小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 夏休みに入って1週間が過ぎ、そろそろ8月。
 暑さも大分厳しくなり、連日30℃オーバーの日が続くというところだ。

 そんな夏真っ盛りの中、近右衛門は学園長室である書類を精査していた。
 とは言っても其れは形だけのもの。

 この書類を提出したのはアスナであり、つまりは『新クラブの設立書』だ。

 裏の事情も既に聞いているし、却下する理由も特に無い。
 顧問もネギと稼津斗が勤め、更には特別顧問としてエヴァが居るのだから問題も無い。
 何より初期部員のメンバーの技量の高さは折り紙つきだ。(ハルナは現状戦力外だが、アスナによると真面目に修行をしているとの事)

 「ふむ『異国文化研究倶楽部』とな?フォフォフォ、表向きとしてはこれ以上無い名前と活動内容じゃな。
  ウム、もとより却下する理由は無いからの。宜しい、認可じゃ。…正式名称決まったら教えてくれるかの?」

 「ありがと学園長。」

 「正式名称は決まり次第ご報告致しますわ。」

 「うむ、楽しみに待っておるわい。」

 本日を以って新クラブは正式に『学園公認クラブ活動』として認可されたのだった。











 ネギま Story Of XX 53時間目
 『此れは最強部活動』










 「よし!此れで我等『異国文化研究倶楽部』(表向き呼称)は学園に正式に認可された!
  麻帆良学園の正式倶楽部として認可が有ると言う事は、今後の活動にて大きなアドバンテージとなるだろう!
  正式名称は私が責任を持って考え中だ!兎も角此れで大っぴらに活動が出来る!分ったか貴様等!!」

 「「「「「「「「「ハイ!」」」」」」」」」
 「「「「「「「「「おーーーー!」」」」」」」」」

 日差し降り注ぐ校舎屋上にて、部活認可の報告式。
 認可を告げるエヴァもテンションが上がっているのかノリノリ。

 部員は言わずもがなだ。

 「茶々丸、アンタなんで縮んでんだ?」

 「はぁ、本体のオーバーホールで…」

 一部を除いてだが。


 「いや―――いいね〜、皆カッコイイよ♪」

 で、この光景を撮影してるのは和美――と上半身は固着形態、下半身は霊体という器用な事をしているさよ。
 全身固着すれば良いだろうとも思うが、其れはそれで結構疲れるのだそうだ。(固着化、半固着化、霊体化は自由に出来るらしい)

 「しっかし、私が言うのもなんだけど壮観な面子だよね此れ?何か米軍相手にしても勝てそうじゃん?」

 「いや〜マダマダよ!ナギッち見てると『強さには限界が無い』って良く分るしね〜。」

 「老師の強さはマルで『底なし流砂』だヨ。」

 和美の言う事にハルナはマダマダと言い、アスナから話を聞いて初期部員と成った超もハルナに同意。
 超は地が有るから兎も角として、元が皆無のハルナはそれでも真面目に修行をしているので最底辺ではあるものの其れなりに。

 「まぁ、エヴァちゃんが言うには私は『召喚魔法』に順ずる魔法が使えるようになるかもって事だからそっち方面頑張るわよ!
  けどそれ以上に…最近はアキラがメッチャ伸びてるよね!元からスゲーけど!獲得経験値倍のスキル装備って感じ!」

 「ウム!今のアキラなら私とも良い勝負が出来るアルな!」

 「えぇ!?い、いや私はマダマダだよ?それに古菲には敵わないよ!?」

 行き成り話題が飛んで来たら慌てるのは当然だろう。
 だが、決して過大評価ではない。

 素よりアキラは水泳を行う中で無意識に『気』を使うくらいの才覚の持ち主だ。
 ついでに水泳という全身運動を日常的に行っている為、全身の筋肉がしなやかに鍛えられているので潜在力が半端無い。
 其れが修行で一気に開花したのだろう。

 ただアキラは性格的に其れをひけらかさないだけで。


 「むむ、謙虚!その意気や良し!たゆまぬ自己研鑽ね!」

 だが、其れもテンション上昇真っ只中の連中には更にテンションを上げる為のフレーバーでしかない。
 まぁ悪い事じゃないのだが、少なくとも今回は。

 「修行上等ーーー!」
 「まだまだレベルアップするよーーーッ!!」

 『こちら側』を知っていても彼女達は矢張り3−Aなのだ。
 関係者であっても、引きつった笑いを浮かべている千雨を責める事は誰にも出来ないだろう。


 「まぁ、私も結構染まっちまってるから今更か?認めたくねーけどな。時に先生、出発は何時なんだ?
  それと、龍宮の話だと治安面で問題あるみてーだけど大丈夫なのか?この面子なら大事にはならねーと思うが。」

 「出発は8月12日の予定です。魔法国も首都のメガロメセンブリアでの情報収集がメインですね。
  遠出したところで周囲の観光地くらいですし…取り立てて大きな問題は無いと思います。」

 一応の危険性について問う千雨だが、ネギも魔法国の辺境に行く予定は無い。
 あくまで首都での情報収集がメインなのだ。

 ついでに夏休み期間だけでナギの行方が判明するとは思っていない。
 その上でのスケジュールなのだろう。

 「まぁ、お前は既に使える呪文はナギを遥かに凌駕しているし、実力も並みの魔法使いなどでは相手にならんレベルだ。
  それに首都を離れなければ早々危険もなかろう……だからこそお前もこうして落ち着いていられるのだろうがな。」

 「あはは…何も起きないに越したことはありませんから。」

 全くの正論である。
 大概の事に対処できるとは言っても、厄介事は起きないに越した事はないのだから。

 「緊張しすぎず、気を抜きすぎず。余裕を持って、されど所期の目的忘れずにだ。」

 「うん。」

 稼津斗もまた同じように考えているようだ。


 「よぉーーーし、みんな〜イギリスに行きたいか〜!?」

 「「「「「「「おーーーー!!」」」」」」」

 「何が何でも行きたいかーーーー!?」

 「「「「「「「オーーーーー!!!」」」」」」」

 「そいじゃあ、修行終わらせてウェールズへGo!!!」

 「「「「「「「GO−−−−−!」」」」」」」

 メンバーは相変わらず大盛り上がり。
 正式認可通達の会合は恙無く終了というところ。





 ただ、この会合『校舎の屋上』という特殊だが誰でも入れる場所で行われてた。
 故にこの会合を盗み見ていた2つの小さな影があったわけだが…








 ――――――








 会合が終わり、場所はとあるサロン。
 読書して良し、ティータイム良しの広々とした空間だ。

 「やっぱりナギはこっちでは10年前に…」

 「えぇ、公式記録では行方不明になってますわ。」

 アスナとあやか、新クラブの部長&副部長コンビ+のどか&亜子&クスハがナギに関する調査報告書を観覧中。
 稼津斗とエヴァも居るが、此方は別のソファーで読書中だ。
 尚、毎度の事だがクスハは子狐モードで亜子の頭の上だ。

 「えっとアスナさんの記憶ではネギ君のお父さんは…」

 「ゴメン、私のナギに関する記憶は可也古いからアテにならないと思う。ナギが行方不明になる前にタカミチと日本に来たから。」

 「手掛りは皆無やね。真名が言うには魔法国でも表向きは10年前に行方不明らしいしな。」

 あやかが持ってきた資料でも特段今までの情報以外の事は分りそうも無い。
 矢張り魔法世界本国での裏側の情報を収集するしかなさそうだ。



 と、此処までなら新部活の活動であったのだが…


 「アスナー!いいんちょ〜〜!!」

 馬鹿ピンク来襲!
 ついでに鳴滝姉妹も襲来。

 如何みても普通じゃない。

 「ちょっとー!此れは一体どういうこと!?アスナといいんちょの裏切り者〜〜!あと亜子と本屋ちゃんも!!」

 「ちょ、如何言う事ですの!?」

 「てかウチ等も裏切りモンなん?」

 「ど、如何なんでしょうか?」

 突然の事に全員困惑気味だ。
 だが馬鹿ピンクことまき絵にはそんな事は関係ない。

 「何って『新クラブ』設立の話〜〜!ネギ君とイギリスまで旅行なんてずるい〜〜!」

 つまりはそう言う事らしい。
 何故まき絵が新クラブのことを知っているのか?

 答えは単純明快――一緒に居る鳴滝姉妹が原因だ。
 要するに先程の屋上での会合を盗み見ていたのはこの2人だったのだ。

 で、詳細を適当な人物に流したという事なのだろう。

 だが、あまりに突然の事でもアスナは慌てない。
 本来の人格様はいつ何時でも冷静らしい。

 「イギリス旅行なら希望すればネギは許可するはずよ?」

 「へ?そーなの?」

 「『希望者は』って言ってたもの。ナギ捜索の為に向かう魔法国は別だけど。」

 キッチリと押さえる。
 が、それでは済まないのが3−Aの面子だ。

 「でも魔法国には一部の人しかいけねーんだよね?」

 鳴滝姉が原爆投下!
 そうなれば止まる筈がない!

 寧ろエンジン全開状態になるのは目に見えている。


 「やっぱり秘密にしてネギ君と〜〜!!!」

 まき絵爆発!
 魔法ばらしの際にその危険性云々も聞いたはずだが、ネギが絡めば其れは別だ。


 「矢張りこうなったか。」

 「この程度は織り込み済みだ。まぁあいつ等程度ではアスナ達に触れることもかなわんだろうよ。」

 「だろうな、地力が違いすぎる。」

 其れを見ていた不死身コンビは至って冷静。
 確かにまき絵達では今のアスナ達をどうこうする事は出来ないだろう。


 其れを示すように…













 ――只今戦闘中













 ――シュゥゥゥゥゥゥ…


 あっという間に決着!
 まき絵のリボンも鳴滝姉妹の同時攻撃もなんのその。
 アスナ達には全く無力だった。


 「お見事。」

 「まぁ奴等なら此れくらい造作も無いな。」

 不死身2名には分りきった結果だった。



 「ゴメン。でもやられないから。」

 「ゴメンなまき絵〜。ウチ等は普通やないんや…」

 まき絵&鳴滝姉妹KO!
 圧倒的な実力差だった。

 「あ、あのスイマセン。でも、イギリスより先は此れくらいの実力が無いとダメなんです…。」

 「まぁ、イギリスまでなら問題ありませんわ。けれどその先となれば話は別ですわ。」

 のどかとあやかも容赦ない。
 確かに禄に実力が無い者が魔法国に行った場合、不慮のハプニングで命を危険にさらす確率は0じゃない。
 故にこの実力行使は、酷だが極めて効果的といえるだろう。

 「ゴメンね…」

 ひれ伏す3人を横目にアスナはその場を退場。
 あやかとのどか、亜子もそれにならうようにサロンを出て行く。

 誰が如何見てもまき絵達の完敗だった。


 「あ〜ん悔しい!」

 「皆強すぎ〜〜!」

 負けたまき絵達は実に悔しそうだ。
 だが…

 「まったく、いい様だな貴様等…」

 「戦いを挑むのは結構だが、相手との実力差が測れないのではマダマダ三流未満だな。」

 エヴァと稼津斗が。
 一切容赦なく未熟部分を指摘。

 まぁ確か言う通りだ。
 的確にダメージを与えていったアスナ達とは違い、まき絵&鳴滝姉妹の攻撃は誰にもヒットしていない。
 アスナとあやかにはさばかれ、亜子とのどかは魔法(とは言っても不可視の障壁程度)で駆逐…正に最強だ。

 「エバちゃんと稼津斗先生…」

 「確固たる実力者及びネギと稼津斗の従者でなければ魔法本国には行けんというのは事実だ。」

 「万が一が起きた場合、禄に力の無い者では即座に命を落すだろうからな。」


 命を落すという言い回しに凍りつく。
 誇大妄想ではなく、恐らくは事実なのだろう。


 だが、まき絵&鳴滝姉妹――引いては3−Aの面子が此れで納得するだろうか?


 答えは否だ。


 3−Aの面子は『危険上等!楽しみ事が先決』だ。
 此れでは納得させるのは難しいだろう。


 だが、稼津斗もエヴァもこれしきは織り込み済み。
 既に次なる手は考えてあるのだ。


 「だが、お前らは此れで納得はしないだろう?」

 「だから腕試しの機会をやろう。クラスメイトだしな♪」

 「「「?」」」

 言われた事が『?』状態だがどうやらチャンスがある様子。


 「お〜い、何騒いでんの?」

 そしてタイミングが良いのか悪いのか、チア3人娘が浴衣姿で登場。


 「そう言えば夏祭りだったな…」

 「ふむ、有る意味ではあつらえたような状況だな?」

 どうやら『腕試し』の内容は決まったようだ。








 ――――――








 「えぇ!?」
 「もれなくイギリスに行けちゃう新クラブ!?」

 一度寮に戻って浴衣に着替えたまき絵達は、チア3人娘に先程の事を説明。

 結果はご覧の通り。
 完全に食いついてきた。

 「アスナといいんちょ…こんな面白そうなこと黙ってたなんて許せないね〜?私等チア部入ってるけど。」

 「けどエバちゃんと稼津斗先生が出した入部テストに合格すれば私達もイギリスに…!」

 美砂と円は少々思考が…(汗)
 残る桜子が先を促す。

 「そのテストって?」

 「え〜っとね…」

 問われたまき絵は昼間の事を脳内再生で内容を思い出そうとしている。


 「たしかね…」


 『私と稼津斗もだが。新クラブの面子はこれから夏祭りに出かけるんだそうだ。
  新クラブのメンバーはこの『蒼い羽根』の形のピンバッジをつけている。
  此れを部員から奪取できたものは追加入部を認めてやろう。』

 『まぁ、一筋縄では行かないと思うけどな?』


 こう言う事らしい。
 シンプルな条件だが難易度はSクラスの入部テストだ。


 だからと言って諦めはしない。
 エヴァから貰った部員名簿(コピー)で新部活のメンバーを確認中。

 だが…


 「「「「「「無理じゃね?」」」」」」

 此れが結論。

 単純にメンバーを見ても麻帆良武道四天王の楓、真名、古菲、刹那。
 身体能力が極めて高いアキラ。
 不死身の稼津斗組。
 裏方で力を発揮する千雨と夕映等などメンバーが壮観過ぎるのだ。

 『無理』の答えに行き着くのも仕方が無い。


 建物の陰に隠れてターゲットを選考するも決まらない。
 真名や楓は言うに及ばず、裕奈や和美も勝てる相手ではない。

 さらにまかり間違ってもアスナや委員長とは戦いたくないのだ。


 自然とターゲット選考も慎重だが…

 「来た!あの3人!」

 美砂が見つけたのは千雨、夕映、ハルナの3人。
 中々のいい読みだ。

 普段の事からこの3人の直接戦闘力はさほど高くないと思ったのだろう。
 完全に自分達よりも(一見して)力が弱いものを狙う気らしい。

 まぁ、兵法としては常套手段だが。


 「あの3人が私等のターゲットよ!」

 「えぇ”?幾らなんでも大人しそうなのを選ぶのは…」

 「問答無用!最も弱き場所から叩くは基本!イギリスに行く為にはやむを得ないといえよう!」

 筋は通っているがあまりな理論に円が控えめに突っ込むが効果なし。
 頭の中はイギリスで一杯なんだろう。


 「良し行くよ!!」

 気合一発、美砂の号令で全員が動き出す。






 この夏祭り、どうにも単純に終わりそうには無いようだ…











  To Be Continued… 


 

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魔法先生ネギま!(1) (講談社コミックス―Shonen magazine comics (3268巻))
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