小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 天気は雲一つ無い、正に『快晴』。
 絶好の行楽日和となった修学旅行初日。
 なんてたって担任が楽しみで何時もより早く起き、やる気満々なのだ。

 因みに今日を迎える前に2年間もの時を過ごしたことで予想通り亜子とのどかは成長した。
 付け加えるならクスハも確り成長し、子狐から立派な大人の狐へと成長している。

 亜子とのどかがどれ位成長したかと言うと、2人の身長はのどか、亜子共に5cmは伸び、体の凹凸は以前よりハッキリ。
 和美、真名、楓が『グラマー美女』ならば亜子とのどかは『スレンダー美女』と言うべき姿に成長した。

 無論行き成り成長した2人と1匹には誰もが驚いたが、其処は『突発性急成長症』と言うことにした。
 以前のエヴァの『先天性発達異常症候群』宜しく、目の前に実例があるので無理やりに納得させた。
 (千雨は最後まで突っ込みを入れてはいたが…)
 ちょいと付け加えると、2年間も一緒に居たもんだから稼津斗の従者5人、
 敬称の有無は別として全員がお互いを名前呼びする位親密になっている。
 おまけに5人とも稼津斗から貰った、勾玉の飾りが付いたシルバーチェーンのネックレスをしている。
 稼津斗自身も同じ物をしてる為色々聞かれたが全て黙殺!

 ともあれいざ京都へ出発。
 なお、クスハが至極普通に新幹線に搭乗している事については最早誰も突っ込みは入れなかった。








 ネギま Story Of XX 10時間目
 『そうだ、京都に行こう』









 さて、修学旅行である以上クラスで班分けがされている訳だが、3−Aは相坂さよが欠席扱いであるため丁度30人。
 で、6人の班が5つ出来ている訳で、軽く説明すると…



 
 1班        2班     
 班長・柿崎美砂  班長・超鈴音
    釘宮円      春日美空
    椎名桜子    絡繰茶々丸
    古菲      葉加瀬聡美
    鳴滝風香    エヴァンジェリン.A.K.マクダウェル
    鳴滝史伽    四葉五月    


3班      4班      5班
班長・雪広あやか 班長・明石裕奈 班長・神楽坂明日菜
    朝倉和美 和泉亜子 綾瀬夕映
    那波千鶴 大河内アキラ 近衛木乃香
    長谷川千雨 佐々木まき絵 早乙女ハルナ
    村上夏美 龍宮真名 桜咲刹那
    ザジ・レイニーデイ 長瀬楓 宮崎のどか
    


 である。
 因みに矢張りと言うか何と言うか、茶々丸、刹那、エヴァ、ザジはあぶれてしまった。
 (明日菜はエヴァを木乃香は刹那を自分の班に入れたがっては居たが…)
 だが其処はネギと稼津斗で無理やりに割り振った。
 (木乃香は喜び、刹那は何処か苦い顔をし明日菜はメッチャ落ち込んでいたのだが…)
 何か4班と5班の戦闘力が高い気がするが気にしてはいけない。

 で、現在新幹線で移動中な訳だが、其処は3−A車内でも大いに盛り上がっている。
 何をしているかと言うと…


 「私は手札から魔法カード『死の合唱』を発動!相手フィールド上のカードを全て破壊するよ!」


 巷で大人気のカードゲームに興じていた。
 只今裕奈vsハルナ。
 ネギと稼津斗は観戦中。

 「此れは明石の勝ちだな。」

 「え、何で?」

 「早乙女の場はがら空きだ。
  早乙女のライフは無傷の4000だが明石のモンスターの攻撃力の合計は5700…『クリボー』でもない限りは終わりだよ。」

 「へ〜。」

 良く分かってないネギに状況を説明する稼津斗。
 此のゲームには詳しいらしい。


 「3体の『デス・ガエル』でダイレクトアタック!」

 「うぎゃー死んだぁぁぁ!」
 早乙女ハルナ:LP4000→0


 で稼津斗の予想通り裕奈の勝ち。
 此の戦いの前に稼津斗も自身の従者及び、明日菜と戦っているが所謂『未来オーバー』での1Killで全勝と途轍もないガチっぷり。
 戦闘力以外でも充分チートらしいコイツは…


 「くっそ〜…忌々しいカエルめ〜〜。」

 お菓子を賭けていた為実に悔しそうなハルナ。
 賭けていた菓子を出そうとしたところで其れは起きた。


 「ゲコッ。」

 「「「は?」」」

 箱を開けて出てきたのは何故かカエル。
 先程のハルナのセリフと相まって実に面白いのだが…

 「ゲコゲコ!」
 「ゲロゲロゲロ!」
 「ケロケロケロケロケロ!」

 3−Aが搭乗している車両を埋め尽くすほどのカエルの大群。
 此れには流石に驚く。
 カエルが苦手な楓などはシートに座ったまま気を失ってしまっている。


 ――まさか関西呪術協会からの妨害!?

 ――…一般人巻き込むなよ阿呆。


 ネギと稼津斗は瞬時に此れが『関西呪術協会』からの妨害であるとの結論に達する。
 だが、此の程度のモノは稼津斗にとっては塵にも等しいわけで…


 ――爆閃衝!


 車両を壊さないように細心の注意を払って全体攻撃!
 カエルだけに標的を絞っての見事な一撃である。
 だから混乱する生徒には何の被害も無く掃討完了。


 そのまま別の車両に移って緊急会議。


 「此れだけの数…何処かに術者が居るはずだが…」
 「カヅト、あれ!」

 ネギが指差した方には1羽のツバメがこちらを見ている。

 「兄貴!あいつは『式神』だぜ!」
 「…居たのか生もの。」
 「相変わらずひでぇっすね、旦那!!」

 ちゃっかり付いて来ていたカモに対し稼津斗は手厳しい。

 「カモ君、居たんだ…」
 「兄貴〜〜〜!(泣)」

 哀れだなカモ。

 「(無視)それで『式神』って…」

 「陰陽道で使われる使役神…言うなれば紙で作った簡易ゴーレムと言うところか…っ!?」

 言い終わるが早いか、そのツバメが襲い掛かってきた。
 当然2人は迎え撃とうとするが…



 ――シャッ…カチン



 何かが空を切る音と鍔鳴りと同時にツバメが真っ二つに切り裂かれ紙へと還る。

 「あ、貴女は…」
 「…桜咲刹那。」

 目の前には巨大な野太刀『夕凪』を携えた刹那が。
 つまりは刹那がこの式神を還したのだ…一般人ならば持つのも難しいであろう野太刀の、あろう事か『抜刀術』で。

 「…もうすぐ敵の本拠地です、油断なさりませんよう…」
 「そうだな…肝に銘じておこう。」

 其れに軽く一礼をすると自らの席に戻ってしまう。


 「うおぉぉい兄貴ぃぃ!あいつめっちゃ怪しいじゃねぇか!!」

 突如カモが叫ぶ。

 「え?」
 「『え』じゃねぇよ!タイミングよすぎじゃねぇか!奴が術者に違いねぇ!!
  俺達を騙すために自分で式神を還しやがったんだ!!」

 恐るべき短絡思考。
 がなぁ…いい加減学べよ?

 「お前はどうしてそう短絡するんだ…桜咲がスパイなら今日まで待たずにとっくに行動起こしてるだろうが。
  どうにもお前が居ると、スムーズに話が進まん。だから京都に着くまで黙ってろ、クスハ!」



 ――ガブリ



 「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 呼ばれて飛び出てクスハさん。
 現れるなりカモに噛み付く、手加減なし。

 「京都に着くまでそいつの相手を頼む。」
 「♪」

 結局、カモは京都に付くまでクスハに玩具にされた。
 で、稼津斗は楓を起こすし自身の従者+エヴァ、茶々丸、ネギ、明日菜と話し合い、
 敵の出方が今一分からないので当面は『その場その場で対処』と言うことを取り合えず互いに確認しつつ、


 ――さっきの売り子…術者はあいつか…


 式神の術者に目星を付けていた。
 まぁ、此処では泳がせる事にはしたのだが…








 ――――――








 ――京都・清水寺


 京都に着いた一行は先ずは名所『清水寺』へ。
 その舞台からの展望たるや実に見事である。

 「ほほう…見事なものだな。」
 「凄い…京都の町が一望できるなんて!」

 念願の京都へ来る事が出来たエヴァ、そして初めて見るであろうその景色に感動するネギ。

 「こんなに落ち着いた気持ちで景色を眺めるなんてのは、一体何年振りだろうな…」

 稼津斗もまた、此の景色に感銘を受ける。
 己が居た世界ではゆっくり景色など見ている暇など無かったのだ、感動も一際大きい。


 ――西からの妨害…やってみると良い。最後に笑うのは果たしてどっちだろうな?


 何処か不敵な笑みを浮かべながら清水寺からの景色を眺める。
 そんな稼津斗を見て…

 「はぅぅ…せんせ〜〜///」
 「その表情は反則だよ、稼津斗にぃ…」
 「あかん、惚れ直すわ///」
 「稼津兄はああ言うの様になるね〜。」
 「ござるなぁ〜。」

 従者5人は微妙に使い物にならなくなっていた。
 又、

 「や〜ん偉い美人な狐さんやわ〜」
 「雪の様に白い毛並み、綺麗おすな〜」
 「何処からきはったん〜?」

 「♪♪」

 クスハが地元の舞妓さんの人気を集めていたりと実に平和だったのだが…



 ――地主神社


 「ネギくーん、稼津斗先生!こっちこっち!此れが恋占いの石だって〜!!」

 「あ、はーい!でも、あんまり走っちゃダメですよ〜。」
 「ま、元気があっていいさ。3−Aの連中の体力は底無しだな。」
 「きゅ〜ん♪」

 舞台で夕映からもたらされた『恋占いが出来る』との情報から、一行は此の場所へと移動。

 「アレに目を瞑ったまま此の石からあっちの石まで到達できれば恋が成就するんだ〜。」
 「らしいな。真実は兎も角としてロマンだよな。」

 その『恋占いの石』に挑戦するのは、目下ネギにゾッコンラブ(死語)なまき絵と、委員長こと雪広あやか。
 2人が歩き出すと当然のように賭けが始まる…好きだね。

 「ターゲット確認!行きますわよ!!」

 「おぉ!凄いぞ委員長ー!」

 「ずるーい。いいんちょ目開けてるでしょ?」
 「ホホホ、まさか!此れで私と某N先生との恋は見事成就ですわ!」

 突然走り出す2人。
 が…


 ――ズボ


 「「!!?」」

 突如地面が消えた。
 さらに、

 「「「「ゲコッ!」」」」
 「キャーーーーー!!」
 「ま、又カエル〜〜!?」

 またしても現れるカエル。
 慌ててネギがまき絵を、明日菜があやかを引き上げる。

 「稼津斗にぃ、此れは…」
 「あぁ…『西』からの妨害だろうが…」

 「余りにも稚拙だな。私達を馬鹿にしているのか?」

 エヴァの発言は尤もである。
 更に…



 ――音羽の滝


 健康・学業・縁結びと3種類の滝がある此の場所で、女子中学生の一番人気は勿論『縁結び』。
 皆こぞって飲もうとするが…


 ――?何か匂うな…此の匂い、酒か?…まさか!!
 「待て、そいつを飲むな!!」

 稼津斗の怒号によって止められる。

 「先生、何故止めますの。」
 「なんで〜。」

 「嫌な予感がする…」

 其れだけ言って一口。


 ――やっぱりか…
 「ネギ、楓!滝の上に何か無いか?」

 先程の稼津斗の怒号で察したのだろう、言われるまでも無くネギと楓は滝の上に。

 「こ、此れって!」
 「何と酒…しかも純米吟醸でござるか!」

 其処には予想通りと言うか何と言うか酒樽が。
 余りにも馬鹿くさいその発想に稼津斗…と言うか此の件に関わっている全員が軽く頭痛を覚える。

 「…楓、取り合えずその酒持って下りてきて…」
 
 「あいあい…」

 楓がもってきた酒樽を見て更に力が抜ける。
 其れは小さくは無いが大人数を酔わせるには量が足りない。
 何処まで本気なのかを疑ってしまう。

 「稼津斗先生…西の刺客は馬鹿なんやろか?」
 「一切否定できないな此れは…」

 取り合えず、生徒達に被害は無かったので、酒樽を取っ払い滝の上を監視しつつその場は終了。
 尚、酒樽の酒は稼津斗とエヴァで山分けにした。








 ――――――








 ――ホテル嵐山




 「豪く慌しい1日だった…」

 辿り着いたホテル内を見回りながら呟く。
 音羽の滝以降は特に問題も無くホテルに辿り着いたのだが、先程露天風呂で一悶着あったばかり。
 簡単に言うと、刹那はスパイでない事が明らかになった。
 その直後に猿の式神が木乃香を攫おうと大量に現れたがクスハと刹那で掃討。
 で、木之香から刹那との過去を聞き、それで今に至る。


 ――桜咲は半妖であると言うだけで己を卑下し近衛嬢に近寄らないようにしている…此ればかりは俺じゃあどうしようも無いか…ん?
 「桜咲?其れにネギに神楽坂、真名達まで。」

 「稼津斗にぃ丁度良かった。連絡しようと思ってたところだったんだ。」

 ロビーには稼津斗の従者5人、ネギと明日菜、エヴァと茶々丸が。
 クスハは子狐に変身し亜子の頭にへばり付いている。

 「好かれてるなぁ…」
 「可愛いからええけど。」
 「〜〜♪」

 「まぁそれは良いとして、何か防御的な処置を施したみたいだな…此れは『式神返し』か?」
 「!!分かるんですか!?」

 刹那の驚きは無理も無い。
 ネギや明日菜は勿論、エヴァにさえ何をしたのかを説明したのだ。
 其れが稼津斗には説明するまでも無く何をしたのかを言い当てられたのだ。

 「あぁ、さっきまでとはホテル内の『気』が違うからな。」

 「それだけで…流石ですね。」

 先程の露天風呂での1件で稼津斗の実力は思い知った(放った『斬岩剣』を気で強化した人差し指1本で止めた)
 刹那だが改めてその実力の高さに感服する。

 「修練を積めば誰にでも出来るようになる…で、何を話していたんだ?」

 「ウチ等の『敵』についてや。」
 「刹那さんの話だと『西』の一勢力である陰陽道の『呪符使い』とその『式神』だそうです。」

 「成程…それは些か面倒な相手だな。」

 さも有りなん。
 西洋魔術師ならば従者を分断、或いは無効化した上でタイマンに持ち込めば相手が余程でない限りは接近戦で押し切れる。
 が、陰陽術師の場合倒してもすぐさま召喚される式神のせいで戦うと面倒な事この上ない。

 「其れを踏まえての『式神返し』か…それなりに強力だから昼間のカエル程度なら大丈夫だろう。
  さて、そろそろ就寝時間だ。新田にどやされる前に部屋に戻るとしようか?」

 言われれば確かに既に就寝時間。
 『鬼の新田』に見つかると面倒だ。

 「確かにあいつに見つかっては敵わんな…戻るぞ茶々丸。」
 「はい、では皆さんお休みなさい。」

 「お休み、キティ、茶々丸さん。」
 「では私達も…」
 「お休みなさい、稼津斗せんせー、ネギせんせー。」

 「稼津兄、又明日ね。」

 「ウチ等も休むわ。」
 「稼津斗殿とネギ坊主もゆっくり休んだ方が良いでござる。」
 「じゃあね稼津斗にぃ、ネギ先生…良い夢を。」
 「きゅ〜ん♪」


 各員部屋に戻って行く。
 クスハは亜子のところで寝るらしい。


 「さて、簡単に見回りをして俺達も休むとしよう。」

 「うん。僕は少し外を見回ってくるよ。」

 「あぁ、無理はするなよ?」

 「分かってる。」


 ロビーでネギと別れ、自分はホテル内の見回りを続ける。
 途中新田と会い、他愛も無い話をしていたのだが…



 ――何だ、此の妙な気配は…?



 突然奇妙な気配を感じ取る。
 其れは悪意に満ちていて実に気味が悪い。
 その正体を探ろうとしたところで…



 ――せんせー!木乃香さんが攫われましたー!!



 のどかから念話で『木乃香拉致』の知らせが入る。


 ――何だと?

 ――トイレに入ったきり出て来ないので扉開けたら木乃香さんじゃなくて御札が…

 ――一体何時…!さっきネギが外にでた時に入ったのか…式神返しでがあると油断した、迂闊だったな…

 ――今、ネギ君達と一緒に追ってるところや。

 ――亜子も一緒か。分かった俺も直ぐに行く。其れまで任せるぞ。

 ――了解です!
 ――了解や!


 一旦念話を切り、すかさず今度は楓達へ。


 ――楓、真名、和美、近衛嬢が敵に拉致された。

 ――えぇ!『式神返し』の呪符は!?
 ――何時の間にか入り込まれていたか…
 ――随分手荒な、しかし何故このか殿を?

 ――近衛嬢の魔力を利用するつもりだろう、間違いなく悪い方にな。今はのどかと亜子がネギ達と犯人を追っている。
    俺も犯人を追う。和美はアーティファクトを展開して周囲を警戒、楓と真名はもし別働隊が攻めてきた場合対処できるようにしておいてくれ。

 ――あいあい、了解にござる!
 ――任せておいてくれ。
 ――気を付けてね稼津兄。

 ――あぁ…行って来る。


 念話を切ると瞬間移動『無影・月詠』でホテルの外へ移動し、そのまま夜の京都の空へと飛翔した。








 ――――――








 ほぼ同時刻。
 木乃香を攫った下手人(猿の着ぐるみが恐ろしく間抜け)は焦っていた。


 ――ひよっ子の神鳴流剣士は兎も角、何でこないに『デキル』ガキが多いんや!


 そう思うのも無理は無い。
 凄すぎるのだ追手のメンバーは。

 「お嬢様を返してもらうぞ!」
 夕凪で召喚された式神を一刀の元に還して行く刹那。

 「木乃香を返しなさーい!」
 破魔の剣(ハリセン)で同様に式神を還す明日菜。

 「小賢しいわ、三流が!」
 その爪で式神を切り裂くエヴァ。

 「魔法の矢…11矢!」
 各種魔法で呪符を相殺、或いは式神を迎撃するネギ。

 何より特出しているのは…

 「えと…刺突破砕撃〜!」
 アーティファクトを展開して稼津斗の技で戦うのどかと、

 「イル・ライフ セイブ・アライブ フルレイズ!『火炎大蛇の舞(サラマンダー・ストリーム)』!」
 精霊を召喚し、始動キーのみの無詠唱で上級クラスの魔法を使う亜子。


 予想外の戦力に持ってきた呪符や式神札をひっきりなしに展開し何とか追いつかれないようにしているのだ。


 ――このままじゃジリ貧や…けど、見えてきた!駅や!あそこまで行けば!


 前方に駅を見つけると一気に加速。
 勿論、その間も呪符や式神を出すのは忘れては居ない。
 尤もまるっきり相手になどなっていないのが現実では有るのだが…

 「駅に入るつもり!?」
 「おのれ逃がすか!」

 明日菜と刹那が逃がすまいと一気に突撃するが…

 「此処までくればこっちのもんや!喰らいなはれ!極大符術『京都大文字焼き』3枚重ね!!」

 気ぐるみを脱ぎしてた女の放った札から強大な炎が大の字に展開し行く手を阻む。
 突っ込みそうになった明日菜と刹那を慌ててネギとエヴァで止める。

 「く…小賢しい真似を!」

 エヴァの力を持ってしても自身の得意属性の氷とは相性の悪い炎。

 「唯でさえ強力な炎の3枚重ね、簡単には破れませんえ?ほな…」

 そのまま逃げようとするがそうは問屋がおろさない!

 「ご苦労さんやイフリート。来てやアクエリアス!のどか!」
 「うん!」

 今まで召喚していた炎の精霊(イフリート)を戻し新たに水の精霊(アクエリアス)を呼ぶ亜子と、詠唱を始めるのどか。

 「ライ・オット スペル・ブックス ライブラリ、来たれ海の皇 荒ぶる高波で不浄を流せ!『海神の怒り(フュリー・ネプチューン)』!」
 「イル・ライフ セイブ・アライブ フルレイズ!『青い津波(ブルー・ラド・マレ)』!」

 亜子とのどかの水属性魔法が炸裂。
 更に!

 「ラス・テル マ・スキル マギステル!吹け一陣の風、『風花風塵乱舞(フランスサルタティオ・ブルウェレア)』!!」

 ネギが風属性魔法をぶつけ強烈な嵐となり炎をかき消す。
 が、

 「やりおりますなぁ…でも此処までや。」
 「うふふ…お初お目にかかります〜。神鳴流の月詠言いますわ〜よろしゅう〜。」

 炎が晴れた先には何時の間にやら二本の刀を持ったゴスロリ衣装の少女と、恐らくは残っている札全てを使ったのだろう式神。
 そして護衛と思われる縫い包み(?)の猿とクマ。

 「楽しみまひょか…先輩!?」
 「く…貴様!」

 状況を整理する間も無く月詠と名乗った少女は刹那に切り掛かり、式神と猿とクマも襲い掛かってくる。
 こうなると負けはしなくとも対処している間に逃げられてしまう。

 「このかお嬢様には呪符と呪薬でもつこてウチの言いなりの操り人形になってもらいまひょか…ほなさいな「逃げられると思っているのか?」…は?」

 逃げようとした瞬間に遥か上方から聞こえた声。
 続いて…

 「羅刹葬爪!」

 無数の鎌状の気弾が降り注ぎ式神と猿&クマを送り返し月詠の二刀を叩き折り余波で誘拐犯を吹き飛ばす。
 女には何が起きたのかが分からない。
 分かるのは自分が倒れているという事とその自分の頭の数センチ横に何者かの脚が突き刺さっているという事。
 その何者かが、木乃香を肩に担いでいるという事。
 ついでに今の一撃で月詠は目を回している。

 「せんせー!」
 「稼津斗先生!」
 「フン、遅いぞ貴様!」

 「場所の特定が出来なくて瞬間移動…無影・月詠が使えなかったんだ、此れくらいは大目に見てくれ。」

 そう、現れたのは稼津斗。
 かなりスピードを出して飛んでいたのだが、場所の特定に手間取っていたらしい。

 「さて、近衛嬢は奪還した。式神は全て片付けたし護衛の剣士は戦闘続行不能…どうする?」

 「く…最後の最後で出て来たくせに偉そうに…今日のところは終いや、逃げさせてもらいます!」

 忌々しげに言い放ち体勢を立て直してその場を去ろうとする。

 「逃がすか!」

 無論刹那は逃がすまいとするが其れは稼津斗に止められる。

 「先生、何故!」
 「深追いは禁物だ。此の場は近衛嬢を奪還しただけで良しとしておこう。」

 そう言って担いでいた木之香を刹那へと渡す。
 その間に、女は再び猿(今度のは額に2と書いてある)を呼び出し月詠を抱えて空へと逃亡。

 「次はこうは行きまへんからな、覚えてなはれ!其れと其処のひよっこ剣士!」

 上空から捨て台詞を吐きつつ刹那に目を向ける。

 「総本山に行く事が有ったら天ヶ崎千草に伝えとき!『腰抜けはウチのやる事良く見とき』ってな!」

 「な、貴様師匠(せんせい)と如何いう関係だ!!」

 「さぁ、なんでっしゃろな〜。ほなさいなら!!」

 転移符を使ったのだろうか、一瞬でその場から消えてしまう。

 「フン…捨て台詞も三流だな。私達も戻るぞ、寝不足では明日の奈良に差し支えるからな。」

 エヴァの言う事は尤もなので皆揃ってホテル嵐山へ。
 木之香は全員一意で刹那が負ぶっていく事に成った。



 その途中で…



 「桜咲、さっきの奴が言っていた『天ヶ崎千草』と言うのは?」

 稼津斗が刹那に問いかける。
 内容は去り際に残した台詞に出てきた『天ヶ崎千草』の事である。

 「師匠(せんせい)…天ヶ崎千草は関西呪術協会のナンバー2の座にいる人物で私の陰陽術の師でもあります。
  総合力では兎も角、陰陽道と言うその一点に於いては西の長を上回ると思います。」

 「西のナンバー2…それに対して『腰抜け』とは…?」

 考えようとするが…

 「ふにゃ…せっちゃん?」

 背負われている木乃香が目を覚ます。

 「なんや変な夢やったな…変なお猿に攫われて…やけどせっちゃんや明日菜、ネギ君達が助けてくれるんや…」

 「それは何とも…でももう大丈夫です、このかお嬢様…」

 そう言うと木乃香が僅かに腕に力を込める。

 「お嬢様?」
 「よかったー…せっちゃんウチの事嫌ってる訳やなかったんやな…」
 「え?そ、そりゃ私かてこのちゃんと…」
 「あ〜…久しぶりにそう呼んでくれたわ〜…」

 「!し、失礼しましたお嬢様!」

 その言葉にハッとなる刹那だが…

 「……」
 「あの、お嬢様?」
 「すぅ…すぅ…」

 木乃香は再び夢の中へ。

 「はっはっは1本取られたな刹那。」
 「このかの見事な1本勝ちや♪」

 「和泉さん!エヴァンジェリンさん!!」

 照れ隠しに叫ぶ刹那。
 其れを見てやれやれといった表情の稼津斗とのどか。
 苦笑いを浮かべる明日菜とほっとした表情のネギ。


 間も無く日付が変わる。
 修学旅行の初日、余りにも慌しい1日はこうして終わりを告げた。
















  To Be Continued… 

-10-
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