小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第58話〜憎しみと親愛、答え〜















昴「ふう。大きな不満もなくて何よりだったな」

俺は今日、街の長老達との会合に来ていた。定期的に街の住民達の声や意見を聞きに来ている。大改革を行ったから少なからず戸惑いないし不満はあるだろうからな。

愛「お疲れ様です。ご主人様」

昴「愛紗もご苦労様。桃香もな」

桃「うん! ありがと♪」

昴「ただ街の長老にお爺さんはやめような」

桃「うぅ・・ごめんなさい」

いきなりお爺さんだもんな。まあ長老も気にしてなかったけどな。

昴「改革に対する戸惑いは多少あったけど、皆今の暮らしに満足してくれていた。これも桃香や皆が頑張った結果だ」

桃「えへへ♪」

愛「光栄です」

桃香も愛紗も誇らしげだ。

愛「ご主人様はこの後はどうなさいますか?」

昴「ん〜、そうだな・・」

今日は急いでやらなきゃならないほど書簡もないんだよな。

昴「少し水浴びにでも行こうかな。近くに確か小川があったからな」

桃「あ、いいなあ。私も行こうかな〜」

愛「桃香様はこの後政務です」

桃「ふぇーん、ご主人様だけずるい〜!」

昴「俺は早朝にだいたい片付けちまったからな。桃香もこれからはそうしたらどうだ?」

桃「うぅ・・、ご主人様のいじわる・・」

桃香は涙目で俺を見つめる。

愛「ではご主人様、お気をつけて」

昴「ああ」

愛「では桃香様、我らは城に戻って政務に付きますよ」

桃「ふぇーん、ご主人様〜・・」

桃香は愛紗に引きずられながら城へと帰っていった。俺は2人の背中を見送り、小川に向かった。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


森を歩いていると小川のせせらぎが耳に伝わってきた。

昴「お、着いたな」

やがて、小川にたどり着いた。人の手が全く加わっていないだけに川の水は透き通っており、魚達の姿も確認出来た。

昴「それじゃ早速・・」

俺は外套や着込みの衣服を脱ぎ、髪留めを外し、パンツ一丁になると・・。

昴「ヒャッホー!」

ドボーン!!!

川の中腹まで泳いだ。

昴「うおー、超気持ちいい♪」

水温も程よく。まさに絶好の川水浴日和だな。しばらくプカプカ浮いた後、岩壁から川の水が伝うちょっとした滝に移動し、髪を洗う。

昴「ん?」

しばらく滝に打たれていると人の気配を察知した。どんどんこちらへ近づいてくる。

刺客か? いや違うな。殺気は感じない。この気配は・・・あぁ。なるほど・・。

昴「誰だー、何処にいるんだー?」

そう問い掛けると・・。

蒲「ここにいるぞ〜っ♪」

やっぱりたんぽぽか。

蒲「すごーい。良くたんぽぽだって気がついたね」

昴「気配だだ漏れだったからな。っていうかこんな所でどうした?」

蒲「それはたんぽぽの台詞・・・あっ、お姉様、こっちこっち」

お姉様・・翠か。そういや気配は2つあったがもう1つは翠だったのか。

翠「なに騒いでるんだよ、たんぽぽ。ご主人様は見つかったのか?」

昴「よう、翠」

翠「ん?」

茂みから出てきた翠に声を掛ける。

翠「ご主人様?」

翠は俺に目を向け、俺の格好を確認すると・・。

翠「// うわあああぁぁぁ!? なななっ、なんて格好してんだよっ!」

昴「ん?・・・あぁ、水浴びしてたからな」

全裸ではないとはいえ、女の子前に立つ格好じゃない・・な。

蒲「お姉様、今さら隠したって遅いよ。・・でもご主人様ってホント引き締まった身体してるよね〜。髪もサラサラで長いし、羨ましいな〜」

昴「そうか? 意識したことないから良く分からないな」

俺は持ってきた布で身体の水滴を拭き取り、髪留めをくわえながら髪を後ろに束ねる。

翠「・・(ポ〜)」

蒲「あはっ♪ お姉様まじまじと見てる〜」

翠「// べべべ別に見惚れてたわけじゃないからな!」

蒲「お姉様、誰もそこまで言ってないよ♪」

翠「★■※@▼●∀っ!?」

翠の顔はみるみる真っ赤に。

昴「そういや、2人は何でここに? 今日は調練じゃなかったか?」

蒲「んとね、調練が終わって城に帰ろうとしたらたまたま1人でどこかに行こうとしてたご主人様を見かけたの。そしたらお姉様が、何かあったらいけないからって言い出して、こっそり後をつけてきたってわけ」

昴「心配しなくても俺は賊や刺客程度にどうにかされるほど弱くないぞ」

蒲「ご主人様は乙女心が分かってないな〜。それは口実で本当はご主人様の傍に・・」

翠「わー! わー! わー!」

翠が慌ててたんぽぽの口を塞ぐ。

昴「? ・・良く分からんが、心配かけて悪かったな」

翠「べ、別に、あたしは心配なんて・・」

蒲「素直じゃないなぁ〜っ」

翠「うるさい!」

翠は怒って拳を振り上げ、それを見たたんぽぽが慌てて逃げ出した。

昴「やれやれ・・」

俺は服を着ると、2人の後を追った。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翌日、仕事を早々に終えたので街へと繰り出した。何か買い物でもしようかなと店を見てまわっていると・・。

昴「おっ? あれは・・翠か」

外に椅子や机が並べられた茶房、いわゆるオープンカフェで翠をみつけた。

昴「よう、翠」

翠「ん? ・・・あ、ご主人様」

昴「ここでお茶してたのか?」

翠「見てれば分かるだろ。ご主人様はどうしてここに?」

昴「仕事が早くに終わったから街にちょっと買い物にな。そしたら翠を見かけたから声をかけたんだ」

翠「そうだったのか」

昴「相席してもいいか?」

翠「あ、ああ、どうぞ」

俺は翠の真向かいに座り、店員にお茶を注文した。

昴「なかなかいい感じの店だな。翠は良く来るのか?」

翠「いや、初めてだよ。なんか今、この辺りで一番人気がある店らしいから、試しに来てみたんだけど・・」

そういや雫からそんな話を聞いたな。この店だったのか。

翠「すごいよな、ここ」

昴「すごいって?」

翠「ほら、この店、すごくオシャレだろ? そのせいで恋人同士で来てる奴が多くて、だから、あたしだけ浮いてるっていうか・・」

そういや、辺りを見渡すと男女の2人組ばかり・・・っていうかだけだな。1人なのは翠だけだ。

昴「なるほどね・・、でも今は俺も居るんだから浮いてはいないだろ?」

翠「それはそうだけど・・、でもご主人様があたしなんかと一緒にいるから皆あたしに嫉妬してるよ」

辺りを見渡すと、通行人や客がチラチラこちらを見ている。でもそれは・・。

昴「逆だよ逆。嫉妬の視線は俺にぶつけてるんだよ。あんな可愛い娘を独り占めしやがってってな?」

翠「// かかかか、可愛いって、なななっ何言ってんだよ!? そんなわけないだろ!?」

昴「あるよ。さっきまで憂いを含んだ表情でお茶を飲んでいた美少女にどこぞの馬の骨とも分からない男が恋人のように同じ卓についたんだ。分かるだろ?」

翠「ここここっ、恋人って・・」

昴「翠ほどの美少女が恋人なら、その男は嫉妬と羨望の視線を浴びせられるんだろうな」

翠「★■※@●∀っ!?」

翠の顔はみるみる赤くなっていった。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


その後も翠と他愛のない話をしながらお茶を楽しんだ。

翠「ご主人様はあたしの事からかいすぎたよ。あたしはがさつだし、不器用だし、顔も可愛くないし、身体つきだって中途半端だし・・」

昴「そんなことないって」

翠「あるよ。昔からそんなだからそんなんじゃ嫁の貰い手なんて来ないぞって・・・母様が・・」

昴「・・・」

翠がお茶の入った器をギュッと握り、悲しげな顔を浮かべた。

馬騰殿・・か。

昴「・・・翠」

翠「何だよ」

昴「曹操が憎いか?」

ピシッ!!!

そう口にした刹那、俺の周りの空気が翠の殺気により弾けた。

翠「・・当たり前だろ。曹操は母様の仇だ。必ずあたしの手で殺す」

復讐・・。

昴「翠。復讐をしても馬騰殿は帰って来ないし喜ばない・・なんてきれいごとを言うつもりは毛頭ない。殺す殺されは乱世の常っていう言葉で片付けるつもりもない。君が曹操を殺せば今度は翠が曹操の臣下から憎しみを受けることになる」

翠「・・だから何だよ」

昴「殺されたから殺して。殺したから殺されて。そんな事を繰り返していたらいつまで経っても戦なんて、乱世なんて終わらない」

翠「・・何が言いたいんだよ。ご主人様はあたしに、曹操を許せとでも言うのかよ」

昴「・・復讐なんて、果たせても果たせなくても、ただ残るのは虚しさだけだ」

ドン!!!

翠が卓を強く叩く。

翠「ご主人様にあたしの何が分かるってんだよ!? たった1人の家族を殺されたんだ! 何も知らないご主人様が知った風な口を聞くな!」

翠はそれをいい放つと店を飛び出していった。

昴「翠・・」

復讐を口にした人間を俺は何人も見てきた。復讐を諦めきれなかった人間は結局最後は不幸だった。翠にはそうなってほしくない。

俺は精算を済まして店を後にした。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翌日、政務を中断して城の庭へと行くと、翠が自身の槍で素振りをして鍛練をしていた。俺は翠に近づいて行くと、翠はピタリと動きを止め・・。

翠「・・何か用かよ?」

昴「そうだな。俺と模擬戦をしないか?」

翠「ご主人様と?」

昴「ああ」

翠はしばし俺を見つめ・・。

翠「・・分かった、相手になるよ」

翠は十字槍を構えた。

俺は足元に落ちていた手頃な石を拾い。

昴「この石が地に付いたら始めるぞ」

翠は無言で頷く。俺は上空に石を放り投げ、村雨を構える。

トン!

地に石が付く。

翠「うらぁーーー!」

昴「ふっ!」

両者が同時に動きだし、

ガギン!!!

同時にぶつかる。

翠「まだまだ!」

ガギン! ギン! ギィン!

翠は間を置かずに連撃を繰り出す。

昴「・・・」

強い。錦馬超の名は伊達じゃないな。一撃一撃が重く、速い。

昴「はぁ!」

ガギン!!!

翠「ぐっ!」

翠を弾き飛ばし、距離を取る。

昴「・・・」

俺は翠が離れたのを確認すると村雨を鞘に納めた。

翠「・・何のつもりだよ」

昴「終わりだ。今の翠と戦っても鍛練にならない」

翠「・・どういう事だよ?」

昴「今の翠の武は曇り過ぎている。おまけに迷いだらけだ。これではお互いに何も得られない」

翠「っ!? ふざけるなよ、人の事分かった風な口ばかり・・」

昴「翠。涼州に行け」

翠「はぁ!?」

昴「涼州の1番大きい酒家を知っているだろ。そこに行け。今の翠に必要なものがそこにある」

翠「・・・」

昴「これは命令だ」

翠「・・分かった」

翠はすぐに準備へと向かった。

昴「涼州から帰って来たら、その時にこれを渡すよ」

俺は懐の1枚の手紙に手を触れた。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翠side

ご主人様の命令ですぐに準備をして涼州へと向かった。馬を飛ばしたからそう時間もかからずに着いた。

翠「懐かしいな・・」

つい最近まで居たはずなのに、すごく懐かしい。でも今は憎き曹操の属国になっている。

翠「ご主人様は何であたしをここに・・」

ご主人様は酒家に向かえって言ってたな。場所は分かる。涼州の街はあたしの庭みたいなものだからだ。

翠「・・ここだ」

酒家はすぐに見つかった。早速入ると。

「いらっしゃ・・!? 馬超様・・」

翠「あんたは・・」

そこには40歳ほどの女性がいた。

知ってる。この人はあたしや母様の元で侍女長をしていた人だから。

「お待ちしておりました、馬超様」

翠「待っていた?」

「御剣昴様より言伝てをいただきましたので。そのうちに馬超様がここを尋ねると」

翠「ご主人様が・・」

「ご案内致します。こちらへ・・」

あたしは案内に従って彼女の後を追った。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翠「―――それじゃ、今はあの酒家で?」

「はい。馬騰様が亡くなり、馬超様が涼州を離れてからはあそこでお世話になっております」

翠「そうか・・」

あたしは話をしながら彼女着いていく。

「着きました。こちらです」

翠「!? ・・これ・・は・・」

薄々予感はあった。あったけど・・。

「はい。馬騰様が眠られているお墓です」

翠「・・母・・様・・」

母様がここに・・。

「曹操の命により、私達侍女の手で葬りました」

翠「!? 曹操の命で!?」

「はい。こちらの流儀で丁重に弔うようにと・・」

翠「な・・ぜ・・」

「あの日、曹操が城にまで侵攻し、馬騰様は敵の手にかかることを潔しとせず、自ら毒をあおり、自害なさいました」

翠「自害? 曹操が殺したんじゃないのか!?」

「いえ、曹操が駆け込んだ時にはもう・・」

翠「そんな・・」

母様が・・・何で・・。

「その後、曹操の命により、私達侍女が馬騰様をこちらの流儀で丁重に葬らせていただきました」

翠「何で曹操は・・」

「・・・曹操は嘆いていました。馬騰様と戦場で相見えたかったと・・」

翠「嘘だ・・」

「曹操は馬騰様の亡骸を辱しめる者には厳罰を命じてまで馬騰様を労いました」

翠「・・嘘だ」

「曹操もこのような結末を望んでいなかったのでしょう」

翠「嘘だ嘘だ! あたしはそんなの信じないぞ!」

「馬超様・・」

そんなの・・あたしは・・。

「これが私の目で見たことの全てです」

翠「・・母様」

「御剣昴様に馬騰様が馬超様に宛てた手紙を預けました。もうご覧なりましたか?」

翠「ご主人様に? ・・あたしはそんなもの・・」

「きっと渡せなかったのでしょう。手紙は確かに預けましたので益州へ戻られましたらお受け取りください」

翠「・・分かった」

「では私はこれで・・」

彼女は去っていった。

翠「母様・・」

あたしはしばらく母様の墓を見つめていた。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


その後、あたしはすぐに成都へと帰還した。すぐさまご主人様の元へと向かった。

翠「ご主人様!」

昴「翠、戻ったか」

翠「ご主人様」

昴「・・場所を変えようか」

ご主人様が席を立ち、部屋を出ていった。あたしはその後を追った。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


街の外の森までやって来た。

昴「彼女には無事会えたみたいだな」

翠「ああ・・。ご主人様が涼州に行ったのはこのことを確かめるためだったんだな」

昴「ああ」

翠「それで、あたしに真実を知らせてどうしろって言うんだ?」

昴「曹操がこんな結末を望んでいなかったことは分かったはずだ」

翠「だから何だって言うんだよ!? それでも・・・!」

昴「ああ。曹操が原因なことには変わりはないだろう」

翠「だったら!」

昴「・・昔、同じように復讐を志した奴がいた」

いきなり何だよ・・。

昴「そいつは自分の主であり、愛し合った者を殺された」

翠「・・・」

昴「そいつは主を殺した相手を心から憎み、復讐することを誓った。でも、ある時そいつはある疑問を抱いた。この復讐は本当にその主のためなのかと」

翠「どういうことだよ・・」

昴「そいつは、自分の悲しみや怒りや苦しみを晴らす為に復讐してるのではないのではないかとな」

翠「!?」

昴「ある日、戦場で自分と同じ目をした者に会った。彼はそいつに自分はお前に無二の友を殺されたと言った。その者の目を見て言葉を聞いてそいつは復讐をやめた。復讐は復讐を生むだけという事に気付いたから。何より、そんな世界をそいつの主は嫌っていたから。・・・でもそいつはそれに気付くのが遅すぎた」

翠「遅すぎた?」

昴「気付いた時にはそいつの復讐にあまりにも多くの命と運命を巻き込んでしまっていたからだ」

翠「・・・」

昴「結局そいつは自分を許せなくなり、散っていった命に報い、償うために生涯戦場で戦い続けることを自らに課した」

翠「・・・」

昴「君の復讐が馬騰殿のためだって言うなら俺は止めない。止めることは出来ない。家族を殺された気持ちはその者にしか分からないから。でも、そうじゃないなら俺は翠を止める。翠にあんな運命を辿ってほしくないから」

翠「ご主人様・・」

ご主人様はとても悲しそうな顔で言った。もしかして、ご主人様の言うそいつって・・。

ご主人様が懐から一枚の手紙を取り出した。

昴「馬騰殿が君に宛てた手紙だ。今の君になら渡せる」

あたしはそれを受け取り、開いた・・。


















『翠へ、曹操の侵攻はもう防げない。私は自ら命を絶つ。曹操と戦って見たかったけどこの身体じゃ無理だろうしね。翠、あんたは間違っても私の復讐なんて考えるな。翠は馬家の頭領を務めなきゃならないんだ。憎しみに部下を巻き込んじゃいけないよ。強くなりなさい。心も身体も。最後に、翠の成長を見られなかった事が心残りだけど、私は天からいつでも翠の事を見守っているよ。それじゃ、先に天で待っている。生きるだけ生きたら会いにきなさい。 碧より』























手紙にはこう書いてあった。

ポタッ・・ポタッ・・。

あたしの涙が手紙を濡らす。

翠「母・・様・・」

あたしは手紙を抱きしめた。

翠「ご主人様・・。母様はさぁ、いつも厳しくて、あたしはいつも怒られてばっかりだった。でも・・すごく優しくて、あたしの憧れだった」

昴「・・ああ」

翠「大好きだったんだ! でももう母様はいないんだ・・」

昴「・・ああ」

翠「もう・・・いないんだ・・」

涙が止まらない。止めることができない。

翠「ご主人様。・・あたしはどうしたら良いのかな? どうしたら・・・、分からないよ・・」

昴「翠。君は優しさや愛、苦しみも悲しみも全て知っている。それを知っている君だから・・、俺達と一緒に作らないか?」

翠「えっ?」

昴「俺達と憎みや悲しみが生まれない、皆が笑って暮らせる世界を俺達と一緒に作らないか?」

翠「皆が・・・笑って・・」

昴「ああ。誰かが誰かを憎んで、殺しあって、そんなの悲しいだけだろ? そんなものは無くさなきゃいけない。だから、改めて力を貸してほしい。俺達の理想を果たすために」

翠「ご主人様・・・・っ!?」

ご主人様があたしを抱きしめる。

昴「今はいっぱい泣いたらいい。大好きなお母さんのために・・」

翠「ご主人・・様・・・・うわぁぁぁぁぁ!」

あたしは泣いた。ご主人様の胸で力いっぱい。

昴「それでいい。辛いなら泣いたっていいんだ。そして、泣いた分だけ強くなろう」

翠「うん・・・うん・・」

あたしはご主人様の胸で泣き続けた。大好きだった母様を想って・・・。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


辺りはすっかり暗くなってしまった。ご主人様はずっとあたしを抱きしめてくれた。嬉しい、嬉しいけど・・。

翠「すごく恥ずかしい//」

昴「皆には黙っておくよ」

翠「絶対だからな!」

翠「ああ。2人だけの秘密だ。」

鈴々やたんぽぽに知られたらずっとからかわれるからな。

昴「目、真っ赤だな」

翠「// ご、ご主人様のせいだからな!」

昴「俺のせいかよ・・」

ご主人様は頬掻きながら苦笑いをした。

翠「・・・ご主人様は強いな」

昴「どうしてそう思うんだ?」

翠「ご主人様は憎みも悲しみも全て受け入れてなお皆のために戦う事が出来るから」

昴「・・俺は強くない。俺は戦う事でしか皆を幸せに出来ない人間だからな」

翠「そんなことはない! ご主人様は強いよ! とても強くてとても優しい。そんなご主人様だから皆もあたしも大好きなんだ!」

昴「翠・・」

あれ? 今あたし、ご主人様に好きって言っちゃった・・。

翠「あ・・・あ・・」

どうしよう!? 勢いで告白しちゃったよ!

昴「翠?」

ご主人様が心配そうにあたしの顔を覗く。

翠「うあああああぁぁぁぁぁぁーーーっ!」

あたしは居たたまれなくなってその場から逃げ出した。

昴「おい、翠ー!」

ご主人様が後ろであたしを呼んだけど振り返らずにただひたすら逃げ出した。

しばらく走ったところで足を止めた。ご主人様はついてきていないみたいだ。

翠「明日からどんな顔して会おう・・」

告白して、逃げ出して、あぁもう恥ずかしいな〜//

翠「・・・ても、ご主人様暖かかったな・・」

あたしはご主人様と連合の時に初めてその目で目の当たりにしてその強さに憧れて、そして一目惚れをした。曹操に負けて、益州でご主人様と再会して、そして今、改めて思った。

















あたしはご主人様を好きになって良かった。














作ろう。ご主人様と桃香様と皆と一緒に、皆が笑って暮らせる世界を・・・。











続く

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