小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 タカミチ行方不明。

 彼の実力を知る者からすれば、一体何が有ったのかと思うだろう。

 「……行方不明か。まぁタカミチなら大事には至らないと思うんだが。」
 「でしょうね。ですが万が一と言う事もありますので。」

 下手な心配などは無いが、確かに『万が一』がありえないとは言い切れない。
 それに、もしもタカミチがやられてしまうような相手だった場合、シャークティ、美空(+ココネ)では手に余る。

 そんな訳で、屈指の実力者である稼津斗達に助っ人要請に来たと言うわけだ。

 「ならば私と真名が行こう。もう試合も無いし……構わないか?」
 「あぁ、良いよ。稼津斗にぃの試合は…和美にでも頼んで撮っておいて貰うさ。」

 で、助っ人にはもう試合の無いリインと真名が同行することに。
 本当ならば稼津斗と楓も同行してくれれば最高なのだが、この2人は準決勝が有るので最初から除外。

 と言うか、この2人は如何にも戦うのが楽しみで仕方ないと言った様子なので、それに水を刺すのは気が引けたのだ。

 「私も行くわ。咸卦法と完全魔法無効は役に立つでしょ?」
 「私達も行きましょう。良いわね愛衣?」
 「はい!」

 更にアスナ、高音、愛衣が名乗りをあげ、タカミチ救出チームの戦力は一気に増強した。










 ネギま Story Of XX 32時間目
 『譲れない大勝負!』










 救出組のメンバーは決定し、一行はリインの瞬間移動でその場から消えた。

 ネギが若干心配そうではあったが、其れを口に出さずに見送ったのは大きな成長といえるだろう。

 「さて、あの面子なら大概大丈夫だろう。…楓、お前と戦うのも久しぶりだな?」
 「ござるなぁ。拙者、あの時よりは強くなってるでござるよ?」


 「漸くお前と戦えるなネギ!京都の時のリベンジマッチや!!」
 「今度も負けないよ小太郎君!!」


 で、会場に残った試合組は既にやる気が充分だった。

 稼津斗と楓は久しぶりの手合わせが楽しみで仕方ないと言った感じだが、ネギと小太郎は可也熱くなっている様子。
 2人とも歳が近い事もあって、お互いに負けたくない気持ちが強いらしい。


 『間も無く準決勝を開始します。繰り返します、間も無く…』


 和美の休憩終了を告げるアナウンスが流れ、観客も席に戻ってくる。
 そうなると、再び会場は異様な熱気が満ちてくるようだ。

 「では行くでござるかな、稼津斗殿!」
 「あぁ!本気で来い!」

 先ずは楓が、その後から稼津斗がリングイン。
 準決勝を先に戦うこの2人としては、手合わせを楽しみにしつつ出来れば会場を盛り上げたいと考えていた。

 『ネギと小太郎を最高の舞台で戦わせてやりたい』と奇しくも同じ事を思っていたようだ。








 ――――――








 『さぁ、準決勝第1試合!方や1回戦を瞬殺、2回戦では反対に言葉巧みに相手を誘導し勝利を収めた長瀬楓選手!
  対するは、1回戦、2回戦共に激闘を展開しつつ、しかし未だその真の実力は未知数の氷薙稼津斗選手!!
  準決勝ともなれば此れまで以上の激闘は必須!!2人の実力者の戦いを目玉かっぽじって見届けろ〜〜!!
  準決勝第1試合、長瀬楓vs氷薙稼津斗、Ready…Fight!!』


 「和美殿、目玉をかっぽじったら見えぬでござるよ…」
 「突っ込んだら負けだ楓。それに、場を盛り上げる為のハイテンション司会としてなら今のも『アリ』だ。」

 和美の少々ぶっ飛んだ司会に突っ込みを入れつつも戦闘準備は万端。
 稼津斗は何時ものように余分な力を抜いた自然体で、楓もどちらかと言うと其れに近い感じだ。

 「疾っ!」

 先に動いたのは楓。
 縮地を使って間合いを詰め、超速の裏拳。

 稼津斗は其れを紙一重でかわして反撃の掌底を


 ――ガッ


 「!!?」

 放てなかった。
 楓の裏拳が見事にヒットしたのだ。


 ――?何だ今のは…?避けたはずの裏拳が同じ軌道で飛んできた…?


 避けたはずなのに喰らった攻撃に疑問が起こる。
 だが、戦いは止まらない。

 攻める手を休めず、今度は掌底が飛んでくる。
 又しても其れをよけるが…


 ――ゴッ


 再度攻撃を喰らってしまう。

 此れには観客も驚きだ。
 誰が如何見ても楓の攻撃は稼津斗にかわされた筈だ、そう見えた。
 しかし実際には、その攻撃は的確に稼津斗を捉えているのだ、驚くなと言うのが無理である。


 『な!!此れは如何した事だぁ!!稼津斗選手一方的に楓選手の攻撃を喰らっている!!
  いや、それ以上にかわした筈の攻撃が再度ヒットするとは、此れは一体どんな手品を使っているのか!?』


 当然和美もその攻撃の正体など分からない。
 普段一緒に修行しているとは言え、楓の技を全て把握している訳ではない。

 故に司会業をこなしながらも頭の中は疑問で一杯だ。
 が、同時に楓が稼津斗に2発もの有効打を入れたことには、客席の観戦組共々驚いていた。





 ――厄介だな…避けたと思った矢先の的確な2撃目か。対処しきれるものじゃないな。


 一方の稼津斗は楓の攻撃に感心しながらも、その対処で手一杯で攻撃は出来ずに居た。
 余りにも速い2連撃は如何に稼津斗と言えども完璧に対処して防御できるものでは無いらしい。


 ――しかし妙だな?楓はこんなに相手との距離を詰めて戦う奴だったか?


 同時に少しばかり今の楓の戦い方に違和感を感じてもいた。

 確かに楓の戦闘スタイルを言うならば『近距離よりのオールラウンダー』であり、しかもどちらかと言うと得意なのは速さを生かしたヒット&アウェイ。
 修行中も其の戦法を良く使っていた筈だ
 決して今のように常に相手に肉薄しての接近戦ではなかった。

 が、其処に思い至り稼津斗の頭の中にある仮説が生まれた。
 他でもない、この『幻惑の2連撃』についてのだ。


 ――俺の考えが正しければ…


 迫り来る拳を紙一重で避ける、と同時に自身も裏拳を繰り出す。


 ――ガッ!!!


 「…如何やら当たりだったみたいだな?」
 「流石に見切ったでござるか。否、稼津斗殿ならそろそろ気付くとは思ったが…」

 稼津斗が放った裏拳は、楓の『幻惑の2連撃』の2撃目を完全に止めていた。


 『と、止めた〜〜!!え?つーかどうなってたのこの攻撃!?』


 流石にカラクリが分からず、名解説コンビも此ればっかりは説明できない。
 代りに答えたのは稼津斗だ。
 尤も、其れは楓に対してのみ言っていたのだが…

 「この攻撃…お前、影分身を自分に重ねていたな?
  先ずは本体が攻撃し、其の後で僅かにタイミングをずらして重なった分身が攻撃する。
  攻撃された側は避けた直後の2撃目には当然反応できない。出来て今みたいな相打ち覚悟の一発だ。
  更に試合なら兎も角、命を賭けた『死合』においてこの幻惑は相手の冷静な思考を奪う効果もある…まったく良く考えたものだ。
  普段のお前の戦いを知らなかったらこのまま押し切られていたかもしれないな。」

 「正解でござるよ。」

 言うと同時に楓の体がブレ、もう1人楓が現れた。

 「初めて戦った時の事から稼津斗殿には多重影分身の物量は無意味と分かっているでござるからなぁ。
  そこで拙者なりに考えたのがこの戦法でござる。
  修行中は使わなかったが、実戦レベルで使えると言う事は分かったでござるよ。」

 分身を消し再び向き合う。

 「しかしネタが分かれば、此れは稼津斗殿には通じぬであろう?…此処からが本当の勝負にござるよ!」

 「上等だ。来い楓!!」

 再び激突。
 しかし、今度は攻撃のカラクリが分かっているため稼津斗も攻撃が出来ている。

 両者とも攻防一体の激しい戦い。

 お互いに退かない、一歩も退かない。

 観客が息を呑み、解説コンビが沈黙するほどの攻防の中でも稼津斗と楓の顔には笑みが浮かんでいた。

 稼津斗は楓の成長に、楓は稼津斗が前よりも力を出してくれている事が夫々嬉しかった。


 事実、稼津斗はタカミチの時よりも力を解放し、大体7〜8割といった所だ。
 其れはつまり、楓はタカミチを越えている事を意味する。


 戦いは激しさを増す。
 攻撃に『気』が入り、打撃戦では普通起こりえない火花とか爆音が発せられている。



 「うおい、マジか!?やりすぎだろあの2人!!」

 となれば当然客席で千雨が突っ込む訳だが、

 「いや、逆にあそこまで派手だと大会側の演出やと思うんとちゃうかな?」

 亜子の一言は否定出来ない説得力が有った。





 試合は尚も進む。

 「行くでござるよ稼津斗殿!!」

 残り時間も少なくなり、楓は一気に勝負をかける。

 「!!16体の多重影分身だと!?」

 突如現われた16体の楓の分身。
 其れが360度の方向から襲い来る。


 ――だが、其れは通じない!
 「覇ぁぁぁぁ…爆閃衝!!」


 其れに対し稼津斗は、自身の周囲をカバーする攻撃で迎撃。
 と、奇しくも此処までは初めて戦った時と同じ展開だ。

 そして其の時同様に、粉塵の中で稼津斗は楓を見つけるが…


 「!!」
 ――違うこっちは分身だ!気の大きさを同じにたのか!!


 此処でも楓のトリックが炸裂。
 稼津斗の超感覚を逆手に取った罠。


 「…上か!!」

 更に今度は上からの気配。
 跳躍し迎撃せんとするも、

 「此れも偽者だと!?」

 この気配まで分身体。

 「巧く行ったでござる!」

 が、只の分身では無く、本体と重なった分身。
 先の攻撃の更に発展系――自分の気配は消しながら分身には確りとした気配を持たせるトリック戦術。

 「此れが今の拙者の全力にござる!!楓忍法絶技『紅蓮八双拳』!!」

 繰り出される連続攻撃。
 裏拳、ボディブロー、肘打ち、膝蹴り、掌底、手刀、サマーソルトキックそして締めの横蹴り。

 空中繰り出された『八双』の名に恥じない目にも止まらぬ8連撃。

 「見事だ楓…正直驚いたぞ?」

 其れを受けて尚、稼津斗の顔には笑みがあった。

 「矢張り、マダマダ届かぬか…」

 「そうでもないさ。初めて会った時とは比べ物にならない強さだ。…だが、この場は勝たせてもらう!!」

 言うが早いか、横蹴りを放った足を掴み強引に引き寄せる。
 そして手を離すと、今度は組み付き『ブレーンバスター』のような体勢に。
 更に其処から両足を固定し身動きを封じ、此処で一旦着地し再度大ジャンプ!


 『うお〜っと!楓選手の連撃を喰らったかと思いきや、今度は稼津斗選手の反撃!!
  しかもこの技はまさか〜〜!!』


 和美には、否、多くの観客には稼津斗が出した技には見覚えがあった。


 「こ、此の技はまさか!!」
 「本来は『マティマティカ』って言うメキシコプロレスのサブミッションだが、日本ではこっちの名前の方が有名だろ?」

 ジャンプが最高点に達し、今度は逆に超高速で下降!

 「終わりだ…48の殺人技『キン肉バスター』!!!」

 其の勢いのままリングに突貫!!
 余りの衝撃に凄まじい轟音が鳴り響く。


 『決まった〜〜!!まさかまさかの『キン肉バスター』!!この技をリアルに拝むことが出来るとは〜!!
  つーか無事か楓〜?生きてる?全身複雑骨折してない?』


 まさかの技に興奮しつつも楓の心配をしているあたり、未だ余裕は有りそうだ。



 粉塵が晴れる。



 「ガハッ…流石は稼津斗殿…降参でござるよ…」

 技を解かれた楓はそのままダウン。
 気を失ってはいないが、最後の一撃は思った以上に効いたようだ。

 「早々簡単には負けられないさ。だが、其の成長の凄まじさには感服した。」

 ダウンした楓を抱き起こし、その成長を誉める。
 楓も楓で、矢張り誉められるのは嬉しいようだ。

 「ふふふ、何時かはXX状態で相手してくれるようになって見せるでござる。
  …否、拙者自身がXXの高みまで上って見せるでござるよ。」

 「お前なら、お前達なら出来るさ。其の時を楽しみにしてるぞ。」

 凄まじいまでの激戦を制したのは稼津斗。

 「楓。」

 「何でござる?」

 「…楽しかったぞ。」

 「!……拙者もでござる。」


 そして会場は大きく盛り上がり、次のネギvs小太郎を前に最高の状態が出来上がっていた。


 ――●長瀬楓(14分18秒、キン肉バスター)氷薙稼津斗○――








 ――――――








 一方タカミチ救出組は、タカミチが超に捕えれえた地下水道へとやって来ていた。


 やってきていたのだが…

 「り、量産型でしたの?」

 一行の目の前には、武道大会にも出場してたあのロボット、通称『田中』が大量に居た。
 どうも、警備兵として超が配置したらしい。

 ぶっちゃけ救出組の戦力の前ではこの程度は塵芥にもなりはしないのだが…高音の様子がおかしい。
 見れば肩を震わせて俯いている。

 「大丈夫かい高音さん?」

 真名が如何した事かと問うが…

 「えぇ、大丈夫ですよ…?ですが私を辱めてくれたこの連中は…1体たりとも生かしてはおきません。」

 ぶっちゃけキレていた。
 確かに公衆の面前で裸体を曝されたとなれば其の怒りは当然だろう。

 「だな。一緒に吹き飛ばすとするか?」

 其の怒りを見ても冷静なリインが一撃殲滅を提案。
 勿論高音が断るはずも無い。

 「えぇ、塵すら残さずに。影よ!」

 「全力全壊だな。アデアット!」

 お得意の影装を展開する高音と、自身のアーティファクトを展開するリイン、殲滅準備は完了。

 「咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。貫け閃光!スターライトブレイカー!」
 「黒衣の夜想曲!」

 で、放たれたと言うよりも放たれてしまった一撃。

 先ずは高音の影の槍が田中を全て貫き、其処をリインの放った桜色の砲撃が文字通り『薙ぎ払う』。
 結果、眼前の田中集団は『此処に何か居たのか?』と疑問に思うくらい綺麗さっぱりと居なくなっていた。

 「相変わらずやりますねリインさん?」
 「お前もな。」

 夜の警備で組む事もあるのでコンビネーションはそこそこ出来ているようだ。

 尤も真に感心すべきは、今の攻撃でも壊れなかったこの地下水道の耐久力だろうが…一体何で出来ているのだろうか?


 「あの〜シスター・シャークティ?」

 「なんですか美空?」

 「ぶっちゃけ私達要らなくねっすか?」

 「何を言っているんです。実力者の戦いを見るのも勉強です。」

 何とか逃げ出そうとする美空だったが、世の中はそんなに甘くは無かった。








 ――――――








 『さぁ、準決勝も第2試合!戦うは子供先生ネギ・スプリングフィールドと、これまた子供武道家犬上小太郎!
  だが、子供と侮る無かれ、どちらも其の見た目と年齢からは想像もできない実力者!正に早熟の天才!!
  見た目で判断すると痛い目を見るぞ〜!てか見た目で判断するなら二流三流!鍛錬積んで出直して来い!
  準決勝第2試合、ネギ・スプリングフィールドvs犬上小太郎、Ready…Fight!!』


 大会会場では、準決勝の第2試合が幕を上げていた。

 対峙するネギと小太郎。

 同年代の親友でありライバルの2人。
 どちらも負けたくない気持ちは同じ。

 纏う闘気は大凡子供の物とは思えないほどに強く、そして澄んでいる。

 「行くよ、小太郎君!」
 「来いやネギィ!!」


 同時に地を蹴り、


 「雷華崩拳!」
 「狗音爆砕拳!」


 挨拶代わり(と言うには余りにも強烈な)の一発。


 ――…!凄い、京都のときよりも攻撃の鋭さと重さが桁違いだ!

 ――はっ、ヘルマンのオッサンの時も思ったけど、近距離戦も相当に強くなってるや無いかネギ!


 そして互いのこの一撃から相手の成長度を感じ取る。
 だが、だからこそ


 ――負けられない!

 ――負けられるかい!!


 どちらも退けない。

 「いい一撃やでネギ!京都の時からは考えられんわ!」
 「小太郎君もね!!」

 一旦間合いを離し、

 「お前相手に出し惜しみは無しや!疾空黒狼牙!」
 「僕だって出し惜しみはしないよ!魔法の射手・雷の11矢!」

 魔法の秘匿なんてものを遥か彼方に吹っ飛ばした遠距離攻撃。
 魔法の矢と狗神が激突し爆発が起こる…と同時に再び高速で接近。

 「弓歩沖拳!」
 「狼牙双掌打ぁ!!」

 又してもかち合う攻撃。
 実力は略互角。

 力では小太郎が、速さではネギが夫々少しだけ上回る。
 魔法の矢を乗せた打撃と、気で強化した打撃は略互角で遠距離攻撃も破壊力は小太郎に分があり、最大攻撃数はネギに分がある。
 すべての能力を駆使して戦えば、完全に互角。

 故に其の戦いは完全に拮抗。


 鋭く、重い一撃を繰り出すもどちらもクリーンヒットには至らない。
 15m四方のリングが小さく思えるほどリング上全てを使っての攻防に観客も息を飲む。



 「ネギも小太郎もやるな。」
 「ござるなぁ。どちらも末恐ろしい逸材にござる。」
 「くくく、ネギもあの犬もマダマダ伸びるだろうよ。長生きも悪くないものだ。」

 選手席の達人3人も、この2人への評価は高いようだ。



 『凄い!凄いぞ少年!!僅か10歳そこそこで此処まで強くなれるのか?
  此れが才能に溺れず鍛錬を積んだ成果か!?
  どっちにしてもこの2人の戦いは子供レベルなんかじゃない!
  そう、此れはもう一流の達人の戦いだ〜〜!!
  一進一退…いや一進一進!退く事などありえない男の子の意地!!どっちも全力で頑張れ〜〜!!』

 自然と和美の司会にも熱が入る。
 其れに後押しされるように闘いはヒートアップ!

 互いにクリーンヒットを許さない近距離での打ち合い、寧ろ殴り合い。

 「覇っ!!」

 紙一重。

 「らぁ!!」

 皮一枚。

 矢張り決定打は決まらない。
 其れほどまでに実力が拮抗しているのだ。

 しかし此れでは埒が開かないのも事実。


 「はぁ、はぁ…やるね小太郎君。」
 「ぜぇ、ぜぇ…お前もなネギ。其れでこそ俺のライバルや。」

 余りにも激しい打ち合いに流石に息が上がっている。
 一旦間合いを取り呼吸を整える。

 「なぁネギ、このままじゃ埒が開かん。」
 「だね。」

 「其処でや、お互い最大の一撃で勝負せんか?俺は大体20秒やが、お前はどうや?」
 「最大出力出すには僕も大体20秒かな…」

 言葉は少ないが、それでも言う事は分かる。

 「せやったらパワー全開になったらやな…」
 「合図が必要だね。」

 其処で2人で和美を見やる。

 「…若しかして私に合図をやれって?」

 「せや。頼まれてくれへんか?」
 「僕からもお願いします朝倉さん。」

 「…OK、分かったよ。『え〜たった今両選手から提案を受け、両者の全力攻撃の合図を取り仕切る事になりました!
  恐らくは此れが最後の一撃!!この最大の一撃を見逃すな〜〜!2人とも準備は良い!?』


 「はい!」
 「応よ!」

 ネギは魔力を、小太郎は気を集中。
 其の力は凄まじく、夫々周囲に高められた力が逆巻いている。

 「はぁぁぁぁぁぁぁ…!」
 「うぉぉぉぉぉぉぉ…!」

 其の力は今にも爆発せんばかり。
 其れを感じ取った和美が右腕を高々と上げ、

 『Go for Break!!』

 一気に振り下ろす。

 「「全力全開!!」」

 其れと同時に瞬動で飛び出す。
 2人とも其の拳には膨大な力が収束している。

 「雷華崩拳!!」
 「狗音爆砕拳!!」

 ぶつかる拳と拳。
 高められた力が臨界し、拳がぶつかる部分で火花放電が起きる。

 それでも退かない。
 互いに押し切ろうと更に力を込める。

 「うおりゃぁぁぁぁ!!!」
 「てやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 とても子供とは思えない裂帛の気合が会場に響き渡る。


 ――バガァァン!!


 そしてついに、臨界を向かえた力が限界に達して爆発し、2人ともリングの端まで吹き飛ばされる。
 それでも直ぐに立ち上がり再度攻撃に移ろうとするが…


 『スト〜〜ップ!!両者其処まで!!残念ながら此処でタイムアップだ〜〜!!』


 和美から制限時間切れが言い渡される。
 大会初めてのタイムアップ……其れほどまでに拮抗した2人の実力。
 勝負は観客のメール投票に委ねられる事になった。

 「お疲れさん。ったく熱くなるね?コタは兎も角ネギ君もやっぱ男の子なんだね。」

 集計が済むまでの間、ちょいと雑談。

 「はぁはぁ…ぼ、僕は自分で思ってた以上に負けず嫌いみたいです。何て言うか退けませんでした。」
 「ぜぇぜぇ…と、当然や。もし退きやがったら失望して愛想尽かしたで?」

 普段とは違う歳相応な其の姿にちょいと苦笑いし、和美は集計結果を運営側から受け取る。


 『さぁ、メール投票の結果が出ました!投票総数312票!その結果は…ネギ157票、小太郎155票!
  準決勝第2試合は、僅か2票差でネギ選手の勝利!!勝者ネギ・スプリングフィールド!!』


 結果は僅差でネギの勝利。

 「くっそ〜〜!!判定負けかい!!此れで0勝2敗か〜…悔しいで!
  …せやけど何やすっきりした気分やな。」
 「僕もだよ小太郎君。今度、また戦おう?」

 「勿論や!決勝頑張れよネギ!」
 「うん!」

 カツンと拳を打ち合わせる。
 健闘を称え合い、再戦を約束し、そして次の闘いに望む友へのエール。

 正に『好敵手』と言うに相応しい2人の闘いは、会場にある種の感動をも与えていた。


 ――○ネギ・スプリングフィールド(15分、判定)犬上小太郎●――




 『さぁさぁ!大会も残すは決勝戦のみ!!其の決勝を戦うのはこの2人だ〜〜!!』



 光学映像で映し出されたトーナメント表。
 激闘を上り詰めた2名。










 まほら武道会決勝戦、そのカードはネギ・スプリングフィールドvs氷薙稼津斗。

 見た目以上の実力を持つネギと底知れぬ実力の稼津斗。

 観客は準決勝の興奮が冷めないまま、5分後の決勝戦に思いを馳せていた。








 ――――――








 会場で激闘が繰り広げられていた頃、この地下水道では、

 「刃以て血に染めよ、穿てブラッディダガー!」

 救出組が圧倒的力で警備ロボを殲滅し最下層まで辿り着いていた。

 「やっぱ私等要らないっすよ…」
 「美空…?」
 「はい!なんでもないであります!!」

 文句たらたらな美空にシャークティは厳しい視線。
 流石に其れに逆らうほどの度胸は無いようだ。
 みればココネも微妙に怯えている。

 「如何やら終着点のようですわシスター・シャークティ。」

 一行の前に現われたのは大きな扉。
 見たまま頑丈そうな代物だ。

 「鍵は…掛かってないみたい。」
 「ふ、ならば正面から突入するか?」

 鍵が掛かっていないというアスナに、真名は少し笑って正面突破を提案。
 と言うかこの扉以外に入り口は無さそうなので否応無しに正面突破になるだろうが。

 「そうだね…それじゃ、覇ぁ!!」

 アスナが天魔の剣を一閃し扉を一刀両断!

 お見事、扉は真っ二つだ。


 「!・・・こ、此れは一体!?」

 しかし扉の向こうには驚くべき光景が広がっていた。
 体育館よりも大きな其の空間には、

 「こいつ等は…尖兵か?」

 100体以上の『ロボット田中』と蜘蛛のようなロボット。
 更に、

 「…!此れは、まさか京都の時の!?」

 修学旅行のときに見た『リョウメンスクナ』に酷似した巨大なロボットが鎮座していた…
















  To Be Continued… 

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