小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 高度4000mの上空で行われた極大魔法の撃ち合いは、超が先に限界を迎え、ネギがそのまま押し切る形で決着した。

 だが、攻撃を受けた超にはもう力は残されていない。
 全身に施された魔法術式が砕け散った今、地面に向かって落下していくのみだ。

 このままでは学園祭最終日の最終イベントで最悪の悲劇が起こってしまう。
 地上のオーロラビジョンで戦いを見守っていた者達にもざわめきが起きる。


 誰もが最悪を想定したが…


 ――ガシィ!


 「超さん!」

 「間に合ったか。」

 「ネ…ネギ坊主?其れに…稼津斗老師…?」

 稼津斗とネギが超の腕を掴んで落下を防いでいた。










 ネギま Story Of XX 45時間目
 『祭りの終りは色々と』










 「全力全開は実に好ましいが、少々無理しすぎだ2人とも。」

 「はぁ、はぁ、カヅトもボロボロだよ?人の事言えないと思うけど…」

 「ろ、老師が其処までなるとは、老師は一体何と戦っていたんダ?」

 ネギも超も、稼津斗がこの場に来た事よりも、その姿に驚いていた。
 山吹色の胴衣は彼方此方が壊れ、上半身に至っては殆どインナーしか残って居ない。
 非常識とも言える稼津斗の強さを知る2人にとって、此れは少々衝撃だ。

 「力に溺れた阿呆とな。この胴衣の破損は攻撃の余波、拳圧で付いたものだ。直撃は最初の一撃以外は無い。
  もっと言うなら、この山吹色の胴衣は此れくらい壊れていた方が味がある。」

 「「言われてみれば、確かに。」」

 直撃は最初の一撃だけと言うのには驚かない。
 寧ろ、胴衣の壊れ具合の云々に納得してしまった。

 「さてと、2人とも限界だろう。少し乱暴だが降りるまでは勘弁してくれ。」

 そう言うと、超を担ぎ上げ、ネギを小脇に抱える。

 「カヅト!?」
 「稼津斗老師!?」

 突然の事に驚くも、殆ど力が残っていない状態での抵抗など無意味。
 それ以前に、ネギも超も腕1本動かすのも今は重労働状態なのだ、抵抗等出来るはずが無い。

 「無理は良くない。特に超、お前は指1本動かすだけで激痛が走るだろ?」

 「う…其れは…」

 「のどか達の方には念話で連絡を入れておいた。地上に降りたら治療してもらえ。」

 的確に指摘され、黙るしかない。
 ネギも限界である為、おとなしく抱えられている。

 「で、でもカヅト、まだ計画は!」
 「ふっ、その通りネ。私を倒しても計画は…」

 「此処で終りだろう?」

 「えっ?」
 「む…」

 未だ計画は止めてないと言うネギと、計画は続いている事を示唆した超に、稼津斗はアッサリ終りだと言ってのけた。

 「お前は、自分が負けて尚、計画を強行に完遂させるような無粋で無様な真似はしないだろう。
  自分が負けた瞬間、大規模強制認識魔法とやらは全くの別物に摩り替わる様になっている……違うか?」

 まるで悪戯を見破ったかのように問う。

 いや、其れは問いではなく殆ど確認に近い。

 「ヤレヤレ…本当に貴方には敵わないヨ老師。確かに私の計画は此処までネ。」

 「え?ど、どう言う事…?」

 観念したとばかりに溜息をつく超と、事態がいまいちの見込めて居ないネギ。
 だが、少なくとも悪い事は置きそうには無い。

 「さて、学園祭のフィナーレだ。」

 稼津斗が言うのと略同時に、飛行船から巨大な光の柱が打ち上がった。








 ――――――








 地上でも、

 「おぉ、巨大ロボが消えていく!」

 「最後の一撃が効いたか!?」

 「ネギ君がラスボスに勝ってくれたか!」

 最後の巨大兵器が姿を消し、ロボ軍団も次々と機能を停止。




 「此れで終りだ、大人しく眠れ妹達よ。」

 「ふぅ、思った以上の数でござったな。」

 「もう、これ以上は増えないだろうがね。」

 別の場所でも、茶々丸、楓、真名が茶々丸の妹達を完全制圧を完了している。
 最早誰の目に見ても、イベントの結果は一目瞭然だ。




 となれば、当然…


 『さぁ!!皆さん!!敵、火星ロボ軍団は完全壊滅!巨大ロボも皆さんの活躍で消滅していきます!!
  更に……ラスボスとのガチバトルも子供先生が勝利を収めました!!――と、言う事は…?』


 司会の和美が其れを伝え、結果を発表する。
 いや、分りきった結果ではあるが、その辺は絶妙な言い回しで盛り上がるようにしている。

 「と、言う事は…!」

 「…ト…」

 「言う事は…!」

 会場もざわめき、最後の一言を待つ。
 上空では飛行船より打ち上げられた光の柱が集束して一つの光の玉になっている。


 『我々、学園防衛魔法騎士団の完全勝利です!!』


 完全勝利宣言!
 同時に光の玉が弾けて、まるで流星群の様に降り注ぐ。
 其れに会場は、いや学園都市全体が大歓声に包まれる。


 この大歓声、学園祭最終日全体イベントは大成功だったと言えるだろう。








 「凄い…!」

 上空でも、この光景にネギが驚いていた。
 もう、抱えられては居ない。

 今居るのは『超包子』の屋台路面電車の上だ。
 超の落下を見た五月が、救助の為に発進させていたのだ。

 屋台路面電車には、他にも裕奈やアスナ達の姿が。


 「まさか、この大仕掛けまでばれていたとは思わなかたヨ。何時から知ってたんダ?」

 「知っていたと言うより只の勘だ。さっきも言ったが『お前なら負けても強行に』と言う事は無いと思った。
  確信を持ったのは長谷川が電脳戦で、お前達の方の防壁を突破したのを聞いたときだ。
  『計画とは無関係のド派手な花火みたいなプログラム見つけた』って聞いてな。
  しかも其れは『特定条件化で自動的に強制認識魔法と入れ替わる』様に成っていたって言うじゃないか。
  其れで確信したんだ、『ネギが勝てば、その時点で強制認識は行われない』、とな。」

 「何と、長谷川さんが…全く、本当に3−Aの皆には敵わないヨ…」

 全く予想外の伏兵に全ての仕掛けが暴かれていたという事には流石に吃驚。
 余りの事に、思わず笑がこみ上げてくる。

 改めて自身のクラスメイトは本当に一筋縄では行かない連中だと確信させられてしまった。


 「ふぅ…なぁネギ坊主、一つだけ教えてくれないカ?」

 「何でしょう?」

 一頻り笑い終え、今度はネギに問う。
 その表情は真剣そのもの、自然とネギも真剣な顔つきになる。

 「君達は一度は私のトラップで『今から1週間後の世界』に飛ばされ、其処から遡行してきたんだろウ?」

 「…はい。超さんの計画が発動し、皆が魔法を知る世界になっていました…」

 「矢張りか。…教えてくれ、私の計画で犠牲になった2人の人間とは………一体誰ダ?」

 一番の疑問。
 ネギ達が未来から遡行してきたことは予想が付いていた。
 だが、アスナから言われた事はどう考えても皆目見当が付かなかったのだ。

 問われたネギは一瞬考えるも、直ぐに超に向き合う。
 全てが終わった今、伝えても特に問題は無いと判断した様だ。

 「1人はカヅト…。そしてもう1人は…………貴女です、超さん。」

 「な!私と老師だト!?如何言う事ダ!!?」

 アスナから『犠牲者が出た』と言われた時以上の驚愕。
 まさかその犠牲者の1人が自分自身とは夢にも思ってはいなかっただろう。

 「正確には貴女の計画を隠れ蓑にしていた人達が居たんです。目的は……カヅトの殺害。
  本来なら飛行船で貴女と戦ったのは、僕じゃなくてカヅトで……其処を狙われたらしいんです。」

 「何と…!だが、私は兎も角として老師はそう簡単には行かぬはずダ…何故…?」

 ネギの説明を聞いても疑問は尽きない。
 如何考えても稼津斗がやられるところは想像が出来ないのだ。

 「俺の検索範囲外からの超長距離狙撃で『魔法禁止弾』を撃ち込んだんだそうだ。
  で、気が使えなくなったところに兵鬼で『陽電子プラズマ砲』を照射してゲームエンド…と言う結末らしい。」

 「…未来技術を転用していたのか…。ハァ…何と間抜けな話だナ。1人の死者も出さぬ筈が、自分が死んでは洒落にもならないネ。
  そうか…単純に計画を阻止するだけでなく、老師と私を助ける目的も有った訳か…。
  成程、此れは如何足掻いても勝てるはずも無かったナ。……私は良いクラスメイトと教師に恵まれたようだヨ。」

 全てを知り、しかし超は穏やかに言った。
 自分を救う為に、此れだけの事をしてくれたと言うのが正直に嬉しかった。

 「やれやれ…己が志が潰えた時、革命家は自ら死を選ぶ覚悟を持っているものだが…参ったネ。
  自らの野望は潰えても、それ以上の希望を見つけた時には如何すれば良いかは全く分らないヨ。」

 ニッコリと笑って其れだけを告げる。



 飛行船から放たれた光の雨は止み、代わりに夜空には大量の花火が上がり始めていた。








 ――――――








 一方で、稼津斗に完膚なきまでに敗北を喫した魔法教師は、この湖畔に佇んでいた。

 その目に生気は感じられない。
 変りに宿るのは、言い表せないほどの憎悪と殺気の炎。

 だが、其れを宿して尚動く事は出来なかった。
 限界を迎えていたにも拘らず、無茶をして放った極大魔法の影響で体中の筋組織と神経がズタズタに成っていたのだ。
 治療を施し、リハビリをしても完全に元に戻る事は二度と無いだろう。


 「ふむ、此れは又こっぴどくやられたモンじゃのう?」

 「…!学…園長。」

 その場に現れたのは近右衛門。
 何時もの飄々とした好々爺の態度は崩さず、しかしその眼光は鋭く厳しい。

 「馬鹿者が。私怨で他者の殺害等企てるからこの様な目にあうんじゃよ。」

 「し、知っていたのか…全て…?」

 よもやばれているとは思って居なかったのだろう。
 驚きを含ませた声を出し、今度はその憎しみの篭った視線を近右衛門へと向ける。

 無論近右衛門とて百戦錬磨の大魔法使いだ、この程度の視線など痛くも痒くも怖くも無い。
 それどころか寧ろ余裕綽々だ――眼光は鋭いままだが。

 「君等が稼津斗君を如何思って居るかなど、普段の態度を見れば態々確認するまでも無いからの。
  何時かよからん事が起こるとは思っておったよ。こんな馬鹿な一手を打つとは思わなんだが。」

 近右衛門も何時までも『反稼津斗派』の連中が黙っているはずは無いと薄々思ってはいた。
 如何にかしようと思っていた矢先の、木乃香と刹那からのあの報告だ。

 その余りにも馬鹿げた所業に、実は可也怒りを覚えたのも事実。
 だからこそ、会合であの様な事を言ったのだ、勇み足を踏ませる為に。


 そして其れは面白いように上手く行った。
 勿論リインフォースと和美による戦力破壊が有った事は大きいが、結果として更なる馬鹿をやってくれた。
 この状況での言い逃れなどは不可能だ。

 「その様子だとワシの事も気に入らんようじゃの?稼津斗君を排除せんからか?」

 「当然だ!貴様は関東の長、引いてはこの国の魔法使いの頂点だろう!何故あのような異端を野放しにしておく!!」

 「決まっておるじゃろ。」

 瞳に宿る光が更に強くなり、逆に声を荒げた魔法教師の方が威圧されてしまう。

 「彼が『真』に素晴らしい人間だからじゃよ。他人に嫉妬し、その排斥ばかりを考えていた御主等と違っての。」

 強烈な一言だ。
 同時に此れは、近右衛門が既に『大衆が掲げるお題目的な正義』と決別した事を物語っていた。

 「ろ、老害が!貴様がそんな事だからあのような異端がのさばるのだ!
  もう良い!持てる力の全てを使い貴様を葬る!そうすれば本国から代わりの『正義の魔法使い』が学園長に赴任する筈だ!」

 限界の身体を怒りに任せて無理に動かし、更に又しても秘薬を呷る。
 その光景に、最早近右衛門も呆れ果てるしかなかった。

 同時に過去の自分の目が如何に曇っていたかを思い知らされた。

 だからこそ、最後の始末は自分で付ける。
 その為に此処に来たのだ。

 「死ね老いぼれが!お前の可愛い孫娘は私が有効利用してやろう!」

 神経が千切れる不快な音を撒き散らしながら強襲。
 本来ならば意識が吹っ飛ぶほどの激痛が走っている筈だ。

 だが、秘薬の過剰服用で脳神経がイカレ、痛覚が壊れた状態ではそうはならない。
 その姿は既に人とは思えなかった。


 「無様じゃの…せめて楽に逝かせてやるわい!ムラクモ・ルラクモ・ヤクモタツ!」

 指導キーを詠唱し、魔力が満ちる。
 その魔力はとても老いた人間が宿し、発動させたものとは思えないほどに強い。

 「散れい!世界終焉の日(ハルマゲドン)!」

 略無詠唱に近い超威力の魔法。
 吹き荒れる暴風が男の自由を奪い、次いで雷が打ち据え、最後に灼熱の炎が焼き尽くす。


 魔法が終わった時、其処には何一つ残っていなかった。

 「舐めるでないわ小童が。老いたとは言え、御主の様な三流以下の戯けに遅れを取るほど耄碌しておらんわ。」

 正に一撃必殺。
 己の正義を取り戻した近右衛門は、確かに最強レベルの魔法使いであった。








 ――――――








 場所は移って、此方は裕奈&リインフォースが戦っていた林……だった場所。


 此処には近右衛門の命を受けて、千草と刀子が『後始末』に訪れていた。
 訪れていたのだが…

 「なぁ刀子はん…」

 「みなまで言わないで下さい千草さん。私だって正直如何したモノかと思ってるんです。」

 2人の目の前にはリインフォースが発動した『鋼の軛』が。
 その中には、暗殺メンバーの残り2人が居る筈なのだが…

 「此れはホンマに人間だったんでっしゃろうか?」

 千草が言うように、其処に有ったのは既に人ではなかった。


 其れは醜悪な肉隗。
 細胞の分裂限界を使い切った肉体は、滅ぶ以外に道は無かったのだろう。
 しかしながら、その身に宿った執念が、無理やりに肉体を生かそうとし人有らざる物へと変異していた。

 理性はもう無いだろう。
 有るのは執念と殺意と憎悪のみ。

 2人の人間は今や1つの肉隗と成り果てていた。


 「仕方ありまへんな。ウチの式神使こうて消し去りましょ。其れが一番手間ありまへん。」

 「そうですね…お任せします。」

 2人にとってこの程度は相手では無いとは言っても、時間を掛けて相手にはしたくない。
 と言うよりも、一刻でも早く目の前から消し去りたいのが本音だ。

 「ほな、頼みますえ!式神符五拾六式、陰陽之弐『式神・百合(びゃくごう)』!」

 だから千草は自身が使える最大の式神を呼び出した。

 其れは龍とも百足ともつかない巨大な体躯の生き物。
 全長数十mは有ろうかと言うそれは、いとも簡単に肉隗を飲み込みその場から消し去る。

 あっという間にその場からは何もなくなってしまった。


 「凄い式ですね。」

 「使えるようになるんに偉い苦労しましたがな。苦労した分、力はお墨付きですえ?」

 「その様ですね。お見事です。」

 後に残るは静寂のみ。
 未だ不浄は消え去らないが、此れくらいは放っておいても自然消滅するレベルだ。
 場合によってはシャークティの『聖なる力』で浄化は可能だろう。


 此方でも後始末は滞りなく終わったようだった。








 ――――――








 「よっと…うん、此れでもう大丈夫や。どないやネギ君?」

 「は、はい大丈夫です!凄いですね亜子さん…精霊と融合するなんて…!」

 地上に降りた稼津斗達は、後夜祭で盛り上がっている場所から少し離れた場所に居た。
 未だやる事はある為人目の多い場所を避けて着陸したのだ。

 「超りん、此れで動くか〜?痛いとこ無い〜?」

 「うむ、大丈夫だよ木乃香さん。この治癒技術は実に見事と言う他は無いネ。」

 ネギも超も、地上で待機していた救護組の治療ですっかり回復。
 加えてのどかが広範囲に『無限の慈愛』を展開して全員の体力を回復していた。

 「さてと…超、お前は此れから如何するんだ?」

 治療を終えた超に、稼津斗は問う。
 既に計画が潰えたのは明白。
 それだけならば、超は『未来に帰る』と言う選択肢も有っただろう。

 だが、超はさっき確かに『希望を見つけた』と言っていた。
 だからこそ、如何するのかが気になったのだ。

 「如何するかナ?未来に帰るためのカシオペアもネギ坊主の最後の一撃でガラクタに成り果てタ。
  カシオペア自体は作ることは出来るが、100年後までの時間跳躍は出来そうに無いヨ。」

 諦めたように言う。
 元の時代に戻る為のカシオペアは、先程のネギとの戦闘で完全に壊れてしまっていた。

 再度作ったとしても、今度は時間跳躍を行う為の魔力が足りない。
 ある意味八方塞だった。


 「なら答えは簡単だ。この時代で生きろ超、お前が見つけたと言う希望の種の行く末を可能な限り見届けろ。
  其れが、時間遡行等と言う、一種の禁忌を犯したお前が負うべき責務だ。」

 静かに稼津斗は、そう告げる。
 口調は穏やかだが、その中には確かに『厳しさ』が含まれていた。


 『己の責務から逃げる事無く、その責を全うしろ』と言う厳しさが。


 更にネギも続く。

 「この時代の人間として生きて未来変えていくなら誰も文句は言いません…文句は言わせません。
  だから超さん、僕達と共に今を生きましょう。3−Aの皆は、貴女の仲間なんです。」

 まっすぐに、一切の嘘偽りの無い一言。


 稼津斗の厳しさ、ネギの純粋さ、その2人の優しさに3−Aの暖かさ。
 それが超の心を打ち、今まで被っていた『計算高いリアリスト』の仮面を粉々に粉砕した。


 「うっ…ああぁ…老師、ネギ坊主…私は、私は…良いのか?此処に居ても良いのか?」

 「其れを決めるのは俺じゃあない。居て良いかどうかはお前が決める事だ。
  尤も、俺は居てもいいと思うが…ネギはどうだ?」

 「僕も居ても良いと思う。きっと皆そう言うと思うよ?」

 此れが止めだった。

 「本当に、本当に私は大馬鹿者だヨ……こんなにこんなに味方は居たと言うのに…!
  老師、ネギ坊主…私は此処に残るヨ。自らの責務を果たす…希望が花開くのを見届けるヨ、この命続く限り!」

 その瞳から涙を溢れさせながら、超は宣言する。
 誓いと言っても良いだろう。

 「よく言った。嘘偽りの無いお前の本心、其れが聞きたかった。
  生きろ超。使命とか、計画とかそんなものは無しにして、1人の人間『超鈴音』として。」

 「あぁ、勿論だヨ老師!皆に救ってもらった、私自身の命に誓うネ!」

 稼津斗からの最後の一言に、自らの命を賭して誓いを立て、力強く宣言する。
 これならば、もう大丈夫だろう。

 「よし。それじゃあこの件は此処までだ。行くぞ皆、後夜祭はこれからが本番だ。」

 「賛成!今年は大盛況でござった故、後夜祭も大盛り上がりにござる。」
 「3−Aも朝までノンストップで突っ走る言う取った!」

 今までの空気は一転、後夜祭に参加せんとテンションが急上昇。


 尤も、稼津斗組、ネギ組、修行組はとんでもない事態を経験したのだから後夜祭は楽しまなきゃ損だ。
 弾かれた様に全員が後夜祭会場に一直線。

 飛び出さなかったのは、稼津斗とリインフォース、そして超だけだ。

 「元気なものだな。3−Aの面子には永久機関でも内蔵されているのだろうか?」

 「其れは一切否定が出来ないヨ。」

 「本当にな。…行くか。思い切り強い酒を一気に呷りたい気分だ。」

 少しばかり遅れてこの3人も後夜祭会場へ。



 夜空に上がる花火は未だ打ち止まない。
 祭りの会場の明かりも消えなければ、祭り独特の喧騒も無くならない。



 学園祭の最後を飾るに相応しい夜は、こうして更けて行く。





 2003年度の麻帆良祭。

 この麻帆良祭は、後に『伝説の学園祭』として語り継がれる事になるのだった。














  To Be Continued… 


 

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