小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 村上夏美らしき人物が、奴隷商に連れ去られた可能性がある――

 街の酒場でこの情報を入手した稼津斗達は、その酒場を拠点に情報収集を開始。
 名簿のコピーを作り、其れを手に街の人々相手に聞き込みを続ける事2日。

 「まとめると…夏美姉ちゃんらしき人物が奴隷商の一団に連れ去られた。行き先は南の港町『グラコニス』。」

 場所の特定の他に、他にも数人の女の子が一緒でありその内1人は病気のようだったとの情報もある。
 真意の程は不明にしろ、何れにしても手をこまねいている状況でない事は確かだ。

 「如何する?…と聞くまでも無いな?」

 「うん、行くしかない!」

 なれば当然その場に行くしかない。
 と言うか、それ以前に最悪と言って差し支えないこの状況においては僅かな情報であっても確かめるには値する。

 それに此度の情報、街の住人の殆どから同様の情報を得た故に信憑性は高い。

 「グラコニスは此処よりもでかくて治安も悪い、気をつけてな。」

 酒場のマスターから見送りを受け、一行は新たな目的地へ。
 と、店を出るその前に…


 「あの、マスター。昔この街にサウザンドマスターが来た事があったんですよね?彼はどんな人でしたか?」

 ネギがナギの情報を得ようとする。
 これも旅の目的だから自然な事だろう。

 「あぁ…18、9年前かなぁ?辺境の地でも知られた名前だし、対戦を終結させたと聞いていたからどんな切れ者かとも思ったんだが…
  そうだねぇ…うん、一言で言えば『馬鹿っぽい』。其れに尽きるかな?」

 「あ、やっぱりそうですか。」

 ネギの中で父に対する評価の下落は更に続いているようだ。











 ネギま Story Of XX 62時間目
 『大金稼ぎの方法は?』










 ――2日後・グラコニス移民管理局


 「ん?」

 「如何したのカヅト?」

 「この近くに和美とリインフォースが居るな。2人一緒みたいだが…」

 2日かかって辿り着いたこの場所。
 その場所で稼津斗はハッキリと和美とリインフォース、2名の『気』を感じ取っていた。

 2人一緒のようだが、極端に気を小さくしているのか居るのは分っても場所の特定には至っていない。


 「何やとぉ!?その3人は既に正式な『奴隷』ですたぁ、どーゆう意味やねん!!」

 其れとは別に、管理局カウンターにて小太郎の怒りが爆発していた。

 「確かに『ムラカミ』『オオコウチ』『イズミ』の名は見つけましたが、3人とも3日前からドルネゴス様の正式な奴隷として登録されています。」

 其れに対し局員の男性はあくまでも事務的に返す。
 此処に来る途中で、夏美と一緒にいた女子2名が亜子とアキラで有るという事は聞き込みで分っていた。
 だが、その2人を入れた3名が『正式奴隷』とはにわかには信じ難い。

 「んな訳があるかぁ!!」

 だから小太郎もヒートアップし、局員に掴みかかる。
 尤も、男性は汗垂らしながらも表情一つ変えないが…


 「落ち着け。」

 其れを諌めたのは稼津斗。
 小太郎の手を掴み、男性から離す。

 『少し落ち着け』とばかりに動きを手で制し、局員の男性と向かい合う。

 「『正式に』と言う事は契約書のようなものが有るのか?可能であれば見せてほしんだが…」

 『交渉事は冷静に』と、今度は稼津斗が局員の男性に聞く。

 「構いません。此方は写しになりますが、この奴隷契約書にもお三方の魔術署名が確りとあります。
  100万ドラクマの返済まで、この3人は確かに奴隷です。」

 提示された奴隷契約書の写し。
 其処にある署名の筆跡は確かに夏美、亜子、アキラのモノだ。
 生徒の字のクセも把握している稼津斗とネギが見紛う筈は無い。

 「…最悪だな。現状、正攻法で亜子達を取り戻す手立ては無いが…如何する?」

 一文無しと言う訳ではないが、100万ドラクマと言う大金が無いのは事実。
 そうなると、『3人を買い戻す』と言う方法は使えそうには無い。

 「如何するもへったくれも無いやろ!正攻法が無理やったら殴りこむだけや!!」

 「其れしか無さそうだね…」

 そうなれば『如何するか?』の答えも必然とこうなってしまう。
 既に小太郎は乗り込む気満々であるし、ネギもその心算の様だ。


 が、

 「殴りこむねぇ…それはちょっと拙いんじゃないのコタ君?」

 突然聞こえてきたギターの音と女性の声。
 振り返れば、フードとサングラスで顔を隠した女性が2人…

 「その行動力は評価するが、私達の話も少し聞いていった方が良いと思うぞ?」

 「和美にリインフォース…こんなに近くに居たのか。見事な気配の縮小だ…」

 その正体は和美とリインフォース…と外出用の小型人形に入ったさよ。
 どうやら、奴隷となった3人について詳細な情報を持っているようだ。








 ――――――








 その奴隷となった3人だが、只今絶賛お仕事中。


 『奴隷』と聞くと理不尽なまでの重労働をさせられるイメージだが、そうではない。
 現に亜子達がさせられているのは掃除、給仕と言った一般的な仕事なのだ。

 勿論、その量は半端ではないが『キツメのバイト』と割り切れる程度のものだった――少なくとも仕事内容は。


 「亜子…その、大丈夫?」

 「大丈夫やてアキラ。熱さえ下がれば、後はオリハルコンの力で自己治癒は出来るから。」

 その仕事をしながらの雑談。
 如何にも『病気のようだった』のは亜子だった様だ。

 今の状況に陥っているのを見ると、アーティファクトで出した魔法薬では余り効果が無かったのだろう。
 街に着いて、その病気の特効薬を貰って……そして今に至る。

 仕事そのものは麻帆良でトンでも日常送っていた彼女達にはさほどキツクは無い。
 問題は奴隷の証として付けられている首輪。

 夏美につけられているモノは一般的な奴隷に使うものと同じ。
 だが、亜子とアキラのは見た目は同じだがその強さに差が有る。
 この2人に関しては力が強い為、『高位魔法使い用』の拘束具と同等の強さのものが使われているのだ。

 此れによって亜子は魔力を、アキラは気を封じられてしまった。
 故に大人しく奴隷業に精を出すしかないのだ。

 ハッキリ言って現実離れ甚だしいこの状況。
 もしも、稼津斗とネギから『魔法バレ』して貰っていなかったら、夏美はとっくに混乱の極みでぶっ倒れていただろう。


 「ホラ、仕事仕事!今日から興行でバンバン客入って忙しいんだから!!」

 「「「は、は〜〜〜い!!」」」

 だが、矢張り奴隷の身分は低い。
 簡単な雑談ですら休憩時以外ではすることすら叶わない。

 余談だが、今3人に激を飛ばしたのは『チーフ』と呼ばれる責任者で見た目はクマのぬいぐるみそのものである。



 其れは良いとしてもだ、3人ともこの状況を1日でも早く脱却しようと真面目に働いている。
 しかし、何処の世界にも身分の低い者にちょっかいを出す者は居る訳で…

 「おわっと!何処見て歩いてやがる!」

 問題発生。
 ゴロツキと思われる男が亜子に因縁をつけてきたのだ。

 自分でぶつかっておいてとんでもない言い草だが、奴隷相手とタカを括っているのだろう。
 更に相手が年下の少女というのもあるかもしれない。

 「如何してくれんだ、あぁ?一張羅が汚れちまったじゃねぇか?」

 「よく言うぜ、洗いもしねぇクセに。」

 下卑びた耳障りな笑いで亜子に迫る。
 如何に亜子がオリハルコンの力を得ているとは言え、力の殆どを封じられた状態では所詮はただの女の子。
 肉弾戦のみで大の男3人を相手にするのは無理がある。

 「ほう?よく見りゃこいつは…絹のように白い肌に、其れに…ぎゃはは、良い趣味してるねぇウチの座長も!
  こりゃ中々一部の好事家に受けるぜオイ?」

 何も言わないのを良いことに、男は更に調子に乗る。
 下心その他が此処まで丸見えだとかえって感心してしまうくらいだ。

 「あ、あの…」

 「おう、嬢ちゃん驚かせて悪かったな!汚れたところキレイにしてくれたら怒らないからよ?」

 更に迫るが、其れを許さないものが居る。

 「亜子に手を触れるな…!」

 アキラだ。
 親友が酷い事されそうになっているのを黙ってはいられなかったのだ。

 だが、立ちはだかったアキラを前にしても男は余裕そのもの。

 「あん?こりゃ又上玉だなぁ?…オオコウチ・アキラね?3人で100万ドラクマとは何やったんだテメェら?
  まぁいい…『拘束(カブテット)・大河内アキラ(オーコーティエム・アキラム)』!」

 手にした玉にそう言った瞬間だった。


 ――バチィ!!


 「!?」

 首輪から電撃が発生しアキラを襲う。
 鍛えられてるとは言え、気が使えず、しかもこの不意打ちとも言える一撃には対処しきれない。

 「あぁぁ…!くは…」

 流石に耐えられずダウン。
 恐らくは逃走防止用の何かなのだろう。

 「ガキが…此れに懲りたら二度と刃向かおうなんて思うんじゃねぇ!
  テメェらは借金返済して身分買い戻すまではこっちの所有物なんだからな!おら、立てよ、さっさと拭きやがれ!」

 絶対的とも言える立場を利用しての暴挙。
 無理やりに亜子を立ち上がらせようと腕を掴むが、其れが命取りだった。

 「オイ…」

 「あん?」

 低めの声と肩に置かれた2つの手。
 何事かと振り返るよりも早く、



 ――バキィィィィ!!!



 「むべら!?」

 強烈な拳と掌打が一閃!
 男は吹き飛ばされ壁に激突。
 その衝撃で壁には皹が…!


 男を吹き飛ばしたのは稼津斗とネギ。
 3人の居場所を聞いて、先ずは確認の為に来ていたのだ。(勿論他のメンバーも一緒)
 その矢先で起きたこの騒動。

 2人とも考えるよりも先に身体が動いていた。

 「俺の亜子に…」
 「僕の生徒に…」

 「「手を触れるな!!」」

 鋭い眼光で睨みつける。
 因みに亜子は稼津斗が『お姫様抱っこ』している状態だ。

 「稼津さん…///」
 ――今『俺の』て言うた!?『俺の亜子』てウチは稼津さんのモン?きゃ〜〜〜〜♪


 その亜子の顔が紅いのはまぁ、仕方ないだろう。
 思考が少々暴走しているようではあるが…

 が、殴られた方も黙っては居ない。

 「何だテメェ等、イキナリ人の事殴りやがって!」

 「この3人は僕達の仲間です!貴方の好きにはさせません!」

 文句垂れるがネギも聞かない。
 こう言う輩は如何有っても許せないのだ。

 「仲間ぁ?はっ、そいつ等はこっちに100万の借金があるんだぜ!?」

 「あぁ?舐めとんのかタコ、トサカ。イカサマでサインさせよったくせに。ふざけ腐ってるとイテこますぞコラ。」

 今度動いたのは小太郎。
 恐るべき素早さでトサカ男に近づき関西人必殺の『メンチギリ』。
 姿が大人なせいで物凄く迫力がある。

 トサカ男も冷や汗を掻くが、それでもまだ自分に利があると思っているのだろう。

 「何か勘違いしているようだが…イカサマだろうと何だろうと借金返済まではその嬢ちゃん達はこっちの所有物だ!
  『拘束(カブテット)・和泉亜子(イズミエム・アコネム)、村上夏美(ムラカミエム・ナトゥミエム)』!」


 ――バチィ!!


 「きゃぁ!!」
 「あぁぁ!!」

 再びさっきの玉を使い今度は亜子と夏美に電撃が…!

 「分ったか?所有者が所有物を好きにして良いのは当然だろ?」

 「テメェ…!」
 「この…!」

 外道悪党此処に極まれりだ。
 小太郎もネギも一気に沸騰するが、


 ――ブチッ…


 「「…ブチ?」」

 「2人ともソコをどけ…」

 稼津斗がブチキレた。
 さっきの一件だって業腹モノだったのに、更に今又…キレルには充分すぎた。

 「は、やんのか?さっきのようには…「黙れ…」…へ?」

 最後まで言わさずに気を解放。
 その姿が銀髪蒼眼に変わり、吹き荒れる気が周囲の物を吹き飛ばしている。

 「え!?ちょ、待てお前…なんだその力…聞いてねぇぞ…!!」

 思ってもみなかった力に驚くがもう遅い。

 「黙れと言った…!」

 気を篭めた拳が炸裂…

 「何やってんだいこの穀潰しがーー!」


 ――ベキィ!


 する前にクマがトサカをブッ飛ばした。
 そう、さっき亜子達に檄を飛ばしていたチーフだ。

 「又こんなモン持ち出して奴隷にちょっかい出してたのかい?好きにして良いだってぇ?勘違いしてんのはどっちだよ!?」

 「い、居やこれはちょっと成り行きで…」

 「問答無用!アンタみたいなゴロツキよりもこの子達の身体の方がずっと大事なんだよ!
  怪我でもさせたらどうやって弁償するつもりだい!?何度言えば分るんだか!!」

 見事な速攻である。
 ブッ飛ばしてから説教交じりの踏みつけストンピングの嵐。
 だ〜〜〜れも助けないところを見ると、このクマには逆らってはいけないのだろう。

 「…クマのぬいぐるみ?」
 「ぬいぐるみだね?」
 「ぬいぐるみやろ…。」
 「ぬいぐるみネ♪」
 「ぬいぐるみだ〜〜。」
 「文句が付けようのないぬいぐるみだね〜。」
 「と言うか、アレは本当に生身の生き物か?」
 「知るか、もう何でもありだろ…」

 台風のような出来事に気勢を削がれ、稼津斗は通常状態に。
 一行の見解は、目の前の(多分)女性は『クマのぬいぐるみ』であると言う事で一致していた。








 ――――――







 「いずれにしても問題は山積みだ。」

 騒ぎが一段落し、一行はテラスに。
 亜子達3人はクマチーフが『電撃の影響のせいで今日はこれ以上は働かせられない』と連れていった。
 勿論『必ず助け出す』と約束はしたが。

 「簡潔にまとめてくれるか?」

 バッジを和美に投げ渡し、そう言う。
 場所以外のその他は後回しにして此処に来ていたのだ。

 「サンキュ稼津兄。私としたことが聞き込みの最中でバッジを落すとはね〜…イクサのは転送の影響で不具合起きてたから使えなくてね…」

 「瞬間移動を使おうにも土地勘ゼロでは流石にな…」

 そう言う理由だったらしい。
 ともあれ、先ずは状況整理が先決。

 「結論から言うと…あの3人を力ずくで救出するのは実質無理だね。
  経緯はどうあれ、正式な契約である以上はあの首輪はどんな魔法使いにも外せない…らしい。
  もしも無理やり外そうとすれば爆発してお陀仏さね。…まぁ、亜子は再生するから大丈夫だろうけど…流石にグロいからね…」

 矢張りあの首輪はとんでもない代物だった。
 先程の電撃は、本来脱走などの緊急時に使用される『非致死性』の拘束魔法である。
 『非致死性』ならばダメージは受けても、死に至る事が無いように出力調整がなされているのだろう。

 だが、無理やり外そうとした際の爆発処置は完全な『致死性』。
 それが首元で炸裂したとなれば不死である亜子以外の2人は先ず間違いなく即死だ。

 「だが、其れは老師の同調やアスナさんの能力でなんとかなならないのカ?」

 其れを聞いた超が即意見。
 確かに稼津斗の同調系の技や、アスナの『完全魔法無効能力』を使えば首輪の解除が出来るかもしれない。

 「確かにそうなんだが、3人を奴隷にした此処の主は幾つかの大きな闘技場を経営している有力者の1人だ。
  ソコから違法に3人を連れ出すと後々面倒なことになる…下手な行動は控えた方が良い。」

 が、今度はリインフォースが其れを否とする。
 確かに地元有力者を敵に回して得などは無いだろう。

 「結局、100万ドラクマ払って3人を買い戻すのが一番波風が立たない…か。」

 「せやけど、んな金何処にあんねん…10年遊んで暮らせる額らしいで?」

 とどのつまりはソコに帰結するが、小太郎の言うようにそんな大金は現状ありはしない。
 普通に稼ぐには法外も良いところな額だ。

 「いや、無いことも無さそうだよ?ある意味では僕達にはピッタリかもしれない。」

 だが、其れはあくまでも『普通に稼いだら』の話。
 一攫千金のチャンスが有るのも、これまた何処の世界でも同じだろう。

 ネギが見つけたのは壁の張り紙――拳闘大会。
 その優勝賞金額は『100万ドラクマ』だった。









 ――――――








 ――数時間の後


 「はっ!テメェ等が拳闘士になりたいと言うとは思わなかったぜ!」

 先程クマチーフにフルボッコにされたトサカが仕切る円形闘技場に稼津斗、リインフォース、ネギ、小太郎の4人が居た。
 この4人は大会に出場すべく入団テストを受けることにしたのだ。

 「取り急ぎ大金が必要でな。」

 挑発的なトサカにも稼津斗は冷静に返す。
 さっきの一件で完全に怒りが吹き飛んでしまったらしくトサカを見ても如何とも思わなくなっているらしい。
 まぁ、今度亜子達に手を出したら、その時は問答無用で人生にピリオド打たせるのだろうが…

 「はっ、金ね?舐めてんのかテメェ等!?」

 「舐めてなど居ない。本より俺は武道家だし、他の3人もそこいらの拳闘士の10倍は強い。」

 「…10倍で足りるのか?」

 「俺とネギで10倍やったら…」
 「カヅトとリインフォースさんは1000倍だね…変身したら5万倍超だよ…」

 拳闘士などと簡単に言い出した稼津斗達が気に入らないのかトサカは怒鳴るが何のその。
 マッタクこの4人は余裕たっぷりだ。

 「まぁいい、座長は訓練士達に勝てたら入団させてやるってよ。逃げんなら今のうちだぞ?兄貴達は強いからなぁ!
  まぁ、勝てとはいわねぇよカワイソウだからな!4人で5分持ったら許してやるよ!」

 それほどの相手なのだろうか?
 相当に訓練士達に自身があるようだ。

 「兄貴!」

 呼ばれ、奥から数人の男が入ってくる。
 その先頭をきって入ってきたのはスキンヘッドの大男。

 「何処のどいつだぁ?その命知らずのガキはよぉ?」

 其れは前の街の酒場で稼津斗に完全KOされた大男――バルガス。
 よくよく見ればその他の男も稼津斗達で叩きのめした連中の内の何人かだ。

 「お?」
 「あ…」
 「へ〜〜…」
 「誰だ?」

 当然稼津斗達は(リインフォースを除いて)気づき、


 「「「「え?」」」」

 相手も気付く。
 其れを見た稼津斗はニッコリ笑うと、


 ――轟!


 XXに変身。
 その瞬間にバルガスの顔から一切の笑みが消える。
 無理も無い、酒場で苦汁を舐めさせられた相手が目の前にいるのだから。

 「あの、兄貴?」

 トサカが呼ぶも反応が無い。
 完全にビビッて居る。


 「なぁ、兄ちゃん…」

 「あぁ、少なくとも入団は略確定だな。」

 油断ではなく強者の余裕。
 本よりこの4人が簡単に負ける筈も無い。

 「目標クリアタイム…10秒ってところか?」

 「まさか…5秒の間違いだろう?」

 「5秒だって。」

 「へっ…楽勝や!ほな行くでぇ!!」

 飛び出した4人に対し、バルガス達は未だビビッタまま。
 少々カワイソウだがこれも仕方ない事だ。

 入団テストの結果は――言うまでもないだろう。








 ――――――








 その頃…


 ――メガロメセンブリア・ゲートポート



 ――バシィ!!!


 激しい光と共に誰かが転送されてきた。

 「来た〜♪」

 「良かった、ゲートが完全に閉じてしまう前に間に合ったわね…」

 「本当にギリギリだったけれどね。」

 ゲートポートでの一軒を真名が報告してから数日。
 漸く麻帆良からの『応援』が到着したらしい。

 近右衛門が言うには『此方の対応もあるので1人だけだが最も頼りになる者を送る』とのこと。

 「成程、確かに貴方なら頼りになる。待っていたよ――高畑先生。」

 スーツに眼鏡に無精ヒゲ、そして咥えタバコ。
 『学園広域指導員』、通称『デス眼鏡』こと高畑・T・タカミチが其処に居た…















  To Be Continued… 

-62-
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桜風に約束を−旅立ちの歌−
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