小説『ヘッドフォンアクター』
作者:hj()

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一章


「え………」
随分と間抜けな声が漏れた。
いつものように、少し古いラジオを聴きながら、朝食を取っているときの話
だった。
時刻はちょうど午前7時半過ぎ。いつも通りなら、朝食を済まし、学校の準
備をしている時間帯だ。
「これ………マジ…?」
一瞬、世界が凍った気がした。
ふと、窓の外に目をやると、大きな鳥達が青空に浮かぶ三日月を飲み込むよ
うにして、どこかへと向かっていた。
嫌な汗が頬を滴る。
「嘘……だよな…」
ありえない、たった一日で地球が終わるなんて。そもそも原因は何だ!?隕
石か?それなら、もっと早く伝わるはずだし………混乱を避けるため?それ
とも、もっと他になにかが?

ガシャンッ!!

なにかが割れる音とともに、小さく鈍い音が響いた。
近くのマンションからの音だった。
「嘘…だろ!?」
それは、目の前に事に対して、言った言葉だった。
真っ赤な色をした液体。割れたガラスの破片に、横たわる原型のない人。
理解し難いことが、目の前で起こった。
「うわああああ!!!」
階段を駆け上がり、部屋へと逃げ込む。
カーテンを勢いよく閉め、毛布で体を覆った。
「飛び降り……自殺…?」
起こった事を口にして、目を見開いた。
全身が痙攣するように震え、苦い唾が口の中に広がった。
考えるな!!
ヘッドホンをし、目を閉じて、それでも駄目ならば呼吸を止めて、身体を無
理矢理落ち着かせた。
駄目だ、考えるな!!他の事を考えろ!!
ゆっくりと目を開けて部屋の中を見渡す。やりかけのゲームに一回も使って
いない参考書。中途半端に終わったパズルや充電中の携帯に読みかけた漫画
の本に………
「……残…………………?」
急に声が、耳元で聞こえたので、体が跳ね上がり尻餅を付いた。
「生…残り……………う?」
何処から聞こえるのか、誰の声なのか、その答えはすぐにわかった。
アーティスト項目のタイトル不明なナンバー。MP3プレイヤーに書かれて
いる文字だ。そしてこの声は、
「生き残りたいでしょう?」
自分がよく知っている、自分の声だった。

-4-
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