小説『とある絶望の幻想現実』
作者:コンダクター()

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朝、涙子を助けた冬風は、特にその後何もなく、家まで戻って、シャワーを浴びていた。朝食は、自分で作った炒飯と、アイス3個だ。それを食べ終わりかけたころに、寮のチャイムがなった。

「冬風、助けてくれ、金がなくて何も食えなくて死にそうなんだ。」

まぁ、かわいそうな台詞に聞こえるが、彼は、無視して、アイスを食べる。助けを求める声は、先程からまったく変わっていない。
 アイスを食べ終わって、一段落した冬風は、部屋のドアを開ける。そこには、ツンッっとした頭にかわいそうなほど無気力な少年がいた。

「おい当麻。これで何週間連続だ?この不幸」
「そのようなことを言わずにどうか助けてくださいませうか?」
「っち!しゃあない。これやるよ、昨日かった鯖缶だ。」
「サンキュー冬風!これで当麻さんの今日の朝は安全だ!」

そういうと、風のように自らの隣の部屋へ帰っていった。

彼は上条当麻という。

右手に“幻想殺し(イマジンブレーカー)”という神の奇跡ですらも打ち消すことのできる力を持っているのに、ここからは推測だが、その力のせいで、滅茶苦茶不幸なことにあい、さらにその不幸のおよそ全てが女子がらみという一級フラグ建築士であり、不幸が代名詞の不幸少年でもある。



冬風は、自室に戻り、ケータイを持ったことを確認すると、今度は、ココアを飲み始める。
気づいた方もいるかもしれないが、彼は、超がつくほど甘いものが大好きなのだ。

登校時間になったので、部屋の鍵を閉めて、当麻の部屋まで行き、当麻と一緒に学校に行く。っで、合法ロりといわれている、冬風の担任月詠子萌の授業を受け、解散する。

それが彼の日常だったが今日は違った。帰りに、こんなメールが涙子から入っていたからだった。

『今日、LEVEL5の方とお会いするんですが、冬風さんもどうですか?』

とりあえず暇だったので、行ってみることにしたのだが、これが、ちょっとした間違いだった。
















待ち合わせしていたファミレスの前、そこには、涙子と、頭に、花を乗せた少女がいた。

「あ!冬風さん。来てくれたんですね?」
「あぁ、なんとなく暇だったからな」
「佐天さん、その方は誰ですか?」
「俺?暁冬風。ただのその辺にいるコーコーセーさ」
「そうですか。初春飾利です。」

簡単な自己紹介を終え、ファミレス内を見る目に入ったとある光景。小柄なツインテールの少女が、茶髪の短髪の少女に抱きついている光景。どう考えても百合な光景だった。しかも冬風は、その茶髪の短髪の方を知っていた。

「おい、あれは……どう説明してもらえればいいんだ?」
「さ、さぁ」
「驚きの光景ですね」

〜数分後〜

五人は、ファミレス前に集まっていた。その辺の男から睨まれている、先程の光景で帰りたくなって引いている冬風は割愛しておこう。


「……というわけで、とりあえずご紹介致しますわ」

その空気の中、ツインテールの少女が喋り始めた。

「こちら、柵川中学一年、初春(ういはる)飾利(かざり)さんですの」
「は、初めまして。初春飾利……です……」

あまりにも緊張して、声が後半出ておらず、聴力がいい冬風でさえ最後のほうは聞こえてなかった。
「それから……」

初春が一応、自己紹介を終えたと判断したツインテールは、次に初春の隣に立つ涙子に視線を移す。

「どうもー。初春のクラスメイトの佐天涙子でーす。何だか知らないけど付いて来ちゃいましたー。……ちなみに能力値はLEVEL0でーす」

涙子が軽く自己紹介を始める。まぁ、出てきた内容はやや斜に構えたものであったが。

「え、わわ、さ、佐天さん何を!」

そんな涙子に傍らの初春が慌てる。
 
「初春さんに佐天さん」

短髪は、二人の苗字を確認するように呟き

「私は御坂美琴。よろしく」

二人に向かって、親しげな笑みを浮かべた。これには佐天のみならず、初春も呆気に取られる。
その後、よろしくお願いします、と二人は小さな声で辛うじて言葉を返した。しかし、そのふんわりとした空気をぶち壊す笑い。

「ぶっ!くくくくくくくくくく」
「冬風さんなんで笑ってるんですか?」
「す、すまん。くくく、だって、そ、ソイツが、あはははははははははははははは!!!!」

そういって、冬風は、美琴を指差す。ツインテールは怪訝そうな顔をして、

「そう言う貴方はどなたですの?お姉様をいきなり笑ったりして、初対面の相手に失礼じゃありませんこと?」
「あぁ?すまんすまん。だが、人に名のれって言うのだったら自分から名乗らないとな」
「白井黒子ですの」
「よし、俺は暁冬風。
 そこのビリビリお嬢様にツンツン頭の友達と毎晩追い掛け回され、挙句の果てに電撃を放たれ、
適当にあしらっては次の日に家の電化製品がぶっ壊れてて、毎回毎回電化製品を買いなおしてる、その辺にどこにでもいるLEVEL0の高1ださっき笑ったのは、毎度毎度鬼のような形相で追い掛け回されてる、そいつが、笑ったからチョイ可笑しかっただけだ。不機嫌にさせたのなら謝ろう。」

美琴以外の全員が苦虫をつぶしたような顔になる。黒子など、思いっきり申し訳なさそうな顔をしている。

「お姉様……」
「御坂さん」
「ははははは」
「うるさいわね!あんたたちが勝負しないからいけないんじゃない!あんたは、いきなり私の能力消すし、あいつもなぜか当たってないし、あんたら本当に能力なんなのよ!」
「おいおい、激情すんなって、今日の主賓は俺じゃないだろ?」

 冬風の言葉で美琴がハッと我に返り、初春と涙子の方に視線を戻す。そこには、ぽかんとしている二人の姿があった。今日の主賓は彼女達。それを忘れてはいけない。

「ご、ごめんね。ちょっと訳有りだから熱くなっちゃった」
「あ、いえ、大丈夫ですよ! ちょっと驚いただけですから」
「そ、そうそう。大丈夫です!」

美琴が謝罪の意を示し、それに初春と涙子の二人が恐縮することで、何とかその場は治まった。
まだ冬風は忍び笑いを漏らして、美琴に睨まれるが





「もう、お姉様ったら……ゲームとか立ち読みではなく、もっとこうお花とかお琴とか、ご自身に相応しいご趣味をお持ちになれませんの?」
「うっさいわね。大体、お茶やお琴の何処が私らしいって言うのよ?」

美琴と黒子の先導の元、五人は美琴の提案で近場のゲームセンターへと向かっていた。

「何かさ。全然お嬢様じゃなくない?」
「上から目線でも無いですねぇ」
「おいおい、あの戦闘狂がお嬢様なわけねぇだろ」
「……と言うか、暁さ「冬風にしてくれ。」…冬風さん。御坂さんと知り合いだったんですね」
「んー……あれは知り合いといえるのか?」
「さっきの話どおりだったら違うかもしれませんね」
「それでも、あの御坂さんと知り合いだなんて羨ましいです……」
「LEVEL5なんて、人格壊れた奴ばっかりだぞ?一方通行とか、麦野とか、」
「えっ?LEVEL5ともお知り合いなんですか?」
「まぁ一応な」
「……」
「いやー、冬風さんすごい人なんですね~」
「……おい、涙子、前前」
「へ? ……あいたっ」
「……! す、すみま……ん?」

どうやら美琴とぶつかったらしい。

「御坂さん?」
「どうなさいましたの、お姉様?」

立ち止まっている美琴の横に黒子が歩み寄り、いたずらっ子の笑いを見せる。

「あらー…クレープ屋さんにご興味が?」

 ついっ、とチラシから美琴に視線を移す黒子。

「それとも、もれなく貰えるプレゼントの方ですの?」
「うっ」

黒子の言葉に、美琴はびくりと反応。冬風はまた笑いを漏らし始めた。
 
「な、何言ってるのよ! わ、私は別にゲコ太なんか! だって、蛙よ? 両生類よ? 何処の世界に―…」
「おいおい、誰ももらえるプレゼントがゲコ太とは言ってないし、俺の情報網の中には、お前がそのキャラクター大好きって入ってんだけどなぁ~、てか、別に隠すことじゃなくね?好き、きらいは人の勝手なんだから」
「いや、だ・か・ら・、私は別にゲコ太のことなんか!」

往生際が悪いのか、美琴はまだ反論を試みる。冬風は、そんな美琴に止めを刺す。

「おいおい、じゃあそのかばんにぶら下がってるストラップは何ナノかな?」
「っツ!」
「あきらめろ。お前は隠すのがへたくそだ」
「くくく」
「ふふ」
「まぁまぁ、お姉様」










「なんにしよっかな~」
「何でそんなご機嫌なんですか?」
「そいつは、30分に一回は甘いもの食べないと機嫌が悪くなるのよ」
「なんなんですのその体質」

あのあと、クレープ屋に来た、御一行は、とりあえず何を注文するか迷っていた。冬風は、ずっと甘いものが食べられなくてイライラしていたのだが、甘いものが食べられるとあって、ものすごく上機嫌である。順番的には、初春、冬風、涙子、美琴、黒子なのだが、ここで悲劇が起こる。
 それは、冬風の番のときだった。

「すいませ〜ん、ここで最後の1個です。」

店員が、冬風に、おまけを渡した瞬間だった。冬風は、ヤバ!っとした顔つきで後ろを見ると

「ズーン」

口から擬音語が出るほど落ち込んだ美琴がいた。

「ありゃ?冬風さんやばくないですか?」
「涙子、早く買っとけ。俺が、電力を回復してくる」

冬風は、美琴に近寄り、

「おい、美琴、俺のこれやる。俺はいらねぇから。」
「ほんと!?」

キュピーンっと、擬音語が、出たと思うほどの速さで立ち直る。

「あぁ、ほれ」
「ありがと!!」

美琴は、上機嫌で、クレープを買いに行った。

「早いですね。冬風さん」
「ガキの扱いにはなれてる」
「はは」
「そうか? ……っと、美琴のお帰りだな。ちゃんと買ったか?」

 そこにクレープを買い終えたらしい美琴が戻ってきた。鼻歌混じりであるため、調子は完全に戻ったらしい。

「ちゃんと買ったわよ。……黒子に頼まれたトッピングは理解できないけど」
「大丈夫だ、美琴。流石の俺にも理解できない」
「どうかしたんですか?…(微)」

 美琴が手に持つ二つのクレープのうち、黒子所望の納豆生クリームクレープを見て、流石に三人とも引いた。

「ま、まぁとりあえずベンチ行くか」

 その後、黒子と初春が確保していたベンチに三人は向かい、五人で銘々のクレープを食べ始めた。

「冬風さんってほんとに甘いもの好きだったんですね。」
「あいつ私から逃げるときでも甘いもの食べてること多いから」
「よく太りませんね」
「人類の神秘ですの」

冬風は、あまりにもクレープに夢中で耳に入っていない。

「……?」
「どうした?」
「いえ、あそこの銀行なんですけど……昼間っから防犯シャッター下ろしてるんでしょうか?」

ベンチに座っていた初春があることに気がついた。
彼女たちの後ろの通り。道路を挟んで反対側にある銀行のシャッターが下りているということに。
冬風は、はっ!として、

「やばい!ありゃ強盗だ!」

冬風の言葉は、爆発音でかき消された。









The story will go. Leads to destruction together with(物語は進んでいく。破滅を導くものと共に)

-2-
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