小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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〜〜ラーズside〜〜


 永かった。ココに至るまで、本当に永かった。これまで何度生死の境を彷徨ったか。しかしそれだけの価値はあった。
 今、胸の中には幸せそうな顔のナミがいる。
 俺の脳内は既に一大パーティーが行われていた。主催者、俺。参列者、俺。俺。俺。


『やぁラーズ君。ようやくだな、おめでとう』

『ありがとうございますラーズさん』

『さすがラーズ!良くやったぜ!』

『何か照れるなぁ、ラーズ少年』


 全力で自画自賛である。これぐらいいいよね!?俺の人生にようやく華が咲いたんだからいいよね!?

 そうしてパーティーはお開きになり、思考は現実に戻る。
 そしてナミに尋ねる。

「あのさ、ナミ」

「ん?」

 ナミはこちらを上目遣いで覗く。…はぁぁぁ!可愛い!

「その、さっきのなんだけど…」

「!!あ、アレは…」

 あっという間に顔を赤くしたナミ。多分冷静に実況してるつもりの俺の顔もリンゴ並であろう。

「その…今度は俺からしていい?」

 ムードもへったくれも無い一言である。この世界に慣れ過ぎて、気の利いた台詞が全く出てこなかった。

「!?…それは」

 ナミはもじもじしている。もうダメだ。今はどんな仕草でも可愛く見えてしまう。

「だ、ダメか?」

 正直さっきのは思考回路がショート寸前だった為、ほとんど覚えていないのだ。なので今の内にもう一回などと
 考えていた。見事な横島っぷりである。

「…うん、いいよ」

「ほ、ホントに?」

「う、ん」

 言ってナミはこちらを向いて目を閉じた。ナミってやっぱまつ毛なげー、チョー可愛い、など考えつつ
 肩に手を掛けその唇を奪おうとする。


「……」

「……?」

 なかなかキスしない俺を不思議に思ったのかナミが目を開けてこちらを見る。

「ど、どうしたの?」

「ナミ、二回目はまた今度まで我慢する」


 言いながら尾の先を部屋のドアに向ける。少しだけ開いていたドアに。ナミは状況を把握してなかったのか、
 俺の尾の動きだけを見ていた。

「さて、と。いつから覗いてやがったんだろうなぁ?」

 言いつつ尾の先端に炎を収束させレーザーを放つ。

「白火・一閃」

「「「ギャアアアァァァァァァ!!!」」」

「ちっ、外したか」

「えっ、えっ!?」


 ナミは何が起きたのか理解していなかった。声から察するにルフィ・ウソップ・サンジか。ドアには綺麗な穴が
 開けられていた。

「テメエらいい度胸してんじゃねえか。大人しく出て来ないと次は九発同時に放つぞ?」

 ドアに向かって冷たい声で語りかけると案の定の三人が飛び出てきた。


「おいクソ白髪!死ぬかと思ったじゃねえか!」

「は、鼻に掠った…」

「いや〜びっくりしたぞ!」



「ア、アンタ達いつからいたの!?」

 ナミが俺から離れて三人を問い詰める。もっと抱きついていたかった。

「お、おれは病み上がりのナミさんが心配で…」

 サンジはけっこう焦っている。さっきの一撃は心理的にダメージを与えたみたいだな。まぁ当てるつもりは無かったが、
 ウソップの鼻が計算より少し長かった事は気にしないでおこう。…あいつの鼻伸びてるって事はないよな?



ウ「これ以上、私を一人にしないで?」

ル「ごめん」

ウ「ううん、いいの。それより、私の気持ちラーズに伝えた事なかったから。ラーズ?」

ル「はっ、はい!」

ウ「ずっと、ずっと昔から。今も、これからも」

ウ・ル「好きだよ」





「「えんだあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」






 ……こいつ等何でこんなに人を逆上させるのが上手くなったんだ?これじゃあまるで、目つきの悪い卑怯な金髪とトゲトゲ頭の
 黒髪の高校生コンビじゃねーかよ。今も手足をヘラヘラさせて踊っている。


「ア、アンタ達ぃぃぃ!!」

 頭から湯気が出そうな程顔を赤くしたナミが叫ぶ。

「逃げるぞルフィ!「剃」!」

「おう!ギア”2”!」

 二人は高速移動でどこかに逃げた。ウソップの奴段々速くなってきやがった。でもそのスキル逃走にばっか使ってんじゃねえか?
 ルフィもこんなもんにそんな技使ってんじゃねえ!


「うぅ〜〜」

 見られていた事に対して恥ずかしくなり再び顔を赤くするナミ。

「ナミ、諦めろ。前向きに船長公認の仲と考えるしかない」

「…はぁ、仕方ないわ。でもさっきのは見られたくなかったかも」

「それには激しく同意するがな」

 言ってお互い苦笑した。


 
「あら、起きたと思ったらもう元気になったのね」
「ラーズさん!」
「ようやく起きやがったか」


 ロビン・ビビ・ゾロが部屋に入ってきた。三人は覗きはしてなかったみたいだし単純に俺を心配してくれていた。

「あぁ。それとビビ、遅くなってゴメンな」

 だが、結果的にアラバスタ行きが遅くなってしまった。ビビには申し訳ない。

「いえ、これで一味全員回復したんですからきっと大丈夫ですよ!…それに」

 それに?



「お二人が遂に結ばれたのなら尚良しですっ」

「「!!?」」

「船長さんと長鼻くんが名演技をしてたわ」

「ようやく船の空気も元にもどるか。これで稽古が出来る」



「ったくあの馬鹿コンビは…」

 船長公認もとい一味公認のカップルになってしまった。

「まぁいいか。別に隠す事じゃないし、今幸せだし。なぁ、ナミ?」

 ナミをみるとこっちを向いて答えた。

「…うんっ、そうよね」



    その笑顔はとても輝いていた。
























「ところで船長さんに長鼻くん?」

「「どーしたロビン?」」

「二人ともラーズが全快になった時の事考えてるのかしら?」

「「あっ……」」

「二人ともこれから先航海を続けれたらいいのだけど」

「「ぅおい!!?」」

「彼なら恐ろしい復讐をしてくるかもね。一緒に航海士さんもからかわれたのだから」

「「……」」

「あの尻尾のレーザーは痛いかもね。生きてる内に痛みを感じれば、だけど」

「「助けて下さいロビンさん」」

「彼、私より遥かに強いから無理よ。それに、私は彼の味方だしね」

「「そこを何とかお願いします!!!」」


 二人の土下座は、それはもう綺麗な土下座であった。それでもロビンにはどうする事も出来ない。

 勿論ラーズは後日復讐にやってくる。二人は恐怖に怯えながらその時を待つしか出来なかった。


-35-
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