小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第62話〜合わさる力、足される力〜















昴「・・(カキカキカキカキ)」

今日も楽しく政務をしている。

昴「・・・(カキカキカキカキ)」

今日も楽しく政務・・。

昴「・・・はぁ」

仕事量多いな・・。益州を平定してから大改革をしたため、おのずと仕事量は増える。何せ決済や判断が俺にしか出来ないからな。

昴「・・・一旦休憩しよう」

俺は執務室を出た。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴「何か面白い事ないかなかな・・」

城の廊下を何かを探しながら歩いている。すると・・。

?「このー!」

?「ふん!」

ガキン!!!

昴「ん?」

何だ? 声は庭から聞こえてくるな。

昴「・・・うん。面白そうだから行ってみよう」

俺は城の庭へと向かった。

















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


焔「どうした! その程度か?」

蒲「まだまだ〜!」

庭に来てみるとたんぽぽと焔耶がいがみ合っていた。あれは模擬戦か? それとも喧嘩か?

昴「2人とも何してるんだ?」

蒲「あ、ご主人様!」

焔「お、お館様!」

蒲「ちょっとご主人様聞いてよ〜! 焔耶の奴が・・」

焔「何!? 貴様が・・」

昴「あ〜もう、喧嘩するなって」

蒲「むぅ」

焔「むぐっ」

昴「それで、原因は何だ?」

蒲「焔耶の奴が自分の方がご主人様に相応しいって言うから・・」

焔「貴様がお館様は私には相応しくないと突っかかってきたのだろう!」

昴「はいはい、喧嘩は止めろって」

蒲「・・じゃあご主人様はたんぽぽとこいつ、どっちが好き?」

昴「は?」

蒲「もちろんたんぽぽだよね?」

焔「私に決まっているだろ!」

昴「・・俺にとって2人とも大事な仲間だ。優劣なんてないよ」

蒲「・・やっぱり。ご主人様の事だからそう言うと思ったよ」

たんぽぽが不満げに言う。

焔「誰に対しても平等に扱ってくれる所はお館様の美点でもありますが・・」

同じく不満げな焔耶。

昴「良いじゃんか。俺達の国では上なし下なし、皆対等で良いだろう? 俺はその手の争い事は嫌いだからな」

まあ、形式上の立場はあるだろうけど。

蒲「・・はぁい。分かったよ」

焔「・・お館様がそうおっしゃるなら」

昴「2人とも仲良くな」

蒲・焔「ふん!」

2人ともそっぽを向く。まあ、仲良くなんて人から言われてするものじゃないよな。

蒲「ところでさ、ご主人様政務は終わったの?」

昴「まだ終わらないよ。今は休憩中だ」

蒲「だったらさ、たんぽぽと手合わせしてよ! 一度で良いからご主人様と手合わせしてみたかったんだ」

昴「手合わせか・・・ふむ」

焔「アホか、貴様では相手にすらならん。お館様、是非私と・・」

蒲「あんた前にご主人様にコテンパンにされたじゃないの! だからたんぽぽとやるの!」

焔「何をー! 貴様・・」

昴「だから喧嘩するなって! ・・良いよ、両方ともやろう」

蒲「ならたんぽぽからね!」

焔「お前は後で手合わせしてもらえ。お館様、まずは私から・・」

昴「優劣はつけないって言っただろ?2人いっぺんにやろう」

蒲「2人同時に?」

焔「いや、それはさすがに・・」

昴「それくらいがちょうど良い。やろう」

蒲「むっ」

焔「・・お館様言えどあまり侮られたくはないですね」

昴「侮ってもいなければ自惚れているわけでもない。2人も武人なら言葉ではなく、行動で示せ」

蒲「・・良いよ。後悔させてやるんだから」

たんぽぽが槍を構える。

焔「怪我をしても知りませんよ?」

焔耶も金棒を構える。

昴「遠慮はいらない。来い」

蒲「いっくよ〜! てぇ〜〜いっ!」

ヒュン! ヒュン! ヒュン!

たんぽぽが槍を連続で繰り出す。

昴「甘い」

それを全て避ける。

焔「どけ! 私が行く! はぁっ!」

ドコーン!!!

焔耶が金棒を繰り出す。

昴「動きが単調過ぎる」

俺は横にひとっ飛びしてそれを避ける。

昴「どうした? その程度か?」

蒲「!? まだまだ〜!」

焔「行くぞ!」

2人が同時に俺に飛び込む。

焔「うりゃぁーーっ!」

蒲「てりゃ〜〜っ!」

昴「ふっ!」

蒲「っ!?」

俺は焔耶の金棒の先端を側面から手のひらでいなし、金棒の軌道をたんぽぽに反らす。

ガキン!!!

たんぽぽは咄嗟に槍で防ぐ。

蒲「ちょっ、ちょっと! 危ないじゃない!」

焔「ボーッとしてる方が悪い!」

昴「仲間割れか? そんなんじゃ当てる事も出来ないぜ?」

蒲「うぅ〜! なら・・あっ!?」

たんぽぽが俺の後方を指差す。

昴「ん?」

俺は指された方を向く。

蒲「隙あり〜!」

その隙にたんぽぽが槍を繰り出した。

ビィン!

蒲「嘘!? 指一本で止めた!?」

俺は左手の人差し指に氣を集中させて受け止めた。

焔「これで、どうだー!」

そのさらに隙をつき、焔耶が金棒を振るった。

ガツッ!!!

焔「くっ!」

俺は右手に氣を集中させて金棒を受け止めた。

昴「終わりか?」

蒲「くっ!」

焔「ちぃっ!」

2人が一度俺から離れ、

蒲「でぇーい!」

焔「でりゃあ!」

2人が同時に俺に突進する。

昴「まだまだだな」

俺は人差し指と中指を束ね、槍の穂先の腹を突いて軌道を変え、金棒を先ほどと同じように側面を手のひらでいなし軌道を変え・・。

昴「はぁ!」

俺は2人の腹に掌を打ち込んだ。

蒲「かはっ!」

焔「ぐふっ!」

2人が後方に弾かれた。俺は倒れている2人に近づき・・。

昴「お互いがお互いの足の引っ張り合い。話にならないな」

蒲「・・・」

焔「・・・」

昴「期待外れだ」

俺はそれだけ告げて、執務室に向かった。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


昴「言い過ぎたかな?」

叩きのめした後に突き放した言い方をしてしまったが・・。

昴「2人は仲は悪いみたいだけど、相性は良さそうなんだけどな」

ま、武人ってのは基本的に負けず嫌いだからこれで自信喪失することはないだろ。

俺は政務に戻った。



















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※※※※


蒲公英・焔耶side

蒲「ご主人様、強いね」

焔「当然だ。我らがお館様だぞ?」

蒲「たんぽぽ達、弱いね」

焔「・・・」

蒲「ご主人様が圧倒的な強さを持ってるのは知ってる。でも・・・悔しいよ」

たんぽぽが拳を握る。

焔「・・くそっ!」

焔耶が地面を殴る!

蒲「このままじゃ終われないよ。焔耶。力、貸しなさいよ」

焔「・・・良いだろう。貴様も力を貸せ」

2人は手を取り合った。



















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※※※※


翌日、早々に政務を終えて、城を歩いていると・・。

蒲「ご主人様!」

焔「お館様!」

昴「おっ? どうした?」

蒲「もう一回だけ手合わせして!」

焔「お願いします!」

2人が俺に詰め寄る。

昴「良いよ。もう政務は終わったしな」

俺達は城の庭に向かった。




















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※※※※


昴「いつでも良いぞ」

俺は構える。

蒲「それじゃ・・」

たんぽぽが槍を構え・・。

焔「行くぞ!」

焔耶が金棒を構え、そして、俺に飛び込んだ。

蒲「てりゃ! てりゃ! てりゃ〜!」

たんぽぽが昨日以上に手数を増やし、槍を繰り出した。

昴「へぇー、手数で勝負してきたか。だけど星に比べりゃ遅い」

俺は槍の柄を掴む。そのまま打撃を繰り出そうとすると・・。

焔「こちらを忘れてもらっては困ります!」

昴「ちっ!」

俺は槍を放し、金棒を避ける。するとすぐさまたんぽぽが追い討ちをかけてきた。

蒲「まだまだ〜!」

再び突きの嵐が俺を襲う。

俺は避け続けるが・・。

昴「ふっ!」

俺は槍の軌道を束ねた指で反らし、たんぽぽに拳を打ち込もうとすると・・。

蒲「にひっ♪」

昴「っ!?」

たんぽぽがかがむと、その後ろから焔耶の金棒が飛び出してきた。

昴「ま、ずい・・」

俺は咄嗟に上体を後ろに反らし、金棒を避け、そのままバク転の要領で後ろに飛んだ。

やり過ごした・・。そう思ったその時、

蒲「かかった♪」

昴「げっ!?」

足元からしゅるしゅるしゅるっと音がし、俺の足の周りにから土煙が立ち上がる。

昴「うおっ!?」

俺の身体が宙に舞った。

昴「ちっ!」

俺はすぐさま手刀で縄を切り、脱出する。だがそれでは終わらず、2人が着地場所に回り込み・・。

蒲「でぇーい!」

焔「でりゃあ!」

同時に攻撃を繰り出した。

昴「くそっ!」

ガキン!!!

俺は朝陽と夕暮を引き抜き、2人の一撃を止めた。

蒲「あ〜んもう、これも止められた」

焔「さすがはお館様だ」

焦った。今のはマジにヤバかった。

昴「ふぅ・・」

俺は一度深く呼吸をし、双剣を鞘に納めると・・。

昴「はぁ!」

縮地で一気にたんぽぽに飛び込んだ。

蒲「えっ・・。」

たんぽぽはあまりの事に反応出来ず・・。

ガスッ!!!

蒲「ぐっ!」

無防備なまま俺の一撃をもらう。

焔「この!」

焔耶が俺に一撃を繰り出した。が・・。

焔「っ!?」

俺は跳躍してそれを避け、空中で焔耶の背中に一撃を入れる。

ドォン!!!

焔「うぐっ!」

焔耶はそのまま地に伏した。

昴「ふぅ」

決着はついた。

蒲「また負けた・・」

焔「2人で力を合わせ、不本意ながら策まで練ったというのに・・」

昴「さすがだよ。まさか得物を抜くことになるとはな」

蒲「でも一撃も・・」

昴「最後の最後。俺に余裕は一切なかった。2人は俺に本気にさせたんだぜ?」

蒲「・・・」

焔「・・・」

昴「1に1を足しても2にしかならない。けど1人と1人が足し合わせると1にしかならないこともあれば3にも4にもなることもある。どうだ、2人で力を合わせてみて?」

蒲「・・・」

焔「・・・」

昴「お互いもっと歩み寄って、認め合えばもっと強くなれるしお互いを高め合える。かもしれない。ま、早い話、もっと仲良くな」

俺はその場を後にした。とりあえず2人にしたほうが良い。そう思ったから。


















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※※※※


蒲公英・焔耶side

蒲「・・あんた、なかなかやるじゃん」

焔「・・貴様もな」

蒲「頑張ればたんぽぽもお姉様みたいに強くなれるかもしれない。・・たまにはあんたも鍛練付き合いなさいよ」

たんぽぽが焔耶に手を差し出す。

焔「ふん! まあ良いだろう」

焔耶がその手を掴む・・・が。

蒲「えいっ!」

焔「うぁっ!?」

ズシーン!!!

たんぽぽが掴んだ手を引っ張り、焔耶は地面に勢い良く倒れ込んだ。

蒲「でも、ご主人様に相応しいのはたんぽぽなんだからね!」

焔「・・この小悪魔娘が・・」

蒲「べーだ!」

たんぽぽが逃げ出した。

焔「待て! 貴様ー!」

それを焔耶が追いかける。

2人はお互いを認め合ったが、仲良くなるのはまだ先の話であった。










続く

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真・ラジオ恋姫†無双 Vol.3 再編集版
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