小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 打ち上がる合図花火。
 空を翔ける複数の飛行機。
 軒を連ねる屋台に、仮装した人々。

 『只今より、第78回麻帆良祭を開催します!!』

 年に1度の大イベント、学園都市全土を上げての大学園祭が幕を開けたのだった。









 ネギま Story Of XX 25時間目
 『開幕!麻帆良祭!!』










 『一般入場の方は入り口付近で立ち止まらないように――…』

 開場直後だと言うのに、既に溢れ返らんばかりの人、人、人。


 「麻帆良戦隊、まほレンジャー!!」


 また、各所で屋台が出ていたり、イベントが行われていたりで始まったばかりとは思えないほどの熱気が辺りに渦巻いている。

 「わぁ、凄いや!!」
 「賑やかでス。」

 「なんとも、これ程とは。予想以上に凄いな。」

 稼津斗とネギも驚くばかり。
 猫に変身してネギの肩に張り付いてるアクアはそれこそ全てが新鮮に写るようだ。

 「3日間の延べ入場者数約40万人。世界でも有数の規模の学園都市の全校合同の一大イベントです。
  大騒ぎの馬鹿騒ぎ、3日間は昼夜問わず乱痴気騒ぎ、ドンちゃん騒ぎと言うわけです。」
 「学園内は仮装OKだから歩いてるだけでも楽しいよん♪」

 「成程。」

 図書探検部の説明を聞き更に納得。
 この規模の学園都市の全校合同イベントならば、此れだけの大盛り上がりも頷けると言うもの。

 「しかし此れだと3日間徹夜で回らないと全てを見る事は不可能だろう……ん?」

 「どうしましたか稼津斗さん?」

 「いや…何でもない。」
 ――ネギと桜咲の『気』が2つに増えたような…気のせいか?


 僅かな違和感。
 だが、如何にも不鮮明である為この場では『気のせい』と片付ける事にした。

 「それよりもネギ、のんびりしていて良いのか?スケジュール、詰まってるんだろ?」
 「そ、そうだった〜〜!!すいません、僕は此処で失礼します!!」

 指摘され、弾かれるようにネギはその場を後にする。
 如何に確りしてきたとは言え、この辺は矢張りまだまだ『子供』であると思わせる。

 「さて、俺もそろそろ行くか。のどかはまた後でな?」
 「はい。又あとで♪」

 そして稼津斗もまた、自身のスケジュールの為にその場を後にする。
 で、残ったのどかは…

 「ちょっと、のどか〜?なんか良い雰囲気じゃないのよ?
  稼津斗先生とどんな関係よ!言いなさい、包み隠さず洗いざらい全て!!」
 「ふぇ〜〜?は、ハルナ〜〜!?」
 「ちゃ、パル止めるです!幾らなんでもプライバシーの侵害です!!」

 ハルナに絡まれ、夕映が其れを止めるのだった…








 ――――――








 のどか達と別れた稼津斗がやってきたのは世界樹広場の一画。

 「悪いな、待たせたか?」
 「いやいや、拙者もついさっき来たばかりでござるよ。」

 待っていたのは楓、本日のデート1人目である。

 誰がいつ稼津斗と学園祭を回るかを決める為に行われたじゃんけん大会で1位に成った楓が見事1日目1番を獲得したという訳だ。

 因みにクスハは稼津斗との予定が入ってない他の従者に適当に引っ付いて学園祭を回る事にしている。
 この辺が普段稼津斗宅で暮らしているか、寮生活かの違いなのだろうが…(楓達の外泊が多いので、外泊は週1度と言う新たな規律が出来てしまった…)


 「さて、何処から行こうか?」
 「それは歩きながら…それも祭の楽しみ方の一つでござろう?」
 「確かに。それじゃあ行くか。」

 そう言って行こうとするが、

 「か、稼津斗殿!」
 「如何した?」
 「そ、その……手を繋いでもらっても良いでござるか?」

 楓は手を繋いで欲しいと言う。
 無論、稼津斗に断る理由など無い。

 「構わない。ほら、行くぞ。」

 自らの左手で、楓の右手を握る。
 余りにも自然なその動作に、一瞬固まるも直ぐに手を握り返し、


 ――武道家らしい、無骨で力強い手でござる。でもそれ以上に、とても安心出来る手でござるな…


 そんな事を考えていた。





 さて、こうして学祭を回り始めたの2人。
 適当に食べ物を買ったり、祭の御馴染の出店(金魚すくい、射的等)を楽しんでいた。

 そして只今やってきたのは…


 「意外でござるなぁ…」
 「そうか?こういうのは結構好きなんだけどな。」

 フリーマーケットが開かれている場所。
 特に目当ての物が有る訳ではないが、適当に物色するだけでも結構楽しめる場所だ。

 「意外と良い掘り出し物があったりするんだ。こんな感じのな。」

 手にして見せたのは、銀のチェーンがついた年代物の懐中時計。
 しかも電池ではなくネジ式。

 「此れは、中々味が有るでござるなぁ。」
 「だろ?こういうお宝を見つけるのが楽しいのさ。」

 まるで子供のような稼津斗の様子に楓の顔も綻ぶ。
 当然、この懐中時計は迷わず購入。

 で、

 「今日の記念にプレゼントだ。」

 其れをそのまま楓にプレゼント。

 「えっ?か、稼津斗殿が欲しかったのではござらぬか!?」

 「俺は最初から楓にプレゼントするつもりだったんだが?」

 「……そうでござるか。ありがたく頂戴するでござるよ。」

 思いがけないプレゼントだが、楓にとってはとても嬉しいものだ。

 「そろそろ時間でござるな…稼津斗殿、最後に行きたい場所があるのでござるが良いでござるか?」

 「勿論だ。何処に連れて行ってくれるんだ?」

 「其れは行ってのお楽しみでござるよ♪」

 1日目は楓を含めて3人と予定が入っている稼津斗。
 おまけに17:30からは武道大会の予選があるので、1人宛の時間は限られているのだ。
 楓が一緒に居られる時間はあと僅か。


 そんな楓に案内されて着いた場所は、麻帆良全土が一望できる高台。
 楓曰く、知る人ぞ知る絶景らしい。

 「最高の眺めだな此れは。」
 「で、ござろう?」

 隠された名所らしく、この場には稼津斗と楓以外の人は居ない。

 「拙者、自分に想い人が出来たら一緒にここからの景色を眺めたいと思っていたのでござる。」

 「…俺でよかったのか?」

 少しイジワルに問うが、

 「稼津斗殿が良いのでござるよ。」

 間髪居れずに笑顔で言われてしまった。
 勿論2人とも想いは同じ、其れは仮契約したあの日からそうであり、他の7人に関しても同様だ。

 「拙者も、真名達もずっと一緒でござる。」
 「あぁ、そうだな。」

 どちらから言うでもなく、自然と2人の唇は重なった。
 触れるだけだが、互いの想いが重なるキス。

 「ふふふ、拙者のファーストキスでござるよ?」
 「其れは、大層なものを貰ったな。」

 唇を離し、笑い合う。
 なんとも、『良い雰囲気』が漂っていた。








 ――――――








 楓とのデートを終え、お次は2人目である真名となのだが…


 ――バシュッ!
 ――タンッ!!


 「此れで7人。」
 「次いで8人だね。」

 何故か世界樹周辺での告白阻止を行っていた。

 「しかし、本当に良かったのか?お前のシフトが空いた時間じゃなくて。」

 「構わないよ。簡単な仕事の割りに報酬は良いし、稼津斗にぃとも一緒に居られるんだから私にとっては一挙両得さ。
  それに……好きな人と一緒と言うのも、中々に仕事が捗るものだよ?」

 「まぁ、それなら別に良いんだけどな。」

 1日目の世界樹パトロールのシフトが一緒だった為に、パトロール兼デートと言う状況。
 真名の言うとおり、事実告白阻止は簡単であり、世界樹周辺の出店を見て回る分には全く問題ない。
 加えてこのコンビによる告白阻止は今の所成功率100%(方法は極めて過激ではあるが…)

 「しかし、祭の空気も影響してるんだろうが今までだけで8人とは結構な数じゃないか?」
 「だね。私達『だけ』で8人だから、実際はもっと多いんじゃないかな?」

 さもありなん。
 この間にも、別のパトロールが告白を阻止している可能性は充分に有る。
 おそらくネギも告白阻止に奔走しているのだろう。

 「そう言えば、就任初日の和美の質問で彼女は過去にも居ないと言っていたけれど、本当なのかい?」

 仕事をこなしつつ、ふと思った事をたずねてみる。

 「事実だよ。現実に格闘大会に出場したり、修行の旅なんかで学校には殆ど行ってなかったから彼女なんて出来るはずもないし、
  旅先で会った奴との『お遊び』の、言うなれば身体だけの関係なんて持つ気は更々無かったからな。」

 「稼津斗にぃらしい。なら私達は?」

 再度の問いだが、その答えなどは決まっている。

 「まったく…800歳超の年寄りをからかうもんじゃないぞ?」

 抱き寄せ、そのまま唇を重ねる。
 突然の事に驚くが、真名も瞳を閉じ其れを受け入れる。

 「稼津斗にぃ…」

 「目覚めてからの300年、その300年の孤独を知る俺にとって、お前達は正に支えだよ。
  何より、人で有る事を捨ててまで共に居ると言ってくれたお前達を軽く見ているはずが無いだろう?」

 「あぁ…そうだったね。」

 身体を預ければ、其れはそのまま受け止められ、抱きしめられる。
 きっとこんな真名の姿はクラスの殆どが想像できないだろう。

 「稼津斗にぃ、一つだけ約束して欲しい。何があっても私の…私達の前から消えないでくれ。」

 「…俺は不死だ。何が有ろうと消えたりはしない。」

 単純な、しかし何よりも大切な願いと、永久に続く誓い。

 広範囲を見渡せるからと選んだ、塔の中で2人は暫く互いを抱きしめていた。








 ――――――








 「あ、やっぱり最初は怖かったんだ。」

 1日目最後の相手はのどか。
 適当に出店を冷やかしつつ、喋りながら適当にぶらついている。

 「はい……稼津斗さん背が高いですし、その…顔の傷跡が…」
 「まぁ仕方ないな。ヤクザ者と思われても仕方ないような傷だからな此れは。」

 話の内容は取るに足らないものだが、それでものどかにとっては楽しいものだ。

 「こんな事を聞くのは如何かと思うが、その苦手だった相手をどうして好きになったりしたんだ?」

 当然の疑問。
 稼津斗からしてみれば、のどかは下手をしたら絶対慣れないとさえ思っていたのだ。
 それが、結果としては自身の従者になっているのだ。

 「一番は図書館での事です。本の事を話せたのもあるんですけど、その…あんな事言われたの初めてだったんです。」

 「あんな事って、俺は何か特別な事を言ったか?」

 「『髪形を変えてみたら如何だ?今のままじゃ折角の顔が勿体ないぞ』って。」

 「…そんな事を言ったのか俺は……殆ど無自覚タラシだな…」

 言われて唖然。
 全くの無意識で言った事だが、なんと言う事を言っているのか…

 「でも、きっとあの一言が有ったから、私は今こうしているんだと思うんです。
  もしそうじゃなかったら、今もまだ男性が苦手なままで、夕映達以外には友達も出来てなかったと思います。」

 「其れは大袈裟だ。一歩踏み出す勇気があれば、如何と言う事は無いだろ?」

 「でも、その勇気をくれたのは間違いなく稼津斗さんなんです。」

 笑顔で言われてはぐうの音も出ない。
 が、決して嫌な気分ではない。

 「だから、もう少し勇気を出してみようかなって…」
 「ほう?」

 「少し、屈んでもらって良いですか?」
 「ん、あぁ…」

 言われて少し屈んだ瞬間、背伸びをしたのどかからキスをされた。

 「隙有り、です。」
 「まったくだ…まだまだ精進が足りないな俺も。」

 触れ合うだけの極短いものだが、それでものどかとしては精一杯の勇気を振り絞った結果。
 少しぎこちなくとも、其の勇気は確りと稼津斗に伝わった。

 そんな穏やかな時の中、


 ――稼津兄、御免ちょっと良い?


 和美からの念話通信が入る。


 ――和美…お前少し空気を読め。今はのどかとデート中だ。

 ――あっちゃ〜…そう言えばそうだっけ。でものどかも一緒なら丁度良いや。

 ――何だ?

 ――5時半からの格闘大会の予選だけど場所が龍宮神社に変わったから。

 ――…は?

 ――超りんが大会買収したんだよ。かく言う私も、司会のほうを頼まれたんだけどね〜。

 ――超が?…何を考えてるんだあいつは…

 ――さぁ?兎に角伝えたからね〜。

 ――あぁ分かった。態々ありがとうな。

 ――いやいや、稼津兄が戦う格好良いとこは是非とも見たいからね。当然さね。んじゃ、会場でね〜


 此処で通信終了。

 「誰ですか?」

 「和美だ。格闘大会の会場が龍宮神社に変更になったらしい。何でも超が大会を買収したとの事だ。」

 「超さんが…」

 「まぁ、折角の祭だ。どうせやるなら派手な方が良い。……良い時間だし、行くとするか。」

 「あ、はい♪」

 会場こそ変わったが、だからと言って予定に変更は無い。
 最初から、のどかと一緒に格闘大会の会場に行くつもりだったのだ。

 「和美は勿論、真名と楓とリインフォースは既に会場についてるだろうな。」
 「裕奈さんと亜子とクスハさんは私達と一緒ですねきっと。」

 移動中も会話は絶えない。


 だが、到着した会場では、予想以上の事態が待っているのであった。
















  To Be Continued… 

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