小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第81話〜孫呉決戦、五胡の知将と新兵器〜















第三者side

蜀軍が水関と虎牢関で防衛をしている頃、孫呉、曹魏も自領の防衛に向かっていた。孫呉はすでに荊州の長沙にて防衛線を張っていた。そして孫呉を守るため、この国を守るため。五胡の軍勢を今か今かと待ち構えていた。



















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雪「静かね・・」

今鳴り響いているのは風にたなびく牙門旗の音のみ。

冥「全くだな。・・赤壁の戦いの開戦前もこんな感じだったな」

祭「ふむ、決戦の前のこの空気・・たまらんのう」

楓「身体の震えが止まんねぇぜ!」

思「臆したか?」

楓「はっ! 武者震いだよ!」

祭「はっはっはっ! ひよっこが言いよるわい!」

穏「楓ちゃん勇ましいですね〜」

蓮「・・私は慣れないわ。始まってしまえば何ともないのだけど・・」

雪「あら? この空気が堪らないんじゃない♪」

蓮「敵は大軍なのですよ。・・そのように考えられません」

雪「ふふっ。でもね蓮華。私達はこれからやって来る奴らを早く蹴散らして洛陽に救援に向かわなくちゃならないの。こんな所で臆してる場合じゃないわよ?」

蓮「・・分かっています」

蓮華が歯を食い縛って必死に震えを押さえようとしている。するとそこへ・・。

明「申し上げます!」

雪「何だ!」

明「五胡の軍、総勢約60万。ここから約四里の所まで進軍してきました!」

雪「・・来たわね」

亜「ついに来た・・」

雪「皆持ち場について。母様から引き継いだこの孫呉の地、奴らには一歩足りとも踏ませないわ。皆、行くわよ!」

「「「「応っ!」」」」



















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五胡・刹那side

「まもなく敵勢と接敵します」

刹「分かりました。下がってください」

はるか前方に赤の孫の文字の牙門旗が見えてきました。陣構え、兵の気迫から見て相手はかなり屈強ですね。猛将知将も揃っていると聞きます。兵数ではこちらが上回っていますが、地の理は向こうにある上にこちらは長期戦は出来ない。勝敗は甘く見積もっても五分と五分、と言ったところでしょう。

刹「五胡の民のため、刃様のご期待に応えるため・・恨みはありませんが、この戦とこの国、いただきます。・・全軍! 急ぎ陣を構築しなさい!」

五胡の全軍が駆け足で陣形を構築する。

刹「敵は屈強なれど我が軍は最強! 始めましょう! 五胡の繁栄と未来のための戦を!」

「「「「応ーーーーっ!!!」」」」

五胡の兵の雄叫びが戦場に轟いた。





















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孫呉side

「五胡の軍が我が軍へ突撃を開始しました!」

冥「分かった。雪蓮・・」

雪「分かってるわ。全軍、迎え撃つわよ! 甘寧隊と凌統隊に通達。2隊を先頭に迎撃しなさい!」

この指示により孫呉の軍と五胡の軍がぶつかった。

冥「向こうは魚鱗陣形か」

雪「蛮族とは思えないほどの見事な陣構えね。敵の将は優秀みたいね」

冥「そうだな。素直に力任せの突撃はしてくれないか・・」

蓮「でもこちらには冥琳や穏に亜莎という軍師がいるわ。知略での勝負なら蛮賊なんかに遅れは取らないわ」

雪「・・そう楽観視は出来ないわよ。忘れたの? 昴が言ってたでしょ? 五胡には蜀の軍師を手玉に取った切れ者がいるって」

蓮「!? そういえば・・」

雪「考えたくないわね〜。あの精強な五胡軍に冥琳達に匹敵するような切れ者がいるなんて」

蓮「あれだけの数。あの練度に軍師が付く・・」

雪「心配しないで蓮華。相手にいくら切れ者がいるって言ってもこっちには頼れる軍師がたくさんいるのよ? ねぇ、め〜いりん♪」

冥「ふっ。驕るつもりはないが負けるつもりもない」

穏「負けませんよ〜」

亜「が、頑張ります!」

雪「そういうこと♪ さっ、無駄話もここまでよ。そろそろ始まるわ」

蓮「はい」

そしてその言葉の直後に両軍が激突した。




















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凌「おらおらー! 道を開けろー!」

思「鈴の音は・・黄泉路を誘う道しるべと思え!」

楓が虎狼双で敵を弾き飛ばし、思春が鈴音で斬り裂きながら敵陣を突き進んでいく。

思「!? 楓! 西方から敵の別動隊だ!」

楓「無視だ無視! 軍師達が対応してくれるだろ! 俺達はこのまま行くぞ!」

思「全くお前は・・だがお前の言葉通りになったみたいだな」

先ほど現れた別動隊には周泰隊が対応に向かっていた。

楓「てめえら、気合い入れろ! 一気に突っ切るぞ!」

「「「「応っ!」」」」

凌統隊、甘寧隊は勢いそのままに敵陣に斬りこんでいく。

楓「ん?」

その時楓が何かを見つけた。

楓「なあ思春、あれって・・」

思「あれは・・輜重隊か?」

楓「・・みたいだな。よっしゃあ! なら俺達はあの輜重隊を潰すぜ! 皆、ついてこい!」

凌統隊が進路を変え、敵輜重隊に突撃を敢行し始めた。

思「おい! 全く貴様は・・」

甘寧隊は構わず敵本陣に向けて突撃を続ける。順調に突撃を続ける甘寧隊。が、しかし、思春にはとある違和感を感じる。

思「(順調過ぎる。五胡はこの程度なのか?)」

先ほどから敵の強い抵抗を感じない。弱小勢力や、ただの賊ならともかく、五胡がこの程度とは思えなかった。率直に言えば拍子抜けだ。だがまもなくして敵の意図に気付くのだった。

思「!? 何だと!」

気が付くと敵陣形が変わっており、甘寧隊が鶴翼陣形にて包囲されていた。

思「誘いこまれたか・・。凌統隊は・・くっ!」

思春がふと凌統隊の方を目を向けた。その頃凌統隊は・・。




















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


楓「よし! このまま行くぞ!」

敵輜重隊に向けて突撃をする凌統隊。すぐに叩き潰し、甘寧隊に合流を図ろうと考える楓。接敵直前。敵輜重隊に変化が現れた。

楓「なっ!?」

敵輜重隊が荷を捨て、槍を構えて凌統隊に襲いかかってきた。

楓「輜重隊に見せかけた歩兵部隊かよ!」

そう、この隊は輜重隊ではなく、輜重隊を模した歩兵部隊だった。

楓「ちくしょう! もう反転は間に合わねぇ、しゃーねぇ、この隊を速攻で潰して、甘寧隊と合流すんぞ!」

やむを得ず、凌統隊は擬兵部隊にぶつかった。





















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五胡・刹那side

刹「こちらの棋譜通りに進んでいるようですね。あと一手仕掛けたら行きましょうか。・・本隊はこれより陣形を変えます。迅速に動きなさい!」

五胡の本隊の陣形が変わる。

刹「銅鑼を鳴らしなさい!」

ゴォーン! ゴォーン!

戦場に銅鑼が鳴り響く。それを合図にもう1つの別動隊が飛び出す。

刹「さて、私も動きましょう」

私は馬を駆り、先頭で駆け出した。




















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孫呉side

冥「また別動隊か・・」

穏「厄介ですね〜。伏兵と違って別動隊は読むことが出来ませんから〜」

亜「しかし、相手の最終的な狙いはなんなのでしょうか?」

冥「狙いか・・」

その狙いはすぐに皆理解した。

「申し上げます! 敵本隊が鋒矢の陣を組み、こちらへと突撃を開始しました!」

冥「・・なるほど、これが狙いか」

蓮「いったいどういうこと?」

穏「それはですね〜。これまでの擬兵や別動隊はこちらの兵力を割き、こちらの陣に隙間を作る為の仕掛けです〜」

亜「そして空いた隙間を敵本隊が鋒矢の陣で突撃し、一気にこちらの本隊を突き崩す・・」

蓮「なるほど、ではこちらはどうするのだ? このままでは・・」

冥「慌てないで下さい、蓮華様。すでに手は打ってあります」

穏「当初の目的とは少し違っちゃいましたが、あれを使っちゃいましょう〜」

亜「ついに・・」

蓮「あれ?」

冥「説明するより、見ていただいてもらった方が早いでしょう。もうまもなく分かります」

蓮「いったい何が・・」

蓮華は前方へと視線を向けた。






















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刹那side

刹「周りは無視しなさい! 目指すは敵本陣、敵総大将です!」

「「「「応っ!」」」」

私は空いた隙間に本隊で突き破っていく。

こちらは時間をかける戦は出来ません。ここで勝負をつけさせていただきます!

私は敵を斬り割きながら進んでいく。奥深く突き進んだところで、前方に新たな敵部隊が並んだ。その部隊がこちらに何かを構えた。

何でしょう? 弓隊ではない。いったい何を構えて・・。

そして敵部隊は構えた物をこちらに向けた。

ドクン!!!

その時私の心臓が跳ねた。それと同時に猛烈に嫌な予感が頭をよぎった。私は咄嗟に手綱を引き馬を止めた。それと同時に・・。

ドン! ドン! ドン! ドン!

突如私の耳に轟音と甲高い風切り音が鳴り響いた。

何だ・・何が起こった・・。

周りを見渡す。兵が倒れている。兵を見ると体の所々に小さな穴が空き、そこから血が吹き出している。

刹「いったい、何が起こったのだ!?」

私はただただ今自分に起こったことが理解出来ず、驚愕した。






















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蓮華side

蓮「何? いったい何が起こったの?」

呉の本隊の前に何やら筒を持った兵達が並び、祭の合図を出すと大きな轟音が鳴り、それと同時に突撃してきた五胡の兵が倒れた。

蓮「雪蓮姉様。あれはいったい・・」

雪「1度昴から使用している所を見せてもらってはいたけど・・」

冥「改めて効果を目の当たりをすると恐ろしいな・・」

亜「・・・」

亜莎も言葉を無くしている。

雪「これは昴から兵力差を埋めるために預かった兵器よ」

冥「これが―――」



















冥「―――鉄砲という兵器の威力なのか・・」


















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第三者side

時は遡り、三国会議終了後・・。新野城のある一角に三国の王と三国の一部の将が集められている。

昴「これを見てくれ」

昴の手には80センチ程の筒が握られている。

雪「これは?」

昴「これが、さっき言った兵力差を埋める為の兵器だ」

華「こんな筒が?」

昴「百聞は一見しかず。今これを試す。皆あれに注目してくれ」

昴が指差した先に弓の鍛練に使う的があった。昴が筒を目の高さに構え、筒の先を的に向けた。そして、筒の中腹にある引き金を引くと・・。

ドン!!! バキィッ!!!

「「「「!?」」」」

大きな轟音が鳴り、それと同時に的が粉々に砕け散った。

桃「なに!? 何が起こったの!?」

昴「これは鉄砲って言ってな。これを・・。」

昴が人差し指と親指に黒くて小さな丸い玉を挟み込み・・。

昴「これを矢の何倍も速さと威力で飛ばす兵器だ」

冥「これがあの的を破壊したのか?」

冥琳が玉を受け取り、まじまじと見つめている。

昴「ああ、そうだ。矢と違って玉が小さいから並みの将でも放たれたらまず防ぐことも避けることも不可能だ。原理については説明しない。これはあくまでも五胡を撃退するための兵器だからな。・・真桜、間違っても解析したり複製するなよ?」

真「・・駄目なん?」

昴「駄目だ。複製したり解析したら真桜でも許さないぞ」

真「そこまで言うなら分かったわ」

昴「これを魏と呉、それぞれに2千丁ずつ渡す。これの扱いを理解している兵も一緒にな。上手く活用してくれ」

雪「ていうかそれ、最強の兵器じゃないの?」

昴「そうでもない。確かに威力と射程は類を見ないが、これは試作段階の兵器だ。だから・・」

ボキィ!!!

突如、鉄砲の砲身が砕けた。

昴「連発が出来ない」

華「なるほど。つまり使い所は考えなくてはならないっていうことね」

昴「そういうことだ」

華「分かったわ。有効に使わせてもらうわ。・・昴、1つ聞きたいのだけど・・」

昴「何だ?」

華「この兵器、以前から完成していたのでしょう? 何故赤壁の戦いの折りに使わなかったの? 使っていればもっと容易く勝利していたはずでしょ?」

昴「まあその通りだ。理由はいくつかある。1つはこの兵器は本来この時代には生まれるはずがないもっと後に生まれるはずの兵器だ。故に威力がありすぎる兵器だから当然使用された側は恐怖にかられるだろう。理想を叶えるためには力が必要だが、その力も度が過ぎれば人は恐怖しか生まない。それでは意味がない。これが1つ。もう1つは万が一これが複製されて双方に行き渡ったら戦いは泥沼化しちまう。これがもう1つの理由だ」

華「なるほどね。確かにあなたの言う通りかもしれないわ」

昴「それじゃ、細かい説明するから皆聞いてくれ。後で文章でも通達するからそっちも目を通しといてくれ」

こうして昴から鉄砲の説明がなされた。



















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蓮華side

蓮「そんなことが・・」

私はその時、孫呉の陣にいたから説明を聞かなかったけど、これほどまでのものだったとは・・。

冥「昴が使用するのに難色を示した理由が理解出来るな」

亜「確かに、有効ではありますが・・」

穏「あまりあれに慣れたくはないですね〜」

各々が感想を述べている。

雪「何にせよ、敵の動きが止まったわ。一気に殲滅するわよ!」

雪蓮姉様が檄を飛ばした。それと同時に私達の闘いは終焉へと向かっていった。










続く

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