小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第73話〜江陵の戦い、一騎討ち〜















孫呉との同盟締結後、俺達は早々に江陵にいる曹操軍の後方を撹乱するために軍を進めた。自陣に戻った俺と朱里はすぐさま状況の説明を始めた。






















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昴「・・ってな訳で、俺達は江陵にいる曹操軍の後方の撹乱を始める」

桔「となると、ここより北方5里のところに駐屯している曹魏の部隊を叩くのが手っ取り早いだろうな」

昴「すでに動いていたか、なら話が早い。派手に動いて俺達蜀の参戦を演出しよう」

朱「そうですね。その通りですね」

愛「しかし長期に渡って戦えるほど、兵も兵糧も多い訳ではありません。退き際を間違えないようにしないと・・」

昴「まあな。敵部隊と遭遇したら、一気呵成に攻撃、撃破して即退散・・そんなところか・・」

恐らく早々にケリはつくだろう。

昴「もう桃香へは伝令を送っているな?」

朱「はい。すでに先ほど手配しておきました。戦いの後、すぐに合流するために、国境まで出てきてもらうように伝えています」

昴「上出来だ。なら行こう。敵は曹魏、皆準備は出来てるな?」

焔「問われるまでもありません!」

愛「同じく・・。全軍進撃開始! 目指すは北方、曹魏の部隊だ!」

「「「応っ!」」」

蜀の兵達の声が荒野に木霊した。


















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凪side

凪「!?」

空気が変わった。このひりつくようなこの感じ・・。

凪「沙和、真桜、全軍に戦闘態勢を取らせてくれ」

沙「凪ちゃん、どうしたの〜?」

凪「敵が来る」

真「なんやて! ホンマなんか!?」

凪「ああ。この辺一帯の空気が変わった。この感じ、この辺が戦場に変わった事に他ならない」

真「ホンマか・・。せやけど、呉の部隊が大々的に襲いかかってきたら、ウチらの部隊なんてひとたまりも無いで?」

沙「沙和達、輜重隊の護衛と補給路の確保が任務だもんね」

凪「とにかく急いでくれ。手遅れにならないうちに・・」

真「分かった。ほならすぐに準備を・・」

真桜が兵に指示を出そうとした時、1人の兵が伝令が駆け込んできた。

「申し上げます!」

真「何や!」

「南方より、りゅ、りゅ、劉備の軍勢がっ!」

なん・・だと・・!

沙「ほえ? 劉備?」

真「劉備の軍勢って、阿呆ぅ! 劉備は大陸南西に居るやつらやろが。なんで東から来んねん!」

「し、しかし確かに芽門旗に劉の文字が!」

凪「劉旗か・・。他に旗は?」

「関の旗、他には魏、厳・・後は深紅の呂旗。残りは・・」

関は関羽だろう。魏は魏延、厳は厳顔だろう。

沙「深紅の呂旗って言えば・・!?」

真「飛将軍呂布の旗標やぞ!?」

くっ! よりによって呂布か・・。

真「ホンで、残りはなんやねん?」

「それが・・」

沙「? ・・どうかしたの〜?」

凪「早く報告しろ」

何だ? 一体何が・・。

「はい。残りの旗は・・金色の御旗、です・・」

真「金色の御旗・・って!」

沙「まさか!」

凪・沙・真「師匠(隊長(なの))!?」

真「っちゅーことは、まさかホンマに劉備の軍勢が来とるっていんか!?」

最悪だ・・。

沙「どうしよう・・。呂布さんだけでもまずいのに・・」

真「その上あの隊長もおるなんて・・」

凪「ぼやいても始まらない。伝令! この事実を華琳様に伝えろ! 我らはこの天嶮を利用して劉備軍を防ぐ!」

「は、はっ!」

兵士がすぐさま駆けていく。

凪「何故、劉備軍がこんな場所に忽然と現れたのか、それは分からない。だけど私達は輜重隊を守り、前線への補給路を確保しなくてはならない」

真「分かっとる。ここでウチらが負けたら、前線の動きが鈍くなるからな。負けられんで」

沙「うん。沙和達がやるしかないの。凪ちゃん、真桜ちゃん。頑張ろうね」

真「せやな・・でも、相手は隊長か・・」

沙「・・・」

凪「・・・」

いつかこの日が来ることは分かっていた。ついに来てしまった・・。

凪「・・全軍展開! 天嶮を利用し、敵の攻撃を防ぐ! 輜重隊は西方を迂回して前線へ急げ!」

「「「「応っ!」」」」

師匠・・。本当は戦いたくはありませんが、私とて華琳様の将。行かせていただきます。


















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昴side

桔「捉えた! お館様よ! 前方に敵影あり! 谷に展開しとるぞ!」

旗は、楽、于、李、なるほど・・。

焔「その後方に砂塵あり! あれは恐らく輜重隊だな。先に前線に向かわせるのでしょう」

愛「ふむっ、では敵突破後、輜重隊を追撃、殲滅するぞ!」

愛紗の指示を受け、兵達が一斉に構える。

恋「・・準備完了」

昴「よし・・」

俺は村雨を抜き、切っ先を天に掲げる。

昴「これより我らは戦地に赴く! 臆するな! 皆には天がついている! 全軍・・攻撃開始!」

「「「「応ーーーーーっ!」」」」

戦が始まった。



















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戦が始まり、両軍がぶつかり合ってから幾ばくか経つと、すぐさま戦況はこちらに傾いた。いかに天嶮を利用し、地の利を生かした戦いをしようとも凪達の隊は輜重隊の護衛と補給路の確保する程度の兵しか率いておらず、その上、こちらには愛紗、桔梗、焔耶と言った猛将に、稀代の軍師である朱里もいる。兵数差に将の質の差が歴然だから当然と言えば当然だ。劣勢と見ると、敵部隊は兵を2つに分け始めた。

朱「はわわっ、敵部隊が2つに分かれちゃいました」

桔「部隊の動かし方から見て、誰かが残存した友軍を後退させるための捨て石を買ってでたんじゃな」

焔「素直に逃げれば良いものを・・邪魔な」

恋「・・怖い」

昴「死兵はどんな精強な兵より厄介極まりない」

愛「このまま包囲して殲滅しますか?」

昴「・・朱里はどう思う?」

朱「後退する敵を追撃する必要はありませんが、戦場を迂回して南方に向かった輜重隊が気になります。前線に到着する前に撃破しておいた方が良いかと」

焔「なるほど。ならばその役目は私が引き受けましょう」

桔「お前1人では心許ないな。・・恋。同行してやってくれるか?」

恋「・・(チラッ)」

恋がこちらを見る。

昴「頼む」

恋「・・(コクッ)」

焔「お館様、別に私1人でも・・」

昴「信用してない訳じゃないよ。2人で行けば確実性は上がる。だから焔耶と恋で頼む」

焔「はっ! そういうことでしたら・・」

桔「ところで朱里よ、あの健気な部隊はどう処理する?」

朱「旗勢を見るに気焔万丈。ああいう部隊と正面切ってぶつかるのは得策では無いかと」

愛「しかし、放っておく訳にもいくまい?」

朱「放置で良いです。どうせ全滅させることは出来ませんし、今は江陵より後方の攪乱と、物資輸送の安全性を脅かすことが大切ですから」

愛「分かった。・・しかし、一度挨拶だけはしておきたいのですが」

昴「挨拶?」

愛「蜀呉同盟を示すためにも・・ね」

昴「・・そうだな」

殿部隊の旗は楽・・凪か・・。

昴「なら、盛大に頼む。ただ楽進は強い。心してかかれ」

愛「御意です。では・・」

愛紗が殿部隊へと向かった。



















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凪side

「楽進様! 敵部隊より単騎で突出してきた者がおります!」

凪「単騎だと?」

「はっ。・・どう致しましょうか」

単騎で・・まさか師匠が・・。

凪「・・私が出よう。貴様らはここで待機しておけ。私に何かあったら逃げろ。良いな?」

「・・それは出来ません。逃げるなら楽進様もご一緒に!」

一緒に・・か。

凪「そう出来れば良いが・・。行ってくる」

相手が師匠なら勝ち目はない。だが、弟子としての意地だけは示す!

私は単騎で突出してきた敵を出迎えるために歩みを進めた。

「ご武運を・・!」

後方より兵の鼓舞の言葉が微かに耳に届いた。




















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愛紗side

先陣を1人飛び出し、待っていると、1人の人物が殿部隊より歩み寄ってきた。

愛「我が名は関羽。蜀を守る青竜刀。貴公の名を伺いたい」

凪「我が名は楽進。・・関雲長。蜀の武神がどうしてこんなところに居る?」

こやつが楽進か・・。

愛「我らは魏の覇道、それを認める訳にはいかないからな・・いざ、尋常に勝負をしてもらおうか、楽進!」

凪「・・曹孟徳様こそ、覇王たる資格を持つ者。私はその覇道に命を賭ける。我が命の全てを賭けて、お前達の進撃、ここで食い止める!」

愛「やってみせるが良い」

私は青竜刀を構えた。

凪「・・し・・御剣昴殿は来ないのか?」

愛「その問い、私が相手では力不足と言うことか? そうだと言うならそれはお前の驕りだ!」

凪「・・貴公を侮っているつもりはない。御剣昴殿とは師弟関係故に、な。・・だが1つ言わせてもらう」

愛「何だ?」

凪「驕っているのは―――」

楽進が地を蹴った。

愛「!?」

すると先ほどまで10歩ほど離れていた楽進が私の懐へと飛び込んでいた。

凪「―――関雲長、貴公の方だ」

は・・やい!

楽進の拳が私に襲い掛かった。




















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昴side

桔「お館様よ」

昴「何だ?」

桔「敵の殿部隊の将、楽進とはどのような将なのですかな? 確かかつてお館様は曹操の下で客将をしていたと聞き及んでおりますが」

昴「ああ。以前に世話になっていた。楽進は俺の言わば弟子のような者だ。そして、武人としての資質だけを見れば、楽進は恐らく恋以上だろう」

桔「何ですと!? それでは愛紗は大丈夫なのですか!?」

昴「心配だろうな。・・・少なくとも、成都へ来る以前の愛紗だったならな。今は心配いらない。何故なら――――」



















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凪side

凪「ハァ、ハァ、ハァ・・くっ、うぉぉぉーーっ!」

私は再度縮地を駆使して関羽に飛びかかり、拳の嵐を浴びせる。

愛「・・・」

関羽はそれを難なく避け、防ぎ、いなす。そして私の攻撃の継ぎ目に・・。

愛「ふっ!」

凪「ぐっ!」

ギィン!!!

間髪入れずに攻撃をしてくる。

凪「くっ!」

強い! 今のところ、硬氣功で防いでいるから何とか軽傷で済んでいる。何故ここまで私が一方的に・・!

凪「ならば!」

私は手のひらに氣を集中させ・・。

凪「氣功多連弾!」

ダダダダダッ・・・!

私は小さな氣弾を関羽へと連続発射する。

愛「っ!?」

関羽は青竜刀を回転させ、氣弾を次々と弾き飛ばしながら後方へと下がっていく。

くっ! あれ以上下がられたら氣弾の射程外に!

氣をより遠くに飛ばすには大質量の氣を良く練り込まなければならない。氣功多連弾のように連射を重視すれば射程距離はほんの僅かだ。

射程外に逃げられる前に追撃して追い込む! 私が距離を詰め、追撃を図ろうとすると、関羽は待っていたかのように一気に私に飛び込んできた。

凪「しまっ・・」

愛「はぁーっ!」

ギィン!!!

凪「くそっ!」

何とか防げた、けど左腕が・・。

凪「くっ!」

折れてはいないが力が入らない。何という豪撃・・!

愛「・・・。」

関羽は涼しげな顔をして青竜刀を構えている。

何故だ、何故こうも一方的に! 春蘭様とさえ互角に戦えるようになったのに・・。私と関羽に実力差はさほどないはずなのに!

愛「不思議か?」

凪「っ!?」

愛「同じ力量を持っているのに、こうも一方的にやられることが」

凪「くっ!」

考えを読まれたのか?

愛「楽進。貴公と私の間に力の差はさほどない。少なくとも、以前の私であれば互角に渡り合っていたことだろう。にもかかわらずこうも一方的な展開になるのは――――」



















愛「――――私は、修練の末に新たに力を手に入れたからだ」


















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愛紗side

愛「ご主人様、私を強くしてください!」

益州を平定して幾ばくか経った時、私はご主人様にそう願い出た。

昴「・・いきなりだな。どうしたんだ突然?」

ご主人様は少々戸惑っている様子だ。

愛「虎牢関で恋に負け、先ほど成都の戦では張任殿に負けて・・。私はご主人様と桃香様の将であるまじき失態をおかしてしまいました。もう2度と負けたくはありません。死ぬのは怖くありません。ですが、ご主人様と桃香様をお守り出来ずに死ぬことが何よりも怖いです!」

私は思いの丈をご主人様にぶつけた。

昴「・・話は分かった。だけどな、強さというのは一長一短で得られるほど甘くはない。それは愛紗も良く分かっているだろう?」

愛「・・分かっています。ですが、それでも焦れてしまうのです! 圧倒的な武を持つ恋はさらにその強さに磨きをかけています。・・そして鈴々は自身の才能を徐々に開花させつつあります。今は互角に打ち合えますが、いずれ及ばなくなるでしょう。そして皆もどんどん強くなっていきます。私だけ、私だけが立ち止まっています。そんなの嫌です! ですからご主人様、お願いします。力を、力を貸してください・・」

私は深くご主人様に頭を下げた。

昴「・・さっきも言ったが、強さというのは簡単に手に入れられるものではない・・・だが・・」

愛「?」

昴「強さは得られずとも、恋のような武人と渡り合う方法はある」

愛「本当ですか!?」

昴「ああ。それはな・・・・新たな型を取り入れる事だ」

愛「新たな型?」

昴「簡単に言うと、戦い方を変えるんだ」

愛「戦い方を・・変える・・」

それはつまり・・。

昴「愛紗の考えている通りだ。今まで積み重ねてきたものを捨てる、ということだ」

愛「・・・」

捨てる・・。

昴「現状ではこの方法しかない。新たな型が上手くハマれば新たな力を得られるが、それが自身にあわなければ、自身の型を大きく崩す事になるから確実に今より弱くなる。・・・どうする?」

どうするか・・。そんなものは決まっている。

愛「お願いします。危険は覚悟の上、私は必ずや新たな力を手に入れてみせます!」

昴「ふっ・・分かった。なら、俺も可能な限り力になろう」

愛「よろしくお願いします!」

私の修行が始まった。




















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昴side

桔「なるほど、それで新たな型というのは一体どのようなものなのですかな?」

昴「簡単言うと冽翁殿の型を取り入れたんだ」

桔「親父殿の?」

昴「ああ。冽翁殿の柔の型をな」

桔「柔の型・・」

昴「型は細かく分ければ無数に存在するが、大きく分ければ剛と柔の2つだ。剛とは圧倒的力と速さで相手を叩き潰す武。柔は相手の力を見切り、相殺する武だ」

桔「なるほど・・。ですが、型を変えても強くなるのですか?」

昴「厳密に言うと強くはならない。だがな、柔の武は剛の武を飲み込める。柔よく剛を制すという言葉通りにな。現に冽翁殿は愛紗と力の差がありながら愛紗を手玉に取ってみせた」

桔「ですがお館様は親父殿を剛の武とやらで圧倒していませんでしたか?」

昴「それは俺と冽翁殿との地力の差があまりにもかけ離れていたからだ。相手の策にハマらなければあの通りだ。愛紗とも差はあったが、それは大きな差ではない。駆け引きと洞察力でどうにか補える程度の差だ」

桔「なるほど。それで愛紗は新たな型を得られたのですかな?」

昴「・・最初はどうなるか不安もあったが、見事に新たな型がハマった。案外、直感ではなく、理でものを考える愛紗には合っていたのかもしれないな」

鈴々や恋には、柔の武は絶対に出来ないだろうな。

昴「楽進の型は剛。実力は恐らく愛紗と同等見ても、ならば愛紗が勝つ」

桔「ほう、ならば心配はいりませぬな」

昴「まあな。今頃楽進は驚愕してるだろうな」



















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愛紗side

愛「・・・」

悔しさで顔を歪せ、苦々しく私を睨み付ける楽進が目の前にいる。新たな型を手に入れてから相手の心がより一層見えるようになった。ご主人様曰く、柔の武の極意は明鏡止水。相手を見るのではなく感じること。故に今、楽進の心が良く見える。楽進の心はかつての私と同じ。張任殿には私がこう見えていたのか・・。

愛「まだつづけるか?」

凪「まだだ、まだ、私は立てる! 命ある限り、私はお前に抗う。・・それが誇り高き曹魏の将としての務め」

愛「そうか・・」

これほどの将。恐らく鍛練を重ね、実戦を重ねればさらに強くなるだろうが・・。

愛「ならば、その頸をはねて、この戦いを終わらせてやろう」

凪「来い、関羽。例え頸を討たれようと、貴様の喉笛、歯牙で噛み千切ってやる」

愛「良い見得だ。・・では最後の一撃、見舞ってくれよう」

私は青竜刀を構える。

愛「楽進、覚悟・・っ!?」

青竜刀を振り下ろそうとしたその時、新たな殺気を感じた。

?「させるかい!」

突如奇妙な形の槍が私を襲った。

愛「ふっ!」

私はその槍をはたき、後ろへと下がり、距離を取る。

愛「・・増援か」

凪「・・真桜! 沙和!」

新たにやってきた2人が楽進の前に立つ。

真「へんっ。ウチの仲間を簡単にやらせんで!」

沙「そうだそうだー! 凪ちゃんを苛める人は許さないの!」

凪「どうして逃げなかったんだ!」

真「蜀呉のことを華琳様に伝えるのは、ウチらやのうてもいけるやろ?」

沙「そうなの。それに凪ちゃん1人に良いカッコさせてあげないもん」

凪「・・すまん」

愛「3人がかりか・・」

真「卑怯と言うなら言ったらええで。せやけどあんたには3人でやらせてもらう」

沙「そうでもしないと勝てないもんねぇ〜」

真「そういうこっちゃ。覚悟せいよ、関羽」

愛「・・・」

増援の2人。力量は楽進に比べればはるかに劣る。が、3人の連携力は侮れない。1対3でも勝敗は恐らく五分と五分。多少無理をすれば討てなくはないだろうが・・。

真「やるかっ!」

槍の女の言葉で3人が構えを取る。

愛「・・・退かせてもらおう」

凪「なにっ!」

この場は賭けに出てまで無理をする場ではない。

愛「もはや我が役目は終わった。・・さらばだ楽進。戦場で再び相見えようぞ」

私は踵を返し、その場を後にした。

本陣に戻り、ご主人様に報告をしよう。そう考えていると後方から・・。

凪「逃がすかっ! 猛虎蹴撃! 飛べ! 我が内に燃える炎よ!」

愛「っ!?」

先ほどとは比べ物にならない氣弾が私に襲いかかった。

愛「ちぃっ!」

もはや避けられん。ならば我が青竜刀ではたき落とす!

私は氣弾を迎えうつべく構える。すると背中から・・。

?「飛龍・衝撃!」

背中から大きな氣弾が飛び出し、楽進の放った氣弾にぶつかる。

ドゴーン!!!

愛「ぐっ!」

その直後、大きな衝撃が私を襲う。それと同時に・・。

ドン! ドン! ドン!

それと同時に後方から鉄杭が3発飛び出した。

凪「くっ!」

真「なんやっ!」

沙「見て、あそこ!」

楽進達の声で振り向くと、そこには・・。

昴「迎えに来たぜ、愛紗」

桔「油断だぞ、愛紗」

愛「ご主人様、桔梗・・すまん」

そこにはご主人様と桔梗がいた。

昴「愛紗、桔梗。2人は先に退いてくれ」

愛「ご主人様は?」

昴「何、少々愛弟子とな・・。話をするだけだ。すぐに戻る」

愛「・・分かりました。くれぐれも無茶をなさらないで下さい」

昴「ああ」

桔「では愛紗、退くぞ。・・お館様もお早めに・・」

昴「了解」

私は桔梗と共に自陣へと退却した。





















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凪side

関羽と鉄杭を撃ち出す武器を持つ将が退き、師匠だけが残った。

昴「久しぶりだな、凪」

凪「・・お久しぶりです、師匠」

師匠は以前と変わらぬあの顔で私を見つめる。

昴「強くなったな」

凪「・・強くなど、ありません」

私は関羽に歯が立たなかった。

昴「相手が悪かった。愛紗・・関羽は真の意味での強さを知っている」

凪「真の意味での強さ?」

昴「関羽は戦で2度も敗北を経験している。それ故に負ける事の意味、悔しさを知っている。だが凪は戦場で自身の命を脅かすほどの相手と戦ったのは今日が初めてだろう?」

凪「・・・はい」

戦には幾度か出ている、危険な経験もした・・。だけど、一騎討ちで命を脅かすほどの相手と相見えることはなかった。

昴「1の実戦が百の鍛練に勝るように、1の敗北は百の勝利に勝る。凪、君は今日敗北を知った」

凪「・・・」

昴「もっと強くなれ。心も身体もな。・・それじゃ、またな」

師匠は縮地で自陣へと戻っていった。

真「・・追わんでええの?」

凪「どうせ追い付けない。・・仮に追い付いても万に一つの勝ち目もない」

沙「凪ちゃん・・」

凪「・・戻ろう。これからが正念場だ」

真「せやな」

沙「分かったなの〜」

私達は本隊へと退却した。

もっと強くなります。そして、もう2度と負けん!




















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※※※※


昴side

昴「ただいま」

愛「ご主人様、戻られましたか」

朱「ご主人様、先ほど、焔耶さん達別動隊から伝令が来て、輜重隊の撃破に成功したとのことでした」

昴「そうか。なら少しは時間を稼げそうだな。・・・よし、なら急いで桃香達と合流するぞ」

愛「御意。では出発しましょう」

桔「全軍前進! 急いで蜀に戻るぞ! 強行軍になるが耐えてみせぃ!」

「「「「応っ!」」」」

俺達は江陵で魏軍を撃破し、桃香達と合流しに向かった。決戦のための初戦、俺達は勝利した・・。











続く

-75-
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