小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第64話〜最強の武人、優しき女の子〜















昴「はぁ!」

恋「ふっ!」

ギィン! ガキン!

俺の村雨と恋の方天画戟がぶつかる。

昴「やるな、これならどうだ?」

俺は1度距離を取り、村雨を鞘に納めた。

昴「北辰流抜刀術・・・。」

氣を足に集中させ、一気に恋との距離を詰める。

昴「疾・風!」

俺は鞘から村雨を一気に引き抜く。鋭い斬撃を恋に浴びせる。

恋「くっ!」

恋は上体を後ろに下げ、俺の斬撃をギリギリで避ける。

昴「まだだ!」

俺はすかさず鞘での一撃を恋に繰り出す。

恋「同じ手は喰わない」

恋は自身の戟の柄で鞘の斬撃を防いだ。

昴「百も承知だ」

俺は鞘の斬撃をぶつかった直後に鞘から手を離し、斬撃の勢いを利用して体を回転させ、右足での蹴りを浴びせた。

ドカッ!!!

恋「ぐっ!」

恋は俺の蹴りをもろに浴び、後方に弾かれる。が、恋はすぐさま体勢を整える。

恋「まだまだ・・・っ!?」

俺は蹴りを浴びせた直後に間髪入れずに恋に飛び込み、右手で恋の方天画戟を抑え、左手を手刀にし、首筋に突き付けた。

恋「・・恋の負け」

昴「10本目、俺の勝ちだな」

俺は恋の頭を撫でた。

恋「ん// ・・・昴強い」

恋と10本勝負をし、俺は7本勝利した。

昴「恋だって強いよ。1本たりとも楽に勝たせてもらえた勝負はなかったよ」

恋「・・昴どんどん強くなる。初めて恋と戦った時より強い」

昴「まあ、俺も鍛練を毎日積んでるからな」

かなりギリギリの鍛練だけど。

恋「昴、どうしてそんなに強くなる? 昴充分に強い」

昴「ん〜、そうだな・・」

大まかな理由は刃だけど、やっぱり1番の理由は・・。

昴「守りたいからさ」

恋「守る?」

昴「ああ。強くなれば自分の大切なものを守れるだろう?」

恋「・・(コクッ)」

昴「だから強くなるんだ。その中にはもちろん恋も入ってるからな」

俺はもう一度恋の頭を撫でた。

恋「ん。・・恋は強い」

昴「関係ないよ。恋は名だたる武人の前に、可愛い女の子だかな」

恋「っ// ・・恋、可愛い?」

昴「うん。可愛いよ」

恋「可愛い・・、可愛い・・」

恋はうつむきながら何か呟いている。

昴「? ・・まあいいか、今日は模擬戦に付き合ってくれてありがとな。また頼むよ」

俺は恋に礼を言い、その場を後にする。

クイッ。

昴「?」

何か引っ張られる感触したので振り返ってみると、恋が俺の袖をちょんと掴んでいた。

昴「どうした?」

恋「昴、明日お仕事ある?」

昴「どうしてだ?」

恋「恋、昴と2人でお出掛けしたい」

昴「明日か・・」

明日ももちろん仕事はある。

恋「・・駄目?」

うっ・・・そんな顔されたら断れないよ。

昴「大丈夫だよ。お出掛けしようか」

恋「ホント? なら約束」

昴「ああ。約束だ」

俺は恋の小指に俺の小指を絡ませた。



















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴「さてと。やるかね」

俺は恋との約束を守るために朱里達に明日の分の仕事をまわしてもらった。ただその量はとてもじゃないが明日の朝までに終わる量じゃない。

昴「・・あれ、やるか」

俺が急いで仕事を終わらせたい時にやる、仕事の方法。まず書簡を2つ並べ、両手に筆を持ち、そして・・。

昴「・・(カキカキカキカキ・・)」

右手と左手を同時に動かし、2つの書簡を同時進行で片付ける。終わればまた2つ並べ、同時進行で片付ける。これをひたすら繰り返した。

















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


昴「終わった・・」

時刻は早朝。日の入りの直前くらいの時間に全ての書簡を終えることができた。

昴「・・超疲れた・・」

2つの書簡を同時進行に進めるあのやり方。仕事を約4倍の速さで終わらせる事が出来るが、疲労も4倍である。

昴「・・・寝る」

俺は寝台に倒れ、そのまま眠りについた。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


あれから数時間ほど眠り、約束を果たすために城門の前まで来た。同じ城にいるんだから一緒に行けばいいのでは? とも思ったんだが、何故か城門で待ち合わせすることになった。

時間にして10分ほどくらい城門の前に立っていると・・。

恋「お待たせ」

昴「いや、たいして待って・・・おお」

振り返るとそこには恋がいた。しかし、そこにはいつもの服ではなく、丈が若干短めのチャイナドレスを着た恋がいた。出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいるため、その姿はかなり色っぽく、かなり綺麗だ。

恋「・・どう?」

昴「・・ああ。見違えた。良く似合ってるよ」

恋「// ・・良かった」

恋はうつむき、顔を赤らめた。

昴「・・行くか」

恋「ん」

恋は俺の腕を自分の腕を絡ませた。

昴「えっと、・・恋?」

恋「駄目?」

恋は上目遣いで俺に尋ねる。

昴「うっ・・、いいよ。恋の好きなようにしてくれ」

恋「うん」

俺達は腕を組み、街へと向かった。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


街をブラブラと散策しながら2人で歩いている。途中、飯店の店主が・・。

「将軍! 今日は寄っていっていただけないんですか?」

次々と飯店の店主が声をかけてくる。次第に食べ物でいっぱいになる。

昴「恋、良かったな」

恋「〜♪」

恋はご機嫌だ。一度近くの卓で買った食べ物を片付けると、今度は服屋に向かった。

昴「何か袖を通してみるか」

恋「・・(コクリ)」

どれにしようか・・まずはこれにしようか。

昴「恋、これなんか似合うんじゃないか?」

俺が差し出したのは緑のノースリーブの服。以前に稟が着ていた服だ。

恋「・・(コクリ)」

恋は服を受け取り、更衣室へと入っていった。数分待っていると・・。

恋「・・どう?」

昴「・・うん。なかなか似合ってるよ」

実際良く似合っていた。

昴「次はこれなんかどうだ?」

次に差し出したのは、スリットが入り、胸を強調した例えるなら雪蓮が着ている服だ。

恋「・・(コクリ)」

恋は再び更衣室に向かった。

数分後・・。

昴「おお」

これもなかなか似合っていた。恋はかなりスタイルが良いので、その出で立ちはとても色っぽい。

それからいろいろな服を着てもらった。派手な服。落ち着きのある服。メイド服。何故かあったナース服。etc・・。

どれも良く似合っていた。何か気に入った服を贈ろうとしたが恋はどれも選ばなかった。気に入った物がなかったのか、それとも遠慮したのかは分からないが。店を出ようとした時・・。

恋「・・(ジー)」

恋が何かを見つめている。恋の視線の先には装飾あしらった髪留めがあった。

昴「これが欲しいのか?」

恋「・・(コクッ)」

昴「そうか、店主、これを1つ・・。」

もらおうかと続けようとすると、恋が手で制した。

昴「どうした?」

恋「・・お揃い」

・・・ああ、なるほど。

昴「俺と2人でって事だな?」

恋「・・(コクッ)」

昴「分かった。店主。この髪留めを2つほど欲しい」

「毎度!」

店主は髪留めを2つ包み、俺に渡した。会計を済まし、髪留めを恋に渡した。色は俺が青色で恋が桃色だ。俺は早速今付けている髪留めを外し、それを付ける。恋は前髪に付けた。

昴「良く似合ってるよ」

恋「ふふっ。昴も似合ってる」

昴「ありがとな」

俺達は再び街を歩き始めた。


















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※※※※


しばらく街をブラブラした後、街の外にある森へ散歩に向かった。自然に癒されながら歩いていると、小川が見えてきた。

昴「せっかくだし、泳いで行くか?」

恋「ん」

恋は頷き、服に手をかけた。

昴「待った」

俺はそれを止める。

恋「?」

昴「恋、俺が目の前にいるんだから服を脱いじゃ駄目だろ?」

恋「?」

何を言っているのか分からないと言った顔だ。

恋「・・これから水に入る」

昴「そうだな」

恋「服を脱がないと、濡れる」

昴「全くそのとおりだ」

恋「服が濡れると愛紗が怒る」

昴「まあ分かるけど・・」

言いたい事は分かるんだけど。

昴「言いたい事は分かるぞ。でもな、女の子が男の前で簡単に裸を見せたら駄目だぞ?」

恋「? ・・ここには恋と昴しかいない・・」

昴「いやだから、俺がいるだろ?」

恋「・・昴なら見られてもいい」

昴「うーん、その言葉は嬉しいが俺でも駄目だ。いいか、恋は可愛い女の子なんだからこれからはもう少し恥じらいを持たなきゃ駄目だぞ?」

恋「・・・・分かった」

昴「分かってくれたか」

恋「昴以外の男には恥じらいを持つ」

やっぱり分かってない。

昴「はぁ・・、とりあえず、これに着替えてくれ」

差し出したのは上下白のビキニタイプの水着だ。いつか桃香や愛紗辺りに着てもらおうと仕立てもらった物だ。

昴「あそこの物陰で着替えてきてくれ」

恋「分かった」

恋は水着を受け取り、物陰に向かった。恋なら水着が良く似合いそうだ。裸よりはマシだからこれも役得という事にしよう。



















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※※※※


やがて水着を身に付けた恋がやってきた。やっぱり良く似合ってるな〜。俺も上着とズボンを脱ぎ、下着1枚になり、川へ入った。川の水はとても気持ち良かった。2人で一緒に泳ぎ、水を掛け合ったりして楽しい時間を過ごした。



















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※※※※


夕暮れ近くまで遊び、俺達は城へと帰る事にした。その道中・・。

昴「・・・」

恋「・・・」

俺達は無言で歩いていた。

昴「・・気付いているか?」

恋「・・(コクッ)」

恋が頷く。俺達が開けた場所にくると、突如後方から大人数が飛び出した。数は100人ほどか。

昴「・・何か用か?」

「大人しくしてもらうか」

昴「随分と物騒な物を持ってるんだな」

各々が剣やら槍やらを持っている。

「お前達には人質になってもらう」

昴「人質?」

妙な事を言うな。こいつらは賊ではないのか?

「お前達には劉備を誘き寄せる餌になってもらう」

桃香を・・、こいつら・・。

昴「お前らただの賊じゃないな」

「ご名答。俺達は劉璋軍の残党だ」

やはりか。

昴「なるほど、劉備を呼び出してどうするつもりだ?」

「知れた事を、殺すに決まってるだろ」

昴「劉璋の敵討ちか?」

「はっ! あんなクソガキなんざどうでも良い。はっきり言って劉備が邪魔なんだよ。せっかくあのクソガキの元で美味しい思いしてたのによ、いきなり他所からやってきて我が物顔で益州の太守になりやがって。挙げ句の果てには俺達を追放しやがって!」

なるほど。こいつらは益州平定直後、俺達は賄賂や横領等、それらを行っていた奴等を追放した。こいつらはその連中か。本来なら斬首なんだが、桃香の温情により追放のみという事になった。

「劉備ってのは馬鹿な甘ちゃんだ。人質をとりゃ前に出てくるだろ。その時に殺してやるよ。ま、殺す前に少し楽しませてもらうけどよ。ギャハハハ!」

一斉に劉璋の残党の奴等が笑い出す。

昴「クズだな」

「あっ?」

昴「生きる価値もない。せっかく拾った命を無駄に過ごす、はっきり救いようがないな」

「お前、自分の立場分かってんのか? 人質だからって殺されないとでも思ったか?」

昴「分かってないのはお前らだ。やはりクズだけに運すらも天から見放されてるな。人質に狙った相手が天下の飛将軍、呂布に、天の御遣いなんだからな」

「「「!?」」」

残党軍が驚愕する。

「呂布って、あの呂布かよ・・」

「天の御遣いって、その呂布より更に強いあの御遣いか?」

「マジかよ・・」

奴等が動揺している。

「は、ハッタリだろ?」

昴「なら試してみるか?」

俺が構える。

「ふ、ふん! 仮にそうでもこいつらは今丸腰だ。今なら俺達でも勝てるぞ!」

あー、そういや俺達は今武器を持ってなかったな。俺は劉璋残党軍の中の戟を持っている奴の目の前に縮地で飛び込む。

シュバッ!!!

「ぎゃは!」

驚く間もなくそいつの首を手刀ではね飛ばした。

昴「恋、こいつを使え。方天画戟と勝手が違うが、ないよりはマシだろ」

恋「・・(コクッ)」

俺は戟を放り投げ、恋はそれを受け取った。

昴「それじゃ、こいつらを片付けるか」

俺達は背中合わせに合わせに立ち、殲滅を開始した。


















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※※※※


戦いはすぐさま終わった。たかが100程度では俺達の敵ではなかった。

「ひっ! 助けてくれ!」

昴「・・お前達には選択肢があった。心を入れ替え、真っ当に生きるっていう選択肢がな」

「と、投降する。もう抵抗はしない!」

昴「俺は桃香ほど甘くない。人を捨てたお前に生きる道はない」

「ひぃっ!」

後退りで俺から逃げる。

昴「?」

こいつ・・、何か狙ってる・・っ!?

奴の後方の茂みから弓隊の姿が見えた。

「やれぇ!」

ヒュヒュヒュヒュン!

弓が一斉に放たれる。

恋「昴!」

キンキンキンキィン!!!

恋が俺の前に立ち、飛来する矢を全て弾き落とした。

昴「ちぃっ!」

俺は足に氣を集中させ・・。

昴「猛虎・蹴撃!」

大きな氣弾を弓隊に撃ち込んだ。

ドコーン!!!

「「「ギャアー!」」」

弓隊は残らず吹き飛んだ。

凪、お前の技を拝借させてもらったぜ。

恋「許さない」

「ひぃっ! 勘弁してくれ!」

恋「死ね」

ザシュ!!!

「がはっ!」

恋は賊の脳天に戟を振り落とし、真っ二つにした。

恋「昴、大丈夫?」

恋が俺に抱きつき、心配そうに尋ねた。

昴「おかげさまでな。それにしても・・」

辺りを見渡し・・。

昴「折角のお出掛けに水を差してくれたな」

恋「いい。楽しかった」

昴「・・そうか。なら良かった」

ま、旧劉璋の残党を片付けられたからよしとするか。

恋「・・・昴」

昴「ん、どうし・・っ!?」

チュッ・・。

返事をしようと刹那、恋が俺の口を塞ぐ。

昴「恋!?」

恋「恋、昴の事好き。これからは恋が昴の事を何があっても守る」

昴「そ、そうか。頼もしくて助かるよ」

恋「ずっと昴の傍にいる。昴から離れない」

昴「ありがとな、恋」

俺は恋の頭を撫でた。


















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※※※※


その後、俺達は城に戻り、事の顛末を報告し、再度益州領土内の賊や旧劉璋の残党を討伐を強化する事が決まった。次の日、俺はいつものように政務をしているのだが・・。

昴「・・・」

桃「・・・」

愛「・・・」

皆が一様に俺の方を見ている。

恋「♪〜♪」

恋が俺の横に座り、俺に寄り添っている。

愛「ゴホン! 恋。ご主人様は政務中だ。用がないのなら・・」

恋「恋はずっと昴と一緒。だから傍にいる」

愛「ご主人様。ご主人様からも何かおっしゃってください!」

昴「まあ、別に俺は大丈夫だから・・」

愛「むぅ・・」

愛紗は何やら唸っている。

桃「なら、私もご主人様の隣で・・」

愛「駄目です!」

桃「う〜、恋ちゃんだけずるい〜!」

その後、恋はずっと俺の傍にいた。食事の時も、寝る時も、風呂の時でさえも。嫌ではないんだけど、まあ、ねねには襲撃されるし、周りからは嫉妬の視線が・・。

さすがに少しいきすぎていたので恋を説得し、ほどほどにしてもらった。いや〜、参った参った。











続く

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