小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「では私は皆さんを連れて麻帆良に…」

 「あぁ、頼むよ委員長。私とクスハは麻帆良からの応援が来次第行動を開始する。」

 破壊されたゲートポートにてあやかは見送り組のメンバーを連れて麻帆良への帰還を決めていた。
 強制転送に巻き込まれた、まき絵、夏美、桜子の3名の安否は気になるが現状で出来る事は無い。

 ならば、残るメンバーを先ずは安全な場所まで連れて行くことが先決と考えたのだろう。
 真名もその意を汲み取り、何も言わずに残りのメンバーの安全を託す。
 この辺は信頼と言うやつだろう。

 「時に…この惨状の引き金になった…」

 「あぁ、あのオコジョ君ならクスハが燃やして行動不能にした上で警備員に引き渡した。
  これ程の惨状の引き金となった上に、脱獄犯だ…少なくともネギ君が成人するまでは出てこれないんじゃないかな?」

 「そうですか。」

 碌な事をしでかさなかった大馬鹿者には相応の運命が待っていた。
 まぁ、此れも道理だろう…











 ネギま Story Of XX 60時間目
 『事態は最悪の様です』










 眼下に広がる見渡す限りの大森林。
 その所々に突き出した岩山、照りつける太陽……異常なまでの蒸し暑さは南米の熱帯雨林が如く。
 強制転送で稼津斗が飛ばされたのは、そう言った中々に過酷な場所だった。

 「見送り組が他に何人飛ばされたかは分らないが…1人でも一緒だったのはある意味で運がよかったと言うべきか?」

 其処に居るは稼津斗だけではない。
 強制転送に巻き込まれた見送り組の1人――椎名桜子も一緒だった。

 「行き成り眩しくなったらこんなとこに〜。カヅッち&超りんと一緒なのは運がよかったかにゃ〜?」

 「いやいや、強制転送に巻き込まれている時点で『凶運』だと思うヨ?」

 更には超も。
 巻き込まれたのは確かに『凶運』だが、この2人と一緒だというのは間違いなく『強運』だろう。


 が、状況は芳しくない。
 さっきから稼津斗が強制転送を喰らった面子の気配を探っているがまるで見つからない。

 「…駄目だな。全く感知できない。オマケに見知らぬ場所だから瞬間移動も使えない…か。」

 つまりは少なくとも半径3km以内に『蒼き翼』のメンバーは居ない事に。
 瞬間移動も土地勘が無くては使用不能状況だ。

 「カードを使っての通信と召喚も不可能か…」

 『真契約カード』を使っての通信と従者召喚も不能。
 こうなると最低でも5〜10km以内には稼津斗のパートナーは居ない事は確実となる。


 「こっちは駄目だが…バッジの反応は如何だ?」

 「ちょっと待つネ………うん、居たヨ!」

 だが、稼津斗の気配察知とカードの機能が駄目でも、超が一緒に居る。
 『蒼き翼』のメンバーの証であるバッジには他のバッジの位置を探知できる機能が備わっていたのだ。
 稼津斗の気配察知と並行する形で、バッジの一探知を行っていた超だが、此方は当たりの様だ。

 「南東に2つ…100キロ地点と180キロ地点。他には西南西540キロに1つ…
  他にも数100キロ単位で点在しているけれど数が足りないネ、多分探知限界の1800kmを超えているんだヨ。」

 バッジの反応を探知はしたものの、その数は足りない。
 しかも尤も近くて100km…半端な距離で無いのは明らかだ。

 「ゲートポートで世界地図をダウンロードしておいて正解だったナ。私達とみんなの位置を特定可能だヨ。
  だが老師…この世界の総面積は地球の1/3程だが其れでも壮大だゾ?」

 「あぁ…分っている。
  俺達が無事に麻帆良に戻るには、この異常なまでの広大な地から仲間全員を探し出さねばならないと言うことはな…!」

 更にバッジ所有者の何人かが半径1800km以内に居る事が分ったとは言え状況の好転とは言い難い。
 最低100km…『裏』の修行を行っていない桜子が一緒の状況ではとてつもなく長い道のりだ。


 「とは言っても此処で手をこまねいていても如何にもならないか…椎名、動けるか?」

 「大丈夫〜。全然楽勝で動けます〜♪」

 ともなれば即座に動くが上策。
 稼津斗と超のタッグならば、道中何が襲ってきても一応の対処は可能だろうから。


 「なら良い。バッジの反応だけで個人の特定は出来ないからな…一番近い所から行くか。
  出来ればネギと合流できると良いんだがな…」

 「ネギ坊主?何故だ老師?」

 「近衛嬢の治癒魔法が強すぎたせいで、ネギは多分高熱を出したような状況だろうからだ。」

 先ずはネギと合流にも意味はあった。


 言われて超も納得だ。
 確かにゲートポートでネギを治した際の木乃香の魔力は凄まじいものだった。

 なればその魔力を受けたネギ自身が『魔力飽和』状態に陥ったとて不思議はない。

 稼津斗が言ったのはあくまで『可能性』に過ぎないが、それでもこの状況下においては『最悪』を想定するは道理。
 故に超もそれには反対はしない。


 「成程ナ、確かに老師の言う通りネ。先ずはネギ坊主との合流が先決だナ。」

 「そう言う事だ。」

 状況整理が出来ればこの場に長居は無用。
 3人は他のメンバーと合流するために、森の中へと歩を進めていった。








 ――――――








 「…大丈夫か椎名?」

 「うん、マダマダ全然平気〜♪」


 森に入って早3日。
 バッジの反応も、当然と言うか何と言うか動いているらしく一番近かった反応は遠ざかっている。

 だが2番目に近かった反応は逆にその距離を縮めている。
 恐らくは同様にバッジの反応を追っているのだろう。

 更に嬉しい誤算だったのは桜子の体力だ。
 動き始めた当初、稼津斗は『1日で20km』進めれば僥倖とも思っていたのだが、蓋を開けてみれば1日で最低30km!!

 桜子に内蔵されたエネルギーに感謝すべきだろう。


 尤も道中平穏無事であったかと言われれば其れは否。
 森の中で正体不明の危険生物に襲われるなどザラ。

 尤もそういったのは稼津斗が一撃の下に沈めてその日の食料となったのだが…


 だが、予想以上の桜子のスタミナのおかげで思っていたよりも距離を進めたのは事実。


 「ウム…近いね。」

 バッジの反応も半径10km以内に所有者が居る事を示しているのだ。

 「10kmなら、場合によっては今日中の合流も可能か……ん?」

 「カヅッち如何したの〜〜♪」

 その最中、稼津斗が何かに気付いた。
 気配を感じ取ったようだが?


 「この魔力…ネギか?それにもう一つの気は小太郎?……一体何と戦っている?」

 「は?戦闘中なのカ!?」

 「間違いない。気や魔力がハッキリしていれば半径3km外でも感知できるが、この力の大きさは戦闘中以外には考えられん…!」

 その感じ取った気配は活性化したネギの魔力と小太郎の気。
 魔力と気の強さから見て戦闘中であるのは明らかだった。

 「此れだけはっきり感じ取れるなら瞬間移動で行ける。超、椎名つかまれ!」

 此れを合流の好機と見た稼津斗は即座に瞬間移動を選択。
 超と桜子を自身につかまらせ、即時発動だ。





 ――シュン!!





 一瞬で目的地に到達。
 矢張り瞬間移動というものは便利なものだ。


 「先生!?」

 「超と桜子さんも…」

 で、到着した場所に居たのはネギと小太郎だけでなく、千雨と茶々丸の姿も。
 合流したのか、それともはじめから一緒だったのかは不明だが、それでも一気に4人もの仲間と合流できたのは大きい。


 大きいが…

 「で、如何してネギと小太郎は割と本気で戦ってるんだ?」

 目の前の海岸では人外レベルのバトルが展開中。
 ネギと小太郎が戦っているらしいのだが…

 「はぁ…合流直後に小太郎がネギ先生を挑発しまして…で、何時の間にかこのようなことに…」

 「成程…あ〜…でもまぁ効率的な手段ではあるか…平和的じゃ無いがな…」

 即座にこのバトルの意味を理解した。
 尤も千雨と桜子には訳が分らず、頭に『?』が浮かんでいるのだが…


 「ゲートポートでの近衛嬢の治癒魔法がすごすぎて、ネギは魔力飽和を起こしていたんだ。
  その飽和魔力は熱病に似た症状を引き起こすが、逆に言うなら飽和分の魔力を処理すればその後は如何にでもなる。
  で、その魔力を最も必要とするのが戦いだ……其れを踏まえて小太郎はネギを挑発した訳だ。」

 速攻説明で納得&理解。
 特に千雨は良く分っただろう…

 「いずれにしてもまだ終わりそうには無いか…待っていたほうがよさそうだな…」

 その判断は実に見事である。







 ――15分経過







 「僕の勝ちだね、有効打が12発多いもん!」

 「はっ、アホ抜かせ引き分けや!大体1発も効いてへんわ!」

 「ふらふらじゃん!」

 「自分もやろが!」

 「負けず嫌いなんだから!」

 「どの口が言うとんねん!?」

 内容は兎も角、子供っぽさ全開の舌戦を繰り広げながら、ネギと小太郎は浜辺に。
 ネギの感じから、魔力飽和の状態は解消されたらしい。


 「凄い戦いだったな…」

 「ネギ君すご〜い♪」

 「人類レベルで見ればとんでもないネ…流石は私のご先祖様とその親友だヨ…」


 とは言え、拳が繰り出されるたびに数m単位の水飛沫が上がっていたあたり普通ではない。
 そもそも子供の戦いでm単位の水飛沫などは起こらない……今更だが。


 「なんや、兄ちゃん来てたんか?」

 「お前達の気を感知してな。」

 取り敢えずはこれで合流。
 小太郎も稼津斗に気付いたようだ。

 当然ネギも気付いてる訳だが…


 「桜子さん!?如何して此処に…」

 「ネギ君〜〜、巻き込まれちゃった♪」

 ネギはこの場に桜子が居る事に吃驚仰天。
 見送り組が巻き込まれてたとは思いもよらなかったのだろう。

 尤も、巻き込まれた本人は極めてノーテンキ状態だが。
 それでも、合流できたのは矢張り大きい。

 不幸中の幸いとも言うべきか、この面子なら他の面子を探すにしてもその道中の危険には対処できるだろうから。

 加えて超と茶々丸が一緒ならば、情報収集&分析の精度は上がる。
 可也正確かつ有益な情報も得る事が出来るだろう。


 「何れにしても、先ずは何処か人の居る場所に向かうが上策だな。」

 「だろうな。私等もその線で行動決めてたからよ。」

 合流が出来たなら次の行動に移るのみ。
 バッジの反応はネギ達との合流後は一番近くて300km離れている。

 だが、同時に其処は地図で確認すると街のある場所。
 しかもバッジの反応は、ここ数日その場所から動いていない。

 この街に『蒼き翼』のメンバーの誰かが居る事は先ず間違いないだろう。


 「派手にやっていたが…動けるか2人とも?」

 「大丈夫!」
 「はっ、当然やで!!」

 なれば行動は早いほうが良い。
 動けるかを問えばネギも小太郎もマダマダ大丈夫。

 仮に強がりだとしても、其れを言えるだけの元気があれば申し分は無い。

 「絡繰と長谷川も大丈夫か?」

 「はい。私は大丈夫です。」
 「私はちときついが…まぁ、まだ大丈夫だ。」

 茶々丸はもちろんだが、千雨もまだ動ける。
 其れに頷いた稼津斗は、方針を決定。

 一路300km先の街を目指して歩き始めた。







 ――――――








 そして歩く事4日。
 1日75kmと言う恐るべきハイスピードで移動した結果、稼津斗達一行は1つの街の入り口に辿り着いてた。

 「うん、間違いないネ。あの街からバッジの反応があるヨ。」

 更にはバッジの反応も健在。
 なればやることは一つ。

 「行くでーーー!!」
 「うん!!」

 街への突貫以外には無い。

 「あ〜、待って〜♪」

 ネギと小太郎が飛び出し、其れに桜子が続く。
 この数日のサバイバルで、桜子も恐ろしいまでに体力が上昇していたのだ。

 「気持ちは分るが…もう少し落ち着いて行動できないものかねぇ?」

 「無理じゃねぇか?強くても所詮10歳のガキだぜ?」

 「だな…」

 更に其れを追う形で稼津斗達も街目指して一直線。






 で、辿り着いた街だが……一言で言って凄まじい。
 犬顔の大男にネコ面の女性、獣耳少女に正体不詳の小柄な行商人…ぶっちゃけ純粋な人間のほうが少ない。

 さながらファンタジー系のRPGの世界に迷い込んだかと錯覚するような状況だ。

 ついでに街としての規模は大きくないが人は多い。

 「食い逃げだ〜〜!」
 「又かい!にがしゃしないよ!!」

 そのせいか治安はあまりよろしくない様子。
 街のあちらこちらで大なり小なりのいさかいが勃発中だ。


 だからと言ってこの面子が如何こうなる訳でもない。


 「治安は兎も角としても人里に着けたのは良かったな。此処から首都に連絡すれば救援の1つでも呼べるんじゃないか?」

 「確かにそうかも。ドネットさんが健在なら僕達を捜索しているかもだし。」

 寧ろ余裕な感じすらする。
 腹ごしらえも兼ねて、露天で売っていたパンらしきものを食べながらの街中捜索だ。

 この余裕の裏にはバッジの所有者がこの街に居ると言う事もあるだろう。


 『お昼のニュースです。』


 その最中、街のど真ん中に現れた光学モニターの映像。
 魔法世界に於ける『街頭テレビ』に相当するものだろう。

 ノイズが多いのは此処が辺境の地であるが故だろうか?

 だが、現地のニュースは馬鹿には出来ない。
 若しかしたら有力な情報が得られるかもしれないのだ。


 『6日前に世界各地で同時多発的に起きたゲートポートの魔力暴走事件についての続報です。
  各ゲートポートでは依然魔力の流出が続いており、復旧の目処は立たず旅行者の足にも…』


 流れているのはゲートポートでの事件。
 間違いなく、フェイト達が襲撃を掛けてきた『アノ』一件である事は間違いないだろう。

 「「「「「「「…………」」」」」」」

 其れを即座に理解し、一行はニュースを聞き入る。
 詳細は分らずとも、何となく重要と思ったのか桜子も黙って聞いている。


 『未だ犯行声明も無く、背景も謎に包まれたこの事件ですが、先日メセンブリア当局より新たな画像が公開され…』

 ニュースは進み、画面が切り替わり新たな画像を映し出す。


 「「「「「「え?」」」」」」
 「あれ?…ネギ君?」


 だが、その新たな映像を見た一行は一様に驚いた。
 なぜならば…

 『主犯格と見られる、この外見上は10歳程度の少年に見える人間に懸賞金付きの国際指名手配がなされました。』

 其処には『懸賞300万Dp』のテロップと共に、でかでかとネギの顔写真が映し出されていたのだから…















  To Be Continued… 

-60-
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