小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 文化祭の出し物が『お化け屋敷』に決まった3−Aは只今作業の真っ最中。
 出し物を決めるのに時間が掛かったため、作業は急ピッチ。
 本来ならば学園祭前日以外は禁止の夜間居残り作業も行っている状態。

 さて、そんな中で


『3−A教室に『霊』再び』


 こう見出しが付けられた麻帆良スポーツが、今回の騒動のきっかけであった…










 ネギま Story Of XX 23時間目
 『幽霊少女救済劇!』










 大方想像できたと思うが、自分達のクラスが取り上げられたとあって3−Aの面々は新聞に釘付け。
 が、一面を飾った『心霊写真』を撮ってしまった亜子はちょいと困惑気味。

 「アカン、まさか使われるとは思ってなかったわ…」

 冗談半分で持ち込んだ写真がまさか一面飾るとは思って居なかったらしい。

 「つーかよ此れマジか?私も昨日居た筈だけど見えなかったぜ?」
 「いえ、此れは本物だと思うです。なんと言うか妙なリアリティがありますし。」

 魔法に関わったとは言え、未だこの手の事には懐疑的な千雨に対し夕映は本物だと言う。
 その『本物』を肯定したのは和美だ。

 「あちゃ〜これってさよちゃんじゃん。相変わらず普通に撮ると写真写り悪いねこの子は。」
 「分かるでござるか!?」
 「そう言えば和美さんは霊感が特別優れてましたね。」

 「ても『あ〜居るな〜』ってレベルなんだけどさ。おかげで私が写真を撮るとこう。」

 そう言って携帯のカメラで撮った写真を見せる。
 写っていたのは亜子が撮った『如何にも』な心霊写真ではなくカメラに向かって手を振っている可憐な少女。

 「やれやれ、矢張り奴だったか。よもや心霊写真とはな。」
 「知ってんのエヴァちんは?」
 「知っいるどころではない。私は15年も此処に通っているのだぞ?教室幽霊の噂などミミタコなほど聞いている。
  加えて私自身も奴の事は認識しているよ。
ただ、此処までハッキリした『心霊写真』が撮られたのは15年間で初めてだがな。」

 伊達に15年も中学生をやっては居ない。
 エヴァはとっくに此の幽霊処女の存在は知っていたのだ。

 「しかしだ、こうなると些か問題があるぞ。今年の3−Aは特別だからな下手をすると退治を始めかねん。
  稼津斗、貴様は相坂さよを認識しているのだろ?如何にかならんのか?」

 エヴァとしてもこうなっては幽霊少女の平穏は無いものと考えている。
 それ故にさよを認識している稼津斗に考えを聞いたのだが…

 「手遅れだな。既にあいつ等はやる気満々だ。」

 稼津斗の視線の先では…

 「こんなんが出たんじゃ居残り作業にも支障が出るってモンよ!私達で退治するぞ〜〜!」
 「「「「「お〜〜〜!!!」」」」」

 ハルナを中心に幽霊退治を敢行しようとしている3−A面々が居た。

 「あ、あいつ等は…!」
 「無駄よキティ。あぁなったら誰にも止められないよ。つい此の前まで私もあっち側だったんだけど…」

 本来の人格を取り戻したアスナは此の状況でも冷静だった。
 だが、こうなると慌てるのはネギだ。

 「だ、ダメですよ!さよさんは僕の生徒です、退治なんてさせません!!」

 正に教師の鏡といえる意見。
 しかし、空気を読まない馬鹿は何処にでも居るわけで…

 「甘いぜアニキ!此の写真を見ろよ如何見たって悪霊じゃねぇか!生徒の為にも退治すべきだぜ!」

 『エロオコジョ』ことカモが退治を進言。
 と言うかこいつは如何やら和美が撮った写真は見ていなかったらしい。

 「ダメだよカモ君!朝倉さんの写真を見てよ、さよさんは悪霊なんかじゃない!」
 「其れが間違いだぜ!そいつは朝倉の姐さんが自分を認識してるのを知って演技してるに違いねぇ!」

 恐るべき短絡思考、流石は小動物。
 無論其れを黙ってみている稼津斗達ではない。

 「楓、リインフォース。」

 「御意にござる。」
 「了解です。」

 命を受けた楓とリインがアーティファクトとチェーンバインドで即座にカモを拘束する。(認識障害発動済み)

 「生もの学習能力無いのかお前は?」
 「我が弟子でありマスターであるネギに意見するとはいい度胸だな小動物?」

 ――わ、私悪霊じゃないですよ〜〜!


 威圧感たっぷりの稼津斗&エヴァにカモは震え上がるしかない。
 ついでにさよの訴えが其れを加速させる。

 「のどか、此の生ものは何を考えている?」
 「『悪霊を退治すれば俺の株は鰻登りでウハウハだっぜ』っておもってますぅ!」

 「滅殺決定。アスナ!」
 「うん、了解。」

 拘束されたカモに稼津斗の横蹴り一発、吹き飛んだ所にアスナの咸卦法パンチ。
 追撃のアッパー掌底に天魔の剣(ハリセン)での一撃。

 「消えろ生ものが。」

 止めは『刺突破砕撃』。
 稼津斗とアスナの合体技『アルティメット・突っ込み・コンビネーション』が火を噴いた(突っ込みと言うには威力が高すぎるが…)


 「カヅト、クロネコさんて海外への宅急便も受け付けてるよね?」

 其れを見たネギはカモの強制送還を考えていた。

 「受け付けてるはずだ。だが、送るならクール便にしろよ?所詮『生もの』だからな。」
 「うん、そうする。」

 まぁ送っても戻っては来るのだろうが。

 「カモくんは兎も角としてさよちゃんは如何すればいいん?なぁせっちゃん、さよちゃん退治されんようには出来へんの?」
 「ハルナさんを中心に退治の方向で動いています。」
 「止めるのは難しい。そうだろ刹那?」

 仕事仲間である真名は刹那が言わんとしてることを直ぐに看破した。
 確かにテンションが上がりまくった3−Aを止めるのは難しい。

 「そうなると我々で保護するしかありませんか。」
 「ですわね。幽霊と言えど私達のクラスメイトであることに違いありませんわ!」

 リインの案にあやかが同意。
 いや、稼津斗組、ネギ組、修行組全員が同じだろう。

 「安心しろ相坂お前は俺達が必ず守る。事が済んだら皆に見えるようにしてやる。」
 「ふん、精々大船に乗ったつもりで居ろ。此の面子なら如何に3−Aが相手でも負けはせん。」

 ――あ、ありがとうございます〜〜!


 此の場で唯一『完璧』にさよを認識している稼津斗とエヴァがそう言った事で『退治阻止』が決定。
 それにさよは涙を流しながら喜んでいた。








 ――――――








 ――同日夜半・麻帆良学園都市女子中等部


 「よっしゃ〜それじゃあ張り切って除霊しちゃうぞ〜〜!」
 「「「「「お〜〜〜〜〜〜!!」」」」」


 ハルナを中心とした除霊組は既にやる気満々。
 超一味科学班が開発した『除霊銃』を手に今にも突撃せんばかりの勢いだ。


 其の一方で、


 「始まったか。よし、裕奈、真名、亜子は除霊組に合流してくれ。精々派手に頼むぞ?」

 「ふ、抜かりはないよ稼津斗にぃ。」
 「煽りに煽るのは得意だからね〜」
 「ウチもバッチリ皆の恐怖心煽って見せるわ。」


 「せっちゃん、しっかりな?」
 「任せたわよ刹那。」

 「お嬢様、アスナさんお任せを。」


 稼津斗達は『相坂さよ救済計画』を始動していた。


 計画はこうだ。
 先ずはリインが通常状態(身長34cm)でXXに変身しオーラを纏った状態で3−A面々の前に現われる。
 同時にクスハが狐火で擬似的な『人魂』を作り出し恐怖を煽る。
 更に和美が自身のアーティファクトで姿を消した状態で血に似せた赤黒い絵の具で血文字を演出。
 緊張が高まった所でエヴァが氷系の魔法で悪寒を催させ、のどかが風系の魔法を使ってポルターガイストを誘発。

 で、討伐に乗り出した面々に裕奈、亜子、真名、刹那が混じって恐怖を煽りながら誘導。
 適当な場所で態と悪霊役のリインの攻撃を喰らいピンチを演出。
 そこでさよが登場し悪霊をやっつけ(完璧に八百長試合だが…)、其の跡で稼津斗とネギで事の真相(捏造)を話すと言うもの。

 修行組のアキラ、夕映、千雨は今回はバックアップとして小型の無線を使っての通信役になっている。


 「さぁ、悪霊でてこいや〜〜!!」

 言ったのは一体誰か?
 兎も角此れを合図に計画が始動。


 「良しミッションスタートだ。」


 ――Mission:幽霊少女を救済せよ



 先ずは計画通りにリインが特別濃いオーラを纏って登場。
 同時に蒼白い炎が複数現われる。

 「うわお出たな!よ〜し皆撃て撃て〜〜!!」

 ハルナの号令を皮切りに怪しげな『除霊銃』が火を噴く。
 無論リインにはそんなものは通じる筈もなく簡単に避けてしまう。

 「おんのれぇぇ!」

 的に当たらないとイライラするのは人の常。
 ここで和美の出番だ、偽者の血糊で壁に『キカヌ…キカヌゾ!ヌルイワ、キサマラァァァ!』と綴る。

 「ち、血文字ぃぃぃ!?」

 此れには流石に驚くがそれだけではない。

 「えへ、えへへ、キカヌ…キッカーヌ…うへへへへ…」

 裕奈が取り憑かれた演技をし、

 「裕奈〜〜!…アカンウチ等も取り殺される〜〜!?」

 亜子が恐怖を煽る。
 なんと言うか実に見事。

 「く、このままではダメだ…中々にやるようだが此の魔眼から逃げられると思うな!…其処だ刹那!」
 「任せろ。悪霊退散『雷鳴剣』!」

 武闘派2人も迫真の演技でリインを攻撃。(この辺はリアリティを出す為に可也本気でやっている。)
 リインは其れを交わしながら狐火と共に高速移動を開始。

 其の途中でエヴァの氷魔法が周囲の温度を下げ緊張感を増大させる。
 更にリインが通った場所にのどかが風魔法で擬似ポルターガイストを発動。
 誰が如何見ても立派な『心霊現象』の出来上がりだ。


 「大河内、龍宮達は?」
 『西側の階段に向かってる其のまま誘導して。』
 「わ〜った。先生達もそっちに向かったからよ。おし、巧く誘導しろよ狐。」
 「任せてよチウ!」
 「チウって呼ぶんじゃねぇ!」

 バックアップ組も見事に連携が取れている。


 そして計画はいよいよ大詰め。

 「追い詰めたぞ悪霊が!」
 「私達相手に良くやった方だが…観念して成仏しな。」

 校舎の一角に偽悪霊を追い詰めた真名と刹那はそう言う。
 無論其れは合図で、直後にリインから衝撃波が発せられ2人は吹き飛ばされてしまう。(勿論演技)

 が、此れは予想以上に3−Aメンバーには効果があった。
 『武闘四天王』として名を馳せる2人がいとも簡単にやられたのだ。
 これまでは一方的に攻撃していたにも関わらずだ。

 全員が息を呑む。
 2人を倒した(様に見せかけた)リインは纏うオーラを不気味なものに変化させ少しずつ距離を詰め始めた。
 同時にクスハが作り出した偽の人魂も黒い炎へ変化する。

 緊張が走る。



 ――今ですわ!
 ――はいっ!


 あやかの号令でさよがその場に飛び出す。(稼津斗が皆に見えるように霊魂を半固着化させた)


 「だ、ダメです〜〜!」

 其の叫びと共に強烈な雷が発生。(ネギの雷系魔法&稼津斗の気弾を使った閃光効果)
 次の瞬間、

 「ギヤアァァァァァ!」

 断末魔の悲鳴と共に悪霊が消滅。(リインの演技+瞬間移動で消滅を演出した)


 突然の出来事に唖然としている面々。
 此処からは稼津斗とネギの仕事だ。

 「だ、大丈夫ですか皆さん〜!」
 「怪我人はないか?」

 如何にも『今合流した』ふうにその場に現われる。


 「え?あ、先生!?」

 「悪霊が本当に居るとはな。尤も相坂が其れを退けたのには驚きだが。」

 「ちょっと待って、稼津斗先生知ってるの其の子の事!?」

 円の問にはネギが答える。

 「知ってますよ僕もカヅトも。この人は相坂さよさん。3−Aの出席番号1番です。」

 そう言って名簿を見せる。

 「「「確かにそうだ…」」」

 納得。

 「あれ、じゃああの心霊写真って?」

 「単純に写真写りが悪かったんだろうな。彼女は悪霊どころか3−Aの守り神とも言える。」

 嘘ではない。
 事前に『同調』でさよを調べてみたところ極めて霊格が高く、下級の神仏に匹敵していたのだ。

 「若しかしたら其の写真は今回の事を知らせようとした結果なのかもしれません。」

 ネギがこう締めくくる。
 余りにも的確な説明に全員が納得。

 「取り合えず教室に戻ろう。血文字の後始末もしないといけないしな。」

 稼津斗の此の一言で一行は教室へ。
 面白いまでに計画がはまり無事に幽霊少女は救済されたのだった。








 ――――――








 ――翌日



 『あ、あの其処までしていただかなくても…』
 「何言っての!悪霊と勘違いしちゃったんだから此れくらいはさせてよ。」


 3−Aの教室の片隅に小さな祠が出来上がっていた。
 作ったのはハルナを始めとした『除霊組』の面々。
 どうやら『守り神様を悪霊と勘違いした』事への詫びのつもりらしい。
 なお、さよは半固着状態のままなので皆普通に見えている。

 「作業そっちのけで何を作ってるのかと思ったらまさか相坂を祭る祠とは…」
 「でもさよさん嬉しそうだよ?」

 確かにさよは嬉しそうだ。

 「本人が良いならよしとするか。さて、作業を始めるか。」

 昨晩の騒動のせいで只でさえ遅れている作業は更に遅れている。
 此処からは急ピッチで進めなければ学祭には間に合わないだろう。

 「作業開始するぞ。」
 「さぁ働け貴様等!」

 稼津斗とエヴァの掛け声で作業開始。

 『私も手伝います。』

 更にさよも手伝うことを自ら伝え作業の輪に加わる。


 こうして3−Aに新たな仲間が加わった。



 文化祭まであと僅。























  To Be Continued… 

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