小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 天気は雲一つ無い晴天。
 学園祭を目前に控え、麻帆良学園都市の活気は否がおうにも高まっている。
 そんなある日のエヴァンジェリン邸では

 「ちわー、ク○ネコヤマ○です〜。お荷物の集荷に上がりました〜。」

 「おぉ来たか。此れをクール便の空輸で頼む。イギリスのウェールズまで。」

 「ハイまいど〜。お値段は………になります。」
 「うむ、成らばこれで。」
 「はい、丁度お預かりします〜。ありがとうございました〜!」

 エロガモことアルベール・カモミールが空輸で強制送還されていた。

 「まぁ1週間もあれば戻ってくる気がするが…」
 「で、ござるなぁ…」

 因みに『生き物』にとって飛行機の貨物室は極めて過酷な環境であるが、誰もそんなこと気にしては居なかった。










 ネギま Story Of XX 24時間目
 『学祭での注意事?』










 連日徹夜の突貫作業を行っていた3−A。
 厳しい作業だったがその甲斐あって、

 「「「「で、出来た〜〜〜!!!」」」」

 学園祭前日に、遂に『お化け屋敷』が完成。
 入り口から内装まで気合の入りまくった力作で、更に当日着る衣装も見事な物が出来上がっている。

 「何とか間に合った。一時は召喚魔法で凄腕のメ蟹ック呼び出そうかとも思ったが必要なかったな。」
 「あの人呼び出したら一緒に『白い魔王』と『金色の雷光』と『夜天の主』も来てしまうんじゃ…」
 「其れは間違いないな。もっと言うなら、オリジナルと騎士達も付いてくるぞ。」

 余裕に見えて意外と切羽詰っていたらしい。
 で、全くの余談だがこの作業中に何時の間にかリインのクラスメイトや稼津斗に対しての敬語か消えていた。

 「「「んじゃ、部活の方手伝いに行ってきま〜す!」」」
 「時間が空いたら戻ってきてくださいね〜?当日の当番なんかはまだ決まっていませんから〜!」

 ともあれ一応の完成を見たお化け屋敷に、文化部の面々は今度は自身の部活の方の出し物の手伝いに。
 そんな一行に委員長であるあやかは当番を決める都合が有るということを告げておく。

 「お前達は良いのか?」

 「無問題。稼津兄と一緒に居た方が取材とかはしやすいだろうし。」
 「私も美術部の方の絵は出来てるから…」

 「そうかい。で、其れは何だ亜子?」
 「ん?真帆スポの最新号や。」


 『世界樹伝説は真実…?22年に1度その真の力が発現する……』


 真帆スポにはこう記されていた。

 「…胡散臭ぇ…」
 「又何時もの怪しいネタじゃないの?オカルト研も協賛してるし。まゆつば。」

 で、基本こういう事は先ず疑う千雨は当然として、裕奈も怪しいと信じていない。
 まぁ、経験則的に出所が『真帆スポ』と言う時点で真実味は極めて低いので仕方が無いか…

 「まぁその辺は爺さんから説明があるだろうが…」

 「「「「「「「へ?」」」」」」」

 「いや、今日の放課後世界樹広場前に来るようにって。…ちゃんと言ったよな俺?」

 「「「「「「「あ…」」」」」」」

 どうやらすっかり忘れていたらしい。
 尤も、クラスの出し物作成で連日徹夜だったので其れ処じゃなかったのだろうが…

 「はぁ…まぁ仕方ないが。とは言っても全員で行くと如何せん人数が多すぎるな…」
 「うん、行く人を絞った方が良いよね。」

 確かに稼津斗組で(従者のみで)8人、ネギ組(同様に従者のみで)5人、
 更に修行組3人と古菲に稼津斗とネギを加えての19人は余りにも多い。

 「詳細は後で伝えるから良いとしてだ…そうだな、真名、楓、のどか、和美は俺と来てくれ。」

 「OK。」
 「御意にござるよ。」
 「稼津斗にぃの御指名なら断る理由は無いな。」
 「はい、喜んで♪」

 稼津斗組はこの4人。

 「それじゃあアスナさんと刹那さんと茶々丸さんお願いできますか?」

 「良いわよ、付き合ってあげる。」
 「分かりました。」
 「はぁ、私で宜しければ。」

 ネギ組はこの3人だ。
 修行組は矢張り待機の方向らしい。

 「成程良い布陣だ。私を選ばなかったのは『正義』を謳う魔法教師共の事を考えてか…良く考えているではないか。」
 「あはは…本音を言うと師匠には来て欲しいんですけど、『闇の福音』に対するアレルギーは思ったより強いみたいですから…」
 「ま、仕方あるまいな。」

 ネギはネギでメンバー選出は考えていたらしい。

 「んじゃさ千雨ちゃん、PCと私のアーティファクト、リンクさせといてね〜。」
 「わーった。私等は其れで情報得ながら待機って事だろ?」

 「そうなるな。ま、連徹の疲れも癒しておけ。」

 「そうする〜!前夜祭出たいし!」
 「流石に4徹はキツイて…」
 「休むのならば私の『別荘』に来ると良い。あそこなら丸1日休みが取れる。最近造った温泉にでも浸かっていけ。」
 「ありがたくそうさせて貰おう、真祖の姫よ。」

 待機組は前夜祭までエヴァの別荘で休む方向らしい。

 「ゆっくり休んでおけ。前夜祭でな。」








 ――――――








 ――世界樹広場前



 「認識障害か…一般生徒には知られたくない内容みたいだな。」
 「でござるなぁ。」

 確かに世界樹広場周辺には不思議と生徒の姿が無い。
 稼津斗の言うように認識障害結界が施されているのだろう。

 で、着いた先には近右衛門を筆頭に数人の教師と生徒が。
 中には小太郎や高音の姿も有る。

 「おぉ、待っておったぞ稼津斗君にネギ君。」

 「へ?」
 「爺さん、この人達は?見た事有る奴も居るが…」

 集まった顔ぶれにネギは驚き、稼津斗は一体何者なのかを近右衛門に問う。

 「うむ、君達には未だ紹介しておらなかったがこの学園都市の各地に散らばる小・中・高・大学に常時勤務する
  魔法先生……及び魔法生徒じゃよ。無論全員ではないがの。」

 「えぇ〜〜〜〜〜!!?」

 ネギの驚きは仕方ないだろう。
 尤も『裏』に関わっている稼津斗、楓、真名、刹那はそれほどではないが。
 だが此れだけの魔法関係者を集めて一体とは思うだろう。

 「集まってもらったのは他でもない。『世界樹伝説』を知っておるかの?」

 「知ってるも何も真帆スポで話題になってるが…まさか真実と言うんじゃないだろうな?」

 「うむ、その『まさか』じゃ。」

 「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」

 思いもよらなかった答え。
 マユツバの噂が本当だとは思わないだろう、普通。

 「22年に1度じゃがマジに願いがかなってしまうんじゃ。何を隠そうこの世界樹は強力な魔力を秘めた、言わば魔法の木なんじゃよ。
  その魔力は22年に1度の周期で溢れ出し、世界樹を中心とした6箇所に強力な魔力溜まりを形成するんじゃ。
  してこの膨大な魔力は人の心に作用するんじゃよ。即物的な願いは叶わないが恋愛成就…告白に関してはなんと達成率120%!
  最早一種の呪いの域に達していると言っても過言ではないほどの強力さじゃ。」

 「と成るとだ俺達が集められたのは…」

 「ほっほっほ、流石に稼津斗君は察しが良いの。そうじゃ、諸君達には学園祭期間中、
  特に最終日の日没以降、伝説の達成…つまりは生徒達による告白行為を阻止してもらいたい。」

 全く以って予想外。
 まさか告白行為を阻止せよとの指令とは…

 「で、でもその伝説を信じている人なんて…」
 「男子生徒は兎も角、女子生徒は実に全体の70%超と信じている人は多いようです。」
 「えぇぇぇえ!?」

 ネギの言う事を茶々丸がデータから一刀両断。
 要するに油断は出来ないという事。

 「了解だ爺さん。だが、こういう話なら少し警戒レベルを上げておいた方が良いんじゃないか……羅刹爪!」

 行き成り中空に気弾を放つ。
 誰もが何事かと思ったが、


 ――ガシャン!


 直後にロボットカメラが打ち落とされる。
 遥か上空から盗み見てた此のカメラの存在を稼津斗は認識してたのだ。

 「何と魔法の力を感じさせぬ機械に気付くとは。」
 「俺の検索範囲に入った者は生物、無生物関係無しに感知できる。
  とは言え此の距離まで気付かないとは、可也高いステルス機能を備えてたみたいだ。」

 何とは無しに言う稼津斗だが、此れに黙っていられない者は居るわけで、

 「追います!」

 ガンドルフィーニを筆頭に数人の魔法先生が離脱・追跡を開始。

 「あいっ変らず、余裕が無いね〜『正義』の先生達って。」
 「何か…少し怖いです。」

 和美とのどかの言う事は、稼津斗組・ネギ組全員が思っていた。




 一方で、


 「あの距離で気付くとは流石だヨ、稼津斗老師。ム…追っ手が掛かったネ!」

 「えぇ〜〜!?」

 「ハカセはステルス迷彩かけて此処に隠れてるネ、私が囮になる!」

 広場から少し離れた建物の屋上ではこんな会話がなされていた。






 で、広場では一通りの説明とシフト、魔法使用に関する注意を受けて集まりは解散。

 稼津斗組とネギ組+小太郎はドンドン活気が高まっている往来を移動中。
 向かうはエヴァの別荘だ。

 「時にネギ、お前スケジュールは大丈夫か?大層予約が入ってたみたいだが、其処にパトロールって…」
 「うん、結構きつい…」

 何の事やらさっぱりだが、実はネギ、稼津斗組を除くクラスの殆どから部活の出し物を見に来て欲しいと言われているのだ。
 英国紳士を自称するネギにとって、生徒とは言え女性からの誘いを断るわけには行かない。
 一応、和美が手伝ってスケジュールを割り振ったが、既に3日間キツキツ…まぁある意味で自業自得な訳だが。

 「うわ…ごっつキツイで此れ。兄ちゃんは大丈夫なんか?」
 「俺は真名達だけだからな。3日間で7人だから余裕だ。クスハは適当に回るらしいし。」

 稼津斗の方は意外と余裕だった。



 ――ドカッ!



 そんな話をしている中、突然人が1人屋台の棚に突っ込んできた。
 いや、突っ込んできたというよりは吹き飛ばされてきたと言うべきだろう。


 「えぇ!?」
 「屋台破損率85%。対象人物に怪我は無し。」

 「だ、大丈夫ですか…って!」
 「お前…何してるんだ超?」

 飛び込んできたのは稼津斗とネギのクラスの超絶天才児『超鈴音』。
 余程全力で走っていたのか、その息は乱れている。

 「ね、ネギ坊主と稼津斗老師か…丁度良かった。助けてくれないカ?怪しいやつに追われているネ。」

 「怪しい奴でござるか?」

 超が来た方向を見てみると見覚えの有る色黒眼鏡が…

 「確かに怪しいわね。」
 「ガングロ、眼鏡、タラコ唇はちょとね〜。」
 「一緒に居るスキンヘッドも相当と思いますが。」
 「見ようによってはマフィアの集団だね。」

 全く以って容赦なし!
 楓達からしてみれば稼津斗を敵視しているガンドルフィーニの心象は悪い。
 ネギとアスナ達にしてみてもエヴァを手前勝手な理屈で危険視している『正義の魔法使い』は以下同文。

 「成程、さっきのロボットはお前のか。」
 「う…」
 「とは言え、自分のクラスの生徒が追われてるのを無視は出来ないよな?」

 返ってくる答えなど聞かなくても分かる。
 要するにだ、

 「散開、一般生徒が居ない場所に誘導して迎え撃つぞ。」

 こう言う事。
 そうと決まれば此の面子の行動は早い。

 楓が超を抱えて即離脱。
 真名は離脱しながら適当に銃を撃ち、和美はアーティファクトを展開して相手の位置を確認。
 のどかはのどかで矢張りアーティファクトで、相手の思考を読んで先手を打てる様にしている。

 ネギは花火にまぎれて魔法を打ち出し、刹那と小太郎は陰陽術と狗神で牽制。
 追っ手の魔法は稼津斗とアスナと茶々丸で迎撃。

 此の余りの素晴らしさには超も驚く。

 「皆強いネ!特に稼津斗老師はとんでもないヨ!」
 「誉め言葉と受け取っておく。さて、そろそろ良いか…和美、追っ手の位置は?」

 「距離50m。下の公道を移動してるからあんまし早くないけど撒くのは難しいかも。」
 「だろうな…のどか。」
 「はい、この先…人が途切れた所で仕掛けてきます!」

 それに頷くと一気に加速し、仕掛けてくる場所まで移動。
 そして、

 「セァ!!」
 「ぶほぁ!」

 稼津斗の左拳がクリーンヒットした…ガンドルフィーニの顔面に、カウンターで。
 同時に、残りの追っ手もネギ達に押さえ込まれていた。
 何と言うか実力差が凄すぎる。

 「全く、いくらさっき広場で覗き見をしていたからって、生徒1人に此の人数は流石に過剰じゃないかガンドルフィーニ?」
 「い、今の君の攻撃も過剰防衛といえると思うがね稼津斗君!」

 ガンドルフィーニの眼鏡はフレームがひん曲がり、本人は鼻血を出している。
 カウンターで決まったこともあり相当な威力だったようだ。

 「過剰防衛じゃないですよ。自分のクラスの生徒を守るのは教師の務めです!」

 反論するはネギ。
 事情は如何あれ、自分のクラスの生徒が追われているのは気分の良い物ではない。
 それは超を庇った全員が思っているだろう。

 「てかおっちゃん何でそんなにえらそうなんや?兄ちゃん処かネギの足元にも及ばないやんけ…」

 小太郎以外は。(何気に評価が厳しいが)

 「な!超君には此れまでも警告をしてきた!其れを無視したんだ、相応の罰は…「黙れよ。」…!?」

 激昂し捲し立てるガンドルフィーニに只一言だけ稼津斗は言う。
 普段とは全く違う低い声で。

 「お前達の価値観でモノを測るなと何度言えば分かるんだ?そんなに知られたくないなら最初から『此方側』にしておけば良かっただろう。
  それをせずに、いざ会合を除き見ていたら手前勝手な『正義』で断罪か?大概にしろ。」

 同時に叩き付けられる殺気。
 近右衛門ですら恐怖を覚えた此の殺気に、たかが魔法教師が堪えられる筈は無い。

 「ぐ…」

 「まぁ超には俺とネギの方で注意はしておく。」
 「超さんは僕達の生徒です。だから僕達に任せてください。」

 余りにも分が悪い。
 戦っても勝てる要素が無い上に、話術で丸め込む事も不可能となれば

 「く…良いだろう。此の場は君達に任せる。だが、何か有った時責任は全て取ってもらうよ!」

 殆どヤラレ専門の脇役的なセリフを残して去る他無かった。

 「イヤー助かったヨ。皆は私の恩人ネ。」

 「大げさだな超。しかし今回は助けられたが、余り興味本位で首を突っ込まない方がいいぞ?」

 「ご忠告痛み入るヨ龍宮サン。それよりネギ坊主と稼津斗老師、助けてくれたお礼ネ。此れを受け取ってくれないか?」

 「「?」」








 ――――――








 「で、それを貰ったという訳か。」

 時間は進んでもう直ぐ前夜祭。
 会合参加組は待機組と合流しこれから前夜祭へ。

 一応会合の後にあった事を説明したようだ。(あの一件の事は和美から千雨にデータが送られてなかった)

 「多忙なスケジュールを如何にかできるって事らしいんですけど…詳細は後でって。」

 「見たまま怪しいな。」
 「まぁ超りんの発明だからね〜。」

 リインと裕奈の言う事は尤もであった。
 因みに稼津斗が貰ったのは最高級のジンだった。

 「まぁ、変に警戒する事も無い。そろそろ前夜祭に行こうか?」

 「せやね…あ、ホラ世界樹光始めとる。」
 「此れは…確かに綺麗ですね。」

 亜子が言うように、世界樹が僅かに光を放ち始めている。

 「此れはいやでも気分が盛り上がりそうだ。祭の…始まりだな。」

 同時に花火が撃ちあがり、祭の気分が高まる。
 これからの3日間は大いに盛り上がりそうだ。











 そんな盛り上がっている学園都市の遥か上空に浮かぶ飛行船。

 「如何でしたかーネギ先生と稼津斗先生は。」

 「うむ、2人とも否、彼等の従者もトンでもない実力者だたヨ…気に入ったネ。」

 その上でなにやら怪しげな会話をしているのは超と葉加瀬の2人。
 どうやらさっきの逃走劇は、超にとっては幾らか計算されていたものだったようだ。

 「稼津斗老師はイレギュラーだが…彼等を巧く引き込めれば可也使えるかも知れぬヨ♪」

 人知れず渦巻く陰謀。


 麻帆良祭まであと12時間…






















  To Be Continued… 

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