〜〜ウソップside〜〜
目の前の島では激闘が繰り広げられていた。ルフィの兄ちゃんっていうエースって奴とラーズが火柱や
土煙を上げながら戦っている。二人とも戦闘速度が速く、時折目で追えなくなる。見える限りの範囲では
どちらも致命傷みたいなのは喰らってないみたいだけど…コレはどう判断すればいいんだ?
ラーズが凄いのかエースが凄いのか、どのくらい強いのか正直よく分からん。
「どっちもすげー!!」
「これがアイツの本気か…ちっ」
ルフィとゾロが驚いている。そりゃそうだよな。ルフィは昔から一度もエースに勝てなかったって言ってたし。
んで更に悪魔の実を食って強くなってるんだよな?んじゃやっぱラーズが凄いのか?
「あんの白髪め…」
「ラーズ頑張れー!」
サンジは悔しそうに、チョッパーは必死に応援している。
「ラーズ…」
「ラーズさん…」
ナミとビビは心配そうに見守っていた。まぁ死ぬ様な事はないだろ、多分。二人とも手合わせって言ってたし…。
でもおれ達があの場に居たら瞬殺だな。うん、おれは賢い。
「ラーズが少し押してるかもね」
ロビンが冷静に答える。アイツは分かるのか?
「ラーズの能力は動物系。彼、エースは自然系の火人間。普通なら自然系が最強と言われているわ。私も、
船長さんだって剣士さんだって相手にすらならないわ。体が火だから攻撃が全く通じないの」
なんだそりゃ!?そんなの相手にどうやって勝つんだよラーズ!?
「だけどラーズの攻撃は何故か通じるみたいね。エースさんも必ずかわしてるし。あの白い炎が何かあるのかしら?」
そーいやラーズの白い火はあんまり詳しく聞いた事なかったな。確かに白い火なんて普通に考えて変だし。
そうして話している間も戦闘は続いている。個人の戦いであそこまでなるのか?…戦いが終わった後、あの島無くならないよな?
〜〜ラーズside〜〜
「炎戒・火柱!」
「どわっ!そんなデカイ炎使うな!熱いだろうが!」
「おれの能力だから仕方ないだろう。火銃!」
「ちっ、白火・崩!」
エースの火と俺の火が中央でぶつかり爆発する。お互い次の瞬間には別の場所に移動する。
「へぇ、おれの火を相殺するとはな…神火・不知火!」
「殺す気か!白火・一閃!」
またもや二人の炎はぶつかり合って爆発する。次の瞬間、エースが空に舞い拳を巨大な火に変えていた。不味い!!
「喰らえ!火拳!!」
火の塊が飛んで来る。避けきれないと判断し、尾の全てで「嵐脚」を放ち、何とか火拳を弾き飛ばす。
「俺は生身なんだぞ!?もう少し優しくしろ!」
「どーせ避けるからいいだろ。つーかおれの攻撃を一発も喰らってないってのは少々ショックなんだがな」
「喰らったら火傷するだろ!火傷はもうサカズキさんのだけで十分だ!!」
ったくエースはやっぱ強いな。尾を巻き付けての戦闘だったが攻撃はほぼかわされる。一発くらい喰らえよ!
しっかしサカズキさん程では無いが、体そのものが熱い。
その上動きも洗練されている。流石白ひげの隊長やってるだけあるな。
これだから火とかマグマとかマグマとか嫌いなんだよ!もう!!仕方が無い。
「エース、これがお前の知りたかった能力の正体だ。纏!」
言って白い炎を出す。
「コレが噂の白火って奴か…。確かに白い炎なんて初めて見たが」
「まぁそうだろうね。ついでに新技も試させて貰うよ…白火陣!」
言って体全体を覆っていた炎を両手足に収束させ、『固める』。これがあの憎きサカズキさん対策だ。
直接触れにくいなら、触れなければいい。一閃が炎を収束させれたので、固める事も出来るのでは?と思考して
完成したのが白火陣だ。性質は勿論自然系の実体にダメージを与えられるので威力は十分。
勿論覇気はその間纏えないので、防御力は炎の部分以外は生身の為危険なままであるが。
攻撃も防御も無敵なんて便利なものはない。そんなものがあれば海軍本部で無双している。
サカズキさんの顔に『文太』って落書きして笑ってやるのだが。
「んで、その炎をどうするってんだ?俺に火は効かないってのは分かってるんだろ?」
「勿論。…エース、ちゃんとガードしろよ?」
言った瞬間エースの懐に飛び込み右ストレートを放つ。エースも咄嗟に反応してガードしたが反動で
後ろに弾かれる。久し振りに実体に攻撃を喰らった為か、かなり動揺している。
「なっ!?おれの実体を捉えたのか!?」
「コイツは特別製でね。この炎は自然系の実体を確実に捉えダメージを与える。ちなみにルフィの兄貴だから
教えるけど、武装色の覇気も問答無用で貫くからどんだけ硬化しても意味ないからね」
「……聞けば聞く程恐ろしい能力だな。赤犬や本部の奴等が追ってる訳が理解出来た」
「サカズキさんも喰らった時は驚いてたよ。おかげで付け狙われる羽目になったけど」
「……なァお前何でそんなに強いのにルフィの下にいるんだ?少なくとも今はお前が圧倒的に強いだろ?」
まぁ当然の疑問だよな。
「俺の恋人が一味を気に入ってるんでね。その恋人と一味を守る為の監督役ってとこかな。それに”ルフィの”一味は
強さに関係なく皆いい奴ばっかりだしな」
「そうか……弟は仲間に恵まれたな」
「アイツの言葉はストレートだからな。その分心に響くんだよ。その点に関しては俺も全く勝てる気がせん」
そうして少し二人で笑った。
「…そろそろ終わりにするか。時間もない事だし」
「そうだな、これからアラバスタを救わなきゃいけないんだよ」
「だけど遠慮なく行くぜ?全力で戦うのは久し振りだしな」
「ハァ…だろうと思ったよ」
エースは自身の周りに炎を集め出した。アレ喰らったら流石にヤバイだろうな。
「炎帝・大炎戒!」
そうして巨大な太陽の様な火の玉を飛ばして来た。大怪我する様な技は無しって言ったじゃん!エースの馬鹿!!
こうなればこっちも覚悟を決めるか。避けてもいいが、そろそろ決着を付けとかないとな。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして今回の戦いで一際大きな爆発が起こり、決着はついた……。
エースの目の前には白い炎を固めたラーズの拳がある。
「……まさか突っ切って来るとはなァ」
「あの熱量じゃ無傷じゃねえよ。おかげで体も尻尾も焦げちまった」
そう言って尻尾を振る。
エースの火の玉が飛んで来た瞬間、俺は先ず尾で全力の「嵐脚」を火の玉の一点に集中させた。その直後に武装色の覇気を
これまた全力で纏い、尾を体の前面に押し出し火の玉に突っ込んだ。「嵐脚」で少しは弱まっていたが、それでも
熱いものは熱い。何とか火の玉を突破した瞬間に白火陣を使い、驚いたエースの顔の前で拳を止めた。
俺の移動速度がもう少し遅かったら火の玉の中で丸焼きコースだっただろうな。
「コイツはおれの負けだな」
「いや、正直俺も集中力の限界だ。それにお前ほとんど無傷じゃねえか」
言いながら座り込む。白火陣はかなりの集中力が必要なのでまだ長時間は使えないのだ。まだまだ修行が必要だな。
「なら引き分けって事でどうだ?」
エースが笑いながら手を差し出してくる。俺も笑いながらその手を握る。
「賛成。負けてないならそれでいいや。後ついでに船まで連れてってくれると助かる」
「ははっ、了解」
そう言ってエースは俺を担ぎ上げた。
「…いい勝負、だったよな?」
「当たり前だ。こっちは隠してた能力使ってようやく引き分けなんだからな。実質負けみたいなもんだ。
見ての通り俺は限界だし。全く自然系ってのはどいつもこいつも化け物だよ」
「お前ならウチでも隊長やれるぞ。俺が保証する」
「嬉しい事言ってくれるが悪いな。俺はルフィと駆け上がりたいんだ。この海をな」
「そうか…なら待ってるぜ」
また二人で笑う。そうして船に戻っていく。しかしエースの小船って便利だな。動力は火みたいだが
一人旅には最適だ。これは新世界の科学なのか?
「…エース。少しだけ真面目な話しをいいか?」
「何だ?」
エースは俺を担ぎながら振り向く。
「お前の追ってる”黒ひげ”の能力はかなり厄介だ。奴の能力は闇の引力で実体を確実に引き寄せ捕まえる。
その掌に捉まれたら能力が全く使えなくなる。アイツも実体にダメージを与えてくるぞ」
「……何でそこまで知ってる?」
「俺がガープさんに鍛えられてたってのは話したよな?八年程マリンフォードにいたんだが、その時に悪魔の実について
色々と調べてね。まぁ最初は俺自身の能力が全く分からなかったからなんだけどな」
「そりゃ尻尾出っ放しだしな。ププッ」
「ええい笑うな!とにかくその時に”ヤミヤミの実”についても調べてたんだ。他にも色々とな。とにかく
引き寄せられたら掌に触れられる前に遠距離攻撃を、触れられたらガードに徹しろ。自然系の人間は何でか
ガードが甘いからな。俺や黒ひげは自然系には天敵だろうな」
「そうか……。アドバイス助かる」
「それと…」
言うべきかどうか迷ったが俺は伝える事にした。戦って初めて分かるものがあるとか言うが、まさに今回の
戦いはソレだった。俺はエースを絶対に死なせたくないと強く思った。まぁエースが俺をどう思ってるかは知らないが。
「もしお前が海軍やらに捕まったら迷わず俺はお前を助けに行くぞ。…世界が否定しても」
「……?」
「父親が誰だってエース、お前はお前だ。俺はポートガス・D・エース自身を見ている」
「!!?お前!?」
「俺は、お前の親が誰でも関係ない。拳を交えた親友だ…と勝手に考えてる」
「……そうか」
エースは少し黙っていた。
「なぁラーズ」
「何だ?」
「おれ達は……こんなおれでも、親友って作れるのか?」
「だから俺が親友だって言ってるだろ。話を聞かないのはルフィと一緒だな。ププッ」
「……あっ、やべ。手が滑ってラーズを海に落としそう。あ〜力が入らなくなってきたぞ」
「おいコラァ!確信犯で落とそうとするな!!」
そうしてエースとギャーギャー言い合いながら船に戻って行った。疲れたしあちこち焦げたけど…
エースと仲良くなれてよかったな。別れ際にエースと話す。
「俺にやられるまで負けるなよ。俺まで弱いと勘違いされる」
「丸焦げにするぞコラァ!!」
再び口論した後俺はニヤけながら拳を突き出した。エースもそれを見て笑いながら拳を突き合わせた。
「「次に会う時は、海賊の高みだ」」
〜〜エースside〜〜
白狐のラーズ。アイツは不思議な奴だった。ルフィの一味に噂の高額の賞金首が居たので興味本位で
手合わせしてみたんだが……あの拳を振り切られてたらおれの負けだった。
さっきの戦いはほぼ全力だったんだがな。あそこまで強いとは思ってなかった。
赤犬とやり合ったのは伊達じゃなかったって訳か。それに何より……あの白い炎。
ありゃ反則だろ。まさかおれの実体にダメージを与えてくるとはな…。
そして黒ひげの情報はおれにとって有益だった。これで多少は有利に戦えるだろう。
しかしそんな事より何より……おれを「親友」と呼んでくれた。アイツはおれの親父を知ってて尚「親友」と言ってくれた。
あんな奴は初めてだった。おれは世界から嫌われてると思ってた。
「拳を交えた親友」か…。
出会ってからまだ一時間くらいしか経ってないのに、アイツはおれの中にするりと入ってきやがった。
おれには良く分からねえが、「親友」ってヤツは時間なんて関係ないのかもな…。
そしてラーズと拳を合わせて、きっとおれ達は「親友」になったんだと思う。
「駆け上がれよ、『親友』」
その二人の戦いは目撃されていた。二人が別れる最後まで。