小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 学園祭から一夜明けた翌日。
 振り替え休日の1日目なのだが、魔法教師は『休日』とも言ってはいられない。
 色々とやる事があり、この『魔法使い日本本部』の大広間に召集されていた。


 「ですから学園長!超鈴音は厳正に処罰すべきであってですね!!」

 「なんじゃい、ちゃんと罰は与えたじゃろ、超君と葉加瀬君の2人には『反省文3000枚』と言うの?」

 「学園に無許可の巨大ロボットの稼動とセクハラ武装の罰則なら此れくらいだろ?」

 「君の意見など聞いてはいない!!」


 で、毎度お馴染みガンドルフィーニが初っ端からヒートアップし…

 「煩いガングロ。」


 ――ゴォォォォォォ!


 毎度のようにクスハ(狐ver)に燃やされていた。











 ネギま Story Of XX 46時間目
 『祭終わったその後で』










 元が黒いのに更に黒くなったガンドルフィーニは、まぁ直ぐに復活するから放置が確定。
 この光景には刀子、千草、シャークティ辺りは『またか』と言った表情。

 ガンドルフィーニ…懲りない男である。
 ある意味では凄まじい信念の持ち主とも言えなくは無いが…見習いたくは無い。


 「で、超の方は其れで良いとして――俺を殺そうとしていた連中は如何した?」

 「それは、言わぬが花じゃよ。」

 「そうかい。」

 丸焼きガングロは放って置いて、自分を殺害しようとしていた連中の事を稼津斗は聞く。
 少なくとも自分は止めは刺していないが、この場に其れらしい輩は居ないのも事実。

 流石に気に成るので聞いてみたのだが、近右衛門から返ってきた答えで全部察したようだ。
 近右衛門、或いは近右衛門直属の魔法関係者が『後始末』したのは間違い無いと思ったらしい。

 「なら、この件は以上で良いかの?」

 丁度良いとばかりに会議を終わらせようと確認を取る。
 と言うか、此れは殆ど命令だ。


 『今回の学園祭に於ける全ての事象は詮索不要』の意味を含んでいる。


 勿論、この場に居る全員が、其れを汲み取っている訳だが…

 「良くありません!!超には本国からの正式な裁きを受けさせるべきです!!」

 伸びてたガングロは、言葉尻だけ捕らえて復活し、速攻で噛み付いてきた。
 起きていた連中の殆どが呆れたのは当然だろう。

 「そうは言ってもの、超君が『世界に魔法をばらそうとした証拠』は何処にも存在せんのじゃよ。」

 「えっ?」

 が、其れは予想外の言葉で返されてしまった。
 証拠が1つも無いと言うのは如何言う事であろうか?

 「稼津斗君殺害計画の方は、確りバッチリ証拠その他が残っておったんじゃよ、大学部に。
  でものう、超君の計画とやらはまるで最初から無かったかのように綺麗サッパリ何も無しじゃ。
  証拠が無いんじゃ本国とて如何しようもできんて、捏造する訳にも行かんしのう?」

 どうもそう言う事らしい。
 実は昨日の最終日にて、裏方で電脳戦を繰り広げていた千雨が大学部のネットワークの『怪しそうなデータ』を手当たり次第にクラッキングしていたのだ。

 一応、稼津斗殺害計画と思われるデータは残しておいたのは流石だが、それ以外のデータは一切合切お陀仏。

 其れこそ田中の製造方法、巨大兵鬼の使役方、時間跳躍原理、強制認識魔法全てだ。
 此れではとても『魔法世界の法を破った』として罰する事は出来ない。

 近右衛門としては証拠が無い事に内心安堵し、無罪放免と思ったのだが、其れは超が受け入れなかった。
 故に『反省文3000枚』と言う罰が決まったのだ。

 『生徒』として罰するのならば、此れは可也重い、と言うかキツイ部類に入るだろう。(超には楽勝だろうが)


 「それとも何かね?君は証拠を捏造してでも超君を罰しろと?」

 「!…いえ、そう言う事でしたら仕方ないかと…」

 物理的な圧力を持っているのではないかと錯覚してしまうほどの近右衛門の視線に黙るしかない。
 もとより『証拠の捏造』等という、正義に反する行為は出来ないと言うのもある。


 尤も、その表情は全く納得していないが…



 「では、改めてこの件は此処までじゃ。時に稼津斗君や、ネギ君は如何したのかの?彼の性格的に参加すると思っておったんじゃが…」

 「マクダウェルの『別荘』で眠ってる。幾ら回復させたとは言え、10歳の身体には些か負担が過ぎた。
  全部終わって緊張の糸が切れたんだろう、今は休ませてやるのが良いんじゃないか?」

 「そうじゃな。ま、エヴァの別荘ならゆっくり休めるじゃろうて。」

 「結果的に一番頑張ったのはネギだからな。でだ、そのネギと相談した事なんだが…」

 「なにかの?」

 今度こそ学園祭最終日の件の話は打ち切り、稼津斗にネギの事を聞けば『お休み中』との事。
 今度は又別の話のようだ。

 「3−A全員に魔法ばらしても良いか?」

 「「「「「「は!?」」」」」」

 そして、その内容はとんでもなかった。

 全員目が点になっている。


 驚いていないのは、近右衛門の直属である刀子、しずな、千草の3名と、稼津斗の人となりを知っている高音と愛衣。
 それと、学園祭2日目に武道会場に『通行』させてもらったシャークティ。

 タカミチと瀬流彦に至っては『ヤレヤレ』と言った感じであるが、笑みも浮かべている。


 「良いよ。ワシが直々に許可しちゃう。」

 「なら、明日にでも。」

 その答えはひっじょ〜〜〜に軽い感じでなされ、稼津斗も簡単に返す。
 此処だけ聞いたらとてつもなく重要な事とは誰も思わないだろう。

 「じゃあ、俺は此れで失礼させてもらう。外せない約束があるからな。」

 「あい分った。確り昨日の埋め合わせしてくるんじゃよ?」

 「言われなくてもそうするさ。爺さんも適当に切り上げて少しは休んでくれ。」

 「そうさせてもらうわい。」

 そのまま稼津斗は退室。
 多分、もう何処かに行ってしまっているだろう。


 「学園長〜〜〜!!!一体如何言うおつもりですか!魔法をばらすなど〜〜〜!!」

 稼津斗が去った後で、一番先に再起動したのは矢張りガンドルフィーニ。
 物凄い勢いで近右衛門に迫り、その真意を問う。

 この光景だけを見ると、ヤクザ者が一介の老人を恫喝しているようにしか見えない…



 其れは兎も角として、迫られても近右衛門は涼しい顔。
 小揺るぎもしない。

 「顔が近いぞガンドルフィーニ君。」

 「そんな事は如何でも良いんです!流石に此ればかりは意見させていただきます!真意をお答えいただきたい!」

 如何にも完全に頭に血が上っている様子。
 其れでも近右衛門は矢張り動じないが。

 「真意も何も、言った通りじゃよ?3−Aに魔法をばらすだけじゃ。
  大体にして、既にクラスの半分以上が魔法関係者じゃからの、今更全員にばらしたとこで如何って事ないじゃろ。」

 「そうではなくてですね!」

 飄々と応える近右衛門に苛立ちが募り、如何にも声が荒くなるが…

 「いい加減にせんかガンドルフィーニ。」

 突然低くなった近右衛門の声に完全に勢いを殺されてしまった。

 「ワシは3−A副担任の稼津斗君から申請を受けて、其れを許可したんじゃよ。
  3−Aは元々、特異な生徒達を意図的に集めたクラス、何れは魔法の存在を知る事に成るわい。
  違いは遅いか早いか、平穏の中で知ったか危険の中で知ったかの違いだけじゃ。
  更に言うなら、3−Aへの魔法公開は『魔法関係者だけのクラス』のテストケースも兼ねておる。
  稼津斗君と、此処には居らんがネギ君で熟考したすえの答えじゃ…何か問題が有るかの?」

 発せられる魔力と相俟って、その姿は歴戦の強者の其れだ。
 幾ら場数を踏んでると言っても『本当の意味』で手を汚したことの無い者では太刀打ちできない。

 「少し黙って見て居れ。己の目の曇りをぬぐって稼津斗君やエヴァを見てみるが良い。
  何故彼等の周りに人が集まるのか理解できるはずじゃて。」

 そう言い、窓の外を見やる。
 その目には『期待』と『信頼』が浮かんでいた。




 「爺ちゃん凄いね。」

 「アレが翁の本当の姿なんでっしゃろな。ホンマに歴戦の勇士どすなぁ…」

 其れをクスハと千草(他にも刀子や高音なんかが)見て、学園長の評価を自分の中で大きく上げていた。








 ――――――








 場所は変って、東京・渋谷駅のハチ公前。

 この有名な石像の前に居るのは裕奈。
 本日の『学園祭最終日埋め合わせデート』1人目。

 デートという事で可也気合の入ったファッションだが、


 「ねぇねぇ、君可愛いね〜。俺達と遊ばない?」
 「面白いとこ知ってるんだ〜。飽きさせないよ〜?」


 待ち合わせ中にナンパされていた。
 しかも軽薄極まりない『チャラ男』のグループに。

 「悪いけど、人を待ってんの。他当たって。」

 「あ、デート?彼氏待ち?スッポカじゃね〜の?君随分待ってるじゃん?」

 「私が早く来過ぎただけです。迷惑だからどっか行って。」

 心底鬱陶しいと言わんばかりだが、チャラ男共には効果皆無。
 それどころか更に調子に乗ってくる。

 「健気だね〜。もう良いじゃん、俺達と遊ぼうよっ!」

 力ずくとばかりに、1人が腕を伸ばして裕奈を掴もうと、



 ――ガシッ



 したところを誰かに止められた。

 「人の彼女に手を出さないで貰おうか?」

 稼津斗だ。
 麻帆良から超特急で此処まで飛んできたらしい。

 「まだ時間前だが、結構待たせたみたいだな?」

 「私が早く来ただけだから気にしないでよ。」

 麻帆良で待ち合わせをして、其処から出掛けても同じと思うが如何やらそうでもないらしい。
 渋谷での待ち合わせを提案したのは裕奈だが、乙女の心と言うのは単純ではないようだ。


 「取り合えずさ、そいつ放したら?」

 「ん?あぁ…」

 チャラ男解放。
 稼津斗としては軽く掴んだつもりだったが、掴まれた方からするとそうでもなかったらしい。

 「イッテェ…どんな馬鹿力よ!?」

 相当痛かったのか涙目。
 掴まれた所には確りバッチリ手の形に痣が出来ている。

 「うげ、痣になってんぜ…」

 「な、ナニモンだよコイツ…!」

 此れだけでチャラ男共は完全にビビッて居た。
 女の子を強引に連れ回すような事はできても、野郎と喧嘩する度胸も力も無い連中だ。

 加えて稼津斗の顔の傷が完全に戦意を消失させていた。
 矢張り『その筋の人』に見えるのだろう。


 完全に勘違いなのだが、その勘違いゆえ自分達はとんでもない女の子に声を掛けていたと思ったようだ。

 「「「し、失礼しました〜〜〜!!!」」」

 蜘蛛の子散らすように逃走。
 あっという間に見えなくなってしまった。


 「…結局なんだったんだアレは?」

 「只のチャラ男。さ、行こう?」

 もう、去った馬鹿共は如何でも良い。
 デートの方が最優先。

 腕に抱きつき準備は完了だ。


 「何処に行く?とは言っても特に決めてないんだろ?俺も決めてないが。」

 「ま、適当にぶらつこっか?其れもまたデートの楽しみだし。」

 魔帆良も学園都市は賑やかだが、其れがあるのは埼玉県、東京の都心には流石に及ばない部分がある。

 逆に都心部の渋谷は、平日であっても人が一杯で色んな店がある。
 中には露店のようなものもあり、確かに適当にぶらつくだけでも楽しめそうだ。






 「さぁさぁ、お次の挑戦者は何方かな?この腕相撲世界チャンピオンに勝てたら賞金100万円だよ〜!」

 暫く適当に歩くと、如何にも怪しげな露店に人だかりが出来ていた。
 アームレスリング用の机に簡単な看板があるだけで、後は燕尾服の男が1人と、屈強なマッチョが1匹だ。

 「腕相撲の世界チャンピオンだって。」

 「まぁ、勝手な肩書きだろうな。見た目も、確かに凄い筋肉だが、アレはボディービルとステロイドで作った身体だしな。
  一般人を簡単にひねるくらいは楽に出来るだけのクソ力だけは有るだろうが…」

 普通なら喧騒に消されてしまうような会話だが、この露店の司会はとんでもない地獄耳だったらしい。

 「は〜い、其処の黒服のお兄さん!チャンプに難癖をつけるならお強いのでしょう?是非挑戦を!」

 勝手に稼津斗を指差し、挑戦を強要してきた。
 きっと盛り上がればいいのだろう。

 「聞こえてたのか?」

 「スッゲェ地獄耳。アスナ並みじゃん…」

 恐るべき地獄耳に驚くも、だからと言って断る理由も無い。
 裕奈を見れば『やっちゃえ』と言わんばかりの顔だ。

 「じゃあ、遠慮無く挑戦させてもらおうか。」

 上着を裕奈に預け、机に肘を下ろす。
 チャンピオン(自称)も同じようにし、互いにガッチリと手を組む。

 「その腕へし折ってやるぜ。」

 「やってみろ。お前なら出来るかもしれないぞ?」

 ギャラリーの緊張が高まり…

 「それではReady……Go!!」


 「ふん!」
 「ふっ!」

 互いに力が入る。
 が…

 「むぬぅぅぅぅぅ…!」

 全く微動だにしない。
 それだけならば、力が拮抗しているとも思うが稼津斗はまるで涼しい顔。
 殆ど力が入ってないのは明らかだ。

 「ば、馬鹿な!俺が押し切れないだと!?」

 「如何した、本気でやって良いんだぜ?それとも本気を出してこの程度なのか?」

 「ぐぬぅぅぅう!!!」

 挑発され、更に力を込めるが全く動かない。
 自称チャンプの頭には血管が浮かび上がっているにも拘らずだ。



 「す、凄いね君の彼氏…」

 「まぁ、稼津君は世界最強ですから…」

 ギャラリーの1人が驚いて裕奈に話しかけるのも当然と言えば当然だろう。


 「覚えておけ、見せ掛けの筋肉など何の役にも立たないと…な!」


 ――バガン!


 一気に押し切り、稼津斗の勝利。
 勢い付きすぎて机を壊してしまったのはご愛嬌。


 「「「「「スゲェェェェエェェ!!!」」」」」

 「流石は稼津君!」

 裕奈を除いたギャラリーもびっくり仰天!
 だ〜れも倒せなかった筋肉達磨がいとも簡単に倒されたら其れは驚くだろう。

 「ほ、本日の営業は此処まで!さようなら〜〜〜!!!!」

 で、司会の男はさっさと看板畳んで逃走!
 賞金を払う気は最初から無かったようだ。


 「まぁ、期待はしていなかったがな。」

 「良いの?」

 「大会の賞金と給料で金に困ってる訳じゃない。」

 周囲のギャラリーは『ずるいぞ!』『捕まえろ〜!』『賞金出せ〜〜!』と騒いでいるが、当事者の稼津斗は別に如何でも良いらしい。
 稼津斗が良いなら、裕奈も何も言わない。

 寧ろ、稼津斗の最強っぷりが見れて満足と言った様子だ。

 「さて、他行くか?」

 「うん!」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 「ご馳走様でした。」

 「はい、おそまつさま♪」

 場所は変って、繁華街から少し外れた公園の一画。
 昼食は此処で取ったらしい。

 因みに昼食は裕奈のお手製の弁当。
 稼津斗の普段の食べっぷりから『重箱』で作ってきたのだが見事に完食してくれた。

 「本当に料理が上手いな裕奈は。」

 「日常的にやってるからね〜。」

 食後のレモンティーを飲んで一服。
 会話もほのぼのだ。

 「稼津君…」

 「ん?」

 「ありがとね。」

 「…どうしたんだ、突然?」

 そんな会話の中で、裕奈が行き成りお礼を言ってきた。
 何に対しての礼なのか稼津斗にも、ちょっと分らない。

 「京都の時。稼津君が仮契約してくれなかったら、あそこで死んでたもん。」

 其れは修学旅行のときの事に関してだった。
 確かにあの時、稼津斗が仮契約を行わなければ裕奈は確実に死んでいただろう。

 「あぁ…なんと言うか、其れに関しては俺も『ありがとう』だな。お前から『人である事』を奪ったのに、受け入れてくれたからな。」

 それに対し、逆に稼津斗からも礼を言う。
 『人で無い自分』を受け入れてくれたのは矢張り嬉しかった。

 「比喩じゃなくて、ずっと一緒に居るよ。『不束者ですが宜しくお願いします』ってね♪」

 「『此方こそどうぞ宜しく』か?」

 穏やかな空気の中笑いあう。
 だが、其処は裕奈、ただそれだけでは終わらない。


 「隙あり!!」

 「んお!?」


 ――ちゅ♪


 笑っている隙を突いて抱きつき、そのままKiss。
 凄まじいまでの早業だ。

 「へへ〜…取ったど〜〜///!!」

 「其れは違うと思うぞ…」

 唇を離し一声。
 何時もの元気さだが、顔が紅いのは見間違いではないだろう。

 「昔、お父さんにしたのはノーカンだから、私のファーストだにゃ。ふふ、レモン味だった。」

 「正確に言うなら『レモンティー味』じゃないのか?」

 「まぁね♪」

 とても『良い雰囲気』であった。








 ――――――








 場所は再び麻帆良。
 午後は『学祭埋め合わせデート』2人目、リインフォースだ。


 既に2人は合流したのだが…

 「…本当に良いのか此れで?」

 「構わない。と言うか、デート等したことが無いから如何したものか分らないんだ。服は何とか自分で選んだんだが…どうだ?」

 「良く似合ってると思う。」

 特に何するわけでもなく、学園都市全体が見渡せる高台のベンチでのんびりと言ったところ。

 まぁ、お互いに『一緒に居るだけ』でも割と満たされるので問題は無い。


 稼津斗組に於いても、この2人ほど関係が特殊なモノも無い。
 リインフォース・イクサの存在は、完全に偶然の産物と言って良い者なのだ。

 だからと言って如何と言う事は無いのだが。


 「綺麗な場所だな此処は。海鳴とは、又違った良さがある。この都市の規模には驚きだが。」

 「まぁ、世界的に見ても此れほど大きな『学園都市』は存在していないだろうからな。」

 静かで穏やかな時が流れる。
 それだけで充分な幸せを感じる事ができる。


 「お前は…稼津斗は…何故、今こうして笑う事が出来るんだ?」

 「リインフォース?」

 唐突に、しかし真剣な顔でリインフォースは稼津斗に問う。

 「私が生まれる切欠になったあの事件で、私の大本であるアインスがお前と融合――いや、シンクロか。
  シンクロした時、アインスはお前の記憶に触れ、その過去を見た、見てしまった。当然その記憶は私にもある。」

 「俺の過去…」

 「家族を失い、友を失い、人である事を奪われ、望まぬ力を与えられ、荒廃した世界で戦いの日々。
  挙句には自分が生きる世界から放り出され…此れだけの辛い思いをして、何故お前は笑う事が出来るんだ?」

 稼津斗の過去を垣間見たからこその疑問。
 ずっと聞きたかった事だが、その機会は今まで無かったので今なのだろう。

 「俺の過去は…まぁ、確かに過酷と言えるだろうな。覚醒してからの300年は確かに長い年月だった。
  だが、過去は過去だ――二度と取り戻す事はできないんだ、基本的にはな。」

 其れに対し、稼津斗も真剣な表情で、だが穏やかに言う。

 「あの世界に未練は無い。俺はこの世界で生きることを決めたんだ。」

 「稼津斗…」

 「其れに、俺は1人じゃない。永劫の時を共に歩んでくれるお前達が居る。
  裕奈が、和美が、亜子が、真名が、楓が、のどかが、クスハが――そしてリインフォース、お前達が居てくれる。
  それだけで充分だ。アレだけのことを経験しているからこそ、この幸せの中で笑う事が出来る。」


 あの経験が有ったからこそ、今を笑って生きることが出来る。
 そう言った、言い切った稼津斗に、リインフォースは驚き、同時に嬉しくも有った。

 自身の大元たるアインスと同様、己もまた最高の主を見つけることが出来たと思ったから。


 「そう、か。ならば私も改めて誓おう、祝福の銀風『リインフォース・イクサ』、この身は永劫お前と共に有ると。
  この世の全てが敵になろうと、私は――私達だけは必ずお前のそばに居よう。」

 力強く宣言し、稼津斗の前に立つ。

 「ずっと一緒だ…」

 そう言うと、静かに唇を重ねた。



 稼津斗も其れを受け入れ、リインフォースを抱き寄せる。

 時間にしたら10秒にも満たないが、其れでも気持ちは重なった。


 「改めて、契約の証だ。稼津斗、我が主よ…」

 「契約の関係は兎も角、主従じゃない――仲間であり、パートナーだろ?」

 「ふふ、そうだな。」


 『絆』はとても強く繋がっているようだった。








 ――――――








 少し場所を移して、エヴァンジェリン邸……のダイオラマ球内部。


 その中の城内部の一室で…


 「よく眠っている……流石に疲れたか、当然だが。頑張ったな、ネギ。今は休め――ゆっくりとな。」

 ネギが眠っているベッドの端に腰掛、エヴァがネギの髪を撫でていた。
 起こさないように優しく、慈しむ様に。

 この、不思議な関係の2人も中々良い感じになっているようだ。








 因みに…


 「あぁ、後生です!放して下さい千雨さん!あんなに幸せそうで可愛いマスターは是非とも記録しておかねばなりません!」

 「るせぇボケロボ!人の至福の時間邪魔しようとしてんじゃねぇ!!」

 回路とAIがぶっ飛んだガイノイドと、天才的コスプレハッカーによる戦いが部屋の外で行われていたとか…














  To Be Continued… 


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