小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――麻帆良学園都市の高台に有る平屋の一室


 「…こんなもんかな。」

 鏡の前でネクタイを締め、身だしなみをチェックしている稼津斗。
 その姿はスーツで、髪も麻帆良に転送された当初より短く切られている。
 本日より、『教師』としての仕事が始まるのだが…

 「しかし此れは、教師と言うよりも…」
 ――ホストだよなぁ。いや、顔の傷的にヤクザ屋さんか?


 ちょいと思考がずれていた。









 ネギま Story Of XX 3時間目
 『就任、3−A!』









 「しかしお前も大変だな。卒業課題とは言え、その歳で教師をやる羽目になるとは…」

 「そうでもないよ。皆いい人だし、頑張らなくちゃ!」

 3−Aの教室に向かって歩く稼津斗とネギ。
 ネギの口調が砕けているのは、先刻学園長室で顔合わせをした際に『楽な喋り方でいい』と稼津斗に言われ為である。

 「にしても、未成年を担任と副担任にするとは、あの爺さん何考えてんだろうね…」

 「う…其ればっかりは僕にも分からない。」

 因みについ先程終わった始業式で既にネギと稼津斗が其々3−Aの担任、副担任になる事は発表されている。

 「此処か…って、此れはお約束か?」

 3−Aの教室迄来るなり、稼津斗が入り口を指差しネギに問う。
 其処にはドアに挟まれた黒板消しが…

 「確か僕のときも有った気が…」

 「甘んじて喰らうべきか、華麗に回避すべきか迷うんだが、ネギは如何したんだ?」

 「魔法で…」

 「オイオイ…」
 ――秘匿するんじゃないのか?まぁ子供だしな…

 「取り合えず回避するか。俺が先に入るぞ?」

 「あ、うん。」



 ――ガラガラガラ…



 扉を開けると同時に落下してきた黒板消しを身体をひねって避け…



 ――ヒュン!



 続いて飛んできた吸盤付きの矢を屈んで回避し…



 ――ガァン!!



 直後に降ってきた金盥を蹴り飛ばして無力化する。
 結果、稼津斗は仕掛けられていた罠を全て回避・無力化した。


 「「「「「「「「「「おぉ〜〜〜〜」」」」」」」」」」


 その動きにクラスから感嘆の声が漏れる。

 「カヅト、大丈夫!?」

 「…誰が仕掛けたかは兎も角として、かなり完成度の高い罠だった。俺じゃなきゃ全部喰らってるぞ…」

 ネギは慌てるが稼津斗は全く気にしちゃ居なかった。

 「さてと…熱烈な歓迎をどうも。…やっぱ副担任より担任が先のほうが良いかネギ?」

 「カヅトが先でいいよ。僕の事は皆知ってるから。」

 「そっか。じゃあ改めて、このクラスの副担任を勤めさせてもらう氷薙稼津斗だ。皆よろしく。…ん?」
 ――あの2人は…!


 クラスに見知った顔を見つけて稼津斗は驚く。
 その人物は、龍宮真名と長瀬楓。
 如何やら2人とも自分が中等部の生徒だとは言っていなかったらしい。


 ――あのスペックで中学生とかありえないだろ…
 「え〜と、それで如何すればいいんだネギ?」

 「え?えっとじゃあカヅトに質問とかある人は…」

 此れがいけなかった。
 ネギが言った瞬間、待ってましたとばかりにクラス中から質問が上がり始める。


 「その傷は如何したんですか!?」
 「彼女居ますか?」
 「ホストですか?」
 「寧ろヤクザ?」


 等等、最早収拾がつかなくなりそうだが…


 「は〜いストップ!」

 1人の生徒が静止する。
 好奇心に満ちた眼に、赤い髪。
 クラスの生徒を黙らせると何処からかメモとペンを取り出し稼津斗に向き合う。

 「君は…」

 「出席番号3番・朝倉和美です。ここは私がクラスを代表して質問させてもらいますが良いでしょうか?」

 「寧ろそっちの方が助かるな。俺は聖徳太子じゃないからな、一度にたくさんは聞き分けられないよ。」

 質問者が1人になったことに安堵する稼津斗だが…甘い!
 朝倉和美…報道部に所属する『麻帆良のパパラッチ』を自称するこの生徒。
 ある意味では生徒全員から質問攻めにされるより性質が悪いのだ。


 *此処からは暫く会話のみでお楽しみ下さい


 「先ずは手始めに生年月日と、身長・体重・血液型を。」

 「1984年6月11日生まれで今年19歳。185cm70kg。
  血液型はABでRH−。血が足りなくなるとヤバイ。」

 「確かに。では好きなものは?」

 「ウォッカとジンと焼酎。甘いものと辛いもの全般。食べ物以外だと読書とギター。あと修行。」

 「修行?」

 「格闘技やってるから。」

 「どんな物を?」

 「空手を基本に『古武術』『中国拳法』『マーシャル・アーツ』『気孔術』等等。」

 「では、彼女は居ますか?」

 「居ない。」

 「過去には?」

 「居ない。」

 「その傷は如何したんですか?」

 「黙秘権を行使する。」


 *会話のみでお送りしました。



 等等矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
 その質問(尋問?)に答えながら、稼津斗は改めてクラスを見渡した。



 ――しかし凄いクラスだな此処は…



 ネギから借りた名簿と照らし合わせながら考える。



 ――相坂さよは幽霊で、桜咲刹那は半妖…絡繰茶々丸はアンドロイドだしマクダウェルは吸血鬼…しかも真祖か。
   楓は忍者で真名はスナイパー、近衛木乃香はどえらい魔力だし、神楽坂明日菜には物理攻撃以外無効。
   宮崎のどかも魔力は相当な物だし、俺を質問攻めにしてる朝倉和美には霊感があるな…おまけに超は未来人。
   そして、何故そこまでナチュラルかつ完全に気配を遮断できるんだ和泉亜子。
   此れだけでも普通じゃないのに、担任は10歳の魔法使いで副担任は人間外生物って…何処に突っ込めばいいのやら…



 と、其処まで考えてあることに気づいた。

 「時にネギよ、今日は身体測定じゃなかったか?」

 言われて思い出したのかネギはとたんに慌てる。

 「そ、そうだった!!皆さん直ぐに服を脱いで!!」

 「阿呆。」



 ――スパーン!



 何処から取り出したのか(気で作り出したのだが)スリッパでネギの後頭部をいい音を立てて叩き沈黙させる。
 確かに今のセリフはそこだけ聞けば唯の変態なので仕方ないのだが…
 でも今の一撃で、ネギが気絶したあたりどれだけの威力だったのかは考えたくない。

 「と言う事だから、早急に準備するように。俺とネギは職員室に居るから終わったら教えてくれ。」

 そう言ってネギを引き摺って行く稼津斗をクラスのほぼ全員が唖然としてみている。(真名と楓は笑っているが)
 そんな中、エヴァンジェリンだけが2人を実に興味深そうに見ていたのは誰も知らない。


 そして稼津斗は稼津斗で


 ――…宮崎以外にこの傷を怖がってる子は確かに居なかったな。


 などと考えていた。








 ――――――








 「痛い…」

 「スマン…力加減を間違えた。」

 職員室へ向かう途中で目を覚ましたネギだが、やはり殴られた場所は結構痛かったらしい。

 「だが、お前も悪いぞ。さっきのセリフ…子供じゃなかったらセクハラで訴えられてる。」

 「慌ててたから…」

 「気を付けろよ。この年頃の女の子は気難しいぞ。」

 まるで弟を嗜めるように言っている所為だろう、傍目にはこの2人は兄弟に見えなくも無い。

 「しかし、賑やかなクラスだなあそこは…おまけに「先生ーー!!」…?」

 稼津斗の言葉を遮って、慌てた様子でやってきたのは和泉亜子。
 色素の薄い髪が特徴的な、関西弁の少女。

 「君は確か、『和泉亜子』だったか?如何したんだ?」

 「大変や、まき絵が…まき絵がーーー!!」

 亜子の只ならぬ様子から何も言わずに、2人は亜子について行く。
 到着した先は保健室。

 やはり2人と同様に知らせを受けたのだと思われるクラスメイト達が其処にはいた。


 「佐々木!」

 「ど、如何したんですか、まき絵さん!?」

 「どうも桜通りで眠っているところを見つかったらしいの…」

 2人に対して、女教師―源しずなが答える。

 「眠っていた…?」
 ――違う…此れは眠らされている。

 稼津斗は瞬間的に『オカシイ』と感じ取っていた。


 ――しかもこの感じ…吸血による強制睡眠か?だとすると…


 「先生、どないしたん?」

 「へ?」

 考えに没頭してた所為だろう、呼ばれて振り返ると自分を此処に連れてきた亜子が顔を覗き込んでいる。
 声こそ掛けてこなかったが、宮崎のどか、綾瀬夕映、早乙女ハルナの通称『図書館3人組』も又然り。

 「…いや、何でもない。如何やら佐々木は本当に眠ってるだけみたいだ。『春眠暁を覚えず』って言うしな。
  目が覚めるまではそっとしとこう。で、目が覚めたら何が有ったのか聞けば良い。さ、教室に戻ろう。」

 何とか誤魔化し、生徒を教室へと誘導する。


 ――放っては置けないな。今夜は一仕事ありそうだ。大丈夫か?真名、楓。


 念話を使って、真名と楓に話しかける。
 今日までの間に警備中、何度か念話を行っているので慣れたものだ。


 ――あいあい、大丈夫でござるよ稼津斗殿。

 ――勿論。了解したよ稼津斗にぃ。








 ――――――








 「桜通りの吸血鬼…」

 「あぁ、結構噂になってたみたいだ。」

 「とするとまき絵殿は、もしかして…」

 「十中八九『ソレ』にやられたんだろうな。あのときの佐々木からホンの僅かだけど『他人の魔力』を感じたからね。」

 既に日は殆んど沈み、濃い藍色が空を覆い始めている。
 見回りを始める前に何か手掛かりを、と思って何人かの生徒に聞き込みを行ったところ『桜通りの吸血鬼』の噂が出てきたのだ。

 「!如何やら出たみたいだ…!不味い、近くに和泉と宮崎が居る!」

 「何だって?」

 「今度の目標は亜子殿とのどか殿でござるか!」

 「させるか!!」

 稼津斗が気を解放すると同時に3人はその場から消え…










 「「…………」」

 「坊やを誘き出すためだ、悪く思うなよ。と言っても聴こえてはいないか。」




 「羅刹爪!!」




 今正に2人が血を吸われようとしている現場に瞬間移動した。
 そして、現れた稼津斗の一撃が、黒いトンガリ帽を被った人物の足元に着弾する。
 無論其れは威力を相当に抑えた殺傷力のない『牽制技』であるが、効果は十分だったらしくトンガリ帽子が一歩引き、
 同時に催眠魔法でも掛けられていたであろう亜子とのどかも正気を取り戻す。

 「ふぇ?龍宮さん、楓さん、稼津斗せんせー!?」

 「な、どうして此処におるん!?」

 「間に合った…大丈夫か?」

 穏やかに言ってみるが…

 「ひゃ、ひゃい!!」

 「大丈夫や。」

 亜子は兎も角、のどかはやっぱりその傷はちょっと怖いらしい。

 「…ま、初日だしな。さてと、あえて名前は聞かないが如何する『桜通りの吸血鬼』?数の上ではこちらが有利だが?」

 「坊やを誘き出すつもりだったがお前が来るとは…ふ、此処は引こう。今の私では勝てそうに無い。」

 それだけ言うとその人物は超速で暗闇へと消えた。

 「良いのかい稼津斗にぃ?」

 「取り合えずはな。尤も、本来の目的を果たしに行ったみたいだから俺はそっちに向かう。
  2人は和泉と宮崎を寮まで送っていってくれ。」

 「了解でござる。」

 「じゃ、頼んだぞ。」

 稼津斗は後を追おうとするが…

 「あ、あの稼津斗せんせー。」
 「先生。」

 「?」

 「「助けていただいてありがとうございました。」」

 亜子とのどかがお礼を言ってきた。

 「当然の事だよ。でも、さっきの事は他の人に言うなよ?悪戯に噂が拡大するだけだからさ。」

 「はい。」
 「了解や。」

 「宜しい。さてと…行くか!!」

 気合一発、五輪選手も吃驚なスピードでその場を離脱する稼津斗。
 余りのスピードに亜子とのどかは勿論、楓と真名も目を丸くする。

 「凄いスピードや…」

 「稼津斗せんせー…凄い人?」

 「まぁ、あながち…」

 「間違ってはいないでござるよ…」


 4人が再起動したのはそれからきっかり1分後であった。





 で、稼津斗はというと…






 ――この気配はネギ。本命はネギか!


 新たに加わったネギの気配と桜通りの吸血鬼…エヴァンジェリンの気配を追っていた。


 ――校舎の方…屋上か。…?何だこの気配…まさか絡繰!?アンドロイドなのに『気』を感じるってのか?
   不味い、2体1じゃネギに勝ち目は、って物凄い速さで移動してるこの気配は…神楽坂明日菜!?
   ちぃ…急がないと!


 更に増えた2つの気配を感じつつスピードを上げる。


 ――見えた!神楽坂は既に校舎に入ったか。なら…
 「覇っ!!」

 気を操って飛翔し屋上へ向かう。
 走るよりもこっちの方が消耗は大きいが速いのだ。


 「…これ、如何言う状況だ?」


 屋上へ到達した稼津斗が見たのは、茶々丸に羽交い絞めにされているネギ。
 そして、明日菜の渾身の飛び蹴りがエヴァンジェリンに炸裂した、正にその瞬間だった。















  To Be Continued… 

-3-
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