小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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――オスティア


 アスナ達がこの場所を見通せる場所に付いた頃、稼津斗達は既にこの場に来ていた。
 稼津斗とネギは一通りの修行が完了し、リインフォースと小太郎は問題なく大会の出場権をゲット。
 一切問題なくオスティア入りを果たしていた。


 更に此処に来るまでの嬉しい誤算として、道中でネギの使い魔、スライム少女の『アクア』と合流出来た。
 まぁ、ネコ程度の大きさであり変幻自在に姿を変えられる彼女は上手い事生き延びていたらしい。
 そんなアクアは、只今ネギの肩の上だ。

 「ゴメンねアクア、探しにいけなくて…」

 「いえ、お気になさらずに。ご主人も大変だったでしょうから。」

 勿論手配書の事もあるのでネギと小太郎は大人モードで超は逆に子供モードだ。

 「しかし、凄い活気だな…」

 「そりゃ当然だぜ兄ちゃん。なんせ一応は英雄であるナギの名を冠した記念大会だからな。
  魔法世界中から腕に覚えのある猛者が集まる一大イベントだぜ?武道家としちゃ血が騒ぐんじゃねぇか?」

 「まぁ否定はしないさ。この街に渦巻く純粋で、いっそ暴力的なまでの闘気……久しく感じてなかった空気だからな。」

 活気高まり、彼方此方で賭け野試合も行われているこのオスティア。
 自然と高まる武道家達の闘気に、稼津斗も武道家としての血が昂ぶっている様子。

 しかし、昂ぶっても冷静さは微塵も失わない。
 此れならば大会もまるで問題ないだろう。











 ネギま Story Of XX 72時間目
 『とびっきりの再会と』











 現地入りした一行は、大会の出場エントリーを済ませると、街全体が見渡せる広場に来ていた。
 景色は最高、時折吹き抜ける風が実に心地良い。

 「お〜〜、こうして見るとホンマに空に浮いてんねやな!こら飛ぶ事できん奴は落っこちたらお陀仏や。」

 「まぁ、魔法世界じゃそう言った事故は無いんじゃないか?大抵飛行魔法くらいは使えるだろ?」

 「せやろな。」

 作戦の要となる大会の開催場所に来たと言うのに緊張は皆無。
 寧ろいい感じにリラックスしている故に精神に余裕が有るのはいいことだ。


 そして、これも偶然か或いは点の采配か…


 「アレ…ネギ?」

 「稼津斗殿…?」

 アスナ、刹那、木乃香、楓の4人もこの場所に現れた。
 少しばかりオスティア入りが遅れたこの4人も、街が一望できる場所を求めて此処に来たのだろう。

 「あ、アスナさん、刹那さん、木乃香さん…?」

 「楓…」

 稼津斗達も気付くが、現実感が無いとはこういうのを言うのだろうか?
 まさかオスティア入りして直ぐに仲間数人と合流できるとは流石に想定外だ。

 だから現実感に乏しい。
 稼津斗ですら少しばかり呆けてしまっている。


 「ネギ!」
 「ネギ先生!!」
 「ネギくぅぅん!!」

 「稼津斗殿ぉぉ〜!!」

 で、先に行動起こしたのはアスナ達。
 アスナ、刹那、木乃香はネギに、楓は稼津斗にダイブし抱きつく。

 「おっと…」

 「わわ…あのアスナさん?」

 突然の事に驚くも、確りと受け止め倒れない。
 この辺は流石と言うべきだろう。

 「良かった…無事でよかったよネギ…」
 「ご無事で何よりです…ネギ先生…」
 「ネギ君や…大人モードやけど本物のネギ君や…!」

 「アスナさん、刹那さん、木乃香さん……無事でよかったです…」



 「まぁ、お前なら大丈夫だろうと思っていたが……矢張り無事だったか。」

 「勿論でござる。稼津斗殿も無事で何より…和美殿とリイン殿も。」

 「ま、私等早々やられないしね?」

 「手配されてる訳じゃないから、別分危険も無かったからな。」


 夫々に再会を喜ぶ。
 如何に信頼していようとも、矢張りこの目で無事を確かめるまでは安心できない。
 早々に再会できたのは僥倖と言える。

 まだ再会したメンバーは一部に過ぎない。
 だがそれでも、この再会は幸先の良さを思わせてくれるものだった。








 ――――――








 「えぇ――っ、ナギさんのお友達〜〜!?」

 「紅き翼のラカン殿!?」

 場所は移ってオスティアの少し大き目の酒場。
 このオスティアでなす事の説明と現状把握の為に選んだ場所だ。

 賑やかな酒場なら1つのテーブルの会話などは他の客の耳には入らない。
 序でに認識障害もバッチリ発動してるので何一つ問題はない。

 「ナギさんのお友達言う事は私のお父様ともお友達言う事やな〜?」

 「おぉ?ってーとアンタが木乃香ちゃんかい?
  こりゃ驚きだ!どうやったらあんな堅物からこんな可愛い子が生まれんだい!?」

 「えへへ〜〜♪」

 「ワハハハ、よしよし!!」

 共通の親しい人物のお陰でラカンと木乃香はすっかり打ち解けている。
 余りにも自然なのはラカンの器量の大きさゆえだろう。

 「むぅ…ジャック・ラカン殿…あの御仁は本物でござるな稼津斗殿?」

 「分るか楓?隙だらけに見えて、その実一寸の隙も無いんだジャックは。
  多分俺でもアイツと戦う場合、無変身だと些かきついかもしれない……まぁ、負ける気は毛頭無いがな。」

 その中でも分るラカンの地力の高さ。
 幾多の死地を潜り抜けて得たその強さは大凡隠し通せるものではない。


 「まあ、其れよりも…記憶が戻ったとは意外だったぜ姫子ちゃん。…元気みてぇだな?」

 「おかげさまで。貴方も元気そうねジャック?」

 「まぁ、俺様はいつ何時でも元気だからよ。」

 ラカンとアスナも再会を淡白では有るが喜んでいる。
 十数年ぶりともなる再会だが、それでも互いの事は分っているらしい。


 「けどまぁスゲェ面子だなこりゃ?坊主とコジロー、それにその兄ちゃんは当然だが、
  姫子ちゃんに護衛剣士、中国嬢ちゃんと赤毛嬢ちゃん、銀髪姉ちゃんに糸目の姉ちゃんとロボ嬢ちゃんはスゲェ実力者だ。
  加えて木乃香ちゃんは治癒しとして優秀みてぇだし、千雨嬢ちゃんはバックスの要と来た。
  此れなら俺が出なくとも何とかなんじゃねぇか?」

 「え゛……力を貸してくれるのでは…?」

 で、本題だが、ラカンは自分が動く心算は毛頭無い。
 寧ろ手を出してはいけないとすら思っている。

 だが、刹那にはそれが意外だったらしい。
 てっきり手伝ってくれるのだろうと思っていたのだ。

 「ふぅ…ジャックは手は出さない、先ずは俺達の手で如何にかするべきだろ?」

 「色んな事態に巻き込まれたのは僕達です。先ずは僕達だけでやってみましょう。」

 が、稼津斗もネギも其れは分っている。
 と言うか、ネギの父親の友達なのだからネギの手伝いをしろと言う方が虫が良い。
 闇魔法の修行は、そもそもがラカンから持ちかけてきた話だからノーカンだ。

 「ま、お前さん達がしくじるとは思えねぇからな、やるだけやってみな。
  それでもダメだったら、その時は俺が力を貸してやるからよ。」

 つまりはそういうこと。
 自分達の事は自分で如何にかしろと言う事だ――当然だろう。
 だが、それでも最悪の時には力になってくれると言うのだから、それだけでもありがたい。

 「まぁ、そう言う事だ。俺とルイン、ナギとコジローは門限までに闘技場に戻らないといけないから要点だけ説明するぞ?」

 なのでやるべき事は現状確認と、方針の再確認に尽きる。
 稼津斗が切り出し、ネギがそれを受けて続ける。

 「僕達が麻帆良に戻る為になうべき事は3つ。
  ?亜子さん達奴隷身分の解放。
  ?全メンバーとの合流。
  ?帰還ゲートの発見と解放。
  この3つになります。
  まず、?については、僕とコジロー君、エックスとルインさんが何としても大会で勝ちます。
  組み合わせがどうなろうとも、最悪でもどちらか1組は優勝できるはずです。」

 対戦表が分らない故にこうとしか言えない。
 だが、仮に決勝前に戦うことになろうとも、どちらか1組は必ず先に進める。
 しかも優勝と言い切るとは、ネギの成長が見て取れると言うものだ。

 「?と?も問題ない、和美と長谷川、絡繰が全能力を使って魔法世界全体を探し回ってるからな。」

 課題3つは特に障害は無いだろう。
 寧ろ全て事は順調だ。

 だが其れでも不安要素は0ではない。
 新たに合流した4人の中で其れにいち早く気付いたのは楓とアスナだ。

 「…フェイト・アーウェルンクスね?」

 「彼奴等と一戦交える可能性は0ではないでござるなぁ…」

 その最大の不安要素は、ゲートポートを襲ったフェイト一味。
 彼等がこの大会中に何かしか得てくる可能性は0ではない。


 いや、寧ろ確実に何か仕掛けてくるだろう。
 其れを考慮して、和美達も下手に動かずアーティファクトを使っての情報収集を行っているのだ。

 「まぁ、あいつ等が出てくるとちと面倒だがお前さん達なら大丈夫だろうよ。
  けど、そのフェイとってガキには気をつけろよ?俺の勘が正しきゃ、恐らくそいつは俺達が追っていた敵の残党だろうからな。」

 で、その最大の障害はラカンの知っている連中の残党である可能性が高いと言う。
 だが、そんなものは関係ない。

 この『蒼き翼』のメンバーは何があろうとも先に進む。
 壁があるなら殴って壊す、道が無ければこの手で造るが基本なのでこの面子は。

 「分ってるさジャック――だが俺もナギも『アレ』のお陰で更なる高みに上れた。
  ルインと和美、コジローと春も地方大会で実戦内での経験を積んでる…あいつ等が現れようとも返り討ちにするさ。」

 「ハッハッハ、だろうな!
  けど油断すんなよ?アルのヤローが言うには連中の目的は『世界を滅ぼす事』らしいからな。
  正直何してきやがるか分ったモンじゃねぇ――気をつけろよ?」

 「分っていますよラカンさん。絶対にやり遂げてみせますから。」

 だからぶれない、迷わない。
 桜子も含めて、このメンバーには目的を達成する覚悟がある。
 故に何の心配も無いだろう。

 「ワッハッハ!よく言ったぜ!
  おし、門限まではまだ時間がある!お前さん達の再会を祝って、ガッツリ食ってガッツリ飲もうじゃねぇか!」

 迷いも無ければ恐れもない。
 『蒼き翼』のメンバー+αの事を、ラカンはすっかり気に入ったようだ。

 此れを皮切りに開始された再会の宴。
 賑やかなそれは、店内の他の客にも伝染し、お祭ムードも手伝って大騒ぎ。
 盛り上がった異常なテンションの中で稼津斗とラカンの飲み比べまで起きる始末。

 何れにせよ、問題は無かった。



 なお、飲み比べは稼津斗が圧勝し、その後店の酒を略全て空にした事を追記しておく。








 ――――――








 酒場での大宴会が行われていた頃、オスティアの郊外の岩山にはフェイトとセクスドゥムが居た。
 周囲の雲海からは、潜空艦と呼ばれる飛行艇があちらこちらから現れている。

 恐らく様々な国が他国への牽制として『警備』の名目で派遣しているのだろう。


 「物々しいわね…平和のお祭とは思えなくらい。」

 「そんなものは名ばかりだよセクスドゥム…君も分ってるだろう?」

 「えぇ、勿論……まぁアレのお陰で私達は自由に動けるのだけれどね。……で、あの子達は?」

 「そろそろだと思うけど…」

 なにやら他にも誰か居るらしい。
 フェイトの発言からして、程なくこの場に現れるのだろうが…


 ――お待たせしましたフェイト様…


 「…来たみたいだね。」

 突然聞こえてきた念話にも慌てる事無く、フェイトは胸元から何かを取り出す。
 其れは紛れもなく『仮契約カード』。

 フェイトにも稼津斗やネギと同様に契約を交わした従者がいるということだ。

 「貴方も物好きね…」

 「そう?意外と愛着が湧くものだよ?…召喚、『調』。」

 セクスドゥムの言葉を適当に流し、カードを使っての召喚を行う。
 先ず現れたのは、大人っぽい外見の物静かそうな少女。

 「『焔』」

 続いて現れたのは気の強そうな少女。

 「『栞』」

 次は『調』と呼ばれた少女とは又違った物静かさを感じさせる少女。
 尖った耳が特徴的だ。

 「『暦』」

 更にネコ耳の付いた黒髪おかっぱ少女。

 「『環』」

 最後に呼び出されたのは赤褐色の肌が特徴的な少女。
 呼び出された5人の少女は、魔法陣を展開したままフェイトの前に跪く。
 その目に宿るは、フェイトへの絶対的な忠誠心だ。

 「お疲れ様…早かったね。」

 フェイト一味の方も戦力は不足していないようだ。








 ――――――








 「ふっ、せい……覇あぁぁぁ!!」

 楓達と再会してから数日。
 祭は開催され、メインの拳闘大会開催も2日後に控えている。

 そんな中でも、稼津斗は日課である鍛錬を欠かさない。
 再会のあの広場で、今日もシャドー中心のメニューをこなしている。


 ――本当に爺さんの言う通りだな、爺さんの技は全部身体で覚えてたみたいだ…


 精神世界から帰還後、稼津斗は鍛錬の中でも特に龍の技を中心的に使っていた。
 『使う事が出来るはず』と言われたので使ってみたら本当に出来た。

 だが、如何に身体で覚えたとは言え一度も使った事が無い故にマダマダ荒削り。
 それでも、日々の鍛錬で確実に其れをモノにしていた。

 「ふぅ……よし、絶好調だ。」

 一通りの鍛錬を終えコンディションを確認。
 勿論まるで問題ない。

 問題無いどころか澄み切った気で満ち満ちている。


 精神世界で最大の『壁』超えた稼津斗は間違いなく武道家として新たな高みに上っていた。


 「稼津兄!!」
 「稼津斗殿!!」

 その鍛錬後の清清しい空気も、和美と楓、リンフォースによって破られた。
 3人ともなにやら慌てているが…?

 「和美に楓、リインフォースも…如何した?」

 「『如何した?』じゃないよ稼津兄!」
 「のどか殿がピンチでござる!!」

 「!?」

 瞬間、稼津斗の雰囲気が変わる。
 和美がアーティファクトで捜していた仲間達の行方――その中でも自分のパートナーの1人であるのどかが窮地とあれば当然だろうが…

 「のどかが仲間と一緒に此処に向かってたんだけが、西50km地点で謎の一団から襲撃受けたらしい…」

 「なんだと!?」

 言うが早いか稼津斗は気を解放して西へ一直線。

 「ちょ、稼津兄!?まだ全部言ってないんだけど!?」

 「全部言うまでも無かったんじゃないか?」

 「まぁ、パートナーの1人がピンチとあれば当然でござろう?…無論拙者等も…」

 細い目を開いて問えば当然答えは『是』だ。
 無言で頷いて、和美は気を、リインフォースは魔力を解放。
 楓もまた気を解放する。

 そして、稼津斗に続くように西を目指して一直線。


 のどかが簡単にやられるとは思えない。
 だが、窮地にいるというなら見過ごせない。


 「のどか…無事でいてくれ…!」

 更に気を高め、稼津斗は『亜音速』とも言える速度でのどかの元へと急いでいた…
















  To Be Continued… 


-72-
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