小説『魔法先生ネギま ロマンのために』
作者:TomomonD()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第十四話 二人の吸血鬼


Side クロラージュ

エヴァ豪邸のせいで学園長が泡を吹いてたが、妖怪の心配をするつもりはないな。


そう言えばそろそろ桜並木事件じゃないか?

エヴァが…やるのか?

「お〜い、エヴァ」

「なんだ」

紅茶タイムか。俺にも一口……うーん、うまい。

「それでなんだ、話があるのだろう?」

「ああ、ネギ君を襲うつもりか?」

「…ああ」

止めるか、いや止めなくてもいいか。

「そうか、頑張れよ」

「…止めないんだな」

「エヴァがそこまで真剣なら止める必要もない。どうせあの妖怪も絡んでるのだろう」

「そんなとこだ。だが、お前なら反対すると思っていた」

反対したいけど、俺には俺のロマンがあるからね。

ネギ君にとってもいい勉強になるはずだ。

「まあ、エヴァを信じるのも悪い気分じゃないからな」

「! そう、か」

さてと、俺は会いに行ってくるか。

未来の……いや近未来の仮契約者に。


「信じる、か」

「エヴァさん? いいことでもありましたか?」

「気にするな、一十」

「はい。あ、それと…」

「なんだ」

「天の意思だと思うんですけど、間接キスですね」

「ブフォア――――!!!」


さて、ここが目的の場所だな。

間違えなくここだ。

桜並木に出る吸血鬼……の被害者を助ける俺。

もちろんエヴァが吸血をした後だけど。

「あれ? クロムさん?」

被害者になるであろう、ピンクが現れたか。

「久しぶりだな、テスト勉強以来か?」

「そうだね〜」

さて、どうするか。

今のうちにここの噂を教えておくか。

そうすればうわさ好きのまき絵のことだ、ここに来るだろうからな。

「知ってるか、ここの桜並木には夜、黒〜いローブを着た吸血鬼が…」

「あれ? 知ってるんだその噂、な〜んだ」

うわ、もう広まってるし。

いつの間に…。

すでにエヴァが準備してたのか?

「まあ知ってるならいいか、気を付けろよ。この前みたいに大変なことにならないようにな」

「えへへ〜、今度も助けてくれたりして?」

「いや、運よく通りかかれば助けられるけどな、そう上手くはいかないだろう」

まあ上手くやるんだけどね。

一歩遅かったか!ってやりたいから。

ロマンだよ、わるいか!

「それじゃ気を付けろよ、佐々木まき絵」

「うん、じゃ〜ね」

何も知らずに手を振りやがって……。


さてと、もう一人そろそろ出会っときたいな。

ネットアイドルのちうたん、もとい長谷川千雨とな。


女子寮の方に行ってみるか。

ついでに妖怪爺でもつついてくるか。



Side 一十百

お散歩してたら着物を着たお姉さんが走ってったんだ。

それで…

「いや助かったわ〜」

「いえいえ」


ポチがその人を乗せたかと思うと一気に追っ手を振り切っちゃったんだ。

で、急いで僕が追いかけたってわけです。

大和撫子っていう感じの女の人です。

「そういえばどこまで行くつもりだったんですか?」

「別に行きたいとこはなかったんよ〜」

「ほぇ? じゃ、じゃあ、単純に逃げてるだけだったんですか?」

「逃げてるって大変なことやと思うんけど…」


今はポチから降りて世界樹広場にいます。

近衛木乃香さんっていうらしいんだ。

「お見合い?」

「そうや。ウチまだ早いと思うんよ」

「そう、ですね。僕は相手を選べないのが辛いとおもいます」

お見合いなんてまだあるんですね。

大変そうです、お嬢様?なのかな。

「あれ、木乃香さん?」

「あ、ネギ君や!」

ネギ君?

クロラージュさんが言ってた魔法先生かな?

木乃香さんは……魔法のこと知らないよね。

黙ってなくっちゃ。



Side クロラージュ

さてと……。

いきなり女子寮に入り込んで“君がちうちうさんだね”なんて言えないよな。

ネットアイドルのことも黙ってるみたいだし、何より普通の日常を望む女の子であるからな。

さすがに、作戦を立ててから会いに行くべきだったな。

せめて“この学園は異常だ”とか、“認識阻害があるから”そんなことを先に言っておけばフラグも立っただろうに。

くっ、一歩後手に回ったか。

これでは、長谷川千雨の日常を守れない。

なんということだ。


「それを私の前で言ってどうする―――!!!」

「いや、ノックして“ちうちうさんだな”っていったときに気が付いた」

「おせーよ!!!」

「まあ気にするな」

「無理だよ!!!!!」

「大丈夫だ問題ない」

「一番いい日常を頼む……!!!」

バカめ、かかったな。

このセリフにはどんな場合でもそう言うしかない状況になってしまうんだよ。

「ハハハ」

「……おい、私をどうするつもりだ?」

「特に用事はない」

「そうか……え? 今なんて…」

「特に用事はない。強いて言えば顔を合わせておきたかったってところか」

「なんだそれ?」

いや、さすがに仮契約してくれとか言えないし。

まだ魔法のことも知らないんだからね。

「さっき言ったろ、この学園は異常だと。いつか、耐えられなくなったら来るといい。場所はエヴァのログハ…ログ豪邸だ」

「ログ豪邸? よくわからんが分かった。てか、なんであんたの所に行かなくちゃいけないんだ?」

「この状況を説明できる自信がある。ただし、それを聞くと平凡な日常は二度と帰ってこない」

「……今よりも、か?」

「今以上にだ。正確には平和で平凡な日常だな」

「…そうか。分かった、考えておく」

よしこれでちうちうとも顔を合わせられたな。

さてと、ではそろそろ…

「もう一ついいか、なぜ私がネットアイドルだと知ってる?」

「いや、隠れファンだ。あ、隠れそびれた」

「そうかよ、…もうつっこむのが無理そうだ」


そうか!

ちうちうもつっこみ担当か!

これはいい人材ではないか!

「よしちうちう、君は…」

「せめて千雨と呼べ――――――!!!」

「そうか、それでなるべく早く来た方がいいな」

「なにか、あるのか?」

「つっこみよし、ルックスよし、俺の好感度よしだから、面倒事に巻き込まれる前に来た方がいい」

「巻き込まれること前提かよ……」

特異体質の君だからだよ。

まあいいさ、最悪会いに行くからな。

ネギ君、悪いがバカピンクとちうちうだけはやらん。


「それじゃな、長谷川千雨」

そろそろ、暗くなってきたか。

桜並木道に向かってもよさそうだな。

エヴァ、佐々木まき絵、上手くやってくれよ。



さてと、このあたりでそっと待っておくか。

今いるのは桜並木の草むらの中。じっと息をひそめて、エヴァとまき絵が遭遇するのを待つ。

さてと、そろそろか……。

ん、きたか。

「ふふふ、出席番号16番佐々木まき絵、お前の血を啜らせてもらう」

さすがエヴァ、いい雰囲気だ。

そしてここで小さい悲鳴を残して…

「あ、エヴァちゃん。こんばんは〜」

そう、そんな…

「「え!」」

しまった声が出た。

まあエヴァの声と被ったからばれなかったけど。

なんで知ってるんだ?

「な、何の話だ?」

「エヴァちゃんでしょ。驚かせようとしても駄目だよ、声が同じだもん」


……そうか!

あの勉強会、原作にはなかった!

本来なら、そこまでエヴァのことを知らなかったはずだ。

でも、エヴァハウスでの勉強会で……。

しまった!

今までのずれはたいしたことなかったが、これはかなりまずい。

どうやってエヴァのことをネギ君に気が付かせるんだ?

「ええい、お前はバカレンジャーなんだから吸血しても忘れるだろ!」

エヴァ、さすがにそれは無理だろ。

「う、確かに忘れちゃいそう……」

いや、いくらバカレンジャーでも覚えてるでしょ。

「ふふふ、ではいただくとしよう」

「あれ〜」

……どうしよ。

見なかったことにしておくか。

さすがに助けるといろいろとまずいことになりそうだ。

さてと、帰って寝よ。

ううう、俺の計画が……グスン。


仕方ないのでエヴァハウスで帰りを待つことにした。

茶々丸も一十百もいないなんて珍しいな。

なんだか寂しい感じだ。

「今日は散々だった……」

「あ、お疲れエヴァ」

「ああ。何でこうなったんだ?」

「ま、まあ佐々木まき絵のことは忘れて別の作戦を立てればいいさ」

「……おい、なぜ佐々木まき絵を襲ったって知ってるんだ?」

あ、しまった…。

まあ正直に話すか。

「覗き見してました、テヘ☆」

「テヘほしじゃない!!」

そんなことを話していると……。

コンコン

「おや、誰か来たみたいだな。茶々丸か?」

「いや、一十百ではないのか?」

そういって扉を開けると…

「やっほ〜、エヴァちゃん」

……なぜここに佐々木まき絵がいるんだ?

さっきエヴァに血を吸われて、気を失ってるはずだろ。

「なんでここに来たんだ?」

「エヴァちゃんって吸血鬼なのかな〜って思って」

「へっ?」

「今日ね、エヴァちゃんに血を吸われる夢を見たんだよ。だからなんとなく」

「夢だと…?」

さすがバカレンジャーだな。

あれを夢だと思うのか……。


「そう思い込んでるらしいぞ、どうするんだ?」

「夢ってことにしておくか…」

聞こえないようにエヴァとそっと打ち合わせっと。


「そ、そうか、変な夢を見たんだな。だが佐々木まき絵、夢と現実をごっちゃにするのはよくないぞ」

「そうだね〜。うん、夢だもんね」

「まったく、クラスメイトを吸血鬼というなんて佐々木まき絵失格だ!!!」

「ガ〜ン!!」

いや〜、一回言ってみたかったこのセリフ。

なんかまき絵が白黒になってるけど、まいっか。

でもこれで確実に吸血鬼事件の噂が立たなくなったな。

どうするんだ。

こうなったら、天の意思と世界の修正力にかけるかな。

俺にはどうすることもできん HAHAHA



Side 一十百

ネギ君と木乃香さんと別れてからのんびりお散歩中です。

ポチは行きたいところがあるんだって言って帰っちゃった。

チャチャゼロさんも今日はいないんだ。


それでね、えと、その……。

お散歩してたのって、麻帆良学園の近くだよね。

えと……いつの間にか暗〜い公園に来ちゃいました。

こんなとこあったかな?

まあ、でも大丈夫……だと思う。


ふらふらと歩いてるとベンチに金髪のお姉さんが座っていました。

……エヴァさんかな?

「こんばんは〜」

「あら?いつからいたの、気が付かなかった」

エヴァさんじゃないや。

でもエヴァさんになんか似てる……。

吸血鬼さんかな?

でも……もっと……つよい?

う〜ん、世界が目の前にある感じかな?

「よくわかんないんですけど、お姉さん強いんですね」

「そう? 戦ってもいないのによくわかるわね」

「えへへ」


少しだけ話を聞くと…

えと、真祖のお姫様で、まーぶるなんとかってのが使えるらしいんだ。

それと、チョークの魔眼?だっけのお兄さんを待ってるらしいんだ。

「それでここはどこですか?」

「迷子なの?」

「う〜ん……あれ? むこうから動物園が近づいてきます…?」

「なんで疑問形?」

僕も何を言ってるのかわからないんだけど……。

でもいっぱいの動物さんたちがこっちに向かってる気がするんだ。


「なるほど、あなたの勘もなかなかのものね」

「あのひと……誰だろう?」

目の前に立った人は、大きくて、黒くて……なにより人じゃなかったんだ。

形だけ、中身は……混ざってる感じがしたんだ。

「貴様、何者だ?」

「僕は…」

あっ!そうだった、帰らないと!

エヴァさんのおうちのお掃除がまだだった!

「僕もうすぐ帰らないといけないんです」

「なに」

大きく息を吸い込んで……一言。

「ポチ!」

遠くからポチの鳴き声が聞こえました。

すると、パリンって音と共に目の前に光の空間が現れ、その中からポチがこっちを覗いてる。

「それじゃ、僕は帰ります」

「まて、その獣は…狼か?」

「えへへ、秘密です。名前はポチです」

僕はくるりと振り返り、

「それじゃあ、お姉さんもさようなら」

「さ、さよなら。私はアルクェイド・ブリ……」

最後まで聞けなかった〜。

あ〜れ〜……。


気が付くとエヴァさんのおうちの前でした。

えと、アルク……さんだっけ?

エヴァさんに話してみよっと。

「行こっか、ポチ!」

「ガウ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あの黒い獣はいったい……」

「さすがのあなたでも驚いたようね」

「あれは……神に等しい力だ、いつか飲み込んでくれる」

「ここであなたが消えなければね」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「エヴァさん!」

「なんだ」

「真祖のお姫様に会えました!」

「そうか」

「じゃあお掃除してきます」

エヴァさんびっくりしなかったな〜。

知り合いだったのかな? 掃除しに行こっと。


「!!!!!真祖の姫だと―――――――――!!!!!」

「どうしたエヴァ?」

-15-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ネギま!? DVD1 スペシャル版
新品 \666
中古 \1
(参考価格:\7350)