小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 300kmもの長い道程を、歩いて歩いて漸く辿り着いた街。
 だが、その街で目にした『賞金首ネギ』のニュース。

 『此れが公開された映像です。』

 驚く一行を尻目に、モニターには魔法格闘でゲートポートの柱を破壊するネギの姿。
 勿論ネギはこんな事はしていない。

 映像は一行からすれば捏造以外の何物でもないが、事実を知らない人にとってはこの映像が『真実』となる。


 「拙い…!顔を隠せ!」

 とっさに稼津斗がフードでネギの顔を隠し人ごみを離れる。
 気付かれたら厄介な事この上ない。

 「捏造とかマジかよ…!ばれる前に街……出る前にバッジの反応か!茶々丸!」

 「捜しています………発見しました。」

 急いで街を出んとするが、バッジの反応の事を思い出し千雨は茶々丸に検索指示。
 茶々丸も其れを予測していたのか既に捜しており、速攻で反応を見つけたようだ。

 「此れは…可也近いです。距離僅かに50m……あの酒場の辺りです。」

 恐ろしいほど近い。
 が、茶々丸の言うバッジの反応点と思しき場所には誰も見えない。

 取り合えず急ぎその場に向かった一行だが…

 「そんな……」

 反応点には確かにバッジはあった。
 そう、『蒼き翼』の一員の証である『バッジだけ』が…











 ネギま Story Of XX 61時間目
 『更に事態は最悪です』










 「最悪の展開だな。便利バッジも落しちまったらそりゃ意味ないわな。」

 バッジを回収し、路地裏に駆け込んだ一行は改めて事態の悪さに溜息をついていた。
 持ち主が居ないのでは如何にもならない。

 加えて最悪なのは賞金首がネギだけでは無いと言う状況。
 路地裏に駆け込む前に街に配布されたビラを拾ったのだが賞金首は他にも。

 アスナ、刹那、木乃香、超、古菲そして小太郎…殆どがネギ組の武闘派だ。(超は一応ネギ組所属)

 「く…一体誰がこんな事を…!」

 「決まってるやろそんなモン!アイツやフェイト!!略完敗に近い状態やったのに腹立ててのイヤガラセやろ!!」

 完全に嵌められたこの状況。
 理由は兎も角として、小太郎の説はこの場では最も説得力があるように思える。
 ゲートポートの破壊をネギのせいにすれば、確かにフェイト達は動きやすくなるだろうからだ。(何をするのかは不明でも)

 「…その線は考え辛いな。いや、先ず無いだろう。」

 だが、其れを否定したのは稼津斗。
 完全に『フェイト達ではない』ときっぱり言い切ってのけた。

 「なんでやねん?他に誰がこないなことするって言うねん!」

 「確かにフェイトが俺達を嵌めたと取れなくも無いが……なら何故、賞金首に俺と俺のパートナー達が居ない?」

 「「「「「あ……」」」」」
 「言われてみれば亜子ちゃん達居ないね〜?」

 確かにそうだ。
 このビラにはネギとネギ組の武闘派&木乃香のみが『賞金首』として載っている。
 だが、その面子よりも力量では上を行く稼津斗組の面子が誰1人として賞金首になっていないのだ。
 此れは確かに解せない状況だ。

 「もしもフェイトが俺達を嵌めるなら、戦力的に高い俺や楓達の動きを抑えたほうが更に都合は良いはずだ。
  だが、其れが無い。フェイト達がやったのだとしたら余りにもお粗末な仕事としか言いようが無い。
  無論フェイト達が急いだ結果俺達を取りこぼした可能性も0じゃないが、ゲートポート破壊の用意周到さを考えると矢張り解せん。」

 「けどよ稼津斗先生、あいつ等じゃないとすると一体誰だよ?ネギ先生が自由に動けなくなる事で得する奴なんて…」

 「ここは何処で、そしてこの世界に於ける絶対的英雄の存在を考えてみろ。自ずと答えは見えてくる。」

 「絶対的英雄……父さん!!」

 与えられたヒントから答えの1つに辿り着く。
 更にこの答えから更なる解答を導き出したのは流石の超だ。

 「魔法世界の政治集団……その中にネギ坊主を利用しようとしている輩が居ると言う事カ?」

 「恐らくな。推測の域を出ないが、其れならば『俺と俺のパートナー達が賞金首になって居ない』事もある程度説明が付く。」

 「何でやねん?」

 「学園長の爺さんは俺の存在を魔法国本国には報告してないからだ。出発前日に本人から聞いた。
  そうなると、この世界の政治化のお偉いさん方は俺の事を安く見ている可能性は充分にある。
  実際にゲートポートでの戦闘は、パッと見ネギと小太郎が2人でフェイトを圧倒したように見えるだろうからな。」

 あくまで推測だが、全員此方の方がシックリ来るような気がしていた。
 確かに捏造映像と賞金首と言う二重の枷に加えて、賞金首と言う形での事実上の人質確保。
 これらを交渉札――と言うか脅迫材料にネギに何らかの『協力』を申し出る輩が居てもおかしくは無い。

 「けど待って!僕が父さんの…ナギ・スプリングフィールドの子供だと言う事は魔法世界の人は知らないはずだよ?
  実際魔法世界の公式記録では父さんは僕が生まれる前に死亡した事になってるんだし…」

 「其れはあくまでも表向きじゃないのか?ナギの仲間だった人物が政治家になっていたとしたら如何だ?
  独自の情報網でナギの足取りを掴み、お前の存在を知っている奴が居たとしてもなんら不思議は無い。
  この魔法世界に於いて大きな何かを成す場合『英雄ナギの息子』は極めて分りやすく、かつ強力な旗印になるからな。」

 「く……」

 ネギは歯噛みする。
 無理は無いだろう、この期に及んで又しても『英雄の息子』の名が枷になったも同義なのだから。


 「何れにせよ俺達の行動が制限されたことに変わりは無い……その上で此れから如何動くかだが…
  不幸中の幸いか俺と俺のパートナー達には賞金がかかっていない、巻き込まれた椎名も同様にだ。
  問題は賞金がかかっているネギ達――この面子だとネギ、小太郎、超の3人だが…」

 「素性明かして、ワザと捕まってメガロなんたらまで行って身の潔白を訴えるって手も有るが、コイツは悪手だよな?」

 「だネ。嵌められた以上、身の潔白を証明する術は無いと思っていたほうが良いヨ。捕まったらそれでTHE ENDネ。」

 だが、幾ら嵌めた犯人を推測しても事態は好転しない。
 即座に此れからの身の振り方を考えるが、此れが又難しい。

 『お尋ね者』が居る以上どうやっても動きが制限されるのは否めない。
 加えて嵌められてる以上、公的機関に助けを求める事も不可能だ。

 「結局のところ私等は地力でドネットか、仲間をこの広大な場所から探し出すしかねぇわけだ…
  そうなると当面は散り散りになった『蒼き翼』+αの探索が基本方針になりそうだな?考えるだけで鬱だが…」

 「まぁ、其れが一番やろな。」

 当面は千雨の案が一番だろう…というか其れしかない。


 「基本方針は其れとして、次は此れです。」

 ネギが取り出したのは、先程見つけた蒼き翼のバッジ。
 千雨の案とも重複するが、此れの持ち主ともできるだけ早くコンタクトを取っておきたい。

 「其れなんだがな、ちょっと貸してくれないか?」

 「カヅト?うん、良いけど…」

 其れを見た稼津斗がバッジをネギから借り受ける。
 何か秘策でもあるのだろうか?


 「………分った。このバッジは和美のだ。」

 「「「「「「へ?」」」」」」

 「バッジに和美の『気』が残っている。この感じからして…少なくとも和美がバッジを落としたのは24時間以内だ。
  カードの通信が使えないから最低でも5kmは離れた場所に居る訳だが、昨日の今日なら確実に20km圏内にはいる筈だ。」

 恐るべき気配察知能力がここでも役に立った。
 よもや、無機物に残った持ち主の『気』を感知するとは――凄まじいの一言に尽きる。

 「でも、朝倉なら大丈夫かにゃ〜?多分巧い事やってると思うよ?」

 桜子の意見には同意だ。
 ジャーナリストを自称する和美は、慎重で用心深い部分がある。

 そうなると稼津斗達よりも先に『賞金首』の情報は得ている可能性が高い。
 そして、そうなれば恐らく情報収集をしながらこちらのことを探しているであろう事は容易に想像がついた。


 「ふむ…朝倉さんなら下手を打つとは考え辛いネ。ただ問題はどうやって捜すかダ。」

 「大声張り上げて捜すのが楽なんだろーだ、こっちはお尋ね者ってのが問題だ…動き辛くて仕方ねぇ。」

 バッジの持ち主が判明したところで次なる問題。

 『どうやって捜すか』だ。

 ネギ達『お尋ね者』が一緒では行動が制限される。
 だからと言って別々に行動するのも最善とは言い難いのが現実。

 「大丈夫、僕に良い考えがあります。」

 其れを破ったのはネギ。
 自信に満ち溢れたその表情……如何やらこの状況でも『自由に動く為の秘策』があるようだ。








 ――――――








 少しだけ時間が経ち、場所は街の酒場。


 ――ギィ…


 其処に入ってくる一団。
 スーツ姿の赤毛の青年。
 旅用ローブを纏った黒髪犬耳の青年。
 緑の髪の長身の女性と、赤みが強い茶髪の眼鏡少女、濃い目の桜色の髪の少女。
 黒髪の幼女。
 そして黒のシャツとジーパンの銀髪蒼眼の青年。

 言わなくても分るだろうがネギ達だ。
 賞金がかかっているネギ、小太郎、超の3人は『年齢詐称薬』で外見を変えたのだ。
 千雨と桜子はそのままで、稼津斗は『万が一』を考えて見た目が変わる『XX』に変身。

 まぁ、少なくとも賞金首3人に関しては一見しただけでは分りはしない。

 だが、分らなくとも目立っている。


 無理も無い。
 行き成り7名もの来店に加え、男女夫々が滅茶苦茶美形レベルが高いのだ。

 男の方は紳士系、ワイルド系、クール系。
 女の方も、クール系2名、知的系、天真爛漫系と揃っている。
 人の注目を集めるのも無理は無い。


 「ミ、ミルクティー…」

 「昆布茶。」

 「この店で一番強い酒。」

 「コラコラ…特に稼津斗先生は何頼んでんだよ?」

 尤もこの面子には注目されていようとなんだろうと余り関係は無い。
 ばれていない以上は情報を収集するのみだ。


 「あの、失礼ですが…この写真の中で見掛けた人は居ませんか?昨晩、向かいの通りとかで…」

 早速ネギは持ってきていた名簿を取り出して店のマスターに見せる。
 顔写真入りの名簿ならば、この世界に散らばった蒼き翼のメンバーを探すのにも一役買ってくれるだろう。

 「何だいこりゃ?…あぁ、さっき出てた賞金首…」

 「見かけませんでしたか?特に右端のアサクラと言う人は…」

 「ん〜〜〜知らないねぇ?この子は賞金首じゃないし、其れに賞金首だったら私が捕まえているよ。」

 「そ、そうですか…」

 が、矢張り行き成り巧くいく訳は無い。
 だが、少なくともこの名簿で人探しができることだけは分っただけでも僥倖と言うべきだろう。


 「よう兄ちゃん。」

 「はい?」

 しかしながら望まなくても厄介事が起きる時は起きる。
 ネギに話しかけてきたのはやたらと顔のでかい大男。
 推定身長2mは下らないだろう。

 「その面が気に喰わねぇな…1発殴らせな!」

 「えぇぇぇ!?」

 辺境の地の酒場ともなれば治安はよろしくない。
 この様なゴロツキ紛いの輩が居るのもある意味では納得だ。

 「そんな突然!?」

 「問答無用!!」

 殴りかかってくる大男だが…

 「止めておけ。」

 その腕を稼津斗が掴んだ。
 軽く掴んでいるだけだが其れでも男は動きを止められている。

 「テメェ…!」

 「もう一度言う、止めておけ。お前ではそいつの足元にも及ばん。」

 他意はない。
 稼津斗は只事実を言っただけだ。

 が、男はそうは取らない。
 完全に『舐められた』と取っただろう。

 「あんだぁ?俺がこの優男よりも下だってのか?」

 「分りやすく言えばな。」

 「舐めんじゃねぇ!!」

 完全に逆上して殴りかかってくるが、いとも簡単に稼津斗は其れを避ける。
 いや、只避けるだけでなくカウンターに置いてあった酒瓶を掴み、避けながら栓を開けて中身を飲み干す余裕ップリだ。

 「テメェ…!!」

 其れを見た男は更に高速で拳を繰り出すも当たらない。
 避けられ、いなされ、捌かれる。

 「ほう…図体の割りに動きが素早いな?成程、口先だけって訳じゃ無さそうだ。」

 避けながらも稼津斗は男の力量に心底感心していた。
 巨体に筋肉貼り付けながらもスピードが死んでいない。
 相当な鍛錬を積んだのは動きを見れば分ったからだ。


 「やるねぇ、あの若いの?」

 「だが、相手が悪い。バルガスはあの図体で高位の魔法使いだ。」


 何時の間にやら周囲もこの騒ぎに盛り上がり、賭けまで発生している。
 周囲の反応を見る限り、この男――バルガスは可也の実力者なのだろう。

 「いいだろう!俺を本気にさせたな!!戦いの旋律(メローディア・ベラークス) 加速二倍拳(デー・ビフェスティナンドー)!」

 攻撃が当たらない事に業を煮やして魔力解放。
 一気に身体能力を高めてきた。

 「加えて修行を重ねた俺は瞬動術の使い手でもある!その滑らかさは縮地の域!!」

 ステップも軽やかに。
 確かにこの巨体でこの素早さがあれば相当強いのだろう。

 「更に!魔法の射手(サギタ・マギカ) 砂の五矢(セリエル・サブローニス)!!」

 加えて無詠唱での魔法の矢。
 周囲のバルガスに対する評価は決して誇張ではないようだ。

 「くたばれ!!」

 「断る。」

 だが、相手が悪すぎる。

 バルガスの拳が放たれるよりも早く、稼津斗が懐に飛び込み雷光の如き鋭さの肘撃ちを一閃!

 「爆ぜろ!」

 更にそのまま掴み、手元で気を炸裂。
 至近距離での強烈な二連撃に、


 ――ズゥゥゥン…


 バルガス完全KO。


 「「「!!?」」」

 此れには店内騒然。
 よもやこの街トップクラスの実力者が一撃でやられるとは思わなかったのだろう。

 「その巨体で中々だが…まだ甘いな。修行して出直して来い。」

 勝者の余裕。
 再び別の酒を手に取り、中身を飲み干す。
 非常識なアルコール分解能力は健在のようだ。



 其れは兎も角、バルガスが倒された事に黙っていない者も居る。
 彼を慕うゴロツキ共だ。


 「テメェ、よくもアニキを!!」
 「やっちまえ!!」


 一斉に稼津斗目掛けて突進。
 完全に頭に血が上っている。


 「ヤレヤレ…2人とも良いか?」

 「おう、やったるで!!」
 「仕方ない…かな?」

 襲われた稼津斗は余裕だが、数が数なので小太郎とネギにも参戦要求。
 その2人もアッサリ参戦だ。


 で…













 ――ガスベキボキバキ、ドンガガッシャ〜〜ン!!(戦闘中に付き少々お待ち下さい)












 ――チーン…



 速攻で決着。
 所要時間僅か2分、恐るべき早業である。

 「スミマセン、お店…」

 「なに、何時もの事さ。あいつ等に弁償させるから構わんよ。」

 完全KOされたチンピラの山。
 この3人の実力は辺境のチンピラなど数のうちではなかっただろう。


 「しかし、若いのに強いね君達…おじさんも昔を思い出しちゃったよ。」

 店のマスターもその強さに感心だ。

 「いっそ拳闘士でもやってみちゃどうだい?君達ならがっぽり稼げるかもしれないよ?」

 完全に雑談。
 まぁ、この世界で暫く暮らす以上、其れもまた金を稼ぐ手段として有りだろうが今欲しいのは情報だ。

 「金は今は如何でも良いんだ。欲しいのは情報…何か思いださねーか?」

 千雨の問いかけに、マスターはしばし考え…

 「あ〜〜…うん、思い出したよ。賞金首じゃないけどこの子が水を貰いにきたね…」

 有力情報を出してくれた。
 賞金首じゃ無いと言うことはアスナ達ではないだろうが、少なくとも巻き込まれ組を含めた誰かが此処に居たのだ。

 「本当ですか!?」
 「誰や!?まき絵とかか?」

 ネギと小太郎も身を乗り出して話を聞く。
 この情報はかくも貴重なのだ。

 「この子だよ。そばかすが可愛い子だったから間違いない。」

 マスターが名簿で指差したのは『村上夏美』。
 巻き込まれ組の1人だ。

 「「「「「「「へ?」」」」」」」

 有力ではあったが思いもよらない人物に全員目が点になる。

 「確か…前の通りで男達ともめていたかなぁ?…他にも女の子が居たか…?その後馬車に乗り込んで…
  奴隷商人にでも捕まったんじゃなければ良いんだが…」

 「「「「「「「えぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!?」」」」」」」

 有力な情報は確か得られた。
 だが、その情報は『更なる厄介事』がた〜〜〜っぷりと詰まっていた。















  To Be Continued… 


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