あの日怪異が来て以来2週間、ぱったりと怪異の活動は止まっていた。
「香苗殿、おかわり。」
エリーは香苗に茶碗を差し出す。
「いっぱいでいいのかな?」
「あぁ、」
エリーと暮らしてみてわかったことがこいつはドSでしかも大食いであることだ。
「しっかし、よく食うよな。」
「まさか、こんなにご飯が美味いとは思わなくてな。」
ご飯を盛られた茶碗を受け取り、エリーはまた食べ始める。
「そうだ、香苗殿。頼んでいたものは作ったか?」
エリーはご飯を頬張りながら話す。
「エリー行儀が悪いぞ。」
「そうだよ、とりあえず食べ終わったからだね。」
最近、怪異が出没しないかわりに、ある事件が急増していた。
俺の通っている高校の生徒が失踪したのだ。
事の始まりは1週間前、生徒5人が行方不明となった。
翌日、今度は10人。
今では全校生徒約500人の内106人も行方不明になっている。
警察も動き出しているらしいが、進展は全く見られない。
「香苗、リスト見せてくれないか?」
「うん、これなんだけど。」
香苗は数枚の紙を渡してくる。
「一応、学年順で分けてるからね。」
リストにはびっしりと人の名前が書いてあった。
「こうして見ると、すごい人数だな。」
「そうなんだけど、学年の方を注目してみてよ。」
学年?俺が確認すると、
「行方不明者・・・1年生が多いのか。」
「うん、千夏ちゃん大丈夫かな。」
「何、千夏殿なら大丈夫だろう。エルスもいるしな。」
エリーは食べ終わったようで食器を台所へ持っていく。
「さて、ふむ・・・」
後ろからエリーが見てくる。
「だけど、こうして見ると男子も女子も関係なく狙ってんだな。」
「うん、それと。関係ないかもしれないけど・・・」
「どうした?」
「山岡先生が最近色んな所に出没してるって。」
山岡先生、俺たちの通っている学校の先生だ。
いい先生には違いないのだが、いかんせん常人とどこかズレていて噂では、彼女ができたことがないらしい。
「それは、関係ないんじゃないか?」
「あぁ、関係ないと思うぞ?」
エリーが口を開く。
「考えてみろ、100人近くの数をどう隠す。」
「あ・・・」
言われて始めて気がついた。
そうだ、人間基準で考えるのがダメなんだ。
「って、犯人は人間じゃないの?」
香苗はエリーに聴く。
「多分、怪異だろうな。・・・だが、」
「だが・・・?」
エリーの顔が曇る。
「反応が掴めないのだ・・・」
「探せないって事なの?」
「すまない・・・」