小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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〜〜ラーズside〜〜

「さて、海軍の包囲網を突破しようと思う訳だが」

「何か良い方法でもあるの?」

 現在夜明け前。メリー号の上でオカマを含んでの作戦会議中である。


「ん〜結論だけ言うとかなり厳しい。こっちの戦力は個人戦は強いが対艦戦はかなり不利だ。多少対抗出来るのは
 ウソップの大砲の狙撃くらいだな」

「流石はスーパー狙撃手な、おれ!」


「…とりあえず出来る事は二つ。一つは陸地のスレスレを進み海軍に上手く陣取らせない。それはナミ、任せたぞ」

「了解、見てなさいよ」

「もう一つ、砲撃は多分鉄の槍だ。少し厳しいが船の前面はルフィとゾロ。片側の側面はサンジとオカマで防いで時間を稼げ」

「時間なんか稼いでどうするんだ?」

 ゾロが尋ねる。

「俺が直接跳んで行って薙ぎ倒す」

「…それは作戦なのか?」

 疑うマユゲ。

「それしか方法は無いな。とにかく俺が敵船を沈めるまで耐えてくれ。敵の出方にもよるがとにかく囲まれるなよ」

「しょうがな〜いわねぇ〜い!!」






  〜〜ウソップside〜〜


「……」

「……」

「……」

 おれ達は出航して間もなく海軍を発見し戦闘準備に入った。入ったのだが…



「アイツ何かストレス発散してねェか?」

 ゾロが剣を鞘に納めたまま聞いてくる。アラバスタであの親父に散々言われてたからなぁ。

「ラーズはやっぱすげーなー!おれもあの飛ぶ技やりてー!」

「ラーズー!」

 ルフィとチョッパーは目を輝かせて観戦していた。

「アイツは本当に敵に容赦ないわね」

「コックさん、お茶を頂けるかしら?」

「了解だよロビンちゃ〜ん!ナミさんもいかが〜?」

 ナミは呆れ、ロビンに至っては寛ぎ始めていた。おいおい、そりゃ流石に落ち着きすぎじゃね?



 メリー号の前はとても静かだった。ラーズが先頭を突っ切って跳んで行き、空中から海軍の方へ何か飛ばすと
 あっという間にメインマストが切断された。その後に例の白い炎のレーザーを船に飛ばして穴だらけにする。
 海軍船は五分程で一隻が沈んだ。ラーズはそれを繰り返し艦隊をすでに八隻程沈めていた。
 勿論メリー号を攻撃するヒマなどなく、オカマの船と共にのんびり進んでいた。

 …何か風に乗って笑い声が混じってるのは気のせいだよな?

 そうするとまた新しく三隻海軍がやって来た。その内の二隻はすぐに沈んだが残りの一隻はマストだけ切断した後に
 乗り込んで行ったみたいだな。何かあったのか?





  〜〜ラーズside〜〜


 さて、とりあえず残りはこの一隻か。にしても船が散開して囲まれる前に迎撃出来たのは大きかったな。おかげで
 メリー号は無傷のままだし。

 甲板に下りると懐かしい人との再会だった。他の海兵はマストが切断されたので慌てている。

「お久しぶりです、ヒナさん」

「アナタが海賊になるなんてね。ヒナ失望」

「言い訳はしませんよ。ところでまだ追って来るんですか?」

「当たり前。私は海軍で、アナタは海賊よ。ラーズ」

「止めた方がいいと思いますよ。船は残りコレだけですしその残りもマストがないのは絶望的でしょう?俺と戦うよりその辺で
 泳いでる海兵を助けた方がマシだと思いますけど…それともヒナさん。アナタが今の俺に勝てるとでも?」

 言いながら炎を吹き出す。この前出し続けてから炎の量がかなり増えた気がするな。

「くっ…」

「今回は遠慮してて下さいよ。これから少し忙しいんで」

「これだけ艦隊沈めておいてこれ以上何をしようとしているの?ヒナ疑問」

「それは秘密です。多分沈めた海兵も攻撃では死んでないハズですよ。海兵の居ないであろう場所を狙って
 攻撃しましたから。教本と同じ配置なら」

「アナタそこまで!?」

「別にこっちの船は攻撃されてませんし。快楽殺人者じゃないんですから、追って来なければ何もしませんよ」

「…まだ追ってきたら?」

「徹底的に叩き潰します。その海兵が二度と立ち上がれない程の恐怖を植えつけます。ってな訳で」

「……」

「承諾とみなしますね。それでは」

 そう言って船から去る。これでアラバスタではこれ以上の追っ手は来ないハズだ。そのためにヒナさんの船は
 残したんだから。そうして俺も船に戻る。




「よっと、ただいまー。あーすっきりした!」

 爽やかなスマイルを浮かべる。すると、ナミが呆れた顔で話し掛けて来た。

「ねぇ、私達何もしてないけど」

「艦隊が散る前に叩けたからな。とりあえずこの辺の艦隊はもう追って来ないハズだ」

「どうして分かるの?」

「指揮官と話してきた。海軍時代の知り合いだったからね。話の分かる人で良かった」

「…それは脅してきたの?」

「平和的な交渉だ」

「……まぁいいわ。これならビビの為に一時的に停泊も出来るかもしれないし」




 こうして東の港を目指して進む。オカマの船はいつの間にかどっかに行ったみただな。まぁいいか。

 しばらく進むと東の港近辺に着いたので少し海の上で止まる。
 するとビビのスピーチが始まった。




「……12時を回った、か」

 俺が呟くとゾロも喋る。

「聞こえたろ今のスピーチ。間違いなくビビの声だ」

「来てねえわけねェだろ!下りて探そう!!」

「諦めろルフィ…おれ達とは事情が違うんだ」

 ルフィが粘るがサンジが説得する。そうして出航しようとすると



「みんなァ!!!」

 ビビの声が港から聞こえてきた。

「ビビィ!!!」

 ルフィが叫ぶ。するとビビは電伝虫の受話器を取って話し出した。


『私は……私はこの国を愛しています!!!』

「ビビ…」

 チョッパーが落ち込んでいる。まぁ行かないって言ってる様なもんだしな。

「だけど…」





「だけど……私はまだみんなと旅がしたいです!!!」 





「「「ビビィィ!!!」」」 



 ルフィ・ウソップ・チョッパーが全力で名前を呼ぶ。…なら俺の出番だな。

「行ってくる」

 それだけ言い残してビビの所へ跳んで行く。





「ラーズさん!!!」

「それがお前の答えか?ビビ」

「はいっ!」

 ビビは真っ直ぐ俺を見つめる。うん、しっかりした良い目だ。

「そうか…なら受話器を貸してくれ」

「?はい」

 そうして受話器を受け取る。海軍もさっきの会話聞いてるかもしれないからな。アラバスタに
 迷惑を掛けるワケにはいかない。…あの親父だけならいいがビビの立場があるからな。
 んっ、んん!!声は低くしておこう。






『アラバスタの諸君、並びに海軍よ!ビビ王女の身柄は俺が、”海賊のラーズ”が預かった!!』


『王女は頂いて行く!!それが”海賊”だからな!!はっはっはっ!』



 そうして電伝虫を切る。ふ〜いい仕事したぜ。

「んじゃカルー、この手紙チャカさんに渡しておいて」

「クエ〜」

「安心しろ。ビビは必ずココに戻って来るさ。帰る場所があるから旅が出来るんだ。俺に任せろ」

「クエッ。クエ!!」

「ならまたな」

 カルーは走り去って行った。ビビを見ると、とても不思議な顔をしていた。

「ビビも聞きたい事あるだろうがひとまず船に行こう。あいつ等にも説明しないとだし」

「は、はい」




 そうして獣体型になりビビを乗せて船に戻る。すると皆がビビと同じ顔をしていた。


「ラーズ!何であんな事言ったの!?」

「まぁそう言われるとは思ってたよ。みんなも同じ疑問か?」

 見渡すと皆頷いていた。


「まず、一国の王女が海賊の仲間になりたいなんて言ったらその国はどう見られると思う?海賊を出す国なんて
 世界政府から弾かれてもおかしくはない」

「そうなったらその国の外交・貿易の一切を封鎖されて、下手したらそのまま国が滅ぶ」

 みんなそこまで考えてなかったのか驚いた顔をしている。それくらい考えろよ。

「でもビビは旅を続けたいって言った。なら俺達に出来る事は泥をかぶる事だ。ビビが誘拐されたって事にしておけば
 少なくても国の心配はいらない。それに俺達はすでに世界から狙われる要素満点だから、今更罪状が増えても
 大した事はないさ。まぁ出したのは俺の名前だけだけど。後はこれから先、海軍に見つかってもビビは働かされている
 風にでも言っておておけば良いだろうしな。将来アラバスタに戻った時も”海賊に捕らわれても生き抜いた王女”
 として喜ばれるさ。以上、他に質問あるか?」


 みんな頭が理解出来ていないのか、止まったまま。唯一理解していたロビンが質問してくる。

「あの国王様はどうするの?」

「直接言ったら絶対聞かなかっただろうから言ってない。でもイガラムさん達重臣には全員伝えてある。
 ビビが行きたいって言った時はこうするってな。後バカ親父の説得もお願いしておいた」

「民衆は?」

「それもイガラムさん達に話してある。少しずつ真実を伝えて欲しい、なるべくはビビの立場が危うく
 ならない程度で。ってな感じ。まぁ最悪俺がアラバスタ民衆に嫌われる位で済むだろ」

「相変わらず手回しが早いのね。見事なものだわ」

「せっかく可愛い妹の船出だからな。不安一つなく旅立たせたいだろ?」

「素敵なお兄さんね」

「妹がしっかりしてるからだ。それ以上に頑張らないとね」


 そうしてロビンと平和な感じで話しているとルフィが尋ねてきた。

「もうビビは仲間でいいんだよな?」

「あぁ。俺達は”海賊”だからな。欲しいモノは奪って行くんだよ」

「よっしゃー!!」

「「「うおぉぉぉォォォ!!!」」」

 見るとサンジ・ウソップ・チョッパーも叫んでいた。よっぽど嬉しかったんだろうな。けどサンジ。貴様にビビを
 渡すつもりは全くないからな。


「テメエはつくづく悪者だな」

「失礼な事を言うな。必要な事をしただけだ」

 またゾロと二人で悪そうな顔をする。これじゃ悪代官と越後屋だ。


「いつの間にそこまで考えてたの?」

「昨日晩飯食ってる時。悪役で思い付いた」

「……」

「ひとまずこれでビビの仲間入りの問題は全て解決したハズだ。万に一つ、俺達が捕まってもビビは大丈夫だろうし」

「…ビビがアンタから離れないのかアンタがビビから離れないのか」

「俺が好きなのはナミだけだ。その点に関しては譲るつもりはない」

「うっ。わ、分かってるわよ」

 そう言うとナミは照れていた。



「ラーズさん…」

「ん?まだ何か心配事でもあったか?」

「いいえ…私はラーズさんみたいに考えていませんでした」

 ん?ちょっと落ち込んでるのか?

「気にするな。ビビは笑ってこれからの旅に胸を躍らせておけ。もう心配事はない、今までと違ってな」

 俺は笑いながらビビの頭を撫でた。

「!…はい!!兄さん!!」

 ビビはもう笑っていた。…いい船出になりそうだな。


「宴だーーーー!!!」


 ルフィの掛け声と共に、改めて”仲間”の歓迎会が始まった。



  

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