小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

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第九話 気と魔力がなくても…


Side クロラージュ

「夕映? どうした?」

何か言おうとして気を失ったか……。

さすがにあの量の雷の矢だもんな、遅延魔法のおまけつきだし。

「立派な弟子だよ。よく頑張ったな」

「まったく、少しは自分の身を考えて魔法を使え」

「そう教えとくよ」

「…キサマもだ、クロラージュ」

アハハ、右手がかなり酷い火傷だったからな。

ゼロ距離魔法は次からやめよう。

ついでに、治してもらいました。


「さて、これで全ての…」

「ちょっと待て爺。この気配は…」

「エヴァ、どうした。気配?」

「チャチャゼロが…時速120kmでこっちに向かってる?」

「なんで疑問詞なんだ。それにその速さ、車…いやバイクか?」

「そんなはずは…。待て、そう言えばチャチャゼロはアレと一緒じゃなかったか?」

「……ヴァ! そうだった、じゃあ、時速120kmの乗り物って……まさか…」

「どうしたのじゃ? 何か来るのか?」

「「一般人最速が来る」」


「た〜だ〜い〜…」

ああ来たよ、この声。

俺の命の恩人兼親友の…

「ま〜!!!!」

一十百が!

てか、ケホケホ、靴から煙が出てる。

「帰ッタゼ、御主人」

チャチャゼロは定位置か(一十百の頭の上)。

しっかりと藁人……いや藁束持ってるし。

量多くね?

「一十百、藁束だよなそれ。藁人形じゃなかったのか?」

「はぁぇ、じつは…」


かくかくしかじか


「…という事なんです」

「そうか、観音ね。てか、なんで俺今ので理解できた?」

「友達ですから!」

そんな満面の笑みで言うな。

反論できないだろうが。


「それで、だれじゃ?」



Side 一十百

「夜の警備? 夜のお仕事ですか?」

「うむ、そうじゃ。そうじゃが…」

「一十百、夜のお仕事はよろしくないからな」

「???」

「分からないなら、スルーしとけ」


とにかく、その警備の一端をまかせるためのテストをやるそうです。

「あの、僕、戦えないんですけど」

「…あ、そうだった」

「一十には魔力も気もないんだったな」

「なんじゃと、では先ほどの走りは…」

「「だから一般人最速と言ったろ」」

エヴァさんの声とクロラージュさんの声が綺麗にハモリました。

「しかし、あの速さなら気とか魔力とかの強化無しでもなんとかなるか?」

「確かに。魔力を持たない分、感知されにくいからな」

「そうじゃな、5分ほど攻撃を続けて、この者が動ける状態なら合格としよう」


僕が参加する理由は、エヴァさんのログハウスと別荘のお掃除用品を買うためです。

ほかにはゼロさんのお酒とかかなぁ?

僕は今欲しいものとかないからね。

「では……え〜と」

「あ、一十百です」

「一十百君、一人選んで5分間避けきってみなさい」

「はい! えと、そこの白いスーツのメガネの優しそうなおじさん」

「僕かい?」

「はい!」

優しそうだし、手加減してもらえるよね。

「ちょっと待て、お前死ぬぞ」

「ひぁぁ! ど、どうしてですかクロラージュさん。優しそうな人ですから大丈夫です」

「タカミチはマズイ。本気でマズイだから…」

「一十百君、手加減するから大丈夫だよ」

やったぁ!

手加減してもらえそうだ〜。

優しい人で良かった。


「それじゃ、始めるがよいか?」

「はい!」

「いつでも」

「では始め!」

あれ?

杖がない。手もポケットに入れたままだ。

何分間か待ってくれるのかな?

「来ないのかい? 避けるだけでは時間は稼げないよ」

ヒュン

あれ? 伏せないと!

今、頭の上を何かが通って行ったような……。

「驚いた、初見で避けられるとは思ってなかったよ」

「ほぁ? な、何の話ですか?」

「まあいい、次行くよ」

ヒュン


Side クロラージュ

「今のなんでかわせたんだ…?」

「私に聞くな!」


いや、まず見えないくらい速い拳打をどうやって避けろと。

俺には全く見えない。

エヴァの解説があって何とかわかるくらいだ。


「3発、か」

撃つ数だけはエヴァが教えてくれる。

一十百は無傷か、今のところ。

なぜ躱せる?

「む、9連か。よく躱せるな、一十」

まったくだ。

原作知識があるから、あれが居合い拳(無音拳)だと分かるけど……。

分かったところで、対処法がないはずだ。

少なくとも俺には。

「何故あそこまで避けきれる!」

魔法もない、気もない。

それなのにどうやってるんだ?

「む、タカミチめ、手加減するんじゃないのか? あの量では…」

「まあ咸卦法使ってないし、手加減と言えばそうなんじゃないか?」

「なぜそのことを! …いや、キサマなら知ってるか」

なんか納得された。

「なあエヴァ、今どんな感じだ?」

「ああ、居合い拳を連続して撃っている」

「おいおい、あれ尋常じゃない速度だろ」

「そうだ、それを一十が全て躱している…」

「どうやって!!」

「しるか! 私だってわからん!」

後で聞いてみるか。

もしかしたら俺にもできるかも!


「時間じゃ!」

「ふえぇ〜、つ、つかれた〜」

「ははは、息も上げさせられなかったか」

え゛……。

タカミチ相手に無傷+息すら上がってない?

チートか?


「これにてテストは終了じゃ、クロラージュ君、綾瀬夕映君、一十百君には追って連絡しよう」

まあ、とにかく、無事に済んでよかったな。

そして一十百、後で攻略法教えろ!

てか、今教えてもらおう!

「一十百、すごいな。どうやって居合い拳をよけてたんだ?」

「ふぇ? 居合い拳??」

ああ、そうか。

名前を知らないのか…。

「ほら、タカミチが撃ってきてたやつだよ」

「あ! え〜とですね、勘でよけました!」

「勘で避けた〜!?」

「はぅあ! は、はい…」


一十百から避け方を聞いたら、本当に勘だそうだ。

なんか危ない、と思った、いや感じたそうだからそこから避けた……らしい。

俺にはできないな。

エヴァなんか魂が抜けかけてるぞ。

「まあいいか。さて帰りますか」

「そうだな」

「疲れました〜」

「帰ッタラ酒クレ」


さて、帰る……、おや誰かがこっちに来ているな。

あの色黒の美人さんは……竜宮真名か。

結構なスタイルだ…、ホントに中学生?

「あれ? あの時の、ハーフのお姉さん?」

「ああ、やはり同一人物だったか。ひさしぶりだね」

いつの間に知り合った、一十百!

俺にも紹介しておけ! てかして下さい。

「あのときは、あ、ありがとうございました」

「気にしなくていいよ。しかし、君もかなりの実力者だったんだな」

「へぁぅ! そ、そんなことないです」

「謙遜する必要はないよ、あれを躱しきったんだからね」


楽しそうに話すじゃないか。

美人とね、美人とな、オノレェェェ!!

リア充砕けろ――!!

「ふぇぃ! い、今、寒気が…」

「? よくわからないけど、警備で一緒になるかもしれないからね。その時はよろしく頼むよ」

「は、はい。こ、こちらこそ…えと」

「ん? ああ、まだ名乗ってなかったね。竜宮真名だ」

「一十百です。その、よろしくお願いします」

一十百が戻ってきたな。

おのれ、リア充が!!

いや、これはこれで、よかったか?

お近づきの口実が出来た。よし、さすがだ。

「一十百、ナイスだ」

「はぇ? は、はい!」


さてと、今日は帰るか。

明日から仮契約者探しと行くか。

「しかし、夕映が起きないな。仕方ない、背負っていくか」

よいしょ、っと。

軽いな。


エヴァハウスに着いたか。

「ふぁ〜、さすがに疲れました。」

「恐山ヲ往復、藁ノタメニ寺デ修行、最後ニアノテストダカラナ」

「えへへ…」

俺も疲れたよ。

神多羅木先生もあんまり手加減してくれなかったしな。

いいさ、今日はゆっくり休もう。

ロマンノートを少しまとめないと。

「クロロさん。そろそろ、おろしてほしいです」

「あ、軽いから忘れてた」

「///そ、それはどうもです」


夕映もずいぶん魔法使いらしくなったな。

最初のころはどうなるかと……。

違った。才能があったから苦労してないや HAHAHA

「私もこれで裏の世界の住人ですか」

「そうだ。少なくとも平凡な日常は二度と訪れんな」

「わかってるですエヴァさん。ここへ来た時に覚悟はできてるです」

「フフ、そうか。いざとなったら、お前の師に守ってもらえ」

「!! ど、どうしてそうなるです!」

「どうした、顔が赤いぞ?」

「ほ、放っておくです!」

なんか、話してるけど、うまく聞こえないな。

まあ、エヴァと夕映が話してる内容だから魔法の事だろ。

さて、疲れたから寝るか……。

屋根裏も、一十百に掃除と言う名の改装をしてもらったから十分すぎるしな。



Side 茶々丸

「す〜、す〜」

「眠っていますね姉さん」

「サスガニ体力ガ尽キタンダナ」

モップを杖に一十百さんが眠ってました。

立ったまま寝ているのは器用だと思います。

けれど、一十百さんはここで寝ていてよいのでしょうか?

「なんだ茶々丸とチャチャゼロか。何をやってるんだ一十は?」

「マスター、疲れたようで眠ったようです」

「…器用だな」

「オイ御主人。コイツ家ニ帰ラナクテイイノカ? 学校トカモアルダロ?」

「…それがな、ちゃんと学校には行っているそうだ」

「いつ行っているのでしょう?」

「イヤ、ソレデモ戻ラナイトダメダロ…」


「家にはポチしかいないから大丈夫です」

どうやら、起こしてしまいました。

「そうか、ならいいんだが…ポチだけ?」

「一人暮らしだったのでしょうか?」

「はい」

「一十百、お前中学生だろ。辛くなかったのか?」

マスターが心配されています。

お優しいマスターです。

「大丈夫でした。何もすることがなかったので退屈でしたけど」

「ケケケ、普通退屈ジャスマネエヨ。マズ一人暮ラシノトコロガオカシイダロ」

「エヴァさんにお掃除のお仕事をもらったんで今は充実しています。一人じゃないですし」

「そうか」

「クロラージュさんにも、とっても感謝しています」

「そうだな。奴がいなければ、今みたいな時間は無かっただろうからな」


どうやらマスターも一十百さんもクロラージュさんのことを認めているようです。

私もマスターにこのような時間をくれたクロラージュさんにお礼を申し上げたいです。

「そう言えばポチと言っていたな?」

「はい」

「餌とかはどうなっているんだ?」

「僕があげに行ってます」

「わざわざ行くのも面倒だろうから、次行ったとき連れて帰ってこい」

「ほぁぃ! わ、わかりました」


近いうちにこの家に新しい家族が増えそうです。



Side さよ

夜の学校は不気味です。

幽霊とかが出そうでとっても怖いんです。

あ、私が幽霊でした。

「いつもみたいにコンビニに行けば……」

ガタン!

ひっ!

「ポルターガイストでしょうか?」

そう言えばこの頃エヴァさんや十百さんに会っていません。

お話しできないのはさみしいです。

「こんど会いに行ってみようかな?」

(安心して、さよさん。もうすぐ出来上がりますから)

振り返っても誰もいませんでした。

「今たしかに十百さんの声が聞こえたような…」



Side エヴァ

「何をやっている一十」

「さよさんに向けて、テレパシーです」

「…出来るのか?」

「友達ですから!」

サムズアップか…。

だんだんうちとけてきたのはいいのだが、性格がクロラージュに近づいてないか。

心配だ。


「さよさん、もうすぐ出来上がりますから」

「…できる……のか?」

「友達に不可能はありません!」

心配だ……。

-10-
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