小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 場所は女子寮大浴場。
 入浴可能時間になったばかりなのか人気は無い。

 其処に入ってきたのは水泳部員『大河内アキラ』。
 美空曰く『稼津斗組に新規参入が現時点で最も高い人』(独断)。

 取り合えず入浴道具を置くと周囲に人が居ないかを確認し…


 ――ザバァ…


 浴槽へダイブ。

 安らぎの入浴タイムで――さて何が起きる?











 ネギま Story Of XX 49時間目
 『サイレント…マテや』










 アキラは女子としては割と大柄な部類に入る。(只大きいだけでなく凄まじく均整の取れた身体だが)
 普通なら風呂で泳ぐことなど出来そうに無いが、女子寮の風呂は兎に角でかい。

 深さもそこそこあるのでアキラの体格でも泳げるのだ。
 もとより水泳部のエースにとってはこのくらいのスペースがあれば泳ぐ事など造作も無いのかもしれない。

 クロール、潜水、平泳ぎ…兎に角泳ぐ。
 更に今度は背泳ぎも――実に楽しそうだ。

 が、何かに没頭していると、人は総じて周囲への注意がおろそかになる。
 アキラもまた然りで…


 ――コツン


 進行方向の先、頭に何かがぶつかり停止。

 「「?」」

 ぶつかった相手は、己の担任ネギ。(今尚女子寮のアスナの部屋で居候を続けている模様)
 如何やらアキラよりも先に入っていたらしく、エヴァから貰った指輪を眺めて『ぼ〜〜〜』っとしていたところにアキラが接触したらしい。


 さて、其のアキラだが今は背泳ぎを行っていた。
 背泳ぎとは身体の表面を上にして泳ぐ訳で、そうなるとつまり…

 「……」

 「///」

 全部バッチリ見えてしまうわけだ。

 「「!!?」」

 慌てて飛び起き、互いに不注意を相手に詫びる。
 どちらも不注意だったのだから『両成敗』だろう。

 「!!」

 が、立ち上がったら立ち上がったでまたしても確りと見えてしまうわけで、ネギの顔は真っ赤。
 対するアキラは今度は余裕だ。

 慌てるネギに苦笑いし、

 「H♪」

 軽くゲンコツ、痛くは無いだろう。

 以下に担任と言えどもネギは未だ10歳。
 アキラからすれば異性であっても弟のようなもの。
 故に羞恥心はそれ程でもない様だ。


 ――ガヤガヤ


 で、突然脱衣場の方が騒がしく…
 浴室のドアの向こうに見える大勢の人影…


 「!!!」


 3−Aご一行様登場!
 此れからが入浴時間のラッシュの様子。

 「?」


 ――コツゼン


 ふと横を見ると、今まで傍に居たネギが居ない。

 「♪!」

 如何やらこっそりと浴室から脱出しようとしたようだが、桜子に発見されてしまう。

 「!…!!…!!!、!」

 何とか言い訳を試みるも、

 「……!」

 アスナに呼び止められ、

 「…?………??」

 ちゃんと頭や身体を洗ったのか聞かれる。
 ネギは風呂に『浸かる』のは好きだが、『洗う』が好きではない。

 「(゚△゚υ)!!」

 言われて慌てるがもう遅い。

 「「「(^o^)/ ̄」」」

 何人かが手に紙切れを持ちネギを取り囲んでいる。
 其の手にある紙切れは…


 『ネギ君丸洗い券』


 「?(゜Д゜;)」

 トンでもない代物だった。

 「♪」

 で、其れをばら撒いているのは木乃香。
 おもっくそ楽しんでいる。

 ネギの抗議?黙殺である。


 あれよあれよという間にジャグジーにぶっこまれ、裕奈、まき絵、ハルナ、鳴滝姉なんかに丸洗いの刑に。

 この状況をうらやましいと思う輩も居るだろうが…トンでもない。
 其の身の自由を奪われ、頭の先から足の先までくまなく洗浄される等羞恥の極み。

 ネギの悲鳴と、少女達の楽しそうな声のギャップがある意味恐ろしい。

 水飛沫上がるジャグジーは阿鼻叫喚の地獄絵図の如し。

 のどかやアキラ、夕映なんかは冷や汗垂らして其の光景に慄いている位だ。


 で、十数分の後――


 「⊂((。。⊂))」

 艶が出るほどに磨かれたネギ少年完成。
 もしかしたら毛穴の中の汚れすら残さないほどに洗浄されているかもしれない。

 「(дι)」ツンツン

 鳴滝妹が突いてみるが…返事が無い、只の屍のようだ。死んでないが。

 「……?」

 「(ι^^)ノシ」

 何とか起き上がり、心配するアキラに『大丈夫』とばかりに手を振るが、其処で気付いた。

 「!!!」

 「?」

 指輪が無い。
 如何やら揉みくちゃにされている最中に抜けて吹っ飛び、どこかに行ってしまったらしい。

 「○(指輪)!○(指輪)!?」

 探せど探せど、何処にも無い。


 結局其の日は見つからず仕舞いだった。





 因みに、ネギが丸洗いの刑に処されていた頃、寮の管理人室では、

 「…?」

 「〜…、…〜〜?」

 「…〜〜…」(納得)

 千草に晩酌に御呼ばれしてた稼津斗が、一杯やりながら騒がしい浴室で何が起きているかを説明していた。
 なお、既に稼津斗1人で一升瓶3本平らげているのには…突っ込んではいけないのだろう。








 ――――――








 翌日――


 授業風景は何時もと変わらず。
 昨日、丸洗いにされたネギもそれ自体は引きずらずに、確りと教師業。
 稼津斗もまったく酒が残っていない様子。

 「…〜ι」

 「!!!」

 ちょっとした事から笑いが溢れ、教室が賑やかになるのは何時もの事。

 「(^‐^)=З」

 アキラもそれを見て安心したように溜息。
 変わらない風景だが、

 「…?」

 「?(゜゜;)」

 居眠りしていたエヴァが目を覚ましたからネギは驚き。
 左手を巧みに隠しながら、何とかエヴァにばれないように必死。

 「???」

 何をそんなに慌てているのか分らず、エヴァも頭上にハテナマーク全開だ。
 其れを見たアキラもまた『?』という顔をしていた。







 で、授業終了!


 「(о)/」

 「?(Ded End)!?」

 廊下でエヴァに呼び止められ、ネギ大ピンチ!

 「○(指輪)?」

 左手を指差し、『指輪は如何した?』と聞けばもう大慌て。

 「!!…〜!!?(^∀^)ノシ」

 誤魔化し、愛想笑を浮かべて退散。

 「?」

 残されたエヴァは何がなにやら分らず、

 「( ゚д゚)…」

 其の姿を茶々丸が録画し…

 「?○=(゜゜#)ゝ」スパーン!(滅)

 千雨が何処からとも無く突っ込みを入れていた。ご苦労様。








 時間は過ぎて放課後。

 授業を終えた生徒達は部活動に精を出している。
 アキラもまた、所属する水泳部で練習中(夏の時期は屋外プールでの練習らしい)

 其のプールから見える校庭をネギがふらふらと…

 「?」

 矢張り気になるようだ。


 「…=З」

 其のネギは、ふらふらと学園都市の一画まで来ると適当なところに腰掛けて溜息。
 尊敬もし、敬愛もしているエヴァから貰った指輪をなくしたのは可也堪えているようだ。


 ――ピトッ


 「!!?」

 頬に冷たい感覚で吃驚。

 「(ニッコリ)」

 犯人はアキラ。
 冷たい炭酸飲料をほっぺにくっつけたのだ。

 放っておけなかったのだろう。



 缶飲料を飲みながら2人で適当に歩く。
 其の最中、ネギは指輪をなくしたことを言い、如何したものかと…

 アキラもそれを聞き僅かに考え…

 「……N×E…○(指輪)…LOVE?」

 「!!!」ブハッ!

 エヴァの事が好きなのかと聞けば盛大に吹きだした。
 そりゃ驚くだろう。

 「///……!!」

 真っ赤になって言葉を詰まらせ、大慌て。
 結構意識しているのだろうが…

 「((((゜Д゜;))))」

 直後に今度は真っ青になって震えまくっている。
 尊敬も敬愛もし、少なからず想っても居るが『鬼師匠』のイメージは依然強いのだろう。
 なくしたとばれたら………世にも恐ろしいことになるのは間違いないだろう。


 「?」

 丁度其処に稼津斗が通りかかり、何事かを聞くと、合点し念話でパートナー達に連絡。
 手が空いている連中に指輪の探索をしてもらうのだろう。(流石に稼津斗は女子寮の浴場までは入れない、当然だが)

 「(゜‐^)」

 アキラも『任せておけ』とばかりに胸を叩き、女子寮へ。
 稼津斗は適当に何処かへ行った。








 ――――――








 女子寮大浴場で指輪を探すのはネギとアキラ、そしてどの部にも所属していないリインフォースと暇だった和美。
 全員水着着用で広い浴室を探す、探す。

 浴槽の中、植え込み、排水溝……あらゆる場所を探すも一行に出てこない。

 次第に日が暮れ、遂にネギがのぼせてダウン。
 手がかりは0だ。


 ――ガヤガヤ、ワイワイ


 で、今日も今日とて入浴ラッシュ時間。
 大勢が浴室内部に。


 こうなっては探索は不可能。
 最後の手段として、指輪を見なかったかを聞くと…


 「………○(指輪)?」


 ――ステーン!


 裕奈の洗面器に飛び込んでいたらしい。
 あまりの結果に探索組はズッコケタ。

 ともあれ指輪は無事に見つかった訳で、


 ――ピンッ


 裕奈はネギに指輪を渡そうと弾いて…


 ――シュン!


 弾かれた指輪が消えた。

 「「!!?」」

 犯人はハルナ。
 中空の指輪を狙ってキャッチし、そのままスライディングで距離をとる。

 勿論ネギは取り戻そうとハルナに迫るが…


 「Ya-ha!」

 踊るべき早業で鳴滝姉にパス!
 更に其の鳴滝姉も、見事な体捌きでチア3人娘にパス。

 「♪」ピッ

 「♪♪」パス

 「♪」ポイッ

 更に3人娘も三角パスでネギを翻弄。
 狙いが定まらずネギも大苦戦だ。

 アキラが注意するも効果はなし。
 見かねたリインフォースが『ブラッディダガー』を撃とうとするが、其れは流石にのどかと亜子が阻止。


 ――パァン!


 だが、其れを真名が見事にエアガンで指輪の軌道を変え三角パスを崩す。

 「(−−)b」

 其れを楓が追い、キャッチせんとするが其れよりも一瞬だけ早くザジが奪取。

 「(゜ ゜)」ポイッ

 相変わらずの無表情&無口で今度は美空に。
 そして恐るべき美空、指輪をキャッチと同時にもうダッシュ!

 水面を走って逃走。

 「HAHAHAHAHAHA!」

 「!!!」バシュッ!

 ネギも負けじと瞬動術で接近!
 一気にゼロ距離となり、指輪の奪還まであと少し…

 「(ニヤリ)」

 で、美空のアーティファクトが発動!
 更なるスピードで浴室の天上付近まで逃走!


 このまま逃げ切るか?

 否、そうは問屋が降ろさない。

 「(゜‐^)/☆」

 余裕綽々の美空だが…


 ――グワシッ!


 「!?」

 突然頭を掴まれた。
 やったのはアキラ。

 どうやら度を越した意地悪に、とうとう堪忍袋の緒が切れたらしい。
 と言うか、アーティファクトを使って逃走していた美空に、生身で追いつく辺り相当なものだ。

 見れば稼津斗組、ネギ組共に感心している。

 「…………」フルフル

 「((((ι゜゜))))」コクコク

 目じりに涙を浮かべ、無言で首を横に振られると妙な迫力がある。
 美空もそれには従うしかなかった訳で……


 ――ザッパ〜〜ン!


 お仕置きで浴槽に放り込まれた。
 更に、


 ――ガッシッ!


 「「「!!!!!」」」


 ――バッシャ〜〜ン!


 意地悪に加担した連中の頭を掴み、次々に浴槽に放り込んでいく。
 片手で人の頭を掴んでそのまま投げるとは恐ろしいものがある…

 のどかや亜子、まき絵、鳴滝妹は其れに拍手を送ったりしている。

 「…〜〜!!」

 ネギも感心するが、此処でアキラが我に帰った。

 「!!…〜〜!!」

 必死に弁解しつつ、取り戻した指輪をネギに。


 ――なでなでなでなで…


 指輪を渡すとほっとした感じの笑顔が。
 『良かったね』とばかりに頭を撫でてやる。


 此れにて騒動は無事解決である。













 余談だが、翌日。

 『ちからもち』『とってもやさしい』

 ネギの名簿のアキラの部分に新たにこう言う書き込みが。
 ネギとしては最大級の賛辞なのだが…


 「?(゜゜)」ガーーーーン!


 年頃の乙女には、少々ショックな一文だったようだ。














  To Be Continued… 


 

-49-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法先生ネギま!(1) (講談社コミックス―Shonen magazine comics (3268巻))
新品 \420
中古 \1
(参考価格:\420)