小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 魔法世界のゲートポートでの突然の石槍の一撃。
 その一撃は稼津斗を貫いている……勿論即死級の一撃である事は間違いない。
 ただし、喰らったのが『一般人であれば』だが。

 「『石の槍』か…此れだけの技量の地属性魔法となると…」

 不死身の稼津斗には全く持って意味を成さない一撃だ。
 自分に突き刺さった石槍をものともせずに引っこ抜き、

 「京都の時の貴様か…『フェイト・アーウェルンクス』!」

 その槍をそのまま飛んできた方向に投げ返した。











 ネギま Story Of XX 59時間目
 『激乱闘ゲートポート』










 「驚いたね、まさか今のを受けてそんなにぴんぴんしているなんて…いや、それどころか貫いた場所が塞がってる…?」

 投げ返された槍を受け止めたのは白髪の少年。
 稼津斗の予想通り、京都の時の敵方の魔法使い――フェイト・アーウェルンクスが其処に居た。

 「完全に気配も消していたんだけど…如何して気付けたのかな?」

 「俺の気配察知能力は人より幾分優れていてな、気配を消していても俺が探せる範囲内なら直ぐに分る。
  それに、幾ら気配を消そうとも貴様の纏う『気味の悪い魔力の流れ』までは消しきれてない…分る奴には分るぞ?」

 「成程…それは気付かなかったよ。」

 視線が交錯する。
 襲撃者はフェイトを含め4人。
 ローブを纏った大柄の人物と、同じくローブを纏った小柄の人物。
 そして場違いとも思えるファンシーファッションの人物だ。


 「しかし…驚いたよこれ程とは。少なくとも安穏とした世界で生きてる者の力じゃあないね。」

 周囲を見渡し(限りなく分かり辛いが)驚いたように言う。
 確かに如何に『魔法使い』が作った麻帆良学園の生徒とは言え、この場に居る物の実力は半端ではない。

 「それどころか君1人で魔法世界の正規軍隊5個分位はあるのかな、氷薙稼津斗?」

 「さて、如何だろうな?だが、中々に周到だな……石槍を放つと同時に空間を隔絶したか…」

 周囲を見ればゲートポートのスタッフが居ない。
 それどころか景色が微妙にぼやけているようにも見える。

 「京都の時と言い今回と言い…君達は一体何者なの?僕達を尾行してきた…って訳じゃないだろう?」

 警戒を解かず、何時でも戦える状態を保ちながらネギは問う。
 石槍での一撃に空間隔絶と、一見すれば最初から狙っていたように思えるがそうではない。

 カモの密航が発覚してからの一撃……つまりは隙が出来るのを待っていたように思えるのだ。
 それだけならばおかしい事ではないが、カモの密航は完全にアクシデント、予想外の事態だ。
 其れを利用したと言うのでは、狙って居た線は薄い――『気付かれたから隙をついて攻撃した』そうとしか思えなかった。

 「聡いねネギ君。…其れにその顔と魔力、京都の時とはまるで別人だ。
  確かに僕達の狙いは君等じゃない、この場所で君達と出会ったのは全くの偶然――予想外だよ。
  僕達の目的は『此処』さ、君達は関係ないけれど…気付かれてしまったからね、だから排除する意味で攻撃した。」

 「その攻撃は薮蛇だったな。今の一撃さえなければ俺も気のせいで済ませていたかもしれないんだぞ?」

 「かも知れないね。けど、此処で何かをしたらどの道君等は動くだろう?…なら同じ事だよ。
  ネギ君、『君だけ』は僕としても生きていてもらわないと困るんだけど…他は邪魔だね。ご退場願おうかな。」

 言葉の応酬は終わりとばかりに膨れ上がる魔力と殺気。
 間違いない、脅しや比喩ではなく『殺る気』だ。


 其れが合図。

 「疾!」

 フェイトが攻撃に移るよりも早く稼津斗が一足飛びからの膝蹴りで強襲。
 略瞬間移動と言って差し支えないほどの速さに、攻撃を中断してガード――それでも数mは吹き飛んだが。

 「退場…させれられると思うか?もしそう思っているなら、お前はネギ達を舐めすぎだ。」


 ――轟!!


 溢れ出る闘気、迸る稲妻――最強戦士『XX』の御登場だ。
 更に稼津斗のみならず、そのパートナー達も己が力を解放しXXに変身。

 「なに…?」

 流石にフェイトも今度は目に見えて驚く。
 稼津斗が驚異的な戦闘力を持った形態に変身出来るのは、京都の一件で分っていた。
 だが、他の7人の少女が『そうなれる』とは思いもよらなかっただろう。

 「彼女達も変身するのか?いや、それ以前に京都の時には居なかった彼女は一体…?」

 「さてな?だが…予想以上の戦力だったかフェイト・アーウェルンクス!」

 驚くフェイトに今度は光速一足飛びからの肘撃ち。

 「波導掌!」

 ギリギリでガードされるも、攻撃の手を休める事無く、気を篭めた掌打で追撃。
 XX状態の稼津斗の一撃をガードしたのは見事だが、それでも踏ん張りきれずに体勢は崩れる。

 「カヅトだけじゃない、僕達も居る!雷華崩拳!!」

 「ぶっ飛べや、狗音爆砕拳!!」

 更に体勢を立て直す前に瞬動で接近したネギと小太郎の一発!
 申し合わせた訳でなくともこの連携だ。

 「な…!馬鹿な、如何に腕を上げたとは言え君達に…!」

 完全に予想外。
 稼津斗以外ならば如何にかできると思っていたのにこの実力だ。

 勿論此れだけではない。


 「覇ぁ!!」


 ――バキン!!


 アスナが契約カードや真名の銃器、刹那の夕凪が収納された封印処置を施した箱を殴って壊し中身を取り出す。
 以下に強固な封印であろうとも『完全魔法無効能力』をもつアスナの前では無意味だ。


 「刹那!」

 「ありがとうございますアスナさん!覇ぁぁぁ…神鳴流・雷鳴閃!!」

 即座に武器を夫々に投げ渡し戦闘に参加。
 実力もさることながら、連携も見事だ。
 此れも普段の修行の賜物だろう。


 「あら〜〜、此れはまた京都の時よりも一皮剥けましたなぁ先輩♪」

 「貴様…月詠か!奴等に手を貸すとは…そうまでして人の血を啜りたいか!?」

 「それはもう…今の先輩も美味しそうですわぁ♪」

 「快楽殺人者が…!だが、悪いが私は1人じゃない!師匠!!」

 夕凪を手にした刹那に襲い掛かるのはファンシーな服装の人物…月詠だ。
 京都の時以上に狂気に染まっている上に、殺人衝動もあって単純な力だけならば刹那を上回るだろう。
 だが、刹那が言うようにこの場は他にもいる。

 そう、たった今刹那が呼んだ師匠――天ヶ崎千草が居るように!

 「後ろががら空きどすなぁ?人切り殺す快楽なんぞに溺れると碌な事にならん。…斬岩剣!」

 月詠の背後から手にした脇差での一刀。
 其れを辛くも避ける月詠だが、千草の真髄は剣術ではなく陰陽道だ。

 「オン バザラ ヤキシャ ウン 南無金剛夜叉明王殿 汝が法力で邪気を払い給へ。
  式神裏符伍式、裏陰陽の八 仏道四拾六式『裏式神・金剛夜叉明王』!!」
 『ムオォォォォォォ!!』

 その陰陽道で呼び出したるは三面の夜叉明王。
 猛る咆哮が神を思わせる。

 「こらまた…でしたら式神符、ひゃっきやこ〜〜♪」

 負けじと月詠も無限召喚符を使っての召喚で、無数の魑魅魍魎を呼び出す。
 が、そもそも力が違いすぎだ、無限召喚符であるため数に限りはないが所詮は蟻と象だろう。

 その召喚された魑魅魍魎は、位も低く知性も皆無。
 手当たり次第に周囲に襲い掛かるが其れも無駄。

 「悪いけど真昼間からお化けは…」

 「お呼びではないでござる!!」

 常識外の連中が相手では只の的だ。


 またローブの2人に関しても、多種多様な魔法で攻撃しても…

 「無駄です…!極星の勅命!」

 「させへんて!撃ち砕け…メルトクレスト!」

 無詠唱で極大魔法を行使するのどかと亜子の前ではまるで無力。
 全く別の遠隔魔法であっても、今度はアスナが手にした『天魔の剣』で魔法を文字通りの一刀両断!

 此れだけでも圧倒的だが、非戦闘員だって負けてはない。

 「なんつー多重障壁だよ…おい、綾瀬!」

 「大丈夫です!如何に強力な多重障壁とは言え内部からの攻撃には其れは程強くないです!」

 此方も見事な連携で『隔絶空間』の解析を!
 如何見ても隙がない。



 「馬鹿な…京都の時から僅か2ヶ月程度…仮にダイオラマ球を使ったとしても、これ程の伸びは…!」

 「有り得ないか?甘いな、鍛錬は量と質がモノを言う。最高質の修行を多大な量こなせば此れくらいの成長はする!」

 で、稼津斗とフェイトのバトルも加熱。
 稼津斗のみならず所々でネギと小太郎が鋭い一撃を入れてくるので、フェイトも気が抜けない。
 いや、気を抜いた瞬間に確実にやられるだろう。


 「時に…何時まで隠しておく心算だ?俺の感覚の異常さはさっきで分っただろう?
  いい加減に機会を伺ってる『5人目』を出したら如何なんだ?」

 「気付いてたの?…なら遠慮は要らないね…。」

 姿が見えなくとも稼津斗には無意味。
 姿の見えない5人目はとっくに気付いてたのだろう。



 ――シュッ!



 そして唐突に襲い来る水の矢。
 間違い無く5人目の攻撃だろう。

 「ホントに恐ろしいわ。私にまで気付くとはね。」

 「フェイトそっくりだが…お前は女の子か。気配だけじゃなく纏う魔力も消せるようになるんだな。覇ぁぁ…爆閃衝!!」

 現れた5人目――セクストゥムをものともせずフェイト共々気を炸裂させて吹き飛ばす。
 正に圧倒的だ。

 武闘派の実力も、バックスの力量も申し分ない。
 いや、申し分ないどころか魔法世界の軍隊ですら凌駕するほどの力量だ。

 個人個人の能力が高いにも拘らず個人プレーには走らずチームとしての連携が取れている。
 其れが元々高い力を無限に引き上げ無敵とも言える集団となっている。

 そしてその頂点に君臨する絶対強者の稼津斗。
 一騎当千どころではない、一騎当億とでも言うべきその力が全てを凌駕していた。


 このまま戦えばそのまま稼津斗達『麻帆良組』が間違いなく勝利できる。
 フェイト達を拘束し、憂い無く魔法世界を旅できるだろう。





 が、世の中にはどうしてかトンでもない邪魔をする存在が居たりするのだ。

 「うおぉぉぉぉ!流石だぜアニキ〜〜!!」

 「うぇぇ、カモ君!?」

 この襲撃の引き金となったロクデナシのオコジョが飛び出してきた。
 単純にネギの実力に感動したのだろうが……邪魔な事この上ない。

 そしてこのロクデナシの乱入はフェイト達にとってカッコウの好機となった。

 「へぇ…面白いのがいるのね…!」


 ――ドシュッ…


 「え…?」

 ロクデナシの乱入で生じた僅かなネギの隙。
 其れを逃さず、セクストゥムの水の槍が――ネギの右肩付近を貫いた。


 「ごふっ…え、あ…?」

 「ネギィーーー!!このクソオコジョがぁぁ!!おい、しっかりせぇ!!」

 右肩というよりも、胸と肩の丁度真ん中――即死する場所では無いが気管系の損傷は間違いない。
 其れを示すようにネギの口からは血が溢れている。

 「だ、大丈夫だよコタロー君…!魔力流して体組織塞いだから…大丈夫…!」

 「嘘こくなボケ!そないに血が出てて大丈夫なはずないやろ!!」

 崩れるネギを支える小太郎も流石に冷静とは行かない。
 瞬時に体組織を閉鎖して大量出血と組織壊疽を食い止めたのは凄いが、それでも治療しなければ持たないだろう。


 「慌てるナ、抜かりはないネ!」

 「任せてネギ君!」

 だが、其処はこのチーム。
 超が魔法世界に来る前に造った『超小型時間跳躍機』を使っての『秒間時間移動』で木乃香を連れてネギの元へ。


 「見事だ超。」

 「ご先祖様を死なせる訳には行かないからネ。ネギ坊主が死んだら私存在できないヨ…」

 これまた素晴らしい連携でネギの治療に。
 強襲に成功したとは言え、治療が稼津斗のすぐそばで行われるのでは妨害は不可能だろう。


 「いぶきどのおおはらへ たかまがはらに…」

 木乃香が真言を唱えると同時に膨大な魔力がネギに流れ込み、貫かれた部分を修復して行く。
 その身に宿る膨大な魔力が有ってこその完全治癒、それも普段の修行無くしては出来なかっただろう。


 ――シュゥゥゥ…


 あっという間にネギの傷は完治だ。


 「…驚いたね、これ程とは。…けど其処のオコジョ君にはお礼を言うべきかな?君のお陰で僕達の目的は果たす事が出来たよ。」

 致命傷の一撃をも耐えたネギと、其れを瞬時に治した木乃香。
 此れはもう驚くなというのが無理だ。

 だが、それでもフェイトは『目的は果たせた』と言う。


 「目的…?そういえば此処が目的と言っていたな…」

 「ネギ君の治癒の為に攻撃の手が緩んだのはありがたかったね…終わりだよ。」


 ――ヴン…


 「まぁ、君達なら生き残るだろうけど如何なるかは見物だね。…冥府の石柱!」

 現れた巨大な石柱群。
 考えるまでも無い、此れをこのポートに落とす気だ。

 「小賢しい…!覇ぁぁ…虚空裂風穿!!」

 その石柱群に向かって極大の気功波。
 此れの前では石柱群など灰燼に等しい――と言うか灰燼そのものだ。
 次々と飲み込まれ消滅して行く。


 が、

 「見事だね。けど本命は既に果たした……君達には僕から異世界旅行をプレゼントだよ。」


 ――キィィィン…!


 「強制転移魔法…!拙い、全員可能な限り一箇所に集まれ!分散を最小限にするんだ!」

 発動した強制転移魔法。
 その真意を読み取った稼津斗が指示を出すが僅かに発動の方が早い。



 しかしここでも邪魔者がやらかしてくれた。



 「テメェ、よくもアニキをやりやがったなぁ!!」

 ロクデナシの生ものがフェイトに突貫。
 完全に虚を衝かれ、ダメージにもならないがフェイトは其れを受けてしまう。

 「あ。」

 「如何したのフェイト?」

 「彼の特攻のせいで結界の外にも転移魔法が発動して…ついでに内部の転移魔法が幾つか消えた。」

 「…其れはまたなんとも…」

 其れは果たしてどうなるのか…。

 「まぁいいさ、目的は果たした。…もしも何処か出会うときが有れば…其れまで生き残ってよネギ君。そして氷薙稼津斗。」


 それだけ言うとフェイト達は別の転移魔法で消えた。


 だが、残された稼津斗達は大変だ。
 最早この転移魔法から逃れる術は無い。

 「ネギ!あいつ等ゲートの要石を…世界と世界の扉を壊してったわ!多分…うぅん、確実に扉を繋いでた魔力が暴走する!」

 「アーニャ…!うん、皆集まって!手を…!」


 アーニャの言う事に速攻で反応し、どうにかバラバラに成らないようにする。
 だが…


 ――ドゴォォォォン!!


 無常にも爆音とともに転移開始。
 凄まじい魔力の流れと共に、全員が離れ離れに…

 「く…」

 「く…うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 その流れに飲み込まれ稼津斗達は何処かへ……光が治まった場所にあるのは破壊された転送ポート…


 「く…。?転送されてない?」

 「どうやら、巻き込まれなかったみたいですわ…」

 「あう〜…目が回る…」


 だけではなく、真名とあやかとクスハの姿が。
 どうにも隔離空間内部の転移魔法が幾つか消えた影響で彼女等は此処に留まったようだ。


 だからと言って安心は出来ない。
 先程のフェイトが言った事が本当ならば、隔離空間の外部――見送り組に転移が発動した可能性があるのだ。


 「委員長、見送り組の点呼を。私は学園長にこの事態を連絡する。」

 「了解ですわ!」

 それでも即座になすべきことをなすのは凄い。
 クスハもあやかを手伝いに。



 「く…やられましたわ…まき絵さんと夏美さん、其れに桜子さんが…!」

 「3人残って3人飛ばされたって事…」

 見送り組の人員を確認すれば案の定。
 まき絵、夏美、桜子の3名が転移に巻き込まれたらしく其処には居ない。


 「最悪ですわ…よりにもよって…。」

 「カヅトかネギ坊主と一緒に居てくれる事を願うしかないか…」

 ゲートポート内は大騒ぎ。
 此れまでにおきたことがない程の『テロ事件』となる事は間違いない。


 「な、なんて事…。ネギ君…ユーナ…」

 この惨状を目の当たりにしたドネットの呟きは、誰の耳にも留まらず、惨状の現場に霧散するのみだった…










  To Be Continued… 


 

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