小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 「いや〜はっはっは!まさか此処までやばいもんだとは思わなかったぜ!!俺じゃなかったら死んでたなマジで!」

 ラカンによる闇の魔法の反動実演。
 自爆同然にぶっ飛んだはずなのに何故かラカンは無傷。

 「どこぞの世紀末救世主にやられた相手の如くぶっ飛んでたよなあのおっさん!?何で無事なんだ!?」

 「カヅッチみたいにオリハルコン内蔵してるのかな〜〜?」

 「…流石にそれはないと思うが…」

 コイツも大概チートであるようだ。

 「でだ…コイツのやばさは分ったと思うが…坊主、お前は如何する?」

 危険性は分ったであろう上で聞く。
 ネギは目を瞑り直ぐには答えない。

 だが、その心は既に決まっていた。

 「ラカンさん僕は―――」











 ネギま Story Of XX 68時間目
 『Go to the Darkness』










 「僕は闇を選びます!」

 「ほう?」

 アレだけの反動を見ながらも、ネギは闇の魔法習得を決断した。
 其れにラカンも満足そうな表情だ。

 稼津斗は稼津斗で『矢張りな』と言った表情。


 ネギは既に独学とは言え魔法を自身に融合する基礎理論は会得している。
 ならば後は其れをより実践的に高めるだけだ。
 そう言う意味では、基礎理論が同じである『闇の魔法』は打って付けだっただろう。

 勿論理由は他にもある。

 「何故、エヴァンジェリンさんが僕に物凄いハードトレーニングを課していたのか…その意味が分りました。
  きっとエヴァンジェリンさんは僕に『闇の魔法』を会得させる気でいたんです。
  あのハードトレーニングは闇の魔法の反動に耐えられるだけの身体を作る事が目的だった…」

 其れは今までのエヴァによる修行。
 基本ハードであるが、ネギの修行はその中でも特にハードであった。
 だが、其れはつまり闇魔法に耐えられる身体を作ることが目的だったのだ。

 だからネギは迷わずに闇の魔法習得を選ぶことが出来た。
 あのドギツイ修行の日々は無駄ではないのだから。


 「くっくっく…よく言ったぜ坊主!其れでこそ俺様が身体張った甲斐があるってモンだ!
  思った通りだ間違いねぇ!『アノ』エヴァンジェリンが見込んだんなら、お前はコイツを習得できるはずだ!」

 高笑いし、ラカンは1つの巻物を投げて寄越す。
 其れは良くある魔法の巻物のようだが…恐らくそうではないだろう。

 「…これが闇の魔法の書か、ジャック?」

 「おうよ。コレを開けた時が=闇の魔法習得の為の修行の開始だ。」

 矢張り普通ではなかった。
 この巻物が闇の魔法習得の修行の開始となる――そう聞いてはネギは止まる事はできない。

 「此れが修行の開始なら…迷うことはありません!」

 巻物の紐を解き、其れを展開する。

 「どんなにキツイ修行が待っていようとも乗り切って見せます!!」

 言い切る。
 迷いも戸惑いも無い…本当にいい瞳でだ。

 だが…


 『ほざいたな餓鬼が。』

 「え?」

 巻物から魔法陣が現れ、何かが姿を現す。


 「マクダウェル?」

 「エヴァンジェリンさん!?」

 現れたのはエヴァンジェリン。
 いや、正確に言うならば巻物に施されたエヴァンジェリンのコピー。

 如何やら彼女こそが闇の魔法習得の為の修行を行ってくれるようだ。

 『だが…ふ、素養はありそうだ。先ずは打ち勝って見せろ。其れができなければ貴様は終わりだ。』

 言うが早いかネギの頭を鷲掴みにし、押し倒す。
 同時にネギを物凄いプレッシャーが襲う。

 「ぐ…うわぁぁぁ!!!!!」

 そのプレッシャーにネギは気を失う。
 更に…

 『…ふむ、貴様も中々に面白そうだな?お前も一緒に行け!』

 「お?」

 見ていた稼津斗にも飛び掛りプレッシャーを与える。
 勿論稼津斗はこのプレッシャーにも微動だにしないが、ネギ同様に頭を掴まれてしまった。

 『態とか貴様?』

 「さて…如何だろうな?」

 『フン…まぁ良い。お前も抗って見せろ!』

 そして強烈な魔力が叩き込まれる。
 同時にコピーエヴァも消え、稼津斗も崩れ落ちる。


 「え?…おい!!」

 「コイツは予想外だな…兄ちゃんまでとりこまれるたぁ…ま、強くなっから問題ないだろ。」

 「其れで良いのかおっさんよぉ!?」

 「ま、なんとかなんだろ?あの兄ちゃんなら大丈夫だろうし、坊主だってやり遂げるだろうよ。」

 慌てる千雨だが、ラカンは大丈夫と言う。
 歴戦の勇士は馬鹿でも眼力は凄い。

 そのラカンが『大丈夫』と言うのだから、最悪の事態だけは起こらないだろう。


 「あれ?ネギ君は気絶してるけどカヅッチは寝てる?」

 ただ、地力の違いなのか、稼津斗はネギと違い殆ど熟睡状態であった。








 ――――――








 稼津斗とネギが闇の魔法修行に引き込まれた頃、散り散りになったメンバーも各々飛ばされた先で逞しく生きていた。

 「駄目だ、崩れる!!」

 「くそ…最後の最後でこんな…出口は!」

 「だめ間に合わないわ!!」

 「間に合わない…なら、皆さん私に掴まって下さい!」

 その1人、宮崎のどかはこの地で知り合ったトレジャーハンターと行動を共にしていた。


 強制転送で飛ばされた謎の遺跡で出会った彼等に頼み込んでトレジャーハンターとなり各地の遺跡を回っているらしい。

 「此れで良いのノドカ?」

 「はい!行きます…『無影・月詠』!!」

 アーティファクトに記された稼津斗の瞬間移動を使い遺跡の外へ。
 この瞬間移動も彼等がのどかを仲間にした最大の理由だろう。


 一行は一瞬の後に遺跡から離れた高台の上に移動。
 その視線の先では、先程まで居た遺跡が音を立てて崩れている――間一髪であった。

 「た〜〜〜…危なかった〜〜。」

 「まさか遺跡が丸ごと崩れるとはねぇ…」

 彼等にとってもこのトラップは予想以上のモノだった様だ。
 のどかが居なかったらお陀仏だったかもしれない。

 「けど、今回もノドカのお手柄だね。大丈夫?怪我は無い?」

 「は、ハイ大丈夫です!」

 「そう…でも、ホントに凄いわよね。遺跡で拾ったアンタが『仲間に入れてくれ』って言ったときはどうしようかと思ったけど――」

 「うんうん、ノドカちゃんの魔法技術は一級品!特に罠発見能力と、今の瞬間移動!」

 「使える…」

 「その歳でそんなスキル、一体何処で身につけたんだい?」

 「えっと…部活で――」

 なんにせよ、のどかの力はこの一団にとって既に無くてはならないものの様子。
 仲間とも上手く付き合っているようだ。


 で、彼等はトレジャーハンターだ。
 となれば、遺跡を訪れる目的は当然『お宝』。

 一仕事終えた後は、お宝分配タイム。
 今日の仕事は『当り』だったらしく、売ったら凄い値段になるであろうお宝がザクザク。

 危険はあれども、此れが楽しいからこそ止められないのだろう。

 「今日は大漁だ!嬢ちゃん、ホントに要らないのかい?」

 「遠慮する事ないよ〜〜?」

 「いえ、そんな――私には此れだけで充分です!」

 だが、その分配でのどかは余り多くを貰わない。
 元々が謙虚な彼女は財宝には余り興味が無く、今日も1つのマジックアイテムを貰っただけである。

 尤も、此れこそがのどかが求めていたものなのだが。

 「ふ〜ん…此れがノドカが捜してたマジックアイテムね?」

 「はい、遂に……皆さんのおかげです――」

 其れは鋭い爪がついた指輪形の魔法具――相手の技の『特性』を見破る伝説級魔法具『幻獣の心眼』。
 アーティファクトの力で他者の技を何でもコピーできるのどかにとって誂えたような一品であった。












 また、別の場所では…


 「開門、開門〜〜〜!!帰ってきやがったぜぇ!!!」

 「おぉ!ありゃ黒竜の角じゃないか!」

 「やったのかい楓ちゃん!」

 「やりやがったぜあの糸目の姉ちゃん!」

 「あぁ、あの人の強さは本物だな!!」

 楓がこの村の村民からの依頼で竜種の、其れも取り分け凶暴で強力な『黒竜』の退治を完了していた。
 退治と言っても倒す訳ではない、2本有る角のうち左右どちらでも良いので1本折ればそれでいい。
 角が片方しかない竜は途端に攻撃性が低くなり、村を襲ったりしなくなる。

 余りに強いが故に、正規の軍人でも手こずり角を破壊するのがやっとと言う相手。
 だが、其れも楓の前では赤子同然。
 角一本の破壊など、児戯に等しいことだっだ。(もっと言うなら目隠ししたままで余裕勝ちであった。)

 『治癒師』として一緒についていった木乃香も結局は竜の傷を治すだけに留まっていたのだ。


 ともあれ依頼は完了。
 毎年頭を悩ませている竜を退治してくれたとあって、村民は大歓声。
 来年まで竜の被害を受けなくても良いとなれば当然だろう。

 「こんな田舎の村じゃ辺境軍も中々来てくれないからね〜。」

 「ホントに助かったよ。…其れに引き換え、ウチに泊まってるゴロツキの役に立たないコト!」

 「う…勘弁してよ女将さん…」
 「相手、黒竜だぜ?」

 村の腕自慢のゴロツキもスッカリ形無しだ。
 まぁ、比較対象が楓では仕方ない。

 「いや、しかし――依頼されてた竜退治は2匹、1匹は見つける事が出来なかったでござるよ?」

 その楓でも、2匹のうち退治できたのは1匹――もう1匹は見つけられなかっただけなのだが。
 此れでは依頼は半達成、それでこの歓迎は少しばかり気が引けるのだろう。

 「それなら安心おし!そのもう1匹も旅の2人組の賞金稼ぎが退治してくれたらしいんだよ、もう安心さね!
  被害らしい被害も無かったし、ホント今年は運が良かったよこの村は!!」

 が、そのもう1匹も何者かが退治したらしい。
 其れならば大丈夫だろうが、黒竜を倒したともなれば相当な手練である事は間違いない。
 楓はその実力に驚きながらも、その2人は『蒼き翼』のメンバーの誰かかもしれないと考えていた。


 其れとは逆に、このかの表情は浮かない。
 落ち込んでいると言うのがピッタリの顔だ――親友が行方不明で、更に賞金首として手配されているのだから当然だが。

 「…アスナ殿と刹那が心配でござるかな?」

 「へ?えと、あの…ウチそんな…」

 「大丈夫でござるよ。稼津斗殿とネギ坊主も無事だった――あの2人もきっと…」

 そんな木乃香を楓は励ます。
 アスナと刹那の実力ならば無事である確率の方が高いのだ。

 そんな中で、

 「ほら、元気出しなさい?」

 決して大きくないがよく通る声が聞こえて来た。

 「しかし、お嬢様がこの近くに居るのに竜退治などで時間を――」

 続いて聞こえてきたのは何かを焦るかのような声。
 どちらも楓と木乃香には聞き覚えのある声だ。

 「人助け兼旅費の確保よ。黒竜の角は凄い値段で取引されるから。」

 「あ、スイマセンそんな重いものを…お持ちします――」

 「良いわよ。此れも勘を取り戻すのに役立つから。」

 声はドンドン近くなり、その姿が顕になる。



 其れは竜の角を担いだアスナと刹那。
 楓の予想通り、もう1匹の黒竜を退治したのは『蒼き翼』のメンバーだった。

 「こ、この…」
 「せっちゃ〜〜〜〜〜〜〜ん!!」

 で、思わぬ再会に感極まったのか、木乃香は刹那に飛びつき抱きつき、その勢いのまま2人揃って倒れこむ。
 刹那が確り受け止めているので怪我は無いだろう。

 「楓…」

 「アスナ殿、無事で!」

 アスナと楓も軽く挨拶。
 こっちは互いの無事を信じていたのだろう。

 「せっちゃんせっちゃん!会いたかったも〜〜〜〜ん!!」
 「おじょおじょじょじょ、おじょ、おじょうさま〜〜〜!?」

 幼馴染コンビは木乃香が余程嬉しかったのかついには頬ずりまで。
 刹那は完全にオーバーヒートである。

 「木乃香…まぁ、取り敢えず『蒼き翼』4名が揃った訳ね。」

 「で、ござるなぁ。アスナ殿達は今まで何を?」

 「刹那と賞金稼ぎ。まぁ、手配されてるから大きな街は避けてだけどね。」

 やってる事は互いに大差なかった。
 ただ、手配されて居る影響でアスナ達は些か動き辛かったようだが。

 「しかし、アスナ殿…随分本来の力が戻ってきたようでござるな?」

 「そうみたい。此処に戻ってきたのも影響してると思うけど……けど、なんにせよ目指すはオスティア。
  其処でネギや皆と合流するのが目下の目的でしょ?」

 「あいあい、そうでござるな♪」

 再会は僥倖だったがやる事に変わりは無い。
 一刻も早く仲間達との合流は必須だ。


 「で…大丈夫でござるか刹那?」

 「ほへ〜〜〜…」

 で、其れとは別に木乃香に散々抱き締められ頬ずりされていた刹那は完全にオーバーヒートしていた……頑張れ。








 ――――――








 さて、闇魔法の修行に引きずり込まれた稼津斗とネギは完全に対照的な状態に成っていた。

 「うく…ハァ、ハァ…ぐ……ぐぅ…!!」

 「くか〜〜〜〜…」

 激しい熱病に侵された様になっているネギに対し、稼津斗は完全熟睡。
 同じ魔法に取り込まれた筈なのにまるで違うのだ。

 「ちぃ…稼津斗先生は余裕だが、ネギ先生の方は全然熱がさがらねぇ!こっちに飛ばされたときと同じだ!!」

 「千雨ちゃん、新しい水〜〜!」

 状態が誰の目に見ても悪いネギは千雨と桜子で看病状態。
 まるで熱が下がらない為に、目が離せないのだ。

 「くそ!アイツ何しやがった!つーか何処行った!?」

 「エヴァもどきの事か?ありゃあエヴァの劣化コピー…人造霊だな。
  今頃は坊主と兄ちゃんの頭の中だろうぜ――闇を使えるようになるための試練て訳だが――」

 ちらりと稼津斗とネギを見やる。

 「まぁ、大丈夫じゃねぇか?聞いた話だと坊主は器は出来てるみてぇだしな。
  この熱も、一時的にでかい魔力流し込まれた事が原因だから、暫くすりゃ熱は下がる。」

 「そうなの〜?」

 「おうよ。今度はその流し込まれた魔力を使って精神世界で修行する訳だからな。
  尤も、あれだけの魔力流し込まれて全然平気っつーそっちの兄ちゃんが吃驚だがな…」

 矢張りラカンから見ても、闇の魔法の試練に引き込まれて尚普通に寝てる稼津斗は驚きらしい。
 確かに、此れだけ見たら『禁呪』の修行中とは誰も思わないだろう。

 「か〜〜〜〜…」

 「なんつーか、稼津斗先生だと納得しちまうな…と、椎名もっと水頼む!」

 「了解〜〜!」

 闇の魔法の会得は周囲も中々大変なようだ。








 ――――――








 「…此処は俺の精神世界か?」

 「その通りだ。思った以上に冷静だな貴様?」

 「ネギが気を失ったの見て大凡予想が付いたからな。」

 闇魔法の試練・修行に引き込まれた稼津斗の目の前には高層ビルが立ち並ぶ風景が現れていた。

 麻帆良では無い。
 空には近未来的な形の車が飛び、中空には光学モニターの映像が流れている。

 そう、此処は稼津斗の記憶が再生されている世界。
 此れが稼津斗が元々生きていた世界の風景なのだ。

 「…貴様なら私の手から逃れる事は簡単だったろうに…何故つかまった?」

 コピーエヴァは問う。
 稼津斗を引き込んだものの、簡単に引き込めたことが疑問だったのだ。

 「ネギを見て予想が付いたと言ったろ?」

 言いながら歩き始める。
 精神世界とは言え、稼津斗にとっては実に800年ぶりとなる『平和だった頃の故郷』だ。
 コピーエヴァも其れに続く。

 「此処が俺の記憶を元に構成されている世界なら、会えるかもしれないと思ったのさ。」

 更に歩を進め、ビルの裏手に入って行く。
 どんな世界でも、こう言う場所は暗く、犯罪が置きそうな雰囲気がバッチリだ。

 「会う?誰にだ。」

 「…俺が一度も勝つことが出来なかった相手だ。」

 「なに!?」

 更に裏道を歩き、着いた先は少し開けたスラムの広場。
 その一番奥に誰かがいる。


 白い長髪と白い長髭。
 青紫の中国拳法胴衣に身を包んだ短身痩躯の老人。

 其れを見た稼津斗は軽く笑い、その老人に声をかける。


 「久しぶりだな爺さん。」

 「む…貴様か小僧。……ふむ、大分腕をあげたようだな?」

 「あぁ、アンタに勝つ為に修行積んできたからな。」

 稼津斗から気が溢れ出す。
 同様に老人からも気が溢れる。


 「なに!?馬鹿な、これほどの力が…!」

 その強さにはコピーエヴァも驚くくらいだ。


 「ワシに勝つか…果たして出来るか?」

 「連敗もそろそろ200の大台だ…ここらで連敗は止めるさ。」

 そう、この老人こそが前に稼津斗が言っていた『一度も勝てなかった相手』。
 稼津斗は前の世界での唯一の心残りを果たす為に、この試練を受け入れたのだ。



 時を越えての闘い
 800年ぶりとなる闘いの火蓋が、稼津斗の精神世界で…

 「行くぜ、爺さん。」

 「来い、小僧。」


 切って落とされた。
















  To Be Continued… 


-68-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




魔法先生ネギま!(1) (講談社コミックス―Shonen magazine comics (3268巻))
新品 \420
中古 \1
(参考価格:\420)