小説『ヘッドフォンアクター』
作者:hj()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

三章


交差点は当然のように大渋滞だった。
波打つように揺れる摩天楼を駆け抜けながら、横目で眺める。
暴れだす人や泣き出す少女。祈りだした神父に赤ん坊をほったらかしする母
親。もはや、老若男女という言葉の影すら見当たらない状況だった。
『あと12分だよ』
ヘッドホンの奥から聞きなれた声が響く。
「大丈夫、まだ間に合う」
丘までそう遠くはなかった。何事もなければ10分で着けそうな距離までき
ていた。
無言のまま、走り続ける。
耳の中を、怒号やら赤ん坊の泣き声が埋め尽くして、一つの歌にでもなりそ
うだった。
涙目になりながら、頬を汗がかすめる。
『駆け抜けろ!!もう残り一分だ!』
そんな言葉はもう耳には入ってはいなかった。
なぜなら
「いけええええええ!!」
目指していた丘は、すぐ目の前だったから。

-6-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




EXIT TUNES PRESENTS 煌千紫万紅大雅宴 feat.神威がくぽ from GACKPOID(VOCALOID)(ジャケットイラストレーター 鈴ノ助) 【数量限定オリジナルストラップ付き】
新品 \1477
中古 \379
(参考価格:\2000)