小説『とある絶望の幻想現実』
作者:コンダクター()

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第10学区のとある研究所。ここに、いつも通りの格好の制服姿の暁冬風が居た。はじめに言っておくが、彼は研究や見学などでこの研究所を訪れたのではない。

「何が、学園都市の害になる研究所をつぶせだ。暗部使えよなんで俺が」

そう愚痴をたれる冬風の手には能力を使わずに人を殺すための拳銃がある。彼は極力自らの能力は使わないのだ。彼はいつもの依頼人にこの研究所の所長を殺せと言われてここに来た。最愛も居なかったのですぐに出てこれたのだが先に帰られてしまっては、また何処に行ってたのかと質問攻めにあってしまう

「ったく、すぐ終わらさせてもらうぜ。」

ゆっくりとサイレンの鳴る研究所内に歩を進めていった。







★☆★☆★☆






少女、絹旗最愛は、とある“第10学区”の研究所に居た。

「きぬはた、何でそわそわしてるの?」
「なんか超嫌な予感がして」

そう、彼女は、なぜかずっと嫌な予感がしてたまらなかったのだ。まるで、大好きな兄が自分を置いて別の世界に行ってしまうような、そんな不安が……。

「(ま、超思い過ごしですよね)」

最愛はそう嫌な予感を振り払って、持ち場に着く。今回、「アイテム」はこの研究所を守ることが仕事である。事前の情報では、どこかの組織が攻めてくるらしいので気を抜けない。と、ここまで考えたところで、取り付けられたサイレンが鳴る

「(来ましたね。超さっさと終わらせて超お兄ちゃんの朝ごはん作らないと)」

最愛のこの思いはすぐに壊されることになる。なにせ、襲撃者は………









★☆★☆★☆★









「っち、どっかの暗部居るなこれ。」

サイレンが鳴り始めてから、やけに襲撃が多いことに疑念を抱く冬風そして、どこかの暗部組織が居ると仮定した。しかし、彼はこの状況を楽観視していた。なぜなら彼はこの“依頼”を放棄してもいいのだ。別に暗部みたいにこれが“仕事”ではなく“依頼”のために友人の帝督や土御門が所属する暗部が居た場合は見逃してもらっていつも逃げ出している。まぁ、そうでない場合は、暗部丸ごと壊滅させて後で依頼人に大目玉食らうことがあるのだが……。
なので、彼は構わず歩を進める。途中から拳銃で相手を動けなくするのが面倒になってきたのだが、能力は使いたくないので仕方なく研究所内部に入っていく。そして、とりあえず片っ端から部屋を当たろうと、なんとなく左に歩を進める。これが間違いだった。後ろから何か飛んできたのだ。もちろん、気づいていたため、前に前転して交わすが後ろを振り返ると、前転したのが間違いだったのに気づく。

「げ!爆弾!?」

刹那、転がってきた着火式の爆弾が爆発し、爆風で吹き飛ばされる。冬風は、咄嗟に受身を取って、とりあえず爆弾が転がってきた方向に拳銃を向け、闇雲に撃ってみる。パンパンっと乾いた音が鳴り、銃弾が飛んでいくが、まぁ、当然何も聞こえない。多分何にも当たらずにどこかの壁にでもめり込んだのだろう。が、これではっきりした。

「スクールかグループじゃねぇな?なにもんだ!!」
「結局あんたこそ何者ってわけよ」

その特徴的な喋り方は一度だけ聞いたことがある。というより、冬風は明確に覚えている。なぜなら、
その声の主は、“最愛と同じ”暗部の構成員の声なのだから

「まさか、今回の相手ってアイテムか!?やばいな、逃げるか」

と、冬風は逃亡を図ろうとするが、一番ばれたくなかった人物に呼び止められる

「お兄ちゃん!?」

絹旗最愛、冬風の義妹であり、冬風がこのことについて一番ばれたくなかった人物。最愛に完全に自分の存在がばれる前に逃げようとする冬風。まぁそんな事許してくれるわけがない。目の前に爆弾が転がってきて強制的に最愛とフレンダの元へ飛ばされる。

「超何してるんですかお兄ちゃん?こんな夜遅くに超駄目じゃないですか、まさか、お兄ちゃんが超刺客なわけないですよね?」
「絹旗、結局こいつは裏の人間だったってわけよ」
「超そんなことないはずです。お兄ちゃんはただのLEVEL0のはずです!」

半分願うように、半分叫ぶように言う最愛それを見て辛そうな顔をする冬風。この状況から逃げる打開策は全く出てこない。

「最愛、俺は暁冬風本人だ」
「嘘だ!!お前はお兄ちゃんじゃない!お兄ちゃんは超LEVEL0の筈だ!」

完全に錯乱した最愛を見てため息をつく。そして、元の生活に戻るための切り札と言うか逃げを使う。

「なぁ、俺逃がしてくんない?俺はこの仕事放棄しても文句言われないからさ、お前等と争う気、俺ゼロなんだよね」

軽い感じでそう言って、近くのドアから逃げ出そうとする冬風。まぁこちらもやる気がなかったら向こうも逃がしてくれるだろうと軽く考えていたのだが、現実はそう甘くないようだ。後ろから何かを着火する音が聞こえ、こちらに投げ込まれた音がする。逃げれないと判断した冬風は横っ飛びで、爆風から逃れる。

「交渉決裂?」
「超当たりまえだァ私のお兄ちゃんに化けてるんだったらよォその化けの面ァ剥がして殺してやりますよクソやろう」
「全力で逃げるしかねぇなこりゃ」

っと、冬風は、左の奥へと逃走を図る。どうにか二人から逃げ出してとっとと帰りたいと言うのが心からの叫びだった。実際、敵がアイテムと分かった時点で、冬風はやる気をなくしている。だが先程の最愛と同じようにこのアイテムはえらく好戦的だと聞いている。特に麦野が……なのでできるだけ事を大きくせずに帰りたいのだ。しかし、今日の彼は厄日だったようだ。彼が逃げている方向の前方からレーザーが飛んできたのだから。

「ほんっとに、不幸体質移ったか?」
「あなたは、この間の?」
「全員集合かよ。最悪。」

前方には、麦野と滝壺、後方にはフレンダと最愛。完全に逃げ場などなかった。だがしかし、この状況は、ラッキーともいえる。直接逃がしてくれないか交渉できるから。

「なぁ麦野さん。俺逃がしてくれませんかね?俺この仕事放棄する気満々なんで目を瞑っててもらえると最高なんですが、疑うんならこの窓から飛び降りて逃げますんで……」
「却下だ。侵入者は殺す」
「ですよね〜、泣きてぇ」
「とりあえず超ぶち殺されろぉ!!!」

最愛が詰め寄ってきて、ボレーシュートのような形で蹴りを放つ。もちろん彼女自身の能力の窒素装甲(オフェンスアーマー)があるわけなので、普通の成人男性の蹴りより何倍も重たい。

「ぐっ!がは!」
「な!?」

その蹴りを冬風は|何もせずに受け止めた(・・・・・・・・・・)。当然サッカーボールのように吹き飛ばされて近くにあった壁にぶつかり壁がめり込む。さらに、その壁から、ピピピっと言う音がして爆発する。フレンダが爆弾を仕掛けていたのであろう。それをまともに喰らったので、当然吹き飛ばされ、研究所の硬い廊下に打ち付けられる。爆発で上がった煙が晴れるとそこにはぼろぼろになって、地面に倒れこむ冬風の姿。だが、まだ息はしているので、肩が動いる。

「アイテムじゃなかったら完璧にガードしてるんだけどな。俺にはただの“頼み”で自分と関わりのある人間に暴力を振るのは無理だ」

ゆっくりと起き上がる、冬風爆発をもろに受けて硬い廊下に打ち付けられたために、骨が何本か折れている。しかし、今は泣き言を言っていられない。

「先に言っとく最愛。俺は本物の暁冬風だ。」
「もう超理解してます」
「そうか、それでも俺を殺す、と」

冬風はこれがどれだけ酷な質問か分かっていた。分かっていたからこそこれを冷静な最愛に聞く。

「超決まってます。もうあなたは私のお兄ちゃんじゃない、ただの侵入者、敵です」
「それは、涙を流しながら言うことか?」
「超なんのことですか?」

最愛は、涙を流しながら辛そうにしながら答えた。傍から見れば酷い奴だが、これを聞いて冬風は笑みを浮かべる。

「超何笑ってやがるんですか侵入者さん」

っと、また先程と同じ形で詰め寄られ、今度は鳩尾を殴られる。また冬風は何もせずにただ受け止めて吹き飛ばされる。

「もう、超あなたに情はありません。いい加減反撃したらどうですか?でないと超本当に死にますよ?」

最愛が冬風にまだうっすらと目に涙を浮かべて警告してくる。また、冬風は壁にめり込んで、座った体制のままで、

「おいおい、まさか俺がそんな非常識な兄だと思われてるとは思わなかったよ。お前は俺がそんな暴力的に見えるか?俺はお前に向かって下手したら殺すかもしれない能力を使うことは絶対ない」
「超甘ちゃんですね」
「ひっでぇなぁ、まぁいいや。全員に言うかな、今日の朝によ俺の親友がな一人の少女を救ったんだ。そいつはな、最初は俺の親友の家のベランダに干されてたらしい。だから最初は全くの無関係だった人物をあいつは救ったんだ。あいつは本当にすげぇよな」
「それが超どうしたんですか」
「だってよ、」

そう言いながら、ふらふらと立ち上がる冬風。最愛はその姿が、先程冬風が語っていた少年。上条当麻に似ていることに気がついた。そのまま、床に手を着きながら何とか立ち上がった冬風は続ける

「だってよ、俺は自分の“妹”だぜ?そんな奴を助けられないで、あいつに顔を合わせたら俺は殴られて埋められるな。」
「超だからどうしたんですか?」
「絹旗〜そいつもう殺していいよ」
「結局何が言いたいのかわかんないってわけよ。」
「簡単に言うよ。」

やっとの思いで立ち上がった冬風は自身の親友とは逆の聞き手である左手を硬く握り締め、

「義理とはいえ兄妹とその友人が互いに悲しみながら殴りあわなければいけない現実がそこにあるならよぉ。俺がそのふざけた幻想は___」

しっかりと二本足で立ち上がった冬風は親友“上条当麻”の決め台詞。勝手に取ったものだが自分流に改造した決意の台詞を叫ぶ

「____________俺が全部作り変える!」









Desperate to save the "little sister" of his stand up many times(絶望は何度でも立ち上がる自分の“妹”を救う為に)

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