小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 只今3−Aは英語の授業中。
 授業中なのだが…

 「はぁ〜〜〜〜〜…」

 担当教師であり担任でもあるネギはすっかり意気消沈していた。









 ネギま Story Of XX 4時間目
 『騒動終息?』









 何故ネギがここまで沈んでいるのか?
 全ては昨日の『アレ』が原因である。

 すんでの所を明日菜が助け、続いて登場した稼津斗がその場を収めた事で特に何も起きずに終わったのだが、
 如何にも実戦経験が皆無のネギには昨日のエヴァの行為は相当にトラウマになってしまったらしい。



 ――…何とかならないか?

 ――無理よ。完全に沈んでるもん。

 ――そうか。



 以上、稼津斗と明日菜のアイ・コンタクト。


 「あの、読み終わりましたが…」

 何はあっても授業は進む。
 亜子が教科書の一文を訳したところなのだが…

 「あの…パートナーが年下じゃ、嫌ですよね?」

 問題発言投下。
 ドレ位の威力かといえば3−Aのほぼ全員が目を点にするくらい。
 で、此処で実にタイミングよく授業が終了となった。


 ――稼津斗にぃ…

 ――稼津斗殿…

 ――あぁ…此れは相当重傷だな。


 其れはネギに対する同様の見解だろう。








 ――――――








 「犯人は捕まらなかったん?」

 「寸での処で煙球みたいなの使われてな…逃げられた。」

 時は移って昼休み。
 昨日のお礼に…と亜子とのどかが作ってきた弁当で昼食タイム。
 2人分の量は少々多い気がするが、稼津斗は結構食べるほうなので問題ない。
 あの後の事を聞かれたが、本当の事を言う訳にはいかないので『逃げられた』と言う事にしたらしい。

 「ふぇ…じゃ、じゃあ又襲われたり…」

 「其れは大丈夫だと思う。昨日寸での処を邪魔されたんだ、すぐに来るほど間抜けじゃないだろ。」
 ――現にさっき『次の満月まではおとなしくしている』と言っていたからな…。

 不安そうなのどかに再度襲われる危険性は無いと伝える。
 此処に来る前にエヴァンジェリン本人から言われた事を稼津斗は信用していた。

 「やけど、吸血鬼ってホンマにおったんやな…」

 「まさか、流石に其れは無いだろう。昨日のアレは催眠術師みたいなものだと思うぞ?」

 「「催眠術師?」」

 頷き説明を続ける。
 本当の事は言えないので、多分に脚色しているのだが…

 「多分な。一体何をしてたか、其れは分からない。だが、強烈な暗示によってさも吸血鬼に襲われたように感じさせる事は出来ると思う。
  現に昨日俺が駆けつけたとき、和泉も宮崎も自意識を奪われたような状態だったからな…」

 「そう言えば…」

 「気が付いたら先生と楓と龍宮がおったなぁ…」

 2人とも稼津斗達が現れるまで何が起きていたのかは全く覚えていない。
 だからこそ、何処かこの話に納得してしまう。

 「無論これで終息したとは思わないが…学園長にも話は入ってると思うし。少しは沈静化するんじゃないか?」

 「そやなぁ…」

 「だと良いですけど…」

 「まぁ、為るようになるさ。ご馳走様、美味かった。」

 手を合わせ箸をおく。
 2つの弁当箱には米粒1つ残っていない。
 実に気持ちが良い。

 「お粗末さまでした。」
 「お粗末さまや。」

 綺麗に食べてもらった事が嬉しかったのか亜子とのどかも笑顔。(のどかは前髪で目が隠れてるが口元が笑っている)

 「さてと、そろそろ昼休みも終わるな。2人とも午後の授業もしっかりな。」

 それだけ言うと稼津斗は屋上を後にする。
 2人の返事には背を向けたまま、片手を上げる事で応え。



 ――午後は俺が出る必要はないし…取り合えずマクダウェルの事で爺さんに許可もらいに行くか…



 学園長室へと足を進めた。








 ――――――








 「稼津斗君もう一度言って貰えるかのう?」

 「マクダウェルに掛けられている呪いと封印を解く。そう言ったんだ。」

 何時もの好々爺ではなく、学園長として威圧を放っている近右衛門に対して怯む事無く稼津斗は告げる。
 怯むどころか、逆に闘気を叩きつけている。

 「呪い?はて、何の事かのう?」

 「誤魔化すなよ爺さん。俺が気付かないと思っているのか?真祖の吸血鬼の力があの程度な訳無いだろう?」

 「む…気が付いておったのか?」

 「当たり前だ。人と真祖の吸血鬼では纏う『気』がまるっきり違うんだからな。」

 近右衛門は流石に驚く。
 稼津斗の実力は知っているものの、まさかエヴァンジェリンの正体にまで気付くとは思っていなかったようだ。

 「うぅむ…じゃが、性急すぎやせんかのう?少し待っても良かろう?」

 「待つ?何時までだ?明石裕奈、大河内アキラ、佐々木まき絵の3人がマクダウェルに操られてネギを襲うまでか?
  言っておくがな、俺は自分が受け持つクラスの生徒や同僚が被害を受けて黙ってられるほど気が長くはないぞ?」

 稼津斗から発せられる闘気に殺気が混じり近右衛門に叩き付けられる。

 「う…む。」
 ――す、凄まじいの。エヴァンジェリンの殺気よりもよっぽどこの老体には堪えるわい…

 「わ、分かった。分かったからの取り合えずその『気』を抑えてくれんか。部屋が無くなってしまうわい。」

 「……」

 無言で闘気と殺気を収める稼津斗だが…無言でやられると余計に怖い。

 「君の言う事は尤もなんじゃが…出来ればこの件はネギ君に何とかして欲しいんじゃよ。」

 「無理だ。今のネギじゃ仮に解決できたところで、出る被害が大きすぎる。」

 「言い過ぎではないかのう?10歳とは言え彼は…」

 「『英雄』の息子か?大概にしろ。幾ら才能が有ったって経験不足で物事に当たらせたら冗談じゃすまない事態が起きるんだぞ!」

 あまりにも正論。
 近右衛門は無意識にネギに抱いていた過度な期待を認識させられてしまう。

 「兎に角マクダウェルの呪いは解く。…ネギを鍛える事を条件にな。」

 「其れは既に頼んであるんじゃが…」

 「呪いと封印で言う事聞かざるを得ない状況の其れは『お願い』じゃなくて『命令』か『強制』だろうが。」

 全くもってその通り。
 近右衛門完敗。

 「うぅむ…仕方あるまい解呪は許可しよう。して何時やるつもりじゃ?」

 「次の満月だ。…爺さん、ネギの成長も良いが自分が魔法使いである以前にこの学園の『長』である事忘れないでくれ。」

 去り際にそれだけ言い残し、学園長室を後にする稼津斗。

 「少々耄碌したかのう…彼にあそこまで言われんと気付かぬとは…しかしこの爺を言い負かすとは大したもんじゃ。」

 髭を撫でながら近右衛門は心底感心していた。








 ――――――








 授業が終わって放課後。
 3−Aは一言で言って『凄い事』に為っている。

 「賑やかなクラスだとは昨日で分かってたが…一体何の騒ぎだ?」

 部分的に聞こえてくる会話から、どうやらネギに関することのようだが賭博紛いの事が起こっているのは些か理解しがたい。

 「アレは何のオッズなのか…」

 「誰がネギ君のお嫁さんになるか…です。」

 「釘宮か…なんだ其れは?」

 「英語の授業の時に亜子に言ったアレが、如何言う訳か『ネギ君は花嫁を探しに日本に来た』とか『某国の王子様』と言う話に…」

 円の説明に稼津斗は軽い頭痛を覚える。
 100歩譲って『花嫁探し』は良いとして一体何処からネギが『某国の王子様』になるのか?
 大体にして某国とは一体何処なのか…3−Aの想像力には素直に脱帽してしまう。

 「…絶対に違うと思うんだが…聞きそうに無いな。まぁあまり羽目外さない様にな。」
 ――真名、楓ちょっと来てくれ。ネギと神楽坂のところに妙な気配がある。

 注意をしながら念話で2人に話しかける。
 『来てくれ』と言われて断る真名と楓ではないが『妙な気配』と言うのに引っかかる。


 ――妙な気配…?

 ――エヴァ殿でござるか?

 ――いや、もっと下等な『何か』だ。…何と言うか『邪念』の塊だな此れは…


 稼津斗が感じた気配は『悪』ではないが『善』でもない。
 だがハッキリと『邪な感じ』だけはする。


 ――取り合えず、行くぞ。

 ――だね。

 ――ござる。


 もう1度だけ円に『騒がしくしないように』とだけ伝え、稼津斗は教室を出て行く。
 その後を真名と楓が追うが、絶賛盛り上がり中のクラスメイトは誰も気が付かなかった。

 その後、騒ぎを聞きつけた新田によって教室に残っていたメンバーは正座をさせられる事となるのであった…








 ――――――








 気配を頼りに来てみると、そこではネギと明日菜が仮契約を完了していた。
 キスによる簡易契約ではなく、古来の術式を使った『正式』な仮契約だ。

 「神楽坂をパートナーにしたのか…しかし何と言うかタイミングが悪いな。」

 その瞬間に立ち会ってしまったため、稼津斗サイドもネギサイドも実に微妙な空気が流れている。

 「タイミングが悪い?」

 いち早く再起動した明日菜が問う。

 「マクダウェルが騒動起こす事はもう無い。」

 「「え!?」」

 予想外の稼津斗のセリフにネギも明日菜も吃驚。

 「稼津斗にぃが全責任を持って何とかするんだそうだ。」

 「故に騒動終結は間違いないでござろうなぁ…」

 真名と楓が止めを刺す。
 ネギは兎も角、明日菜はなにやら最終回状態。
 仮契約までしてしまった自分は一体何なのか…恐らくそう思っているのだろう。

 「まぁネギはマダマダ未熟だ、パートナーが居るに越した事はないだろう。
  だが、マクダウェルは次の満月までは何もするつもりは無いみたいだから…しばらく大丈夫とは思うが…」

 「そう言えばエヴァちゃんそんな事言ってたっけ。」

 明日菜もまたエヴァンジェリンから『しばらくおとなしくしている』と聞いていた。
 稼津斗はそれに頷くと『解呪』の事は伏せて、話を進めようとするが…

 「甘い!甘いぜ兄ちゃん!」

 突如現れた白い物体によって其れを阻まれてしまう。

 「エロガモ!」
 「カモ君!?」

 其れは白いオコジョ。
 人語を操っているあたり普通じゃないのは明白なのだが…

 「今は俺とネギ達が話をしてるんだ。しばし黙ってろ。」

 稼津斗によって動きを封じられてしまう。

 「…こいつの話は後にしてだ…ネギ、神楽坂はお前が頼んでパートナーになったのか?」

 「違うわ。」

 ネギが答えるより早く、明日菜が返答する。

 「私が望んだの。エヴァちゃんが茶々丸さんとコンビならネギにだって仲間が必要じゃない?」

 「…成程。望まずそうなったのでないなら其れで良い。」
 ――こちら側は生易しい世界じゃないからな。

 もしもネギが無理やり仮契約を迫ったのだとしたら相応の仕置きをするつもりで居たのだがどうやら杞憂だったようだ。

 「しかしアスナ殿、『子供は嫌い』と言ってなかったでござるか?」

 楓が素朴な疑問を口にする。
 明日菜は自他共に認める『ガキ嫌い』として有名なのだ。

 「あのねぇ楓ちゃん、確かに『ガキ』は嫌いだけど1シーズン同じ部屋で過ごしたルームメイトを見捨てるほど薄情じゃないわよ?」

 「此れは失礼。アスナ殿はそう言った御仁でござったな。」

 「まぁ稼津斗にぃも言ってた様にパートナーは居て困るものじゃない。何れ此れが必要になる日が来るさ。」

 真名もフォローする。
 で…

 「この生ものは一体何なんだ?」

 「『生もの』だと〜!やい、幾らなんでも失礼でい!おれっちは由緒正しいオコジョの妖精『アルベール・カモミール』でい!」

 「妖精?悪魔の間違いだろ。さっき感じた『邪念の塊』はお前だったか。」

 先程の『嫌な気配』をカモに断定。

 「で、甘いとは如何いうことだ生もの?」

 「如何言う事も何も相手は元600万ドルの賞金首として悪名高い『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』だぜ!
  そんな奴の言葉、信じる必要は全くねぇって事よ!相手は悪の魔法使いだぜ?どんな汚い戦法使ってくるか…」

 「おい…」

 捲し立てるカモを底冷えのするような声で稼津斗が制する。
 其処にあるのは紛れも無い『怒り』。

 「貴様如きがマクダウェルを評価できる立場にあると思ってるのか?思い上がるなよ下等生物が。
  巧く行けばこれ以上被害は出ずに済むんだ、余計な事を考えるなよ…」

 今まで見た事も無い稼津斗の姿に真名と楓も吃驚している。
 ネギと明日菜は言うに及ばずだ。

 「で、でもよ…」

 「黙れ。彼女が本当にどうしようもない『悪』ならこの学園など疾うに無くなってるだろうが。」

 「「「「確かに。」」」」

 カモ以外の4人納得。

 「大体、お前は一体何しに来たんだ?」

 「お、おれっちはアニキの助けになるために…」

 「ほう…ネギ、そのポケットからはみ出してるのは何だ?」

 「え?あ…お姉ちゃんからの手紙…」

 「姉が居たのか…悪いが見せてもらえないか?」

 「良いよ。」

 手紙を受け取り読み始める。
 内容はネギのことを心配しているが、応援しているというもの。
 それだけならば何と言うことは無いのだが…

 「…お前、此れよく見てないだろ?もう1枚重なってるぞ?」

 「え!?」

 驚いて稼津斗の手の中の手紙を見る。
 言われてみれば確かにもう1枚ある。
 で、その内容だが。



 『そう言えば下着2000枚窃盗の罪で投獄されてたカモ君が脱獄して行方をくらませたみたいなのよ。
  ネギのところに行くかもしれないから十分気をつけていてね。』



 以上である。

 「生もの…」
 「カモ君…」
 「エロガモ…」
 「「………」」

 殺意マックス(特に女子3人)
 無言である真名と楓は余計に怖い。

 「そう言えばエロガモ、アンタ私とネギにやたらしつこくキスを使った簡易仮契約薦めてたわよね…何で?」

 「いや、特に理由は…」

 「一回の簡易仮契約につき…」

 「5万オコジョ円だぜ!…あ…。」

 恐ろしく単純な稼津斗の誘導に引っかかるカモ。
 此れで、唯でさえ低かった空気温度が更に下がった。

 「カモ君…僕はウェールズでも言ったよね『仮契約は遊びじゃない』って。」

 「それ以前に私服を肥やすために仮契約させようとするなんざ言語道断だろ…」

 「乙女にとって大切なファーストキス使わせようなんて…!」

 「酌量の余地は無いな。」

 「極刑でごぜる。」

 稼津斗の指先に『気』が集中する。
 ネギが詠唱を行い杖に『魔力』が収束する。
 明日菜が(何処から取り出したのか)ハリセンを構える。
 真名がハンド・ガンの撃鉄を起こす。
 楓が両手に大量の苦無を展開する。

 「え?あ…ちょっと!?」

 「問答無用。全員一斉攻撃!…刺突破砕撃!!」

 「戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)…100本!」

 「一遍地獄に…落ちなさい!」
 「落ちろ!」
 「でござる!!」

 有る意味最凶と言えるこの5人の殆ど手加減無しの一撃がカモに炸裂する。

 「ぎょぇぇぇぇぇ!!」

 悲鳴が、辺りに木霊した。
 この悲鳴を聞いた生徒は結構多く、『麻帆良怪談』に『夕焼けの断末魔』として残る事と為る。

 余談ではあるが、此れだけの攻撃を受けてにもかかわらずカモは夜にはしっかり復活。
 そして懲りずに女子寮の風呂を覗こうとして再び明日菜、真名、楓に制裁を喰らうのであった…















  To Be Continued… 


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