小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 稼津斗とネギが新たな力を得た頃、居残り組にも動きがあった。
 行方不明者が何人か消息がハッキリしていたのだ。

 「アスナと刹那さんがこのかと楓さんと合流できたって!それに本屋ちゃんから連絡が!」

 「ホンマか!?」

 先ずはアスナ、刹那、木乃香、楓、のどかの消息が判明。
 まぁ、このあたりは問題ない面子だ。

 「っと…こっちも古菲を発見したって千雨ちゃんから!」

 「マジかオイ!」

 和美も世界中に展開しているアーティファクトで古菲を発見。
 その情報は千雨のほうに送られているだろう。
 作戦は見事なまでに順調だ。

 更に闘技場に有るレストランでは…

 「嬢ちゃん、其処の嬢ちゃん!」

 「あ、はい…」

 アキラがイルカ人間(?)に呼び止められていた。

 「今この街で話題の拳闘士、ダブルエックスかルイン、或いはナギかコジローってのに用があるんだけどよ、会う方法はねぇかなぁ?」

 「え?あの…その4人なら知り合いですが――何か御用ですか?」

 「ホントかい?そりゃ手間が省けた。実はトラック仲間に頼まれてな、その4人に会うことがあったら伝言をってな。
  え〜と…『ユーナとマキエ、それから巫女さんは元気、ご心配無く。1ヵ月後のオスティアへの旅費の為にお仕事中。』だとよ。」

 「!!」

 ソレから得られたのは裕奈、まき絵、千草の無事の連絡。
 一気に8人もの仲間の安否が分った。
 此れは大きな収穫だろう。











 ネギま Story Of XX 71時間目
 『事態は色々動き出す』










 さて、ソレとは別に新たな力を得た2人はというと…?

 「ハァァァ…波導掌!!」

 稼津斗はシャドーの要領での実戦イメージトレーニング。

 「ふぅぅぅ…固定!掌握!!」

 ネギは闇の魔法の術式装填を色々試していた。

 2人とも凄まじいレベルアップを遂げている。
 ネギは、マダマダ闇の魔法の初歩のみしか出来ないが、それでも略完璧に術を運用している。

 稼津斗は、あの精神世界でのトンでもバトルのお陰で基礎能力が更に高くなっている。
 加えて動きに今までの空手特有の『無骨な直線さ』が無くなり、『剛柔併せ持った滑らかさ』がプラス。
 それでいながらも空手の『力強さ』は微塵も失っていない。


 「あいつ等一体何処まで強くなんだよ…レベル限界突破してんのか?」

 「パラメーターの上限は無いっポイよね〜〜♪」


 千雨と桜子の言う様に『成長限界』を感じさせない能力の上昇。
 また、その上昇の早さが半端ではないのだ。

 「いい感じだぜ坊主。この分なら自分だけの術式装填も遠からず出来るはずだぜ?
  それにあの兄ちゃんも……くくっ、コイツはガチで楽しみだぜ!」

 ラカンの予想をも上回る速度と正確さでレベルアップしているのだ。
 恐らく今の段階でも、オスティアの大会での大活躍は確実――寧ろ稼津斗組とネギ組の決勝戦になるとまで思っていた。


 「まぁ行方知れずの面子の内、何人かは無事が確認できたからテンションも上がるか?」

 「かもねぇ♪」

 試練復帰直後だと言うのに、修行に気合が入っているのはソレもあるだろう。


 「覇王…翔哮拳!!」


 ――ドガァァン!!


 「だからってよぉ、シャドーで山一つ吹き飛ばすなってんだ!非常識度が更に上がってんぞオイ!」

 で、千雨の突っ込みは尤もである。
 シャドーの〆に放たれた必殺気功波『覇王翔哮拳』は彼方の山を木っ端微塵に粉砕していた。
 『ついで』で稼津斗を闇の試練に引き込んだコピーエヴァはどうやらトンでもない事をしてしまった様だ。


 「…気の練が少し甘いな、丸2日は流石に寝すぎたか。」

 「嘘だろオイ…」

 氷薙稼津斗――この男に成長限界はあるのか?
 大いに謎である。








 ――――――








 さて、修行組と居残り組の方は順調である。
 では無事が確認できた他の面子、或いは確認できていない他の面子は何をしているのだろうか?



 CASE1:宮崎のどかの場合


 のどかはトレジャーハンターとして今日も一仕事終え、仲間のクレイグ、アイシャ、リン、クリスティンと共に酒場に。
 年齢的にNGなのだが、ぶっちゃけ稼津斗の従者連中は泊まりに行った度に晩酌に付き合っている。
 なので全員飲酒の経験ありである。(年頃故に興味も多分にあったのだが…)

 尤も、魔法世界ではのどか位の齢での飲酒は別に違法ではない。
 だからこそこの面子ものどかを一緒に連れてきたわけで…

 「嬢ちゃんほんとに分け前それだけで良いのかい?」

 「遠慮し過ぎってのは美徳じゃないよん?もしも俺が雇い主だったらその10倍の報酬払ってるけどねぇ?」

 「いえ、生活費と旅費があれば充分ですので――――」

 ソレはソレとして、目的物を手に入れたのどかは謙虚そのもの。
 お宝の分け前も生活費と旅費の分意外は貰わないのだ。
 『宵越しの金は持たない』という事だろう、天晴れ。

 なのだが、実はのどか『真アーティファクト』の機能を全開にしたことは無い。
 する必要が無かったのが主な理由だが、矢張り1度は使ったほうが良いだろう。

 ――少し使ってみたほうが良いかなぁ…?

 思い立ったが吉日。
 早速使用しようと――

 「嬢ちゃん。旅費ってのはやっぱ例のオスティアまでだよなぁ?」

 して、話しかけてきたのはクレイグ。
 メンバーの中でも何かとのどかの世話を焼いてくれる好漢だ。

 「俺達が送ってやるぜ。コンだけ活躍してもらって何も無しってのもな…」

 「けど、クレイグさん其処まで…」

 「ガキが遠慮すんなっての。」
 ――やっぱ放っておけないぜこのお嬢さんは。故郷の幼馴染の小さい頃に似てるんだよなぁ…


 「へ?」

 何か聞こえた。
 確りとアーティファクトが機能しているらしい。

 「なあ?」

 「そ、そうね…」
 ――コイツ最近妙にノドカに優しいわね…私には一度もあんな言葉は…ハ!ま、マサカそう言う事なの!?
    ちょちょ、待って駄目よそんなの!!大体ノドカには思い人が居るって!!


 ――相変わらずバレバレだねアイシャ、顔に出てるよ?
    …そーいう君を見るのが楽しくもあり、苦しくもある……てね。


 ――クレイグは故郷の身分違いの幼馴染を未だに想い続けていると言う事を伝えた方が良いのだろうか…?


 「!!?」

 的確に、正確にメンバーの心理を読み取るアーティファクト。
 とんでもないことこの上ない。


 ――ダメよダメよ、バカクレイブ、バカバカバカバカ、そりゃ確かにノドカはとっても可愛いけど!!


 「!!!」
 ――こ、これはぁぁ…!!


 なにやら理解してはいけない人間関係を一瞬で理解してしまった様子。


 ――て、敵がでるまでフルモードは控えておこう…


 賢明な判断である。








 CASE2:春日美空の場合


 「半端ねえ魔法世界!高級ディナーに高級ホテル……正に夢の国、気に入った!
  麻帆良で魔法生徒やってるだけでこのVIP待遇!こりゃ最高のサマーバケーションだね!」

 実は美空はココネと一緒に他の3−Aメンバーとは別に、高音や愛衣と共に少しばかり早く魔法世界入りしていた。
 魔法世界入りしたての頃はVIP待遇に檄満足!

 まぁ、あまりに羽根を伸ばしすぎて高音から苦言を頂いてたりするのだが本より美空は観光目的。
 適当に楽しんだらココネ共々麻帆良に返るつもりだったのだが…



 『本日未明世界各地のゲートポートが破壊され…』

 「って帰れねぇ〜〜!?」

 その数日後に例のゲートポート破壊事件勃発!!
 完全予想外の事態に高音も愛衣も大慌て。

 美空も美空で慌てているが…

 「ま、いっか…元々影薄いし。此処に骨を埋めるっすか…」

 「ミソラ…」(汗)

 謎シスターは諦めも早かった。
 いっそ清々しいまでに早かった。

 まぁ、美空達は如何有っても無事だろう。








 CASE3:綾瀬夕映の場合


 夕映は夕映でオスティアの記念式典警備任務に志願し、その選抜試験を受けていた。
 同室であり、親友とまでになったコレットとのコンビで試験に挑んだのだが…


 「ビリとビリ2位か〜〜…かっこ悪ぅ…」

 「過ぎた事を何時までもみっともないですよコレットさん。」

 「そもそもの原因は委員長が無理に近道しようとしたせいだけどね。」

 「ぐ…」

 そう、一緒に飛んでいる院長のエミリィとそのお目付け役ベアトリクスと共に最下位なのだ。
 というのも、近道を敢行しようとしたエミリィ組が魔獣『鷹竜』に襲われたのだ。

 で、夕映組も巻き込んでの大バトル!
 結果としては夕映の機転で何とかなったが選抜試験は最下位確定。

 まぁこの戦闘で夕映の仮契約カードが本来の機能を取り戻したので一概に悪いことばかりでもないのだが…

 コレットも夕映の記憶が戻るかもしれないかもと思っていたので残念そうだ。


 だが、世の中は中々どうして上手く行くらしく、最下位組を出迎えたのは盛大な拍手と歓声。
 野生の竜種を倒したという情報は確りと生徒達に伝わっていたらしい。

 更に更に総長である女性が現れ、直々に『竜種を倒した者には特別枠を与えて合格』にするという。
 当然喜ぶが…

 「凄いよエミリィ!」
 「流石は委員長!!」
 「竜を倒せたのも納得だわ!!」
 「オスティア行きオメデト〜〜〜!!」

 誰も彼もがエミリィ組が竜を倒したと勘違い。
 まぁ、成績下位層の夕映組がやったと思えと言うのに無理が有るだろうが。

 コレットは納得していない様子だがこれまた仕方ない事かもしれない。
 だが、意外なことに…

 「お待ちなさい!!」

 今正に辞令が言い渡されようとしていたのを止めたのは他でもないエミリィ。
 何事かとざわめく周囲をよそに、彼女は夕映の肩に手を置き宣言する。

 「皆さん勘違いしているようですが、竜を倒したのは私ではありません……このユエさんです!」

 作戦を立案し、止めの一撃を与えた夕映を推す。
 プライドが高い彼女だが、同時に相応の実力を持つ相手を認める度量も有るのだ。

 「委員長?」

 「フン……。…そう言う訳ですから総長、特別枠はこのユエさんに…」

 真実を話し、特別枠をユエにと言うエミリィ。

 「あら、勘違いしているのは貴女よエミリィ?」

 「はい?」

 総長は優しい笑みでソレに答える。

 「特別枠は貴女達4名よ。優秀な候補生は何人いても困りませんからね。」

 悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。
 総長は看破していたのだ――この4人の誰か1人でも欠ければ竜種を倒す事はできなかったと。
 夕映が中心になったとは言え、4人が揃っていたからこその快挙。
 ソレを認め、この4人を特別枠にしたのだ。

 さすが総長ともなると物事の本質を見抜く目は確かである。


 此れで夕映も目出度くオスティア行きが決定したのだった。








 ――――――








 以上がはぐれメンバーの一部の行動である。
 そのはぐれメンバーの中でも目下尤も強い一団であるアスナ組は既にオスティアの西側40kmの地点まで来ていた。

 「申し訳ありませんお嬢様、このような道なき道を…」

 「大丈夫やせっちゃん♪荷物もってもろてるしな。」

 が、進は道なき道の岩山街道。
 この辺はアスナと刹那が賞金首扱いで、あまり主要な街道が使え無いと言うのもある。

 尤も木乃香以外は、体力が凄いのでまるで問題ないが。

 「でもオスティアてどんなとこなん?」

 「何でも空に島が浮かんでいるらしいですよ?」

 「へ〜〜メルヘンやなぁ〜〜。」

 道中の話題は勿論オスティアの事。
 楓、刹那、木乃香の3人は情報としてしか知らないので想像するしかないのだ。

 「けど、その島の殆どは大戦期に落ちたわ…」

 「え〜〜〜〜!?メルヘンやない〜。」

 唯一真実を知っているアスナが言うのは何とも重い事実。
 実際そうだから仕方ないだろう。

 「今は残った浮島で観光をやっているようでござるよ?」

 「そうなんだ……まぁ、あれから随分たつしね。」

 とは言え最近の事はアスナにも分らないので、行ってみてからしか詳細は不明だ。


 そんな会話をしながら更に進むこと数十分。

 「見えたよ。」

 岩山の頂上に到達したアスナが皆に言う。
 ソレを聞いた3人も足早に頂上に。


 眼下に雲海が浮かぶ頂上。
 点在する浮島。

 そして遥か遠くに見える、その中でも特に巨大な浮島。
 その浮島こそが目的地。

 「ふわぁ!ホンマに空に浮かんどる〜〜。メルヘンや〜〜♪」

 「壮観でござるなぁ〜〜。」

 「アスナさん、アレが?」

 「うん、廃都オスティア――旧ウェスペルタティア王国王都跡。」

 ソレをアスナは懐かしそうに眺める。
 当然だろう――









 「……私の故郷。」










 ――此処は彼女の故郷なのだから。
















  To Be Continued… 

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