小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 夏休みに入った麻帆良学園都市。

 この、1年で最大の長期休暇は色々とすごし方が有る。
 ある者は部活動に汗を流し、ある者は休みだから天下御免とだらけたり…

 またある者は…


 「お待たせしましたわアスナさん。」

 「あやか。」

 「例の件OKですわ。進められますわよ。」

 「ん、ありがとね。」

 「此れくらいお安い御用ですわ♪」

 親友と共に何かをしようとしていたり。
 まぁ、兎に角色々な訳だ。


 して、アスナとあやか、この『3−A最強ダチ公コンビ』は果たした何をしようとしているのやら…?











 ネギま Story Of XX 51時間目
 『新クラブ樹立の日』










 「「新クラブ設立?」」

 「あくまで表向きだけどね。」

 そのアスナとあやかに学園のカフェテラスに呼び出されたのは稼津斗とネギの担任コンビ。
 他には夫々の契約者+修行者であるアキラ、それから稼津斗の押しかけ弟子の小太郎。
 要するに魔法バラシ以前から関係者だった面子だ。

 「表向きと言うと、目的は別か?」

 「そうなりますわ。説明は…アスナさんのほうが良いですわね。」

 あやかに頷くと、アスナはネギを見る。
 鋭くは無いがその視線は真剣だ。

 「ネギ、探し出す理由は変わっても、ナギを探し出す意志に変わりは無いのよね?」

 「はい、其れは変わりません。」

 問えば返ってくるのは一切の迷いの無い答え。
 其れを聞いて、アスナは微笑み更に続ける。

 「其れ聞いて安心した。もし変わってたら私とあやかの苦労が水の泡になるとこだったから。
  早い話、学園長公認で『ナギの捜索』を行おうと思うの。3−Aがこうなった以上は学園長からの認可は下りると思う。
  でも、其れを大っぴらに言ったら『一部の魔法先生が面倒くさい』事になるでしょ?
  だから表向きは『異国文化研究倶楽部』って言う形で認可してもらうつもり。」

 素晴らしいほどに良く考えていた。
 先程あやかが言っていた『進められる』とはこの事だったのだ。

 「良いんじゃないか?そうなると、此処に集められた面子は新クラブ設立の条件を満たす為の『初期部員』か?」

 「僕とカヅトは『顧問の先生』ですね?」

 で、集められた面子の意味を即理解。
 まぁ、今の話を聞けば大概予想はつくと言う物だが。


 「なぁなぁ、アスナ〜。ウチ等だけでえぇのん?クラスの皆も部員にしてもうたほうが効率いいんと違う?」

 「それが、そう簡単でもないのよ…超や葉加瀬にはあとで打診してみる心算なんだけど、全員は…。」

 「ほえ?何で〜〜?」

 新クラブ設立の趣旨は分った。
 ならば、人手は多いほうが良いだろうと思い提案した木乃香の案はやんわりと否定。
 当然『何故?』となるが、其れを説明したのは真名だ。

 「魔法世界と言うのは意外と治安が良くないんだ。
  大きな都市はまばらで、都市と都市の間は未開発の砂漠や森林が多く、そう言った場所には盗賊なんかも出る。
  王都の様な超大型都市ならいざ知らず、小〜中規模都市だと市民のいざこざも多いところだ。
  魔法を知ったばかりの一般人が訪れるには些か危険が大きい場所なのさ。」

 「へ〜…龍宮さん、詳しいな〜〜〜?」

 「コウキ…前の仮契約主とは魔法世界で活動していた事もあるからね。それなりに詳しいのさ。」

 嘗ての経験から、魔法世界が決して生易しい場所ではないと言う。
 小規模のいざこざなら兎も角として、未開の地潜む未知生物や盗賊となると流石にきついものがあるだろう。
 3−Aの面子が如何に非常識軍団であろうともだ。

 「けどよぉ、この『初期部員』とやらの面子ならクラスの残りの連中の護衛くらい軽くねぇか?」

 だが、此処で千雨が割り込む。
 と言うか、素朴かつ当たり前すぎる疑問ともいえるが、それだけに言わずにいられなかったと言うところだろう。

 「千雨?」

 「睨むなよアスナ。だって、考えても見ろよこの面子。私と綾瀬は直接的な戦闘面ではドンケツだが裏方なら負けねぇ。
  戦闘面だってクロスレンジ・ミドルレンジ・ロングレンジ・アウトレンジ全部揃ってるじゃねぇかよ。
  しかも全員が超一流クラスの上に、半分が不死身の超人で、顧問はこの学園の事実上トップ2だろ?
  挙句の果てには、仮契約もしてないのに修行だけで『人類最強レベル』に片足引っ掛けてる奴まで居るしな。」

 そう言って、アキラを見やる。
 アキラはアキラで、多少なりとも自覚があるのか苦笑いして頬を掻くのみ。

 「こんだけ揃ってんだぜ?別にクラス全員部員にしてもどうにかなんじゃねぇのか?」

 「説得力ありすぎやで千雨姉ちゃん…」

 まったくである。
 確かにこの面子ならば、残る3−Aの面子が加入しようとも大事に至る前に何とかするだろう。

 「ちょい待ち、ちうっち。今の面子に私が入ってないのは如何言う事かな?」

 其れに噛み付いたのはハルナ。
 どうにも、今千雨が上げたメンバーに自分がいなかったのが不満らしい。

 「あ”?テメェは最近来たばっかだろうが。修行は全然足りねぇし、仮契約もしてねぇだろ。
  そもそも『炎よ燈れ』も禄にできてねえだろうが。現状での戦力外は当然に決まってんだろ。つーかテメェ原稿は良いのかよ?」

 「結構修羅場よ、ナツコミ近いし。ぐぬ、其れを言われると何もいえない悔しさ。」

 「悔しいからって仮契約強行しようとすんなよ?私と綾瀬は必要に迫られた結果だが、現状オメーには必要ねーだろうからな。」

 きっちり押さえ釘を刺すあたり、千雨も『こちら側』の事は重々承知しているらしい。
 いや、根が生真面目な事を考えると当然かもしれない。


 だが、此れに全く別の反応を示したものが居る。

 アキラだ。

 千雨の言った『仮契約』に反応しているように見える。
 顔も若干紅いような…

 「ラブ臭だわ…!」

 其れに即効で反応するのは勿論腐女子のハルナ。
 BL作家のくせに人の恋愛沙汰に関しては猟犬の4300倍もの嗅覚を発揮する迷惑極まりないスキルは健在だ。

 「アキラ…あんた若しかして、どっち!?ネギ君、それとも稼津斗先生!?」

 「は、ハルナ!?わ、私は!!!」

 行き成りふられたアキラはしどろもどろになり、無意識に稼津斗を見てしまう。


 其れが更にハルナに火をつける。

 「今の視線…稼津斗先生のほうね!?何処に惚れたの!?言いなさい、洗いざらい全て!」

 「ちょっ!稼津斗先生のことは好きだけどあくまで『Like』だよ!?」

 「嘘仰い!今のアンタの視線は如何みても『恋する乙女』の其れよ!認めなさい!そして諦めて白状せんかい!」

 ハルナ大暴走。


 更に、

 「大河内…そうなのか?」

 「稼津斗先生!?」

 なんでか稼津斗がナチュラルに参戦。
 尤も稼津斗に他意はない。

 単純に聞いただけなのだが…

 「ほら、ご本人からの質問よ!言いなさい!覚悟を決めて言いなさい!恥ずかしがるこっちゃない!!」

 ハルナに油…寧ろガソリンをぶっ掛ける事になったようだ。
 だが、

 「とは言え、人の心のうちを無理に聞きだすのは良くないな。」

 「プライバシーに入り込むのは良くないですよ。」

 「へっ?」



 ――ドガァァァァン!



 稼津斗の気功波とネギの魔法(何れも威力は相当殺してある)で腐女子撃滅!
 暴走すると大概こうなるだろう。

 「話を戻しますわよ?」

 で、脱線した話を戻す辺り、あやかは伊達にクラス委員ではない。

 「千雨の言う事も尤もだけど、初期部員にはちゃんと能力があるのだけにしておいた方が良いと思う。
  何れクラスの皆にも知られるだろうけど、生半可な力量の人は初期部員には迎えないほうが良い。」

 「成程。入部希望者はこばまねぇが、だからと言って最初から巻き込む心算はねえって事だな?」

 頷く。
 この辺はネギの事を考慮した結果だ。


 ネギの性格的に、『力の無い者』がいれば其れを護ろうとするだろう。
 其れこそ自分の目的などそっちのけで。

 其れでは本末転倒だ。


 其れを見越して、アスナとあやかは『新クラブ設立時のメンバー』を今此処に居る面子に限定したのだ。
 この面子ならば、ネギが目的そっちのけで護ろうとする事はない。

 全員がそれなりの実力者だから。(現状ではハルナは除外)


 「まぁ、良いんじゃないか?来るもの拒まず、去るもの追わずで。
  長谷川の言うように、俺達が本気で動けばどうにかなるだろうからな。
  初期部員はこの面子だけにしておいて、後から来る進入部員は『3−A』に限り無条件入部で良いだろう?」

 そして稼津斗が、案を吟味し、そして答える。
 下手に部員が増えていいものじゃないが3−Aは無条件入部。

 つまりは3−A以外の入部希望者にはそれなりの入部テストを受けさせる気だろう。
 …魔法関係者で無ければ大凡合格になる事はないだろうが。


 「その読みの深さには敬服しますわ稼津斗先生。」

 「3−A以外には入部テストをするつもり。3−Aのメンバーにしても『修行』を最低条件にするけどね。」

 本当に良く考えていた。
 此処まで確り考えて居るなら、問題は無いだろう。


 「ふ、新クラブの仮設立は巧く行きそうだなアスナと委員長よ。で?私には別途頼みがあるんだろう?」

 此処でエヴァが切り出し、自分の役割を聞いてきた。
 エヴァ自身、自分が呼び出されたのには『初期部員』になる事意外に目的が有ると考えていたようだ。

 「うん。活動の拠点、部室にキティのダイオラマを貸して欲しいのよ。…良い?」

 「お前は私が断るとでも思ってるのか?親友からの頼みを断ったりはせんよ。」

 「ありがと。」

 見事な友情であった。




 話を戻そう。

 ともあれ此れで新クラブの樹立は目処が立った。(何と言うか麻帆良市況の倶楽部になるのだろうが…)
 そうなると次なる問題――倶楽部の正式名称だ。

 近右衛門には既に話を通してあるので『異国文化研究倶楽部』は承認されるだろう。

 だが其れとは別に部の『正式名称』も欲しいところだ。
 簡単には決まらないだろうが。



 「部の名称は私が考えてやろう。」



 そんな中で、名称に関して名乗りを上げたのはエヴァだ。
 確かにエヴァのセンスならば問題は無いだろう。


 此処までくればもう一切の迷いは無い。
 メンバー一丸だ。


 部長なんかは後で決めるにしても、設立に必要な部員の数と担当顧問は確保した。
 その上で近右衛門に事前打診をしていたとなれば、設立は確定。

 ナギを探す為の準備は万端と言えよう。
 何れはエヴァの考えた正式名称も分る事になるだろう。


 「では皆さん、新クラブの設立に依存はありませんわね?」

 「「「「「「「「「「「「無い!」」」」」」」」」」」」

 既に一致団結。
 此れならばどんな問題が起きても多分対処できるだろう。



 夏休み初日のこの日、麻帆良に新たな倶楽部が産声を上げたのだった。














  To Be Continued… 


 

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