小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――学園祭振り替え休日2日目・図書館島深部


 この日、ネギはアルビレオから招待を受けた茶会に出席すべく此処に来ていた。
 ただ、1人ではなく3−A全員を引き連れてだ。

 稼津斗から『3−Aに魔法をばらす』と聞いた時、実はそれほど驚きはしなかった。
 寧ろ驚くどころか『遂に来た』と思ったくらいだ。

 なので、その舞台をと考えた時にアルの茶会を使う事を思いついた。
 此処ならば色々説明するのに、実物があるので色々楽な上、外と隔絶されているので不用意に無関係者に聞かれてしまうことも無いのだ。


 「こんなとこが有ったなんてさんぽ部の僕達でも知らなかった。」
 「凄いですね〜…」
 「てゆーか、此処って本当に学園の地下?」
 「あらあら、ホホホ…」


 皆口々の感想だ。
 稼津斗組とアキラは先に行っているらしい。(千雨と夕映は仮契約した都合でネギ組に。ついでにハルナも)

 「あはは、まぁこんな場所もあるんですよ。それに此れからもっと凄い事を知ることになるんですから。」

 笑顔ながらも、ハッキリとした意志を湛えた顔で言う。
 そんな一行の前に…


 ――バサァ…


 ドラゴンが舞い降りてきた。











 ネギま Story Of XX 47時間目
 『魔法学級3−A爆誕』










 目の前の門を守るように現れた巨大なドラゴン。
 恐らくは、この入り口を守る守護獣の役割を任されているのだろう。

 ネギやアスナなんかにとっては驚くものでもないが、初見の3−Aのメンバーは流石にこれには驚く。
 まぁ、驚く辺り少しは常識が残っては居るんだろう。

 「「「「「「「「「「ドラゴン!!?」」」」」」」」」」

 そんな3−Aを尻目に、ネギはスーツのポケットから何かを取り出しドラゴンに提示する。
 其れはアルからの招待状で、中にはたった1つ『ネギ』とだけ記されている。

 大雑把にも程が有る代物だが、効果はあったらしい。

 「グルゥ……(どんぞ)」

 其れを見たドラゴンは道を開けるとそのまま飛び去っていた。
 『招待状』を持った客は襲わないように言われているのだろう。

 「ふぅ…戦わずに済んで良かったですわ…」

 「アレを相手にしたら私と刹那でも簡単には行かないからね。」

 「せっちゃんとアスナのコンビでも楽やないんだ…」

 「まぁ、相手は龍種ですから流石に簡単には…」

 ネギ組の面々は戦わずに済んだ事を喜んで居たが、そうでない3−Aの面々は…

 「「「「「「「「「「苦戦しても勝てるのか!」」」」」」」」」」

 一様に突っ込んでいた。

 「でも、凄いね此処。魔法使いでも出てきそう〜♪」

 だが、其処は3−A。
 すぐさま門の先に現れた『絶景』に目を奪われる。
 で、桜子の言った事は非常に的を居ていた。


 ――ようこそネギ君と3−Aの皆さん。そのまま道なりに奥までどうぞ。


 突然の声の正体はアルだ。
 一応、茶会会場までの案内はするらしい。

 館内放送的では有るが、この広い場所ではありがたいだろう。
 その案内に従がって一番奥に。


 「此処か?」

 扉を開けると、

 「ようこそ私のお茶会に。お待ちしていましたよ皆さん。」

 「ふむ、思ったよりも遅かったな?」

 「悪いが先に頂いてるぞ?」

 アルビレオとエヴァ、稼津斗。
 そして稼津斗組とアキラの姿があった。
 先行組は適当に始めていたようだ。


 「本日はお招きいただきまして、おおきに〜〜〜。」

 一同を代表する形で木乃香が礼を言い、ネギも其れに倣う様におじぎ。
 3−Aの面々も其れに続く。


 が、

 「ん?ん〜〜〜〜〜?あ〜〜〜!リインに大会でボロ負けした人!」

 美砂がアルの正体に気づき大声。
 大会当日、忍び込んで見ていた他の連中も気付いたようだ。

 「いやはや、まさか地面に縫い付けられてしまうとは思いませんでしたので。
  まぁ、どうぞ。適当に掛けてください、これほど大勢は初めてなので楽しみなのですよ。」

 其れに苦笑いを浮かべつつ、席へ付くように促す。
 大勢での茶会は、真に楽しみなのだろう。

 大小様々なテーブルには、良い香りのするお茶と色んな菓子。
 可也本格的な茶会のようだ








 ――――――








 「おいしい!これが龍井紅…九曲紅梅ですか。
  ホントに梅の香りような甘くて爽やかな、う〜〜ん…素晴らしいです!」

 「他にも色々有りますよ。後で葉をお分けしましょう。」

 茶に煩い英国人らしく、本日のお茶を評価するはネギ。
 どうやら相当にレベルの高い、良質の茶であったらしい。


 3−Aの面々も茶会を楽しんでいるようだ。


 だが、まったりゆったりと茶会と言う訳にも行かない。
 本来の目的は、又別に有るのだから。

 「ネギ、そろそろ…」

 「カヅト…うん。…あの、皆さんちょっと良いですか?」

 ネギの一言に全員がそちらを向く。
 『何?』って感じの顔の生徒もいるが、ネギの声の調子から『大事な事』と察したのか一様に静かになる。

 「今日此処に皆さんを集めたのは、ただお茶会を開く為じゃありません。皆さんに話す事があったからです。」

 「「「「「「話す事?」」」」」」

 「はい。……僕が――僕達が使う『魔法』の事です。」

 「「「「「「魔法!?」」」」」」

 あまりにも突拍子も無い一発に流石の3−Aも驚いたようだ。
 大概の非常識は平然と受け入れるこの面子も、ハッキリと『魔法』と言われると戸惑うようだ。

 「いや、ちょっと待ってよネギ君。行き成り魔法って…え?如何言う事?」

 其れを示すように、円が言うも口で説明するのは早々簡単でもない。
 だから、

 「実際見てもらった方が早かろう。リク・ラク ラ・ラック ライラック(中略)『闇の吹雪』!」

 「って!何故こっちに撃つ!くっ…絶て『パンツァーシルト』!」
 「せめて『今からやる』位を念話ででも伝えてください〜〜!」


 ――ドガァァァァン!!


 「「「「「「「「「「えぇぇえぇぇ〜〜〜!!?」」」」」」」」」」

 エヴァの行き成りの上級魔法がリインフォースとのどか目掛けて炸裂し、爆発粉塵!
 当然3−Aの非魔法関係者はびっくり驚きだ。

 「さ、流石に少し焦った…」
 「し、心臓に悪いです…」


 「「「「嘘ぉぉぉ!?」」」」
 「「「無傷!?」」」
 「「「つーか普通に生きてる!?」」」

 で、粉塵の中から無傷で現れた2人に更に吃驚。


 「ふむ、即座に魔法障壁と、防御結界の展開とは流石と言うべきか?
  理解したか?今私が見せたのが『攻撃魔法』で、リインフォースと宮崎のどかが見せたのが『防御魔法』だ。」

 極めて大雑把かつ危険で攻撃的な説明の仕方だが、効果はあった。
 少なくとも『人知を超えた力』の存在は認識させられただろう。

 「ん?あれ、じゃあ格闘大会で使ってたのも魔法?」

 そうなると当然起こる疑問。
 『そう言うもの』が存在しているのならば、大会での『アレ』は決して演出などではない事になる。

 「大抵は魔法だヨ。但し稼津斗老師や古菲、かえでさんが使っていたのは『気』と言う別のものだけどネ。」

 それは大会を主催した超が補足説明。
 『世界に魔法をばらそうとした』者からすれば、今のこの状況はなんとも微妙な感じ。
 だが、其れでも『身近から少しずつ』と言うのは、言われてみれば確かに混乱無く伝えるには適しているだろう。

 故に超も説明側に回っているのだ。

 「「「「「「おぉ〜〜〜〜!!!!」」」」」」
 「「「「すげー…!!!」」」」

 普通ならマダマダ疑問は出る事だろう。
 だが、其処は『天下無敵の非常識学級』3−A。

 常識なんてものは銀河系の彼方、宇宙の果てのブラックホールの先にまで蹴っ飛ばしてる連中には目の前で起きた出来事+説明で充分だった。


 「こ、こいつ等は如何してこんなにも柔軟、つーか簡単に受け入れられんだよこの非常識さをよぉ!!」

 「いやはや、其れは言うだけ無駄でござろう千雨殿。拙者等含め、3−Aは異常の集まりにござる。」

 「その異常の一端になっちまった自分に微妙に自己嫌悪だぜ…。」

 矢張り千雨は苦労人である。頑張れ。


 兎に角、『魔法』その他の事柄を認識させれば取り敢えず『魔法ばらし』の目的は達成。
 尤も、更に重要なのは此処からだが。

 「あ〜…まぁ、落ち着け。興奮するのは分るが、まだ話は終わっていない。」

 騒ぐ面々を一言で静める稼津斗。
 この辺は貫禄のなせる業だろう。

 「魔法や気の存在は理解したな?なら、今度はその危険性についても知る必要がある。」

 「危険性?」
 「危ないの?」

 矢張り今一つ『危険性』の認識は薄い様子。
 これを説明するのはネギだ。

 「さっきのエヴァンジェリンさんの一撃を思い出してください。
  リインフォースさんとのどかさんは、実に見事に攻撃を防ぎましたが……もし防御魔法が間に合わなかったらどうなっていたでしょうか?」

 「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」

 言われて思い出して絶句。
 さっきの攻防、一歩間違えば大怪我だった事に気がついたのだ。

 「魔法ってさ、決してファンタジーな世界のものじゃないんだよ。使いようによっては人を殺せる武器になる。
  実際に私も其れで死に掛けた事があっからね。」

 「え!?」
 「ゆーなが!?」

 更に裕奈の追撃の一言。
 よもやクラスメートが死に掛けた事があるとは…

 「一体何時!?」

 「修学旅行2日目。そん時は私も魔法関係者じゃなかったんだけど、風呂上りに涼んでたら攫われてね〜。
  詳しくは割愛すっけどさ、そん時に魔法で胸貫かれてるんだよ私。」

 「マジで…?」

 「マジで。幸い心臓外れてたから即死じゃなかったけど――もう死ぬんだと本気で思った。
  結果的には稼津君のおかげで一命取り留めて、今じゃこんなに元気です!」

 もう言葉も出ない。
 修学旅行の裏でそんな事があったとは夢にも思わなかっただろう。

 「ゆーながそんな目に遭ってたなんて…えっと、その瀕死状態を稼津斗先生に魔法で?」

 「違う。俺は簡単な初歩魔法しか使えない。瀕死レベルの重傷を治すような治癒魔法は使えないんだ。」

 「じゃあどうやって?」

 裕奈が言った事から、てっきり稼津斗が治癒魔法を使ったのかと思えば、返ってきたのは否定の一言。
 ならばどうやっては当然の疑問だろう。

 「これも後で説明するが、俺が使える簡単な魔法の中に『契約魔法』と言うのがある。
  其れを使って裕奈と仮契約し、俺の従者――パートナーにする事で瀕死状態から回復させた。」

 嘘は言っていない。
 だが、これでは納得もしないだろう。

 次なる疑問『如何して仮契約で助かったのか』が来るのは確実なのだから。

 「えっと、その契約魔法でどうして…?」

 予想通りに来た。
 だが慌てない。

 初めから全部話す気ではいたのだから。

 「…俺と仮契約をした者は例外無く『不死』となる。其れを利用して裕奈を死の概念から切り離した。」

 「「「「「え…?」」」」」

 「俺は…人じゃない。オリハルコンと言う物質で出来た心臓を持つ不死身の改造人間なんだ。」

 「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 もう何度目かの驚きか分らない。
 魔法に気、そして今度は不死身の改造人間と来たら、まぁ驚くだろう。


 「そして、俺と契約すると契約者は心臓がオリハルコンに変わり、俺同様の不死となり人ではなくなる。
  裕奈の他に亜子、和美、のどか、楓、真名、リインフォースが俺と契約した状態だ。」

 「更に言うと、私も不死の存在だ。稼津斗と違い、私は吸血鬼の『真祖』だがな。」

 さらにエヴァも自身の正体を激白。
 一切合切隠しは無しと言う事なのだろう。

 だが、流石に一同『ポカーン』としている。
 自分のクラスの副担が不死身の改造人間、クラスメイト7人とペット扱いの狐も不死、挙句に吸血鬼まで。
 其処までクラスが『人外魔境』とは…


 「「「「「「すげぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」」

 …思っても、矢張り驚くだけでは終わらない。


 「不死身!?マジで!?スゲェ!」
 「あ、修学旅行前に亜子ちゃん達が急成長したのってその影響!?」
 「そういやエバちゃんも急におっきくなったよね!?」
 「アスナが性格変わって頭良くなったのも其れか!?」


 速攻で大騒ぎ。
 …普通じゃないクラスは苦労もあるが、この手のことに関しては恐ろしく楽なのかもしれない。

 「クラスメイトに言うのも何やけど、やっぱ凄いわ皆…何でこんなにあっさり受け入れんねん…」
 「私等が稼津兄受け入れたようなモンでしょ?」
 「まぁ、今更何が出ようと驚きはしないんじゃないか?既にクラスメイトに幽霊が居る訳だしね。」
 「だね〜。」

 稼津斗組の面々も又、この反応は当然と言った感じ。
 ネギ組も又然りだ。

 で、そうなると当然、来るのは魔法関係組に来る質問の『大嵐』『サイクロン』『ハリケーン』!


 「契約ってどうやるの!?」
 「ネギ君にも契約者が!?」
 「気と魔法ってどう違うんですか!?」
 「あの、私とちづ姉は何か怖い目にあった気がするんですが…」
 「大会での技みして〜〜〜♪」

 超・殺到!!

 「…少し落ち着け。1つずつ答えてやるから。」
















 ――回答中














 「…分ったか?」

 「「「「「「「「「「バッチリです!」」」」」」」」」」

 殺到する質問の気象3連コンボを関係者全員で対処し、随所で危険性も説明。
 むやみに人前で魔法関係の事を話さないように注意も忘れない。
 更に、稼津斗とリインフォースの『特異性』、ネギとエヴァの過去、アスナと超の正体も確りと説明。
 ついでにこの前の学園祭の裏側で何があったのかまでだ。

 ある意味凄まじい時間だった。

 「兎に角、これで皆さんは『魔法認知者』と言う事に成りました。
  こちら側に関わるかどうかは各々の判断に任せますが、『魔法は遊びでは無い』と言う事だけは決して忘れないで下さい。」

 盛り上がっていた一行も、ネギの一言に全員神妙な顔になって黙り、頷く。

 裕奈が魔法関係で死に掛けた事、稼津斗とエヴァとネギの過去、学園祭の裏側で起きた事。
 それらが『魔法関係の危険性』を的確に伝えていたようだ。

 「本格的に関わりたい時は俺かネギに言え。仮契約したいのならばそれも良いだろう。
  ただし、その場合は確りと覚悟を持ち決めて来い。こちら側は決して生易しい世界ではないからな。」

 更なる稼津斗の一言にも無言で頷く。


 非常識かつぶっ飛んだ3−Aの面々だが、仲間意識は他のどのクラスよりも強いのも事実。
 そのクラスが半分は魔法に関わっていた。

 今日魔法を知った面子もその重要さは理解しただろう。

 故に軽はずみな行動は、逆に無い筈だ。



 大事な仲間が決めた覚悟と想いは生半可ではない事を知ったのだから。



 「それじゃあ、この話は此処までだ。茶会を楽しむ事にしようじゃないか。」


 其れを見て『ここまで』を告げると、再度皆盛り上がる。
 騒ぐ理由は何でも良い。


 「よっしゃ〜〜!それじゃあ『魔法学級3−A』誕生を祝して宴会だ〜〜!」
 「無礼講だ〜〜!大騒ぎだ〜〜!!」


 一気に茶会をぶっ飛んでの宴会に。


 「おやおや賑やかな。まぁ、嫌いではないので構いませんが…これはお茶やお菓子を追加しなくてはなりませんね。」

 アルも苦笑いしながら大騒ぎは嫌いでは無い様子。



 「最終的には結局こうなるか…ま、良いがな。」

 「此れにて一件落着にござろう?拙者達も楽しむでござるよ。」

 「そうだな。」


 3−A面々は既に大盛り上がり。

 学園祭の疲れなど何処へやらだ。




 こうして、世界で初めてとなる『魔法学級』が誕生した。
 行き先は全くの不明でどうなるかは分らない。




 ただ、一つだけ――決して悪い結果だけは生まれないだろう事だけは確かだった。




 「んじゃ、『魔法学級3−A』誕生を祝して…」

 「「「「「「「「「「「かんぱ〜〜い!!!」」」」」」」」」」」」














  To Be Continued… 


 

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