香苗も家に帰り、俺は自分の部屋に戻る。
「罠か・・・」
何かが俺の足をつつく。
「ん?」
見ると人形が俺を見上げていた。
「よう、楽しく暮らしてるか?」
人形に聞くと首を横に振る。
「楽しく・・・ないよなぁ。」
なんてったって、家に軟禁状態にちかいもんな。
「昨日はごめんな?
怖がっちまって、俺が面倒見るって決めたのにな。」
人形は俺をジッと見つめる。
・・・それにしても、なんでこの人形には口がないんだ?
「・・・エリーなら、直してくれるかな?」
俺は、人形を抱え下に降りる。
「おい、エリーちょっといいか?」
エリーは居間でニュース番組を見ていた。
「ん?なんだ?主殿?」
「こいつの口って治せるか?」
エリーに人形を差し出す。
「・・・別に構わんが。どうしてだ?」
「いや、いつまでも口がないと可哀相かなって思ってさ。」
「まぁ、いい。」
エリーは人形に手をかざし、目をつむり集中する。
「ん・・・ほい、治ったぞ。」
エリーから渡された人形を見ると、焼けただれていた唇は綺麗に治っていた。
「おぉ、良かったな。口が治って!!
元通りだ。」
「・・・ですか。」
・・・ん?
「エリー何か言ったか?」
「いや?」
「ここですよ!!ここ!!」
声が聞こえてきたのは人形からだった。