小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第56話〜メイドの日常、メイドの本心〜















昴side

昴「・・・」

時刻は早朝。俺は自己の鍛練をしている。

昴「スゥー・・はっ!」

ブン! ブォン! ビュン!

村雨を抜き、振るう。ただやみくもに振っているのではなく、目の前に相手がいると仮想して振っている。仮想の相手は・・・刃。

昴「・・・ふっ!」

再度前に出て村雨を振るう。仮想の刃は難なくこれを避ける。背後からの刃の斬撃を避け、一撃加える・・が、あっさり避けられ、そしてまた背後を取られ・・。

昴「ブスリ・・・はぁ・・」

イメージでもまだ刃には勝てない。刃と戦った時間は僅かだけど、おおよその強さは計れている。

昴「力の差は簡単には縮まらない、か」

もっと強くならないとな。

昴「ふぅ。今日はこれくらいにしておくか」

今日はいつもの政務に、確か調練の視察もあったな。

昴「さてと、一休みしたら仕事にかかるか」

また忙しい1日が始まりそうだ。


















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※※※※


昴「(サラサラサラサラ・・)」

書簡の山との格闘中。

昴「(サラサラサラサラ・・)」

筆を動かす音だけが部屋に響く。

昴「・・・ふぅ」

ちょっと休憩。

月「失礼します」

昴「ん? あぁ月か」

月「お茶をお持ちしました」

昴「お、悪いな、月」

月が器にお茶を注ぎ、俺に渡す。

昴「ありがとう。・・んくっ、んくっ、んくっ・・・ぷはぁ!」

月「お疲れ様です。ご主人様。あ、おかわり致しますか?」

昴「うん、もらうよ」

月が器にお茶を注ぐ。

月「どうぞ」

昴「ありがとう。んくっ、んくっ・・」

月「お忙しそうですね」

昴「ん? 益州平定直後はかなり忙しかったけど、最近それもようやく落ち着いてきたよ」

月「そうですか。でもあまり無理はしないで下さいね」

昴「分かってるよ。月も仕事には慣れたか?」

月「はい。だいぶ慣れました」

昴「そうか。月も体には気を付けろよ」

月「お気遣いありがとうございます」

俺は器に残ったお茶を全て飲み干し。

昴「さて、一息付いたし。俺は政務に戻るよ」

月「分かりました。では器をお下げしますね」

月が器をお盆に乗せて部屋を後にする。扉の前で・・。

月「お仕事頑張って下さい」

昴「ああ。ありがとう。お茶、美味しかったよ」

月「では・・」

月は部屋を後にした。

昴「月もすっかりメイドが板に着いたな」

いつも一生懸命仕事をしている月を良く見かける。

昴「俺も頑張るか」

気持ちを切り替え、残りの政務に取りかかった。

















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※※※※


翌日、桃香と朱里や雛里達軍師達と今後の方針についての会議が終了し、俺は今日の仕事を終えた。

昴「さて、何するかな」

時刻は昼下がり。ずいぶんと暇をもてあましている。

昴「とりあえず街にでも・・・ん?」

ふと辺りを見渡すと、そこには月の姿があった。

月「♪〜♪」

月は鼻歌を歌いながら仕事をしている。どうやら洗濯物を取り込んでいるみたいだな。それにしても、月は楽しそうに仕事をしているな。そんな月を遠巻きで眺めていると・・。

ビュウ!!!

月「へぅ!」

突如突風が吹き荒れた。

月「あ、待って!」

その突風に干していた洗濯物の1つがさらわれてしまった。

昴「あれならまだ届くな」

俺は飛ばされた洗濯物の元に走り・・。

昴「ふっ!」

氣を展開し、洗濯物目掛け一気に跳躍し、キャッチする。

月「あ、ご主人様。ありがとうございます」

昴「ずいぶん強い風だったな。ほれ」

キャッチした洗濯物を渡す。

昴「あ・・」

夢中で気が付かなかったが俺がキャッチしたのは下着。それも女性者。

昴「・・気をつけて」

月「へぅ。すみません」

月から目を反らしながら下着を渡す。月も申し訳なさそうに受け取る。

昴「また風で飛ばされたら面倒だ。早いとこ取り込んじゃおう」

月「ご、ご主人様! それは私の仕事ですので・・!」

昴「気にするな。ちょうど暇をもてあましていた所だったんだ」

月「へぅー。ホントにすみません」

2人で大急ぎで洗濯物を取り込んだ。

















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月「ホントにすみません。洗濯物まで運んでもらって」

昴「いいのいいの。1人じゃ大変だろ?」

月と一緒に洗濯物を運んでいる。

それにしてもメイドというのも大変な仕事だな。掃除に洗濯に料理に・・。月や詠は良く頑張ってるな。

昴「なあ月」

月「はい。なんでしょう?」

昴「辛くはないか?」

月「? ・・どうしてですか?」

昴「いやさ。望んでなったわけではないとはいえ、君は都洛陽の太守だったんだ。身分を隠すためとはいえ、メイドなんかをさせてしまって辛くはないのかなって」

冷静に考えてみれば太守だったのにメイドをやるなんてかなりの屈辱だ。例えば誇り高い華琳なら絶対にやらないだろう。仮にやったとしても確実に国の乗っ取りを画策するだろう。まあ関係はないが個人的にメイド服は似合いそうだが・・。俺はそれが気掛かりだった。月は立場上不満があっても言えないだろうし。それを尋ねてみると・・。

月「辛くないですよ。皆優しくしてくれますし、それにメイドのお仕事ってすごく楽しいです」

昴「・・・」

嘘を言ってるようには見えないが・・。

昴「そうか。ならいいんだ」

月「ふふっ。ご主人様はホントに優しいんですね。あ、洗濯物はそこに置いてください」

昴「分かった、・・よっと。そんなことはないさ。しかし、月は本当に良い子だな」

頭をナデナデする。

月「へぅ//」

月は顔を赤くして照れている。その時・・。

詠「こらー! ボクの月にちょっかいだすな!」

昴「おっ、ツン子参上。」

詠「誰がツン子よ!# あんた仕事の邪魔よ。用がないなら何処かへ行きなさいよ!」

月「詠ちゃん。ご主人様にそんなこと言っちゃ駄目だよ。ご主人様はお仕事手伝ってくれたんだから」

詠「月〜」

昴「分かった分かった。これから街にでも行ってくるから。月、またな。詠も頑張れよ」

詠「ふん! 大きなお世話よ」

月「詠ちゃん」

詠「う・・」

月が目で詠をたしなめる。

なんだかんだでいいコンビだ。

俺は街に行き、ちょうど街にいた鈴々と一緒にラーメンを食べた。


















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翌日、午前中は政務を。午後は街に区画整理のための視察に赴いた。その途中、酒家で珍しい酒を見つけたので、購入した。今日の全ての仕事を終えたので早速それを味わうことにした。

昴「今日は綺麗な月が出ているな」

うん、月見酒でもしよう。城の庭先に移動した。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


酒と器を持って移動していると・・。

月「あ、ご主人様」

昴「よう月」

月が俺の手に持っている酒を確認して・・。

月「お酒を飲まれるんですか?」

昴「ああ。いい酒が手に入ったからな」

月「それでしたら星さんや桔梗さんとご一緒されてはいかがですか?」

昴「ん〜、あの2人を誘うといつの間にか飲み比べになっちゃうんだよな〜」

以前に一緒した時、最初は酒を楽しみながら飲んでいたんだけど、唐突に桔梗が誰が1番酒が飲めるかって話しになって、ガンガン酒を煽るハメになった。まあ勝ったけどね。

昴「今日は純粋に酒を楽しみたいから2人には内緒って事で」

月「ふふっ、分かりました。では何かお酒に合う肴をご用意致しますね」

昴「おっ、悪いね」

月に感謝しつつ俺は庭先に向かった。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


庭先に着くと、その場に横になり、月や星を眺めながら待っていると・・。

月「お待たせしました♪」

昴「待ってました!」

月がつまみを持ってやってきた。

昴「それじゃ・・」

器を取り出すと・・。

月「ご主人様、お注ぎ致します」

昴「ありがとう」

器に酒が並々注がれる。

昴「んくっ、んくっ、んくっ・・・ぷはぁ! これはなかなか・・」

言うだけあっていい酒だな。

月が空になった酒に再び酒を注ぐ。

昴「んくっ、んくっ・・・ふぅ。・・そうだ、月も一緒にどうだ?」

月「いえ、私はメイドですから・・」

昴「今はそんなの気にしなくていいよ。やっぱ1人で飲むのは寂しいからな。酒は飲めないわけじゃないんだろ?」

月「でも・・」

昴「ほれ」

もう1つの器を月に放る。

月「わっ、・・ふぅ・・」

月は手元で器をお手玉しながら受け取る。

昴「遠慮は無用だ。酒の席では皆平等だ」

月「・・分かりました。そういうことでしたら」

俺は月の持つ器に酒を注ぐ。

月「ではっ、んくっ、んくっ・・ふぅ。とても美味しいです」

昴「お気に召してくれて何よりだ」

月は次の一口で酒を飲み干した。

月「へぅ。ご主人様もどうぞ」

月が俺の器に酒を注ぐ。酒があまり強くないのか、心なしか月の顔は少し赤い。それからしばらく、お互いの器が空になれば注ぎ合い、酒を楽しんだ。正直、月に酒を勧めたのは酒が回ったら月の本音を聞けるのではって思ったからだ。後乱れた月の姿を見れるかなって下心も少しあったが・・。、しばらくすると月は酔いが回ったようだ。結論から言うと、やらなきゃ良かったよ・・・。














・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


月「う〜、ほんろに、詠ひゃんはいつもいつもわたひをころも扱いしへ〜・・ん」

月が酒を一気に飲み干し、空になった器を差し出す。

昴「月。少し飲みすぎだ。このへんで・・」

月「ん!」

昴「・・はい」

何とも逆らえない威圧感だったので言われた通りに酒を注ぐ。

月「んくっ、んくっ、んくっ・・それで、朱里ひゃんは艶本あんなとほろに隠して・・ごひゅひん様、きいへますか!」

昴「聞いてる聞いてる」

しまったな、月がこんな酒乱だったとはな。普段とは正反対の月だな。

月「皆皆わたひの仕事ばかり増やして・・でも1番許せないのはごひゅひん様です!」

昴「俺!?」

月「ごひゅひん様がご自分の事を何でもなさってひまうせいでわたひはごひゅひん様にご奉仕出来ません!」

昴「いやそれはな・・」

俺は基本部屋を汚さない。これは単に性格だ。適度にやっていればそれほど手間にならないから定期的に自分でやっている。

月「ごひゅひん様はわたひの事嫌いなんれふか!? 嫌いなんでふね! そうなんだ、・・うわーん!」

嗚呼泣き出した。大変なことになったな。何て言うか、多分だが、月は酔うと普段押し殺している自分が出ちゃうんだろうな。

昴「俺が月を嫌うだなんて、そんなわけないだろ」

月「ほんろれふか?」

昴「本当だよ」

月「じゃあわたひの事好きれふか?」

昴「ああ。好きだよ」

月「へぅ// うれひいれす」

月は両手を頬に当て身悶えている。

とりあえず今気掛かりなのは、月は地面にあぐらをかいて座っているので、太股は見えちまってるし、下着もチラチラ覗いている。

昴「あのな月。その・・そんな座り方してると・・下着が見えちまうぞ?」

月「へぅ//」

月は慌てて裾を押さえた。

月「もう、ごひゅひん様ったらスケベなんれすから。そんなに見たいのれしたら言っへもらえれば・・・」

月はスカートの裾を胸の所まで捲り上げた。そこには雪の様な純白な下着が・・って。

昴「月! それは駄目だ!」

俺は月の両手を押さえた。

月「へぅ〜//」

しかし、不幸なことに、俺は月の両手を制圧して押し倒す形になってしまった。

月「ごひゅひん様、こんな所れ・・れもわたひはごひゅひん様のめいろれすから、ごひゅひん様の命には逆らえません」

ひどく誤解されてるな。

昴「いやな月、俺は別にそういうつもりは・・んぅ!?」

おもむろに月が両腕を俺の首に回し、俺の唇を奪った。

クチュ・・クチュ・・。

昴「!?」

それはとても情熱的で何度も何度も俺の舌に自分の舌を絡ませてきた。

月「ぷはぁ!」

月が唇を離す。俺と月の間に1本の白銀の糸が伝った。

昴「ゆ、月! 何して・・」

月「? ・・わたひとごひゅひん様は両想いなんれすから何ももんらいありませんよ?」

あ、さっきの俺の言葉・・。

月「わたひはごひゅひん様をあいひていますから。だからごひゅひん様と・・ずっろ・・・・スー・・スー・・」

どうやら月は眠りに落ちたようだ。

昴「はぁ・・」

疲れた。まさかあんな月の姿が見られるなんてな。

昴「今後月に酒を飲ませるのはやめよう。俺のためにも、月のためにも・・」

俺は心に誓った。

その後、月を抱き抱えて部屋まで運び、俺はそのまま自室に戻って寝た。

















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※※※※


翌朝、城の廊下を歩いていると・・。

詠「昴ー!」

昴「ん、詠か。どうした? そんな血相変えて」

詠「あんた。月にお酒飲ませたでしょ!?」

昴「ん〜、ああ」

詠「やっぱり・・。先に伝えておくべきだった」

詠が頭を抱える。

昴「過去に何かあったのか?」

詠「・・まだ月が都にいた頃、ボク達が十常侍を粛正したのは知ってるわね?」

昴「ああ」

詠「殺されて当然の奴らだったとはいえ、月が望んだことじゃなかったから月が酷く落ち込んだのよ」

昴「まあ、あの月じゃなぁ」

詠「それで月のために霞・・張遼が酒宴を開いたのよ。一晩だけでも嫌なことを忘れられるように。張遼がとにかくお酒を勧めたら・・」

昴「なるほど・・」

あの月が出たわけか。

詠「大変だったわ。皆月に説教されるし、かと思えば泣き出したり・・」

その絵が浮かぶな。

詠「張遼は裏月って名付けたわ」

すっごい分かる。

詠「でも・・1番怖いのは・・」

昴「?」

詠「月は酔うととにかく口付けをしたくなるのよ!」

昴「・・なるほど」

いわゆるキス魔になるのか。

詠「ボクとねねは月に奪われたわ」

昴「・・なんと言うか」

言葉が出ないな。

詠「まぁボクは別に・・」

昴「え?」

まさか・・。

詠「// ・・とにかく! そんなことがあったのよ!」

昴「一部追及は後々にするとして、そんなことがあったのか」

詠「あんた、月に何もしてないでしょうね?」

詠から目を反らし・・。

昴「うん・・何も・・」

詠「・・どうして目を反らすのよ?」

昴「別に、意味はないぞ?」

詠「・・まあいいわ。とにかく覚えておいて。月に絶対お酒を飲ませないで。いいわね!?」

昴「心から誓おう」

詠「ボクからはそれだけよ。じゃあね」

詠は去って行く。

昴「そういや、月は大丈夫かな?」

かなり酔っていたけど。

昴「様子を見に行くか」

そうしよう。

















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※※※※


部屋の前まで行くとちょうど月が出てきた。

昴「おはよう、月」

月「あ、おはようございます。ご主人様」

昴「気分はどうだ?」

月「大丈夫です。今日も頑張ります」

二日酔いとかはないんだな。

月「ところで昨晩。ご主人様に肴を届けて後から覚えてないんですが、私ご主人様に何か粗相しませんでしたか?」

昴「・・心配するな。何もなかったから。途中疲れたのか寝ちゃったみたいだから部屋まで送っただけだ」

月「そうでしたか。わざわざすみません」

昴「気にすることはないよ」

覚えてないなら何よりだ。知らない方が月のためだし。

昴「まあ、大丈夫ならいいんだ。それじゃ、俺は朝議があるから行くな?」

月「はい。お仕事頑張って下さい」

昴「ありがとう。じゃあな」

俺は朝議へと向かった。


















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※※※※


月side

ご主人様は朝議に向かい、やがて姿が見えなくなった。

月「へぅ〜//」

何も覚えてないって言ったけど実は私・・。

月「昨晩の事、全て覚えています」

私は酔っても記憶は無くならないんです。

月「へぅ〜。またやっちゃったよ〜」

前にも同じ事やって、詠ちゃんに気を遣わせてしまった。ご主人様もきっと同じで・・。

月「口付け・・、しちゃったんだよね」

しかもあんなに激しく舌を求めて・・。

月「へぅ//」

思い出すと顔から火が吹きそう。あんな事、普段の私じゃ絶対に出来ない。

月「・・でも」

お酒があれば私は大胆になれる。お酒があれば・・。

月「うん。勇気が出せない時はまたお酒の力を貸してもらおう」

私は胸に誓った。











続く

-58-
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