小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第82話〜二の将の実力、勝利への賭け事〜















第三者side

五胡の軍は孫呉の兵を誘導、分断し、空いた隙間を鋒矢の陣にて突き破り、短期での決着を図った。勢いそのままに孫呉本陣への急襲を敢行したが、御剣昴の授けた新兵器、鉄砲によってその勢いは止められる。孫呉はこの機を生かすべく、全軍をもって五胡の殲滅戦を開始した。





















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思「相手の動きは止まった! 甘寧隊は敵本隊の背後を突くぞ!」

甘寧隊が思春を先頭に、敵本隊へと斬り込んでいく。

思「狙うは敵将の頸ただ1つ!」

思春の鈴の音が戦場に鳴り響いた。



















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楓「おっしゃあ! 擬兵隊撃破! さっさと転進して敵本隊を撃破すんぞー!」

凌統隊が甘寧隊と同じく背後から斬り込んでいった。

楓「こんな所で手間取ってる暇ねぇんだ! さっさと終わらせて旦那の救援だ!」

楓とその隊の怒号が戦場に轟いた。





















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明「邪魔です!」

明命が自身の愛刀、魂切で敵を斬り裂く。

明「私達は敵本隊の横腹を突きます」

周泰隊が左翼から敵本隊へ斬り込んでいく。

明「皆さん! 今が好機です! 頑張って下さい!」

明命と周泰隊が迅速に敵本隊へ斬り込んでいった。




















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祭「鉄砲か・・大した威力じゃ」

祭が鉄砲の威力に改めて驚愕する。

祭「だがもう使い物にならんな。黄蓋隊、弓を構えろ!」

黄蓋隊の武器が鉄砲から弓矢へ切り替わる。

祭「おそらく御大将である策殿が敵本隊へぶつかるじゃろう。儂らはその援護をするぞ!」

その指示を受け、黄蓋隊が一斉に弓を構える。それと同時に雪蓮を先頭に呉本隊の精兵が正面より敵本隊へ突撃を敢行した。

祭「・・・よし、今じゃ、放てーっ!」

黄蓋隊の放った矢が敵本隊に襲いかかった。



















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雪「冥琳。出るわよ」

冥「やはり行くか」

雪「当然よ。今が雌雄決する絶好の場面だもの」

冥「やれやれ・・」

雪「止めないの?」

冥「どうせ止めても聞かないでしょう?なら貴女に任せるわ。」

雪「ふふっ、ありがと♪ ・・蓮華!」

蓮「はっ!」

雪「これより全軍の指揮を蓮華に任す。頑張りなさい」

蓮「はっ! 必ずや期待に応えてみせます!」

雪「頼りにしてるわ。・・皆行くわよ! 私に続きなさい!」

「「「「応ーっ!」」」」

雪蓮の檄を皮切りに孫呉本隊の精兵が敵正面に突撃を開始した。

冥「蓮華様。ご指示を」

蓮「・・ああ」

穏「大丈夫ですよ〜。困った時は私達がいますから〜」

亜「全力で補佐致します!」

蓮「頼りにしているわ。・・全軍に通達! これより五胡軍の本隊を包囲、殲滅する! 各隊迅速に動きなさい!」

「「「「了解!」」」」



















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刹那side

刹「してやられましたね」

謎の兵器に完全に勢いと流れを止められてしまった。兵は浮き足立ち、部隊はそれぞれ各個撃破されています。

刹「先ほどの兵器、もう一度来ないところを見ると、一度しか使えないか、少なくともすぐには使えないみたいですね。が、しかし、確証得られない以上、それを全軍に通達しても栓無きこと・・。ならば残された道は・・」

少々荒事を致しますか。相手の勢いを止めるに最適なのは敵将を討ち取ること。さてさて、現在好機と見て向こうから来てくれている。こちらも各個撃破と行きましょうか。

私は自身の得物を構え、敵部隊、敵将へと斬り込んでいった。





















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孫呉side

楓「おりゃあ!」

楓がトンファーで殴り飛ばし、突き進んでいく。

思「ふっ!」

思春が鈴音で敵兵を斬り裂く。

楓「オラオラオラー! 敵将は何処だー! 出てこい!」

思「やれやれ・・」

力任せに斬り込む楓を思春が援護しながら突き進む。するとそこへ・・。

?「お探しですか?」

楓・思「!?」

楓と思春が瞬間的に声のした方へ振り返る。そこには穏やかな面持ちをした青年がいた。そしてその青年の後方には大量の孫呉の兵の死体が横たわっていた。その数は数百にも及ぶ数だった。

刹「手当たり次第相手にしましたが、ようやく将にめぐりあいましたよ」

楓「ちっ!」

楓がすぐさま虎狼双を構えた。

思「・・楓、こいつ、仮面を付けてない。もしやこいつは・・」

楓「あん?」

そこで楓は思い出す。三国会議での御剣昴の言葉を。五胡の将は仮面を外す習わしがあるという言葉を。

楓「てめえ、将か?」

刹「いかにも。私が五胡の二の数字を戴きました、名を刹那と申します。以後、お見知り置きを・・」

懇切丁寧に自己紹介をした。

楓「俺は姓は凌、名は統。字は公積だ!」

思「私は甘寧。字は興覇」

楓「探す手間が省けたぜ!」

勇む楓。

思「落ち着け楓。こいつは・・」

楓「分かってるよ。こいつ、かなり強ぇ」

楓は二の将、刹那な実力を肌で感じ取った。こいつは強い。それは自分以上に・・。

刹「では、自己紹介も済ませたところで・・」

刹那が地を蹴り・・。

刹「さようなら」

思「っ!?」

楓「!? 思春!」

一足で刹那は思春の懐に飛び込んだ。

思「ちぃ!」

ギィン!!!

刹那の繰り出す一撃を何とか弾く。

刹「ふっ!」

更に斬撃を繰り出した。

ギィン! ギン! ガキィン!

思「ぐっ・・くっ・・」

刹那の斬撃の嵐を何とか防いでいるが、反撃を繰り出す余裕は取れないでいた。

楓「こっちにも居るのを忘れんじゃねぇ!」

楓が刹那の背後から回し蹴りを繰り出す・・が、それは上体を下げる事で避けられ・・。

ドカッ!!!

楓「がはっ!」

逆にカウンターの蹴りを腹に喰らい、後ろへ弾かれる。

思「このっ!」

思春が隙を付き、撃ち下ろしの斬撃を繰り出した、しかし・・。

ギィン!!!

思「!?」

それを刹那は自身の剣を半分に分け、その片方で防ぎ、もう一方を思春に繰り出した。

思「うぐっ!」

咄嗟に後ろへ下がるも避けきれず、僅かに横っ腹を掠めた。

刹那はその僅かに出来た隙を見逃さず、追撃をかけた。

思「しまっ・・!」

隙を付かれ、傷を負うのを半ば覚悟したが・・。

楓「やらせるかーっ!」

ギィン!!!

体勢を立て直した楓の一撃が一歩速く、それを防ぐために楓の虎狼双を右手の剣で防いだ。しばしの間つばぜり合いになるが・・。

刹「はぁ!」

楓「ぐっ!」

ギィン!!!

右手の剣を力一杯振り抜き、楓を弾き飛ばす。そしてその隙を突こうとした思春の一撃を避け・・。

ゲシッ!!!

思「ぐぅっ!」

顔面への回し蹴りを浴びせた。思春は空いている腕で防いだものの蹴りの威力を殺しきれず、弾き飛ばされてしまった。

楓「ちっ、こいつ、マジで強ぇ・・」

思「我らより速い上に繰り出す一撃が重い・・」

刹「どうしました? 孫呉の将はこの程度なのですか? その腕では五胡では将になることは叶いませんね」

楓「ちっきしょう・・」

思「・・安い挑発に乗るな・・」

楓「分かってるよ・・」

楓と思春は再度身構える。

刹「あいにくと、私はあなた方の他にも相手しなければならない方が多数いるので、早々に終わらせていただきますよ」

思「来るぞ!」

楓「っ!」

刹那を地を大きく蹴り、楓に襲いかかる。

ガキィン!!!

楓は咄嗟に虎狼双を交差して斬撃を防いだ。

思「楓! ・・ちいっ!」

思春が刹那の背後から斬りつけるが・・。

ギィン!!!

思「くそ!」

刹那は思春の方を見向きもせずに剣を振るい、思春を弾き飛ばす。

楓「うおぉぉぉーっ!!」

楓が体勢を立て直し、一撃を見舞うが、あっさり避けられ、水面蹴りで足を払われてしまう。

楓「ぐぅっ!」

楓はその場に転倒してしまう。

刹「まずは1人目」

刹那が楓に剣を降り下ろす。と、その瞬間。

?「させません!」

刹「!?」

ブォン!!!

突如刹那の背後から斬撃が襲い、それを跳躍して避ける。数メートル離れた所に着地したその時・・。

ヒュンヒュン・・。

刹「!? ちっ!」

キン! キン!

矢が飛来し、刹那はそれを剣で弾いた。

















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祭side

祭「無事か!」

間一髪、明命が間に合ったようじゃ。

明「助太刀に参りました!」

楓「明命! 祭さん! 助かった」

刹「援軍ですか・・」

こやつが楓と思春を2人同時に・・。

祭「儂は黄蓋。孫呉の宿将じゃ」

明「私は周泰! 同じく将の1人です!」

刹「丁寧な挨拶痛み入ります。私は五胡の二の将、刹那です」

やはりのう。

祭「卑怯じゃが、儂らは負けるわけにはいかぬ。儂らも加わらせてもらうぞ?」

刹「構いません。これは戦です。戦で卑怯という言葉を使う者は愚か者です。それに、わざわざ集まっていただき、むしろ好都合です」

儂ら将を4人も前にしてなおその言葉を吐くか。・・しかし、楓や思春の反応見るや、ハッタリではないか・・。

祭「では、行くぞ?」

儂は矢を3本つがえる。

明「行きます!」

楓「行くぞーっ!」

思「ふっ!」

明命、楓、思春が3人同時に前に出た。敵将、刹那はお構い無しに前に出る。

刹「はぁ!」

ガキィン!!!

明「うっ!」

その一撃に明命は動きを止めてしまう。

ギン! ギン! ギィン!

更に連撃を明命に見舞う。明命は必死にそれを防ぐ。

楓「明命!」

思「させん!」

楓と思春が左右から仕掛ける。

刹「ふっ・・。」

刹那は跳躍してそれを避けた。

楓「なめんな!」

思「はぁ!」

楓と思春も同じく跳躍し、追撃をかける。刹那は上空で反転し・・。

バキッ!!!

楓に蹴りを浴びせた。

楓「がはっ!」

楓は蹴り飛ばされ・・。

思「うっ!」

ズサァァァーーツ!!!

思春を巻き込んで地面に叩き落とされてしまった。

明「この!」

明命は着地を狙って攻撃を仕掛けるも、あっさり防がれる。

祭「・・・・ちっ!」

動きが速すぎて照準が合わせられん!

動きを止まった所を狙い撃つもあっさり避けられてしまう。

強い・・。こやつ、強すぎる。儂ら4人をいとも容易く・・。

刹「飛び道具は面倒ですね。まずはあなたから仕留めさせていただきます」

刹那が儂に狙いを定め、正面より飛びかかる。

祭「くっ!」

儂は矢を引き絞り、放つが、矢を放った瞬間刹那が視界から消え失せる。

刹「終わりです。」

祭「しまっ・・!」
















?「させない」
















刹「っ!?」

ドカァァァン!!!

突如、鋭い斬撃が襲い、地が大きく爆ぜた。刹那は間一髪それを避ける。

刹「おやおや、また援軍ですか」

?「孫策の代わりに助太刀に来た」

祭「すまぬ。礼を言う」

刹「名を、伺ってもよろしいですか?」

恋「恋は呂布。昴の命令で呉に助太刀に来た」

呂布は昴の命で洛陽ではなく、儂ら孫呉と共に同行していた。

祭「策殿は?」

呂「ここには来ていない。行こうとしたから代わりに恋が来た。孫策を守るのが恋の役目」

祭「そうか、ならば良い」

万が一策殿が討ち取られてしまったら儂らは負けるからのう。

刹「呂布・・なるほど、あなたがそうですか。あなたの名は五胡の地まで轟いてますよ」

恋「・・・」

刹「呂布殿に孫呉の将が4人。・・ふふっ、これでようやく本気が出せますよ」

祭「なんじゃと!?」

こやつ、まだ底を見せておらんかったのか!?

刹「では、参ります!」

刹那が今まで以上の速さで呂布へと飛びかかった。呂布もそれに合わせ、飛びかかる。

ガキィン!!!

呂布の戟と刹那の剣がぶつかる。

ギン! ギン! ギィン!

両者が飛び出したのを皮切りに激しい攻防戦を繰り広げ始めた。

あやつ、本当に底を見せておらんかった・・。さらに速さが増しおった。しかし呂布もあの速さについていっておる。呂布め、虎牢関の時よりさらに強くなっておるの。

刹「なるほど、その実力、噂に違いませんね。・・ならば、これはどうです?」

刹那が呂布に斬撃を繰り出した。呂布がその斬撃を防ごうと試みたその時・・。

恋「!?」

なっ!?

奴の剣が呂布の戟にぶつかる直前にその剣の軌道が変わりおった!

サクッ! ザシュ!

恋「うっ・・ぐっ・・」

縦から横、横から縦、もしくは斜め、呂布はその軌道が変わる斬撃に対応仕切れず、傷をどんどん増やしていく。

無理もない、武に長けている者ほどその反射神経は優れている。奴の斬撃は反射神経が優れていればいるほどそれが仇になる。しかし呂布はそれでもギリギリ致命傷を避けておる。呂布以外の者ならあの世行きじゃろう・・。

祭「楓! 思春! 明命! 呂布を援護しろ! お主らなら奴の速さについてゆけるじゃろ!」

楓「応っ!」

思「御意!」

明「はい!」

楓、思春、明命が戦いに加わった。


















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


恋「はぁ・・はぁ・・」

楓「くっ・・!」

思「ちっ・・」

明「うぅ・・」

祭「何という奴じゃ・・」

呂布を含め、孫呉の猛将4人で掛かっているというのに、それでも奴には届かん。

刹「私程度に驚愕していては困りますね。我らが大王、刃様は私ですら歯が立たない程の強さを持っているのですよ?」

祭「くっ・・」

話しは昴から聞いておったが、そこまでの強さなのか・・。

刹「力とはとても素晴らしく、時に残酷です。今の私達はそれを象徴してますね」

刹那は儂らに嘲笑を浮かべて言い放った。それを見て儂は尋ねた。

祭「・・やけに力に固執するのう?」

刹「当然でしょう? 何をするにも、何を成すのにも、何を得るにも、力が必要なのですから」

祭「力だけで全て得られると思っておるのか?」

刹「思っていますよ。人は皆強大な力に膝を折り、頭を垂れる。それは世界の摂理、真理でもあるのですから」

祭「くだらん。力だけで積み上げたものなど結局力で崩される。それも真理じゃ。力を無くしたり、隙を見せれば膝を折り、頭を垂れた者がここぞとばかりに噛みつくぞ?」

刹「であるならその気すら起こさせない程の力を得れば良い。簡単な話ですよ」

祭「若造よ。お主は儂よりも強い。じゃが、儂はお主より長い時を生きておる。世の中はそんな単純には出来ておらん。力を否定する気はない。儂らも力で孫呉を打ち立て、一度は失った孫呉を力で取り戻し、発展させたのじゃから・・」

楓「だけどな、力だけの世界なんか誰も望んでねぇし、誰もが従うと思ったら大間違いだ!」

楓が叫び・・。

思「世がそんなに単純なら乱世、治世という言葉は存在しない」

思春が語り・・。

明「それが嫌だから、認められないから英雄が生まれるんです!」

明命が説き・・。

恋「皆が怯えて暮らす世界は良くない」

呂布が諭す。

祭「国を、人を発展させるのは力。繋ぐのは想いじゃ。力と想い。両方無くして人は従わん。国は成り立たん。貴様のやり方では永久に戦いは終わらんじゃろう」

刹「クククッ、あははははははっ!」

楓「何が可笑しい!」

刹「いえ、失礼。あなた方が前王、劉豹と同じ事を言ったのでついね。あの方も同じ考えでした。そして同じ言葉で私の意見を否定した。あまつさえ、この国と盟を結ぶなど愚策を考え始めた。出来るはずがないのに」

祭「・・・」

刹「あなた方に問います。そんな考えがまかり通ると本当に思っているのですか? 魏と蜀、そしてあなた方孫呉でいがみ合っていたあなた達が。あなた方は今、私達五胡の侵略を阻止するという名目で三国が盟を結んだようですが、私達を退ければ盟を組む理由がなくなります。そうなった時、あなた方は手を取り合う事が出来ますか?」

祭「出来る。儂らはそれを望んでおるし、何より、儂ら三国同盟の盟主がそれを望んでおるからのう」

刹「三国同盟の盟主。御剣昴ですか・・」

祭「知っておるのか?」

刹「刃様より聞かされています。甘い理想と強大な力を持つ者と。そして、刃様が唯一認めた者と。・・分かりました。このまま続けても水掛け論です。我ら五胡は力こそ全て。自分達が正しいと言うのなら、力で証明して見せなさい!」

祭「望む所じゃ! 楓、思春、明命、呂布よ集まれ」

呼ばれた4人が傍に寄る。

祭「儂の策を聞け―――」















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


祭「―――以上じゃ」

楓「分かったぜ!」

思「御意」

明「頑張ります!」

恋「・・(コクリ)」

刹「作戦は決まりましたか?」

祭「もちろんじゃ。・・それにしても随分余裕じゃのう? 儂らに時間を与えるとは」

刹「気分を害したなら失礼を。あなた方を侮っている訳でも自身に驕っている訳でもありません。あなた方の作戦を力で粉砕し、完全な勝利を得たくなっただけですよ」

祭「その考えを命取りにしてやるわい。・・皆、用意は良いな?」

皆が一斉に頷く。儂はそれを確認し、正面の刹那に目を向ける。

祭「では・・行くぞ!」

それを合図に思春と明命が飛び出した。





















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※※※※


刹那side

さて、どう来ますか・・。

黄蓋殿の掛け声を合図に甘寧殿と周泰殿が並んで飛び出した。正面から来るつもりか?

待ち構えていると、飛び出した2人が私から数歩の所で交差し、左右から襲い掛かった。

刹「何のつもり・・!?」

ヒュン、ヒュン・・。

2人が後方から2本の矢が私の額と胸目掛けて飛んできた。

ちっ! 2人に気を取られて反応が遅れた! 仕方なく私は矢を剣で弾き落とした。

思「討ち取る!」

明「今です!」

その隙を左右に回り込んだ2人が襲う。

刹「この程度で!」

私は渾身の力で剣を周泰殿の剣にぶつけ、そのまま周泰殿ごと弾き飛ばし、甘寧殿を前蹴りで腹を蹴り、甘寧殿の剣を髪の毛数本で避け、蹴り飛ばした。

明「きゃあ!」

思「がはっ!」

2人が左右に弾かれる。

この程度・・!?

2人を弾き飛ばしたのも束の間、今度は正面から凌統殿が地面スレスレの位置から突き上げるようにして私の心臓目掛け、トンファーを振るった。

楓「これでどうだぁぁぁーーっ!!」

くっ! 体勢的に避けるのは不可能、受けるのも・・・ですが!

刹「おおぉぉぉーーっ!」

ガキィン!!!

私は剣の柄をトンファーの先にぶつけ、凌統殿の一撃を受け止めた。

楓「なに!?」

そして眼前にいる凌統殿に腹を膝で撃ち抜く。

楓「ぐふ!」

凌統殿は前方へ飛ばされた。

今のはなかなか、次は・・。

その時私は違和感を感じた。

刹「!?」

私は視線を空に向けた。違和感。それは太陽に照らされて出来た影が、自分以外にもう1つあったことだ。その影の持ち主は太陽に身を隠した呂布殿。

刹「なるほど、先の一連の攻撃は全て囮。全ては呂布殿の一撃のため。思った通りですよ。トドメの一撃は呂布殿。あなたで来ると」

私は剣を構える。

刹「これで、終わりです!」

私の剣と呂布の戟がぶつかる。



















ドス・・。




















私の胸に衝撃が走った。





















祭「思った通りじゃよ。トドメの一撃を呂布に当たりを付けると」





















ふと見ると、私の胸から血が溢れ、私の後方には1本の矢が刺さっていた。




















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祭side

目論見通りじゃ。まず、思春と明命が飛び出し、2人が交差するギリギリを狙って矢を放つ。そして奴が矢を弾き、気を左右の思春と明命に反らした隙に儂は足に氣を集め、呂布と共に上空に飛び、儂を呂布の姿で隠す位置に行く。そのあと楓が真下から、奴の視線を下に移すような一撃を繰り出させ、最後、呂布と奴の武器がぶつかる直前に呂布の脇の下から覗く心臓を儂の氣を込めた矢で射ぬいた。率直に賭けじゃった。奴がトドメの一撃を呂布に当たりを付け、儂の存在を頭の片隅から消すこと。もし見抜かれれば奴は呂布の一撃をその場から離れ、避けたであろう。そして、儂の氣。儂は昴ほど氣の扱いに長けていない。元来連続で、しかもそれを体の硬化以外に使うことは出来なかったが、鍛練を積み、瞬間的に身体強化に使う事が出来るようになった。が、しかし、鍛練でも2連続の使用をして、氣を身体強化に使用出来た成功率は20回に1回ほど。ほとんど低確率じゃった。氣の扱いは純粋に才能じゃから儂にはこれが限界じゃ。そしてその賭けは見事成功した。

奴は、刹那は自分の胸に手を当て、そして、仰向けに倒れた。

儂は刹那の近くまで歩み寄った。

刹「見事です。してやられました。最後がまさか、黄蓋殿で来るとは・・」

祭「ただ運が良かっただけのことじゃ」

刹「運も実力の内。それもあなた達の勝因の1つですよ」

祭「・・お主はこれで満足なのか?」

刹「満足ですよ。私は今でもそう思っています」

祭「お主の言を借りるなら、勝った儂らが正しいということになる。力1つでひっくり返ってしまう、そんな世を作ったとして、お主はそれで満足だったのか?」

刹「ええ。・・私は力こそ全ての五胡に産まれ落ちました。五胡では力無き者など一寸の価値もありません。そんな国で人より優れた頭を持ったせいで物事を単純に考えられませんでしたし、何より、心や想い何て言う曖昧で形の無い脆いものを信じる事など出来ませんでした」

祭「・・・」

刹「ですから私には力しか無かったのですよ。単純で分かりやすく、誰もが等しく従う絶対的な力を・・」

祭「・・お主・・」

刹「そんな顔をしないで下さい。私は後悔していませんし、私が勝ったならあなた方を討ち滅ぼすつもりでしたから。互いに信じるもののために戦い、そしてあなた方が勝った。それだけですよ。ゴホッゴホッ!」

刹那は口から大きく咳払いをし、吐血した。

刹「この戦は私達の負けです。ですが最後に勝つのは私達です。我らが王、刃様が必ずあなた方に勝つでしょう。そして三の将も・・。私に勝ったあなた方への餞として1つ教えておきましょう。刃様の力は絶大です。通常、個が集に勝つなどありませんが、刃様はそれが出来る。そして三の将羅鬼。彼は将としての資質は皆無ですが、個人の武は私以上。彼単体で戦況をひっくり返すことが出来るだけの武を持っています。ご用心を・・」

祭「・・忠告痛み入る。じゃが心配は無用じゃ。我らは負けん。誰が相手でもな」

そう告げた。刹那は一笑いすると徐々に瞳から光が消えていった。

刹「ゴホッゴホッ! ・・時間・・みたいですね・・。それではわた・・しは、退場させて・・いただき・・ます・・」

刹那が瞳を閉じた。

刹「我らが・・五胡に・・栄光・・あ・・れ・・」

そして刹那は息をひきとった。

祭「・・皮肉なものじゃ、こやつも、儂らと想いは同じじゃった・・」

こやつも五胡のために・・、自国のために戦った。

気が付くと儂の周りには楓達が集まっていた。皆傷だらけで、ボロボロじゃった。改めて刹那の恐ろしさを知ったわい。

祭「まだ戦いは終わってはおらぬ。皆もうひとふんばり頼むぞ?」

皆が一斉に頷く。

祭「敵将撃破の報を敵勢と味方全てに報せるぞ」

儂は大きく息を吸い・・。

祭「敵総大将刹那、儂らが討ち取ったーっ!!」





















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第三者side

その後、敵総大将が討ち取られた事が戦場に伝わり、五胡軍の士気は急激に落ち、抗う者、逃げる者、混乱する者ともはや統制が効かなくなり、五胡軍は壊滅、そして撃破された。呉領防衛戦。孫呉の勝利で終結した・・。











続く

-85-
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