手で・・・作ってくれ。願わくば、お前と・・共に掴んだ平和な国・・で、お前と・・・静かに・・暮らし・・たかった・・・・・」
硬く握られた手から力が抜け、そして・・地に落ちた。その瞬間、より一層強くなった雨が地を打ち付けた。まるで天が王が失ったことを嘆くが如く・・。
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昴side
ザー!!!
昴「ん・・」
俺は何かが顔を打ち付け、目を開けた。いつの間にか眠っていたらしいな。それにしても・・・。
昴「雨か・・」
さっきまで晴れてたのにな。
昴「あの時と、同じ雨・・」
だからあんな夢を・・。
昴「・・・」
智夜・・。
共に平和のために戦った王。俺が誰よりも忠誠を誓い、絶対に、何があっても、命に変えても守ると誓った王。そして、誰よりも愛した王。
昴「・・・。」
今お前は俺を見て何を思っている?
怒っているか? 泣いているか? それとも、呆れているか? 戦争を心から嫌い、そして憎み、誰よりも平和と幸せを願っていたお前が、未だに戦争に身を投じている今の俺を見たら・・。
昴「わかってる。それでも俺は・・」
?「ご主人様?」
昴「ん?」
ふと見ると、そこには桃香がいた。
昴「桃香か、どうした?」
桃「うん。ご主人様に相談したいことがあって・・それよりご主人様びしょびしょだよ!?」
昴「ん〜、仕事が終わったからここで昼寝してたら・・この有り様だ」
桃「そうだったんだ」
昴「それで、相談したいことって?」
桃「あ、うん、街の人から陳情がきて、私じゃ判断出来なくて」
昴「わかった。すぐに行くよ。執務室だな?」
俺は立ち上がり、桃香横を抜けようとすると・・。
桃「ご主人様」
昴「ん?」
桃「ご主人様は雨は嫌い?」
昴「・・そうだな、嫌いだった。雨はいろんなことを思い出してしまうから」
桃「今は?」
昴「今は・・嫌いじゃない。雨が降ると大切なことを忘れずにいられるから・・・どうしたんだ突然?」
桃「ううん。何でもないの。少し気になって」
昴「そうか。着替えたすぐに執務室に行くよ」
俺は城壁から降り、自室に向かった。
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桃香side
ご主人様が城壁を降りて行った。
桃『ご主人様は雨は嫌い?』
どうしてあんなこと聞いたんだろう・・。
あれからご主人様を探していたら1人の侍女さんが城壁に登るのを見たと教えてくれたのでそこに向かった。もうすでに雨は強かったから、侍女さんはもういないのでは?って言われたけど城壁に向かった。何となくまだそこにご主人様がいる気がしたから。行ってみたらそこにはご主人様がいた。すぐに声を掛けようとして・・・躊躇った。そこにいたご主人様はとても・・・・とても・・。
悲しそうだった・・。
戦で凛々しい顔、鈴々ちゃんやねねちゃん達と遊んでいる時の笑っている顔、私はご主人様のいろんな顔見てきた。どれも印象的で素敵な顔。でも、ご主人様の本当の顔は、あの悲しそうな顔なんだと私は思う。ご主人様はきっと辛いんだ。でもそれをずっと隠して、誰にも話すことなくずっと1人で戦ってきたんだ。そしてこれからもずっと戦い続けて・・。
でも、そんなの駄目だよ。私はご主人様には笑っていてもらいたい。私じゃご主人様のことを理解してあげられないかもしれない。それでも私はご主人様の力になりたい。いつかご主人様の笑顔が本当の顔になれるように・・・。
続く