小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――イギリス・ウェールズ


 心地よい風が吹き抜ける小高い丘で、1人の女性が手にした何かを見ている。
 其れは手紙のようだが、立体映像的に映し出される動画と音声が只の手紙でない事を表している。


 女性の名は『ネカネ・スプリングフィールド』、ネギの姉だ。(直接的な血縁関係ではないが)

 『僕が日本に来て半年近くが経ちました。今回は写真を同封しといたよ。』

 「あら、ホント。」

 ネカネはネギからの手紙が心底嬉しそうだ。
 同封された写真を見て、思わず顔がほころぶ。

 「アーニャ、ネギよ〜♪」

 「ネギ?」

 少しはなれたところに居る少女を呼ぶと、再び手紙に目を移す。
 大凡半年ぶりの弟からの手紙は、矢張り嬉しいもののようだ。











 ネギま Story Of XX 50時間目
 『ま、色々あるんですよ』










 『たった半年とは思えないほど色んな事がありました――修学旅行に学園祭、それに格闘大会。本当に色んな事が…』

 「何よコレー、女の人ばっかじゃない…」

 ネカネに呼ばれた少女――アーニャは同封の写真を見て、複雑なご様子。
 ネギの幼馴染たる少女にとって、周囲が女だらけというのは些か面白くないようだ。

 反対にネカネは、ネギが楽しそうである事で充分のようだ。

 「あら?ふふ、女の人ばかりでもないみたいよ?」

 「え?」

 『それから、友達もできました。コタロー君とカヅト……2人とも僕の大切な友達です。』

 同封されていた写真の1枚である、稼津斗と小太郎が一緒に移った1ショット。
 撮影者である和美のリクエストで、全員が引き締まった『闘う者』の表情をしており中々格好良い1枚だ。

 「半年で、随分たくましくなったみたい。」

 「はぁ?ネギが?…って、こっちのおっきな男の人…え〜と、そう!ジャパニーズヤクザじゃないの?」

 ネカネの一言に疑問を呈したアーニャだが、それよりも稼津斗が気になったようだ。
 その顔の傷跡から、どうにも『ヤクザ者』と勘違いしてしまったらしい。

 「大丈夫よアーニャ、もしそんな人だったらネギが慕うはずは無いでしょ?」

 「…それもそうね。」

 アッサリ納得。
 幼馴染ゆえに、ネギが如何言う人物かは分っているようだ。


 ……尤も其れすら既に『過去の姿』になってしまうほどの成長をネギはしている訳だが。


 『夏休み中には必ず帰るね、ネカネお姉ちゃん。』

 「帰ってくるそうよ?」

 「ふ〜ん…」

 帰郷の話を聞き、興味無さ気にしながらもアーニャは髪を無意識に弄る。
 今日帰ってくるわけではないが、幼馴染との再会には見た目も気を使う……乙女心は難しいらしい。


 そんなアーニャを微笑ましく見守り、ネカネは空を見上げる。


 雲1つ無い空。


 「もう直ぐ会えるのね…ネギ。」


 一際澄んだ風が、丘を吹き抜けていった。








 ――――――








 ――日本・埼玉県麻帆良市・麻帆良学園都市女子中等部3−A


 「えーと…一学期もあと少し、期末テストまで1週間、其処で簡単な小テストをやってもらった訳ですが…
  この小テストの結果と中間テストの結果を合わせて考えると――――」

 「俺達3−Aは『学年最下位確実』と言う事が明らかになった。…何故こうなる?」

 本日の授業で行われた小テスト。
 結果は散々たるものだったらしい。

 バカレンジャーを卒業したアスナ、そして最強頭脳の超が居て尚『最下位確実』とは恐ろしい。
 一体どれだけ足を引っ張っている奴がいるのやら…

 だからと言って、全く危機感が無いのが3−Aクオリティ。
 危機感どころかクラスの8割が笑い事状態だ。

 「笑い事ではありませ―――ん!」

 だがしかし、其れを許さないのが委員長たる雪広あやか。
 真面目な彼女としては、『学年最下位確実』は容認できるものではないのだろう。

 「2年生の学年末では学年トップでしたのに、中間ではもう転落の一途ですのよ!?」

 「ま、良いじゃん。学園祭の催し物で麻帆中第2位獲れたし♪」
 「いやいや、私達はよーやったよ!」
 「力を出し切りましたのぉ…。後は余生じゃ…」

 「今から諦めないで下さい―――っ!」

 しかしながら効果なし。
 目下最大の問題は3−Aの危機感の無さだろう。
 尤も、2年の学年末でトップだった辺り『やれば出来る』筈なのだが…


 「まぁ、実際問題として学年最下位になったところで何の問題があるわけでもないし、勉強は確かにつまらない。
  だが、どんな事でもやっておいて損と言う事は無い。何が何処で役に立つかなど、存外分らないものだ。」

 「それに、一度自分の力で手に入れた知識や技は決して自分を裏切りません。其れは意見無駄に見える学校の勉強も同じ事なんです。」

 で、タイミング良く教師2人による、フォローと言うか其れなりにタメになる良い話しが出るのも大体何時ものパターン。
 そして、一瞬静まり返った後…


 「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
 「イイ話でた〜〜!」
 「流石ネギ君〜〜!」
 「稼津斗先生も伊達に長生きしてね〜〜!」


 クラスが沸くのも何時ものパターン。

 「褒められてるのかな・・・それとも馬鹿にされてるのかな?」
 「多分両方だ。」

 さもありなん。


 とは言っても其処に悪意は無い。
 だから嫌な気分にはどうしてもならないのだ。

 「だが、褒めようが馬鹿にしようが、バカレンジャーは全員居残りな。」

 「「「「な!?」」」」

 でも、其れとは別なこともあるわけで。
 成績底辺組み『バカレンジャー』は毎度お馴染み居残り勉強。
 アスナが抜けたとは言え、今だ健在のバカレンジャー。

 「あの、我関せずと言う顔をしていますけれど龍宮隊長もですよ?」

 「なっ?私もかい!?」

 「著しく成績が落ちてるからなお前は。嘗ての明日菜ほどではないが楓レベルにまでは落ちてる。
  更に今の小テストの結果も相当に……目出度く『新バカレッド』を襲名だ。」

 驚愕である。
 まさか自分が『バカレッド』になるとは思って居なかったのだろう、真名は言うならば『orz』状態だ。
 何が原因かは知らないが、容認できないほどに成績を落したのは事実だから仕方ないだろう、合掌。

 「其れにこのままだと赤点で、夏休みは補習漬けですよ?」

 「「「「「う”…」」」」」

 夏休み返上は流石に辛い。
 ネギのこの一言は効果充分だった様だ。

 「まぁ、赤点さえ取らなければいいんだ。頑張って楽しい夏休みとしたほうが良いんじゃないか?」

 更に一撃。
 夏休みは何物にも変えられない、1年の最大イベント。
 其れを楽しむ為なれば努力は惜しまないのが3−Aだ。

 「いよーし!ほいにゃらば期末頑張っちゃおかーーっ!」
 「ネギ君と稼津斗先生の言葉に免じてね〜♪」

 結果オーライ。
 やる気を出す事には繋がったらしい。








 ――――――








 ――エヴァンジェリン邸・ダイオラマ球内部


 学校が終わった後の修行に休みは無い。
 最近では稼津斗組もこっちを修行の場として使っている。(稼津斗のダイオラマ内部は環境が過酷過ぎるらしい。)

 「ふっ…」

 「りゃぁ!!!」

 その一画で組み手を行ってるのは稼津斗と小太郎。
 ついこの間、小太郎は稼津斗に弟子入りを志願してきたのだ。

 稼津斗としては断る理由が無いが、弟子を取るつもりは無い。
 かといって何もしないわけでは無い。

 要するに『教えないから見たければ見ていろ。盗める物があるなら遠慮なく盗め』と言ったところ。

 小太郎自身、手取り足取り教えられるよりも、実際に見て、戦ったほうが身につくタイプだ。
 なので、稼津斗達の鍛錬や模擬線をその目で見て学んでいる。


 「狗音爆砕拳!」

 「甘い…波導掌!!」

 気合を篭めた小太郎の一撃は空を切り、逆に稼津斗の一撃がクリーンヒット。
 矢張りマダマダ全く敵わない。

 其れでも小太郎が何度も組み手を挑むのは単に『ネギに負けたくない』と言う思いから。
 同世代の男の子同士、ライバル意識は互いに強い。




 「後ろががら空きだぞネギ。」

 「足を止めるのは危険よ?」

 「く…!!」

 ネギもまたエヴァ、アスナを相手取って1vs2の模擬戦。
 相手が相手だけに、今だ一度も勝った事は無いが、それでもネギの実力がメキメキ上がっているのは事実。
 実戦は何物にも勝ると言う事だろう。


 「ネギ坊主も小太郎もメキメキ実力が上がっているようにござるな。」

 「師が師だ。此れくらいは伸びるだろう?」

 其れを見ている稼津斗組&ネギ組の面子も感心。
 此処のところ、ネギと小太郎の成長具合には目を見張るものがあるのは事実だ。


 今日も今日とて、ダイオラマ球内部では厳しくも確実にレベルアップする修行が行われているようだ。


 そしてネギと小太郎のその日の修行の詰め。


 「小太郎。」

 「ネギ。」

 「「今度はお前達で組み手だ。」」


 そう、ライバル同士による組み手。
 大抵はお互いにぶっ倒れるまでの時間無制限バトル。
 此れが又良い修行なのだ。

 「へっ、随分疲れとるやないか。休憩入れるか?」

 「其れはコタロー君もじゃない?大丈夫、必要ないよ。」

 組み手の模擬戦とは言っても、ライバル同士負けたくは無い。
 この様な軽い舌戦も毎度の事


 「「……」」


 ――ガッ!!


 また、一つレベルアップすることだろう。








 ――――――








 ――居残り授業三日目


 「…と、此れなら大丈夫そうだな。」

 「だね。大変良いです、このまま頑張ってください。」

 「ホント!?」
 「やたアル♪」

 居残り授業の甲斐あってか、バカレンジャーは全員危険域は脱出。
 中でもまき絵と夕映は目を見張るほどの上昇値、『勉強しないだけ』の典型と言ったところだろう。
 この分ならば、学年最下位と言う事態だけは避けられるだろう。

 新バカレッドを襲名してしまった真名も取り敢えずはホッとした様だ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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 ・・・



 「取り敢えずは何とかなりそうだな。」

 「うん、皆頑張ってるから。」

 居残り授業が終わり、稼津斗と自宅にネギは女子寮に向かう途中。
 此れも、最近ではお馴染みになっている光景の1つ。

 適当な世間話をするのも意外といいものだ。

 「時に、お前は夏休みの予定は決まってるのか?」

 「うん。一度ウェールズに帰ろうかなって。ネカネお姉ちゃんにも、そう伝えてあるし。」

 「長期休みを利用しての帰郷か…良いんじゃないか?お姉ちゃん孝行して来い。」

 出会ってから僅かに3ヶ月だと言うのに、まるで旧知の友の様な会話。
 ともすれば歳の離れた兄弟に見えなくも無い。

 「勿論そうするけど、もしよければカヅトも一緒に如何かな?コタロー君も誘う予定なんだけど。」

 「俺?いや、良いなら有りがたく御呼ばれするが…」

 「手紙でカヅトとコタロー君の事書いたら、ネカネお姉ちゃんが『是非会いたい』って言ってるんだ。」

 「成程…なら遠慮なくお邪魔させてもらうさ。…若しかして3−Aの面子もか?」

 自分が誘いを受けるならばもしかしてと思い、訊ねてみればネギは首を縦に振って肯定。
 矢張り自分が受け持つクラスのことも確りと手紙には書いているようだ。

 「終業式前には話そうと思ってる。希望する人はなんだけど…皆が来る場合飛行機が間に合わないよ…」

 「その時は雪広に頼めばいいんじゃないか?クラス全員+αが乗れる程度の飛行機はチャーターしてくれると思うぞ?」

 「あはは…そうかも。」

 よく分っているご様子。
 確かにあやかならばネギが頼めば飛行機の1台や2台簡単にチャーターするだろう――金があるから出来ることだが。

 「だが、帰郷の目的はそれだけじゃないだろ?」

 「カヅトにはやっぱり分るんだ…うん、父さんの行方を捜そうかと思ってるんだ。」

 「矢張りか…手がかりはあるのか?」

 頷き、ネギは続ける。

 「京都で長さんから貰った地図に書いてあった父さんの居場所を示す手がかりはアルビレオさんの場所を記していた。
  お茶会の後でもう1度たずねたら『ナギは間違いなく生きている』って言ってた…なら僕はやっぱり父さんを探し出したい。」

 「だろうな。」

 「勿論、前とは探し出したい理由は違うんだ。前は只只管に父さんを追ってた、人目会いたかった…それだけ。
  でも、今は…父さんが、ナギ・スプリングフィールドがどんな人だったのか、何故英雄になりえたのかを知りたい。
  それと、其れを知る事で6年前の村の襲撃の事も何か分るかもしれないから。」

 確りとヴィジョンを持っているようだ。
 此れならば大きな間違いは起こさないだろう。

 「まぁ、親父さんの捜索に関しては、俺は特に有力な情報でも持っていない限り『頑張れ』としか言えないな。
  けどなネギ、親父さんの捜索も結構だが夏休みは少しくらいは遊ぶものだぞ?」

 「へ?」

 「親父さんの捜索はお前にとって大切なものだろうから止めはしないが、時には心から遊ぶのも大切だ。
  よって、3−Aの連中から遊びの誘いを受けたら夏休み期間中は可能な限り受けること……出来るか?」

 予想外の稼津斗の一言に目を丸くするも、ネギは直ぐに笑顔に。
 我武者羅に鍛錬を続けるだけでなく『息抜き』も必要と言う事は分っているらしい。

 「うん、約束する。3−Aの皆と一緒だと楽しいし。」

 「連中もお前と居るのは楽しいみたいだからな。」

 気がつけば、女子寮まであと少し。
 稼津斗は流石に寮長室までしか入れないので此処でお別れとなる。

 「ま、なんにせよ有意義な夏休みにしたいよな。…じゃあな、ネギ気をつけろよ?」

 「うん、カヅトもね。又明日ね。」

 挨拶もそこそこに互いに帰路に。
 教師2人は歳こそ離れているが、中々良い友人関係のようだ。








 ――――――








 そして、時はあっという間に流れる。


 勉強の甲斐あってか、3−Aは学期末テストで学年2位の快挙。
 クラスは沸き、トトカルチョで桜子が大穴当てたのは言うまでも無いだろう。


 そして学期末テストが終わればあっという間に終業式。
 校庭での終業式はお約束的に長い学園長の話で誰かが倒れる…なんてことは無く、近右衛門の話はものの2、3分で終了。
 その短さに、生徒達からは妙な歓声が上がっていた。



 で、夏休み前最後の大イベント『通信簿配布』。
 此れは恐らく何処のクラスでもそうだろう。


 内容に一喜一憂する者、クラスメイトと見せ合い競う者…よく見る光景だ。






 「じゃ、アスナ何時もの所で!」
 「ネギ君、稼津斗先生また二学期に会おうね〜〜♪」

 一学期最後のHRを終えて、生徒は散会。
 残るのは教師である稼津斗とネギ、そしてアスナ、木乃香、刹那、エヴァ。
 亜子、のどか、楓、クスハだ。

 それ以外は一学期の打ち上げの準備に借り出されたらしい。


 「戸締りは大丈夫か?」

 「うむ、問題ないでござるよ。時に稼津斗殿とネギ坊主、此れよりカラオケ大会にござるが…」

 「「参加で。」」

 「御意にござる。」

 残ったメンバーで教室の戸締りを確認し、其れが終われば打ち上げに合流だ。



 外に出れば夏らしい日差しが照りつけ、肌を刺激する。
 立っているだけで汗が噴出しそうなほどの暑さだが、それが『夏』だと言う事を実感させてくれる。

 「えぇ天気やな〜。あつ〜い。」

 「夏やから当然やで?」

 木乃香と亜子の関西弁コンビも冴え渡る。





 強い日照りに納得してしまうほどの良い天気。
 これから40日間は、しばしの休息の時。






 因みに、誰も居なくなった3−Aの教室だが…
 その黒板には…


 『今日から夏休み〜〜!』
 『2学期にまた会おう〜〜♪』


 こう言った落書きが、黒板せましと書かれているのだった。














  To Be Continued… 


 

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