小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第66話〜南蛮平定戦、追いかけっこ〜















昴side

五胡を撃退してから2月ほどが経った。現在、俺達は劉備軍の重臣が集まり、軍議を行っている。議題は南蛮制圧。

朱「現在、曹操さんと孫策さんは、自分たちの勢力を広げることに腐心しています。これは来るべき決戦に備えてのことでしょう」

雛「すでに大陸の趨勢は、終端に向かって突き進んでいますからね」

朱「今、この時期にどれだけ多くの領土を手に入れられるか。その一点こそが勝敗の分かれ道かと」

桃「それで南征?」

愛「はい。前の戦いでも分かるように、五胡が控えている西方に手を伸ばすのは、得策ではありません」

焔「精強な五胡兵と事を構えるには、時間がなさ過ぎるという事だな」

翠「かといって、東には孫策。北には曹操。あたし達が領土を増やそうとするなら、必然的に南になるもんなぁ」

鈴「でも、南にある南蛮って国の事、鈴々は良く知らないのだ。どんなとこなのだー?」

朱「未開の地・・と言っても過言では無いでしょうね。暑くて、虫がいっぱいいて、密林が生い茂っているところです」

蒲「うぇ〜、虫がいっぱいって。そんなところ行きたくないよぉ」

焔「なら行くな。お前の分の功名は私がもらっておいてやろう。貴様は成都で1人ブルブル震えておけば良い」

蒲「・・誰があんたなんかに譲るもんですか。胸ばっかデカイだけの筋肉馬鹿にね」

焔「なにぃ!?」

昴「ハイハイ、2人供その辺にしておけ」

俺は2人の間に入り、仲裁をする。

蒲「むぅ・・」

焔「お館様がそうおっしゃるなら・・」

2人はしぶしぶ承諾する。

桃「ところでご主人様」

昴「どうした?」

桃「鈴々ちゃんの言う通り、南蛮についての情報が少なすぎると思うんだけど・・」

昴「確かにな」

五胡と同様、南蛮についても情報が少ない。だが・・。

昴「それでもやらなければならない。勢力拡大もそうだが、南方の村が襲撃を受けている報告が頻繁に来ているからあまり悠長に構えている時間もない」

桔「お館様のおっしゃる通りですな。近頃、南方の村々では桃香様に対する不満が出ていると聞く。このままではまずい」

星「民の不満を霧散させるために、南蛮を制圧せねばならんか・・」

紫「しかし、勝ち目はあるのでしょうか?」

雛「敵勢の情報が不足している今、勝ち負けを予想することは出来ません。だけど、多分、大丈夫だと思います」

昴「雛里の言う通りだ。俺達は強い。将も軍師も兵も、な。とりあえず、想定される状況を吟味して、可能な限り対応出来るように準備したあとで出陣するとしよう」

桃「そうだね。じゃあ朱里ちゃん、雛里ちゃんはご主人様の方針を基に出陣準備を整えてね」

朱・雛「了解です」

桃「愛紗ちゃん、星ちゃんは軍部のまとめ役をお願いね」

愛・星「御意」

桃「他の皆もしっかり準備をしてね」

昴「俺はどうする?」

桃「ご主人様は待機だよ」

昴「性に合わないな。手伝うよ」

桃「だ〜め! ご主人様、少しは皆を信頼して?」

桔「桃香様の言う通りです。お館様はドーンと構えていてくだされ」

桔梗が俺に言う。周りを見渡すと皆も同意見のようだ。

昴「・・分かった。皆、任せるよ。しっかり頼むぜ」

「「「「了解!」」」」

皆が南征への準備に向かった。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


やがて出陣準備が整い、南征へと侵攻した俺達劉備軍。たどり着いてみるとそこは常夏のような場所だった。

桃「ほへぇ〜、暑いね〜・・」

確かに暑いな。さすがの俺も外套と上着を脱いでいる。

昴「こんだけ暑いと水分補給は必須だな。朱里、雛里、水と食料の確保は大丈夫か?」

朱「あまり大丈夫とは言えないかもしれません」

雛「この暑さでは兵糧が持たないでしょうね」

昴「だろうな。こんだけ気温と湿度が高けりゃな・・。とりあえず水の確保だけはしっかりしとかないとな」

朱「しかしこの辺りの水は毒水と言われ、漢朝の人間が飲むとお腹を壊してしまいます」

雛「恐らく、何かの呪いが掛かっているのかと」

昴「腹を壊すのは呪いのせいじゃなくて生水の中にいる細菌のせいだ。それを取り除けば飲めるようになるよ」

朱「さいきん、って何ですか?」

昴「人の目には見えないほどの小さい生き物の事だ。」

雛「お水の中に生き物が居るんですか?」

昴「場所にもよるがそうだ。風邪を引いた時、咳が出たりするだろ? あれなんかはその細菌のせいだ。だいたいの細菌は人間には害はないが中には体に不調を起こしたりするものがある。まあ人間を助けてくれるものもあるけどな」

朱「はわわ〜」

昴「その細菌を取り除くための浄化装置はすでに作るように指示を出してるからすぐに完成するはずだ」

雛「さすがご主人様です」

桃「何にせよ、短期決戦ってことかな」

昴「そういう事だ。・・ところで、南蛮の国の特徴は分かるか?」

朱「そうですねぇ〜、まずこの国の住民は家では無くて洞穴に住んでいるそうです」

雛「獣じみた格好をしていたり、見たこともない食べ物を食べたり・・」

ふーん、まるで大昔の暮らしだな・・。

昴「要するに異なる文化の国、か。規模は?」

桔「それほど大きな部族はおらんだろうな」

愛「何故そう言えるのだ?」

焔「南蛮の人間は部族単位で動く。部族には必然的に口を賄える人数しかいない」

昴「なるほど」

桃「じゃあ、狙い通り、短期決戦で決着を付けられるかな?」

鈴「それは無理なのだ。だって地の利は奴らが持ってるんだから」

桃「あ、そっか。うーん・・・じゃあ長期戦になるかもしれないねぇ」

桃香が深くため息を付く。その時・・。

?「当然なのにゃ!」

どこからともなく声が響いた。

愛「誰だっ!?」

孟「我こそは南蛮大王孟獲なのにゃ! ショクとか言う奴らめ! 我らの縄張りに入ってきて、タダで帰れると思ったらいかんじょ!」

前方から愛らしい出で立ちの小さな猫耳少女が現れた。

桃「うわー。可愛い!」

孟「にゃ?」

桃「ねぇねぇご主人様! この子、ぬいぐるみみたいで可愛いよ! 耳までついてる!」

昴「・・・」

桃「ご主人様?」

昴「・・(ウズウズウズウズ・・)」

桃「ご、ご主人様?」

ギュッ!

孟「にゃっ!?」

俺は孟獲なる子を抱き抱え・・。

昴「持って帰る」

俺は来た道を引き返した。

孟「ニャー! みぃは南蛮の王様なのにゃ! 離すにゃ!」

ナデナデナデ・・。

孟「・・にゃぁん」

昴「一緒に帰ろうな。美味しいご飯や綺麗な服もいっぱいあるからな」

愛「・・ご主人様! それではまるで人拐いです! 目を覚まして下さい!」

昴「はっ! 俺は何を・・」

俺は抱き抱えていた孟獲を降ろす。

孟「・・危うく拐われるところだったにゃ」

昴「ところで、君がここに来たって事は戦いに来たのか?」

孟「そうなのにゃ! お前達の相手をするにゃ!」

愛「ならば話が早い。南蛮王の素っ首、この場でたたき落とし、後顧の憂いを断たせてもらおう」

愛紗が青竜刀を構える。

孟「上等なのにゃ! 南蛮大王孟獲が相手をするじょ!」

孟獲が先に大きな猫の手の付いた鈍器を構えた。

ミ「みぃ様がんばるにゃー!」

ト「つぎトラ! トラがたたかうにゃ!」

シ「みぃ様おなかへったぁ〜」

何やら猫娘達(虎か?)が応援を受け、孟獲は勇ましげに武器を構えた。

孟「ふーっ、みぃは強いじょ! 泣いて謝ったら許してやるじょ!」

愛「・・・ご主人様」

昴「・・戦えないだろ?」

愛「・・はい」

だろうな・・。

昴「良いよ、下がっといて」

愛「す、すみません。はぁ〜・・」

恋と同じ匂いがする相手じゃ、愛紗は戦えないだろうな。

昴「よし、なら俺が行こう」

俺が前に出る。

孟「むむむっ、何にゃ、お前は?」

昴「俺は御剣昴。蜀の国の代表の1人だ。」

孟「にゃら、まずはお前から倒してやるじょ!目にも止まらぬみぃの攻撃で、あっという間にオダブツにしてやるのじゃ! 行くにゃ!」

孟獲が武器を俺に振り降ろす。

ドォーン!!!

俺は半歩後ろに下がり、それを避ける。

昴「はずれ」

孟「ぐぬぬー! 避けちゃダメなのにゃ! じっとしとくのにゃー!」

昴「とは言ってもなあ・・」

孟「とにかく、ちゃんと受け止めるにゃ!」

昴「ハイハイ。ちゃんと受け止めてあげるよ」

孟「うむ! じゃあ行くのにゃ!」

孟獲は再度武器を構え・・。

孟「にゃにゃにゃーーーー!」

俺に武器を振り降ろした。

昴「ふむ。」

俺はそれを・・。

ドーン!!!

右手で受け止める。

孟「にゃにゃ! 素手で受け止めたにゃ!?」

重い一撃だけど、焔耶以上に軽い一撃だから素手で受け止めるのは容易い。

昴「さてと、孟獲ちゃん」

孟「何にゃ?」

昴「俺達は君達を力で従えるつもりはない」

孟「にゃ?」

昴「簡単に言うとだ。俺達と仲良くしましょう。って事だ」

孟「仲良く、にゃ?」

昴「そ、仲良く」

孟「ふん! みぃはお前達と仲良くするつもりはないのにゃ!」

昴「ふむ、ならどうすれば仲良くしてくれる?」

孟「にゃら・・、そうにゃ! この森の中でみぃを捕まえる事が出来たら考えるにゃ!」

昴「この森の中で逃げる君を捕まえれば良いんだな?」

孟「そうにゃ!」

昴「分かった。ならそうしよう。捕まえたらちゃんと約束を守るんだぞ」

孟「もちろんにゃ! そのかわり捕まえられなかったらお前達の負けにゃ!」

孟獲が走って俺達から離れる。

孟「へへーんにゃ! 捕まえられるものなら捕まえてみろにゃ!」

孟獲は猛スピードで視界から消えていった。

朱「よろしかったのですか?」

昴「ん?」

朱「地の利は向こうにありますし、何より・・・・すばしっこそうですよ?」

昴「まともに捕まえようとしたら苦労するだろうが、・・そうだな、たんぽぽ」

蒲「呼んだ?」

昴「朱里、雛里、たんぽぽ、ちょっと聞いてくれ」

俺は3人を集めて話をする。

昴「・・ゴニョゴニョ」

朱「なるほど」

雛「それは名案です」

蒲「にしし〜、面白そう!」

昴「よし、それじゃ、すぐに準備を始めようか」

朱・雛「御意です♪」

蒲「了解〜♪」

さてと、猫娘ちゃんを捕まえるとしますかね。



















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※※※※


準備を始める俺達。俺の考えた策、策と言うほどのものでもないんだが、ただ単に罠を仕掛けて誘き寄せて捕まえる。だけの事だ。あの娘は何となくだが、簡単に引っ掛かりそうな気がするし。

たんぽぽが罠を仕掛け、少し待っていると・・。

孟「にゃにゃにゃーっ!」

おっ、かかった。

孟「こんなところになんで落とし穴があるにゃー!」

仕掛けた罠にあっさりかかる孟獲。

昴「ほい、捕まえた」

孟獲を抱っこする。

孟「にゃ〜・・」

昴「これで良いか?」

孟「まだにゃ! みぃはまだ降参しないにゃ!」

諦めが悪いな。仕方ない。

俺は孟獲を降ろす。

昴「なら次捕まえたら約束守れよ。」

孟獲は再び猛スピード逃げ出し・・。

孟「覚えてろ、なのにゃー!」

捨て台詞を残して去っていった。

昴「さてと、次行こうか」



















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※※※※


次はスズメ獲りの罠を仕掛けたところ、

孟「にゃぅー!網が落ちてきたのにゃー!」

またあっさりと引っ掛かる。

孟「覚えてろなのにゃー!」

また逃がす。

















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※※※※


昴「・・・」

川に釣糸を垂らしていると・・。

クイックイッ。

竿を何かが引っ張る。

昴「まぐろ!」

孟「にゃぅー! 釣られたにゃ!」


















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孟「あぅぅ、頭に血が上るのにゃ! たすけてぇ〜、た〜すけてにゃ〜!」

縄を丸く結び、その中に饅頭を置いておいたらあっさりかかった。


















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孟「にゃにゃにゃーっ! また落ちたにゃー!」

また落ちた。

昴「・・・何か獣以上に簡単にかかるな」

















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※※※※


昴「まぐろ!」

孟「また釣られたにゃーっ!」

昴「何だかなー。けど可愛いから良いや」



















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※※※※


孟「覚えてろなのにゃー!」

7度目の逃亡。

蒲「ご主人様、次は何仕掛ける?」

昴「ん、罠はもういいや」

蒲「どうするの?」

俺は屈伸運動を始め・・。

昴「小細工なしで行くよ」

蒲「えー!? でもあいつかなりすばしっこいよ?」

昴「何、問題ない。それじゃ、行くかな」

俺は孟獲を追いかけた。



















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※※※※


孟「みぃを捕まえられると思うなにゃ!」

孟獲は小さい体と身体能力を駆使して次々と木から木へ飛び移っていく。

昴「おー、すごいすごい」

かなりすばしっこいな。あれは明命より素早いかもな。

けどな。

昴「如何に速くても、如何に地の利を生かそうと、氣で身体能力を強化した俺からは逃げられない」

俺は氣を脚に巡らせ、一気に飛ぶ。

孟「にゃにゃーっ! 速いにゃーっ!」

俺は木の幹を足場に跳躍し、孟獲に飛び付いた。

孟「うにゃ!」

昴「おし! ゲット!」

孟獲を抱き抱え、頭をナデナデする。

昴「どうする、まだやるか?」

孟「・・もう降参するにゃ〜」

7度も捕まり、最後は小細工なしで捕まった事もあり、観念したようだ。

昴「それじゃ、行こうか」

俺は孟獲を肩に乗せて歩き出した。

孟「にゃー、高いにゃー!」

昴「・・ははっ、妹みたいで可愛いな」

肩車をするとおおはしゃぎをし始める孟獲。

昴「ん?」

ふと気配を感じ、振り返ると・・。

ミ・ト・シ「・・・」

先ほどの虎娘達がいた。

昴「・・君達もおいで」

ミ・ト・シ「にゃー!」

昴「うおっ!」

虎娘達が俺の体や腕に飛び付いた。

俺は3人を抱き抱えて自陣へと戻った。

その後、孟獲、美以から真名を預かり、美以と虎娘達を連れて成都へと帰還した。美以達は街の物珍しさや食べ物が気に入り、成都へと居着いた。その後、美以達の愛らしさや肉球で、成都では悶え死にしかける者が続出した。

以上の事により、南征は成功し、俺達に新たな仲間が加わった。











続く

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