第1章『百代編・一子編』
サブエピソード1「2−Fの番長、誕生!?」
2時限目終了後の休み時間。
(ん、風を感じる……)
風が吹く予兆を感じ取ったヨンパチはカメラを身構えた。
ターゲットはもちろん千花。千花はまふゆとすぐに打ち解けていた。今はまふゆと話に夢中になっていて、こちらには気づかない。
(まふゆちゃんまでセットなんて……今日の俺はツイてるぜ!ぐへへ、こいつはいいアングルが取れそうだ)
涎を垂らしながら、まふゆと千花のスカートが捲れる瞬間を、今か今かと待ち続けている。
ズーム機能を使い、まふゆと千花の後ろ姿を捉え、スタンバイOK。退路確保。
(3・2・1……)
「きゃっ」
「わっ」
風が吹きまふゆと千花のスカートが捲れ上がる。今こそシャッターチャンス。
「よっしゃいくぜ!ファイ―――」
「何やってんだ、お前」
カメラのシャッターを切る前に、通りすがった華がカメラを取り上げた。
「アーーーーッ!!!俺の今日のオカズがーーー!!」
シャッターチャンスを逃し、悲痛な叫びを上げるヨンパチ。
「あ、わりぃわりぃ。邪魔したか?」
どうやら華は悪気があってやったわけではなく、ただ純粋に興味本位でカメラを取っただけだった。
パンチラを撮ろうとした事は悟られてはいないと、ヨンパチはホッと息を漏らす。
「で、何やってたんだよ?」
「そりゃあ……あれだよ、俺は女性の美を追求してたんだ!」
しまった……とうっかり核心に迫るような発言をしてしまい、思わずヨンパチは口元を押さえた。
「は……?女性の美?追求?」
華はカメラで写そうとした場所を確認する。
そこには、スカートを押さえているまふゆと千花の姿があった。
「って、盗撮じゃねぇかよ」
まふゆと千花のパンチラを盗撮しようとしたのだと、華は一目でわかった。
「いや違う!俺は盗撮なんてこそこそするような真似は絶対にしねぇ!……ああ、でもたまにするかも」
「堂々と撮りゃいいってもんじゃねぇだろ……」
開き直るヨンパチの態度に、華はもう呆れてものも言えなかった。
「華、どうかしたの?」
ヨンパチと話している内に、まふゆと千花がやってきた。華は持っていたヨンパチのカメラを二人に見せて、
「こいつ、織部とチカリンのパンチラを盗撮しようとしてたんだよ」
盗撮していた事を暴露した。ヨンパチはバツの悪そうな表情を浮かべている。
それを聞いたまふゆと千花は顔を真っ赤にし、ヨンパチを睨み付けた。
「また盗撮!?ホント凝りないよね、このエロザル!!」
「ちょっと福本君、どういうつもりなの!?」
まふゆと千花に責め立てられ、逃げ場をなくすヨンパチ。華はそれを面白がって見ていた。
「まあ、その辺にしとけよ。ほら、カメラ返すぜ」
言って、華はカメラをヨンパチに投げ返した。
「盗撮は好きにしてもいいけどよ、あたしの目の黒い内は絶対撮れねぇと思ったほうがいいぜ?」
くっくっくと笑い、華は警告する。華がいる以上、女子の撮影は困難になるだろう。
「さっすが華。頼りになるぅ〜♪」
千花もすっかり華と仲が良くなっていた。
「く、くそぉ……見てろよ、お前の目を掻い潜って、絶対撮りまくってやるからな!」
しかし、ヨンパチは懲りることなく宣戦布告をするのだった。華はやれるもんならやってみろと鼻で笑う。
こうして2−Fに、番長的な存在が誕生した。